【To the Moon】最期の願いをかなえるために記憶を辿るADV

RPGツクール製の海外インディーズゲーム『To the Moon』は美しいグラフィックと音楽で印象的なストーリーを見せてくれました。

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名作 RPGツクール アドベンチャー 日本語版 | To the Moon

『To the Moon』は海外では2011年にリリースされており、すでに高い評価を得ているとのこと。今回、日本語化がされたということで早速やってみました。クリアまでの時間は3時間半程度。フルスクリーンで起動するけど、Alt+EnterでWindow表示になります。

本作はRPGツクールで作成されているものの、育成や戦闘などは一切なく、アドベンチャーゲームといっていいでしょう。ストーリーを追いかけるのがメインになるけれど、これといって分岐するわけでもないです。RPGっぽい外見をしているが、ノベルゲームをやっているような感じ。分岐しないんだから、もはやノベルゲームでもなくノベル?

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細かく描きこまれたドット絵はSFC時代のスクウェアを髣髴とさせてくれます。そしてピアノを中心とした美しいBGMが非常に印象的。正直なところ、ストーリーがどうあれ、これだけの見た目と音楽があれば、なんとなく雰囲気でコロッと泣かされてしまいそうでもあります。

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これだけゲームゲームした見た目だけど、やってみるとゲームらしさはほとんどありません。なので、ガッカリする人もいるかもしれない。これを「ゲームであるか?」と問われたら、首を傾げて黙り込んでしまいそうでもあります。だからといって、つまらないというわけではないです。本作の魅力はストーリーとその見せ方にあるのです。

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途中、簡単なパズルをやったり、アクション的な要素も少しあるけど、考えて解くタイプのゲームでもなければ腕を問うタイプのゲームでもありません。あくまでストーリーを楽しむための作品です。パズルは苦手なので「早く先を見させろよ!」と思いつつ解いてましたが、そんなに難しいものではないはずなので、ストレスになることはありませんでしたね。

記憶の中で人生を辿るストーリー

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プレイヤーが操作する主人公はエヴァとニールの2人組み。2人は特殊な装置を使って記憶の中へ入り、末期患者の最期の願いをかなえるのがお仕事。あくまでも記憶の中での話であり、願いをかなえるためにやることは、ほんの少しの後押し。ほんの少しの後押しが人生の流れを大きく変え、記憶の中で願いをかなえられるというわけ。

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依頼主の老人の願いは「月へ行くこと」。しかし、なぜ月へ行きたいのかは本人にもわからないという。理由がわからなければ後押しすることもできない。2人は記憶の奥深くへと潜っていくことになります。

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老人の中で最近の記憶から、思い出の品を通じて少しずつ過去へとさかのぼっていく。記憶の中の世界で数々の思い出に触れ、老人の歩んだ人生を辿っていく。それぞれの思い出の中で、特定のオブジェクトに触れたり、近くを歩いたりすることで「メモリーリンク」を集め、さらに別の記憶へとめぐっていくのが流れになっています。

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記憶を辿ってどんどん若い時代へ。記憶に触れることは人生に触れることでもあります。他人の人生を俯瞰している、という独特の感覚がゲームを通して存在しているのです。

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登場人物やアイテムが繋がっていく流れがうまくできており、先が見たくて続けてしまう吸引力はかなりのもの。RPGっぽい体裁のおかげで、歩き回っている間に先の展開を予想しようとしてしまう。先を読むから先が気になる。探索をする時間が、いろいろとイメージを膨らませるための「余白」として機能しているのかもしれない。

軽いジョークが雰囲気の重さを中和する

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死を前にした老人を中心に据えた物語であるため、どうしても暗い印象はぬぐえない。しかし、2人の主人公がそれを見事に中和してくれています。真面目に仕事をこなそうとするエヴァと、皮肉と軽口を叩きまくるニール。腹を抱えて笑うような場面はないが、暗めの空気をうまく打ち消してくれています

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ゲームを進める中で、エヴァとニール、2人の主人公をすっかり気に入ってしまいました。彼らを好きになれるかどうかは本作を楽しめるかどうかのポイントになるんじゃないかな。ストーリーの先も気になるけど、この2人の言動も同じくらい気になるようになっていきました。

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他にも細かいネタやジョークをはさんでくるのも、暗いイメージを中和するのにうまく機能しているように思えます。日本語への翻訳もうまくいっているのではなかろうか。

結末は読めても過程は楽しめる

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「月へ行きたい」という願いが目的として明示されているので、結末は意外なものでもなんでもないかもしれない。しかし、本作で重要なのは結末ではなく「過程」。どうやって結末へ行き着くのか、その先の展開が気になるようにうまく仕向けられていたと思います。

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「月へ行きたい」理由を探し、そのためにどうすべきなのか。本作のクライマックスは「過程」である「記憶」を変えるための選択です。願いをかなえることが本当に幸せに繋がるのか。もうクライマックスのあたりになるころには、先の展開が気になるというより、先の展開は読めるので、予想があっているかどうかを確認するような楽しみ方をしていた気も。

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きれいなグラフィックとBGMで良い雰囲気を作り上げ、涙腺に攻撃を仕掛けてくる本作だが、泣ける話だったのかどうかと言われると、ちょっと違うんじゃないかと思います。すごく切ない物語でもあるから、胸をキュッと締め上げられて泣いちゃったとしても、それは間違ってはいないと思うけど。

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昔、何かのドキュメンタリー番組で、ある医者が末期患者との接し方について話していました。医者の仕事は病気の治療だけでなく、死に対する不安を和らげてあげることも含まれるのだと。記憶を変えても現実は変わらない。でも、思い残すことなく笑って逝けるようにしてあげられることは、意味を持つことなのかもしれない。なんだかそんなことを考えさせられてしまった。

ただ1つだけ、月へ行くという目的にスペースシャトルはないよ… 老人の脳内で作り上げた話だから、老人が知らなかっただけと言えばそうなのかもしれないけど、そこはもうちょっと気を使ってほしかったかも。

『To the Moon』は以下のサイトで販売されている。980円で3時間半くらいなので、短編小説1冊分くらいで考えるといいのかな?動画を見て気になった人はぜひ1度プレイしてみてほしい。

名作 RPGツクール アドベンチャー 日本語版 | To the Moon

【To the Moon】ネタバレありのストーリー考察 | シバ山ブログ

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