【VA-11 Hall-A】レビュー バーテンダーから見た日常系サイバーパンクなレトロ風アドベンチャー

VA-11 Hall-A レビュー

『VA-11 Hall-A』の読み方は「ヴァルハラ」です。「サイバーパンクバーテンダーアクション」と名打たれていますが、アクションではなくアドベンチャーゲームです。それもPC-98時代を彷彿とさせるようなレトロスタイルなもの。サイバーパンクなSF世界を舞台にバーテンダーとなって客の注文に応えながら話し相手をしていくという、一風変わったゲームとなっております。

サイバーパンクSFという設定ですからストーリーに何か大きな事件や戦いを期待する人もいるかもしれませんが、そういうことはなく、ただひたすら客たちの身の上話を聞くだけです。「何それおもしろいの?」と思われるかもしれませんが、どっこいこれがおもしろい。

サイバーパンクバーテンダーはコタツ派

ゲームの流れは、まず自宅でダラダラしてからバーへ出勤。バーでバーテンダーとして働いて、終わったら給料を受け取って帰宅。この繰り返しで207X年の12月後半を過ごすことになります。

VA-11 Hall-A サイバーパンクバーテンダーはコタツ派

自宅ではコタツでスマホ(タブレットかも)片手にネットサーフィンに明け暮れます。ネットメディアや掲示板に流れる情報からグリッチシティと世界の様子が垣間見えるようになっています。当たり前のようにコタツでぬくぬくしていますが、舞台は日本ではありません。ボクらと何ら変わりない生活スタイルに見えますが、流れてくるニュースにはサイバーパンクなテイストが混じるので「ああやっぱサイバーパンクだわ」ってなれます。

出勤前に買い物をすることもできます。主人公の欲しがっているモノを買っておけば仕事に集中できるようになり、買わないと仕事に集中できなくなってしまいます。具体的にはカクテルを作っている最中に雑念で客の注文を忘れてしまうようになるため、間違えやすくなります。注文を間違えすぎると給料が下がりますし、所持金がないと家賃が払えずにバッドエンド一直線。物欲に素直すぎるのも考え物です。

VA-11 Hall-A お買い物

カクテルは"いい感じ"でお願いします

バーに出勤したら、まずはジュークボックスを設定します。特にストーリーには影響しないので好きな曲を選んでOK。ジュークボックスから流れる音楽がそのままゲームのBGMになります。なので、話の展開と合わない音楽になることもしばしば。とはいえ、曲送りやランダム再生などもできるため、いろんなタイプの曲を放り込んでおけばそれっぽく演出できます。

客がやってきたら注文に応えなければなりません。ハッキリと商品名で注文してくれる人はいいのですが「甘いヤツ」とか「ビターなヤツ」とか「何か酔い覚ましを」など、ふわっとした注文も多いので、バーテンダーとしての"忖度"が問われます。注文どおりのカクテルを出してもいいのですが、違ったものを出すことで聞ける話が変わってくることもあるのがおもしろいところ。要するに、カクテルが選択肢の役割を果たしているわけです。ただし、あまり好き勝手やっていると給料にひびくので1周目は素直に客の要求に従うのがいいでしょう。強くて(?)ニューゲームもあるのでいろいろやるなら2周目以降がオススメ。

VA-11 Hall-A カクテル忖度ゲーム

カクテル作りはレシピどおりの材料を指定するだけ。作成時にレシピを確認できるので覚える必要はありません。長くプレイしていると覚えてしまうものもありますが……ビールとか。モノによってはアルコールの量を調整できるので、ノンアルコールとしてお出ししたり、思い切り強くしてべろんべろんに酔っぱらわせたり、なんてことも。

Va11 Hall-A 週刊ゲーム日記

で、ここからが本題。バーテンダーのお仕事はカクテルを振る舞うだけではありません。客の話に耳を傾け、話し相手になってあげるのも大事なお仕事なのです。客とバーテンダーとの会話、これこそが『VA-11 Hall-A』の本体であり真骨頂。

日常系サイバーパンク

『VA-11 Hall-A』にやってくる客はちょっと変わった人が多いです。紳士的なサイボーグの殺し屋、アンドロイドの売れっ子アイドル、24時間ストリーミングを続ける配信中毒者、それからもちろん私立探偵なんかも。まさにサイバーでパンクな客層ですね。

VA-11 Hall-A 日常系サイバーパンク

高性能な義体が実現していたり、人間と同じかそれ以上に感情の豊かなアンドロイドがいたり、かと思えば脳みそだけになっている人がいたり、しまいにゃゴーストが囁いてきたり。こうなるとサイバーパンクものではお馴染みの「人間論」がはじまりそうなものですが、そうはならないのが本作の本作たる所以。それどころか、悪の組織と戦うこともなければ巨大な陰謀に巻き込まれたりもしません。大きな事件が起きないわけではありませんが、主人公は当事者ではなく部外者。

では何が描かれているのか?といえば、日常です。サイバーパンクな人々によるサイバーパンク世界の日常。そこでは家庭の問題に悩まされていたり、家族を失った過去に囚われていたり、職場の環境に精神が苛まれていたり、ボクらと大差ない話が聞こえてきます。ここにあるのは「人間論」ではなく「人生論」、もしくは「人生哲学」といったところでしょうか。理不尽に耐える人々が気分を紛らわせるためにカクテルを求めでバーにやってくる…、なんとも身につまされる話であります。

Va11 Hall-A 身の上話を聞くのがお仕事

だからこそ、彼らに親近感がわくし、『VA-11 Hall-A』に居心地の良さを感じてしまうのでしょう。ダラダラとプレイを続けてしまうため、ゲーム開始時に言われるように飲み物とおつまみ必須。多少は酔ってた方がいいんじゃないかなと思えるネタも多数ありますしね。…あれ?バーテンダーって飲んでていいんでしたっけ?

一日を変え、一生を変えるゲームを

そんなわけで『VA-11 Hall-A』はサイバーパンク世界の日常を描きつつ、それでもやっぱりサイバーパンクであるという、ちょっと珍しいゲームとなっております。見える景色は自宅のコタツとバーカウンターくらいのものですから、サイバーパンクという言葉から連想するイメージとは違うものかもしれません。

VA-11 Hall-A サイバーパンクな世界

けれども、個性的な客たちの話やネットに流れるニュースから作り上げられた世界は間違いなくサイバーパンク。日常と非日常との絶妙なバランスが生み出す居心地の良さは類を見ないものです。体内にナノマシンを埋め込まれて常時監視される世界に行ってみたいかと言われたらなんとも言い難いのですが、『VA-11 Hall-A』に行ってみたいかと言われたら迷うことなくイエスと答えるでしょう。飲んでみたいですよね、一日を変え、一生を変えるカクテル。

VA-11 Hall-A (ヴァルハラ)
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