【ティンクルスタースプライツ】対戦型シューティングという新ジャンルを切り開いた”連爆”ゲームの話

縦スクロールのシューティングで対戦しようという、一見すると風変わりな組み合わせにみえるけど、実はかなり完成度の高いゲーム『ティンクルスタースプライツ』の話をしましょう。友人たちとワイワイ対戦するにはすごくいいゲームなんですよ。

※スクリーンショットはすべてドリームキャスト版のモノ。

先日、高田馬場ゲーセン・ミカドにおいて『ティンクルスタースプライツ』の大会が配信されていたのを観て久々に思い出したこのゲーム。シューティングで対戦という無茶な取り合わせのようで、ゲームのコアが明確でとっつきやすいタイトルでもあるんですよね。対戦シューティングは後に『チェンジエアブレード』(1999年)や『旋光の輪舞』(2005年)が登場しますが、それらに先駆けて登場したのは本作なのです。

アーケード版『ティンクルスタースプライツ』がリリースされたのは1996年。同年に『バーチャファイター3』とか『ストリートファイターZERO2』とか『Xmen vs ストリートファイター』などがリリースされており、格ゲーの対戦台がゲーセンの主役だった時代ですね。

シューティングは格ゲーにおされて徐々に壁際に追いやられつつありましたが1996年には『19XX』、『バトルガレッガ』、『レイストーム』などがリリースされており、どのゲーセンにも必ずシューティングゲームの筐体が数台あった時代でもあります。ちなみに初代『メタルスラッグ』も同じ年ですね。

そんな時代に登場した本作、流行っていたのかといえば残念ながらあまり流行っていませんでした。理由は、ファンシーすぎるビジュアルが気恥ずかしかったとか、シャイな日本人に知らない人と横並び対戦はできなかったとか、いろいろあるんじゃないかと思います。

当時のボクも、「ゲーメスト」誌上で「これ実はおもしろいんじゃね?」的な記事をみたので触ってみた経緯があり、自分の意思だけでコインを投入する勇気はありませんでした。しょぼい、しょぼいぜ当時のボク。

ともあれ、勇気を振り絞ってコインを投入した先に広がっていたのは、ファンシーでキラキラなお花畑ではなく、ものすごくとっつきやすいシューティングゲームだったのです。

すべては”連爆”に集約されるシステム

ティンクルスタースプライツ 連爆

『ティンクルスタースプライツ』は対戦シューティングなので、画面を縦に2分割したレイアウトになっています。ファンシーなキャラクターや世界観も相まって『ぷよぷよ』に近い印象かもしれません。実際、やることはシューティングなのですが、ややパズル要素を含んだ内容になっています。

ショットとボムの2ボタンというシンプルな操作と、体力制で即死もない(一応あるけど)こともあり、ビギナーにもやさしい仕様であるといえるでしょう。しかし、ただなんとなく敵を撃てばいいわけではないのが本作の特徴。といっても、別にムズかしいことをする必要はありません。

本作を象徴するゲームシステムが「連爆」です。ザコ敵を倒したときに発生する爆風に別の敵を巻き込むことで敵を倒せるシステムになっており、連続して爆風が発生するので敵を一掃できる壮快なものになっています。ただ壮快なだけでなく、「連爆」で一気に倒すことで相手の画面に攻撃を送り込むオマケつき。

さらに、相手から送り込まれた攻撃も爆風に巻き込めば送り返せる上に、連続して送り返しすことで強力な「エキストラアタック」や「ボスアタック」に派生するため、とにかく爆風に巻き込むことが重要になってきます。ただなんとなくショットを撃つのではなく、ザコ編隊を一掃できそうなタイミングを狙ったり、相手プレイヤーの攻撃に合わせて爆風を発生させたり、といった戦術が独特なのですね。

ティンクルスタースプライツ ダークラン登場

言葉で説明するとなんだかややこしそうですが、プレイヤーがやるべきことは「爆風に巻き込む」だけなので、実際には非常にわかりやすいものになっています。どんなときでも「連爆」です。それさえわかれば即座に対戦が成り立つくらい、『スプライツ』は「連爆」に集約されているのです。

アーケードゲームというものは100円なり50円なりと投入して3分でどういうゲームであるのかがわかるようになっているものです。『スプライツ』もその意味では非常に優秀で、とっつきやすいゲームであったことは間違いありません。

弾幕を作って相手を落とす

ティンクルスタースプライツ ボスアタック

どのキャラクターを選んでも「連爆」を狙う基本は変わりませんが、「エキストラアタック」と「ボスアタック」の性能が大きく異なります。この性能差がキャラクターの個性を引き立てる要因となっています。

「エキストラアタック」はレベル2の溜め撃ち、または相手の攻撃を繰り返し撃ち返したときに発生するもので、対戦相手のフィールドに直接攻撃を送り込むものです。誘導弾や直角に曲がる弾、画面下部から飛んでくる攻撃などさまざまで、対戦の決め手になりやすい攻撃になっていますね。なので、「エキストラアタック」の強力なキャラクターが強キャラなわけです。研究が進んだ現在ではどうかわかりませんが、メヴィウスの「コウモリ君だ!」とかメモリー女王の「お食べになって!」は反則級でした。

「ボスアタック」はレベル3の溜め撃ち、または相手の攻撃を撃ち返しまくったときに発生するもので、対戦相手のフィールドにボスを送り込むものです。ボスの性能もキャラクターごとにバラバラで、強力なものから大したことがないものまでピンキリ。同じボスでも動きにバラつきがあり、強いボスでもさっさと帰ってしまうことがあるため、「やる気がない」などといわれたものです。

「エキストラアタック」も「ボスアタック」も、他の敵や弾を組み合わさることでどうしようもないほど重厚な弾幕を張ることが可能となっており、その様子はまさに地獄絵図といっても過言ではないでしょう。対戦ゲームなのですべての状況ですべての弾を避けられるようにはできておらず、ボムを躊躇するとカンタンに落とされてしまいます。

「連爆」と溜め撃ちをあわせて作り出す弾幕で相手を押し潰す、というのが本作の対戦の醍醐味。相手のフィールドに敵や弾が多い状況で一気に「エキストラアタック」で畳みかけたいところですが、敵が多ければそれだけ「連爆」もしやすいので、送り込んだ攻撃が全部跳ね返ってくるかもしれないリスクもあります。対戦ゲームにおけるリスクとリターンが目に見える形でわかりやすいことも本作の特徴ですね。

オンリーワンとなった開祖

ティンクルスタースプライツ

そんな感じで『ティンクルスタースプライツ』は、対戦シューティングの先駆けにして高い完成度を誇るゲームでした。しかし、品質が売り上げに比例するとは限らないのはどの業界も同じ。現在でも根強いファンの存在と、オンリーワンなゲームとしての知名度があるとはいえ、知る人ぞ知る名作のポジションであると思います。

ファンシーな外見の気恥ずかしさとか、横対戦で乱入しづらいとか、今の時代なら解消できる方法とかフィールドとかがありそうなものですが、どうなんでしょう。キャラクターもののゲームのベースとしてもイケそうな予感もするのですよね。埋もれた名作が埋もれたままなのは非常にもったいないと思うのですが、なかなかムズかしいところではありますね。

ちなみに、この『スプライツ』は家庭用への移植が多数存在します。といっても、今から手に入れるとなると値段とかハードとかの問題であまりお手軽ではないかもしれません。入手難度が低いのはWiiのバーチャルコンソール版でしょうか。続編である『ティンクルスタースプライツ -La Petite Princesse-』もPS2アーカイブスとして最近配信されています。わかりやすくとっつきやすいゲームであるため、来客用の1本として活躍してくれるはず。

参考:バーチャルコンソール:ティンクルスタースプライツ
参考:ティンクルスタースプライツ -La Petite Princesse- | ソフトウェアカタログ | プレイステーション® オフィシャルサイト

※2015/3/18 追記
『ティンクルスタースプライツ』を含むタイトルが入ったPS2ソフト『ADK魂』がPS2アーカイブスで配信開始されました。
ADK魂 | PlayStation®Store 日本

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