【Dragon Age: Inquisition】レビュー どこまでもワクワク探索できるオープンワールドRPG

広大な世界をウロウロしていたらいつの間にか80時間を突破していました。ストーリーを終え、ハイドラゴンをすべて始末したところで一旦区切りをつけてレビュー。探索が楽しいオープンワールドRPGは時間を忘れて遊ぶには最高…なのですが、時間は大切なものなので注意しましょう。

個人的にはとっくに100時間オーバーのつもりだったのですが、まだ80時間程度でした。「なんだ80時間か」くらいに感じてしまいましたが、いやいや80時間て。これだけの長時間プレイしてもまだ楽しい気分のままいられるとはさすがの超大作、さすがのGame of the Year 2014であります。

『Dragon Age: Inquisition』はハイファンタジーな世界を舞台としたオープンワールドのRPGです。中世風の剣と魔法でエルフとかドワーフとかドラゴンとかがいて山や森や砂漠やなんやを冒険する感じですね。こう聞くとベタな印象を受けるかもしれませんが、世界設定もビジュアルも非常によく作り込まれていて完成度が高く、現代の技術と新世代機のパワーでこれを作るとこうなる、という1つのお手本になるかもしれません。

ところで「Inquisition(インクイジション)」ってタイトルは読みづらいし覚えづらいと思っていたのですが、終わるころにはすっかり染みついていました。何せ周りの人々がボクのことを「インクイジター(審問官)」って呼ぶわけですからね。

探求心をくすぐる広大なオープンワールド

オープンワールドのRPGといえば、好き勝手にあっちこっちへ行けるところが魅力の1つ。本作もかなり広大なフィールドが用意されており、さらに、どっちへ行っても大体は何かがあるという密度で作られています。

Dragon Age Inquisition エメラルドの墓場

フィールドは1つではなく、平野や森林、雪山や砂漠などさまざまなエリアに分かれています。エリアはストーリーやサブクエストの進行で解放されていき、最終的にはかなり多くのエリアがでてきます。フィールドが分割されているとはいえ、1つ1つのエリアが広大なので世界が狭まるイメージはまったくありません。むしろ、広すぎるくらい広いと感じました。

フィールドはただ単に広いだけではありません。イベントやクエストの密度が高めで、どちらへ向かっても得られるものは必ずある感じ。どこへ行っても無駄足になることはほとんどないので時間を無駄にしている感がなく、ストレスもないのが大きいですね。

本作において「もっと探索したい」と思わせてくれる最大の要因はグラフィックの美しさ。深緑の森の奥に眠る遺跡とか、月夜の砂漠の峡谷とか、洞窟の奥で怪しく光る鍾乳洞とか、どこへ行っても本当に美しい光景が迎えてくれます。こういう絵になる風景が多いので、まだ見ぬ場所へ赴くこと自体が楽しくて仕方ないのですよね。まさに心躍る冒険て感じで。

Dragon Age Inquisition どこへ行っても美しい光景の連続

オープンワールド系のゲームってどうしても「結局はお使い」になりがちで、本作もそうなのかもしれませんが、イベントの密度と美しい風景のおかげでフィールドを走り回って探索していること自体を楽しませてくれるため、お使い感は抑えられているようにも思えます。やらされているんじゃないんです。探索したいと思わせてくれる魅力があるのですよね。

歴史に宗教に伝承に…作り込まれた世界観

魅力的な世界は何もグラフィックだけではありません。世界の歴史や伝説、宗教、政治的な勢力図など、世界設定もかなり練り込まれています。倒壊した家屋は過去の戦いの傷跡であり、朽ち果てた遺跡は種族間の争いを伝えていたり、美しい光景はただ美しいだけではなく、それぞれがその世界に根付く歴史をもっているのです。それが没入感を高める要因になっていることは疑いないでしょう。

Dragon Age Inquisition 作り込まれた世界観がさらに魅力を高める

ストーリーでは、国家間の政略や国家の内部での策略など複雑な勢力図も描かれています。誰が悪いヤツなのかが明確ではない、というか、プレイヤーは審問官として善し悪しを見極める立場なので当然ではあるのですけども。ラスボスになる人は明確に悪いヤツなんですが、それ以外はかなりややこしい話を描いていますね。セリフ回しが独特でややわかりづらいことが拍車をかけているのかもしれません。

審問官としての判断がストーリーに影響を与えるところもポイントですね。どちらの勢力の味方につくのか、誰をどう裁くのか、など、なかなか重たい決断を迫られることが何度もあり、選択肢によりストーリーが変化します。プレイヤーが世界に介入できるってのは没入感を高める重要な要素なのですよね。それで展開が大きく変わるのだからなおさら。

Dragon Age Inquisition 選択肢で変化するストーリー

ストーリーとは関係ありませんが、個人的にはパーティメンバー同士の会話が好きでした。探索している最中にキャラクター同士で雑談をはじめるんですよね。たとえば、女騎士のカサンドラさんに向かってムキムキのおっさんアイアンブルが「お前いい鎧着てるな、高貴な女騎士って胸元の空いた鎧とか着てて戦場でひでぇことになるんだ」とか言い出したりします。一体何に向けた皮肉なんだと笑ってしまいましたが、こういった会話がかなりのバリエーション用意されてるようで、毎回誰を連れていくか悩む理由にもなりましね。

スキルベースの育成とバトルシステム

キャラクターの育成はスキルツリーからレベルアップで得られるポイントを消費して習得していくタイプです。スキルツリーは職業ごとに分かれており、さらに1つの職業の中でも複数のツリーがあるため、さまざまなタイプに育成していくことができます。職業は戦士、ローグ、魔道士の3種類で、戦士でも片手武器に盾か、両手武器かでまったく違ったスキル構成になります。ローグは短剣か弓矢なので動きも全然違ってきますね。また、人間、エルフ、ドワーフといった種族も強さに影響します。

嬉しいことに、スキルを振りなおすためのアイテムが安価で売られています。なので、いろいろなスキル構成を気軽に試していけるのですよね。さすがに職業は変更できないのですが、ある程度気楽にやり直せるのはありがたいところ。

Dragon Age Inquisition スキルベースのバトルシステム

あとキャラクターのカスタマイズ要素として装備品の作成があります。装備品は買ったり拾ったりが基本ですが、設計図があれば素材から作成できるようになります。素材次第で性能が変わるため、作成したものの方が強力になりやすく、段々とこっちがメインになってきますね。装備はもちろん見た目にも影響します。同じ鎧でも素材によって色や柄が変わったりするため、こだわってみるのも一興。

キャラクターのレベルがぽんぽん上がるゲームではないため、装備品の重要度は高めです。なので、いい感じの武器や設計図を拾ったときはウキウキできます。これも探索の楽しさに追い風をかけているのでしょう。

Dragon Age Inquisition 装備品のカスタマイズ

バトルはスキルベースで進行します。通常攻撃と各ボタンに割り振ったスキルで戦う感じですね。基本はリアルタイムで進行するため、ややアクションよりのバトルになっています。アクションっぽさは使う職業によってかなり変わりますね。ボクは主人公を両手武器の戦士にしたこともあってアクション性は低めでした。前戦ででかい剣をブンブンしてるだけですし。

操作キャラクターは上下キーを押すだけでいつでも即座に変更できます。なので、気分によって魔道士を動かしてみたり、ローグでステルスプレイをしてみたりといろいろ遊べます。これもかなりありがたいポイントですね。

また、プレイヤーが操作しないキャラクターたちに指示を出すこともできます。一旦時間を止めて動きを指定できるので、このへんはややRTSっぽい感じかも。といっても全体的に難易度は高くないため、この指示モードが必要になるのは一部のボスやドラゴンくらい。難易度は変更できるため、高難易度でこそ活躍するものなのかも。

Dragon Age Inquisition メンバーに指示を出せるRTS的なバトルモード

ボクは探索が楽しくてあっちこっちのクエストを進めまくったおかげでレベルがぐんぐん上がり、バトルにはあまり苦戦しませんでした。なので割とゴリ押しでバトルを進めてしまったのですが、プレイスタイルで難易度の印象はかなり変わるかもしれません。個人的にはサクッと勝てるくらいのバトルが探索を止めなくていいので好印象ですね。歯応えを求める人には高難易度があるわけですし。

探索の楽しさこそオープンワールドRPGの真髄

Dragon Age Inquisition ヴィンサマー戦

そんなわけで『Dragon Age: Inquisition』はとにかく探索が楽しいゲームでした。ストーリーのために練り込まれた世界設定も没入感を後押ししており、バトルの難易度や装備を入手できる喜びなども探索の価値を高める要因になっているといえるでしょう。要するに、世界の探索をコアにしたオープンワールドとして至極真っ当な方向で完成度を磨いてきたタイトルといえるのではないでしょうか。

個人的には、時間を忘れて探索に没頭していた本作なので、時間が許すのであれば多くのプレイヤーにオススメしたいところです。しかし、このタイプのオープンワールドゲームはクリアを急ぎ、消化しようと考えた時点ですべてがお使いの時間稼ぎにしかみえなくなってしまう一面を持っています。ボクも過去にそういった気持ちで挑んでしまったがために楽しめなかったタイトルが何本かあります。なので、本作に挑む際はプレイ期間を長めに考えておくことをオススメします。

気が付いたら時間が経っている、というゲームはそれだけ没頭させてくれるということです。没頭できるかどうかはプレイヤーの姿勢に大きく左右されるので、誰がやっても没頭できるかどうかはムズかしいところかもしれません。そこにおいて『Dragon Age: Inquisition』は没頭しようと望むプレイヤーをガッチリ引き入れる深さを備えています。望めば必ず与えられるでしょう。それではよい冒険を。

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