【アサシンクリード オデッセイ】レビュー 圧倒的なボリュームの古代ギリシアで自由な傭兵生活を謳歌せよ

『アサシンクリード オデッセイ』をクリアしたのでレビュー。前作『オリジンズ』から引き続きオープンワールドのRPGとなった本作、今回は古代ギリシアに舞台を移して神話の時代を体験することができます。古代ギリシアといっても長い歴史がありますが『オデッセイ』は紀元前431年ごろ、ちょうどペロポネソス戦争でスパルタとアテナイが戦っていた時代です。この戦乱の時代にプレイヤーは傭兵として戦いに身を投じることになります。戦うべき相手はスパルタでもアテナイでもあるのですが、真なる敵はその裏で暗躍する組織。こうして歴史の裏側が描かれるストーリーはいかにも『アサシンクリード』らしいですね。

ボリュームは膨大で、すべての敵を歴史から消し去って秘宝に辿り着くまでに実に90時間ほど。もちろん真っ直ぐ進めたわけではなく、観光やロマンスなどさんざん自由を謳歌した結果ではあるのですが、圧倒的な広さのフィールドと詰め込まれた密度の前に寄り道せずにいられるわけもなく。だって古代ギリシアだぜ? にしても、さすがに膨大すぎるのでは?と思わなくもないのですが、なんだかんだで最後まで楽しめました。長く遊べるオープンワールドRPGを欲しているならオススメしたい1本であります。

たった1つの過去が作り出す逸材な設定

今回の主人公は最初に性別が選択できます。男性ならアレクシオス、女性ならカサンドラとなります。性別の違いによるストーリーに変化はないようで、配役が逆転するだけです。男性主人公の場合は女性が妹となり、女性主人公なら男性が弟になります。ロマンス要素もあるのですが、古代ギリシアは異性でも同姓でもあまり関係ないらしく、大きな変化はありません。やったぜ自由。そりゃもちろん、サブクエストで知らないおっさんにいきなりアピールされた場合の印象は男性か女性かで大きく異なるでしょうが…。

性別はお好みで

実はこの主人公の設定が逸材なんですよ。主人公はスパルタ人ですが、幼少時に宣託によって生贄にされそうになった妹(弟)を救おうとしてしまった結果、罰として父親から崖から落とされて殺されかけてしまった…、という設定になっています。スパルタ人として育てられたけどスパルタからは追放されたので、スパルタとアテナイのどちら側でもないわけですね。

また、宣託のせいで殺されかけた上に家族がバラバラになり、人生もめちゃくちゃになってしまったために、主人公の信仰心は低くなっています。なんでもかんでも神々のせいにする時代において、むしろリアリストな立場の主人公は異質な存在ともいえます。が、21世紀を生きるプレイヤーにとってはもっとも入りやすい視点になっているんですよね。

ともあれ、この出来事が原点なので、主人公の行動の理由は復讐心ということになります。復讐は単純かつ強い動機ですよね。だからこそ、憎い相手を追い詰めたときに、殺すか生かすかの選択肢が重たく響くことに繋がっています。ああ、なんて見事な設定なのでしょうか。ちなみに、今回は落下ダメージで死ぬことはないんですけれども、これも崖から落ちて死ななかった設定と繋がります。おそらく、当時から秘宝「レオニダスの槍」を所持していたことが理由なのでしょうが…、つくづくよくできた設定です。

憎き相手を生かすか殺すか…迷わしい選択肢だ

古代ギリシアに着いたらやることは1つ

さて、幼少時にスパルタを追われた主人公は田舎の島で傭兵として暮らしています。いろいろあって船乗りと出会い、島を出ることになるのですが、そこまでだけですでに数時間。船に乗って島を出た瞬間、地図を開けば「なんて広さだ…」と圧倒されることになるでしょう。いかに広大なフィールドで膨大なボリュームであるかがわかっていだけるのではないかと。

田舎からのスタートなので、大きな街へ着いた時は感動もひとしお。特に最大の都市であるアテナイについたときは「なんてデカさだ…」とまたしても圧倒されることになります。中心には巨大なアテナ象とパルテノン神殿…、首が痛くなるまで見上げるばかりですよ。

何もかもがデカいアテナイの街

こうなると嬉しいのがフォトモードの存在。行く先々でパシャパシャと写真を撮っていけます。見所が多い古代ギリシアですからシャッターチャンスも転がりまくっています。そうなるともうただの観光客。でも観光って楽しいですよね。だから仕方ないんです。

手軽なフィルタがありがたいフォトモード

フォトモードはただスクリーンショットを撮るのとは違い、自由に角度をつけて構図をキメられるし、フィルタを使ってインスタ栄えも狙えます。しかも撮影した写真はマップ上で公開され、他のプレイヤーと共有することもできます。凝った写真を撮るためにあれこれ工夫するのも楽しいですし、他の人が撮った写真を見るのも楽しい。ただちょっと残念なのはアップロード中には次の写真が撮れないことでしょうか。アップロードに失敗することもままあるのでもう少しサーバーにがんばっていただきたいところです。

いいね!を貰うには犬の写真が強い

探索モードは探索するためのモードです

観光もほどほどにして本来の目的に戻りましょう。ええとなんでしたっけ。そう、ボクは傭兵! 目的は復讐でした。おのれ。

ゲームの進行はオーソドックスなクエスト型。NPCや掲示板などからさまざまな依頼を受けて達成を目指していくことになります。本作のクエストにおける特徴は、選択肢によって物語が大きく変化していくところにあります。会話中の選択肢によって展開が変わることはもちろん、後々になって別のところに影響が出るなんてことも。

たとえば、病気の家族が感染の拡大を防ぐために殺されようとした場面に出くわして生かすか殺すかの選択を迫られたりします。そりゃあ助けたいですけれども、助けてしまうと感染が拡大してしまって…、などといった具合。明確な正解と不正解がない場合も多く、どの選択肢も非常に迷わしくなっています。迷わせる選択肢は良い選択肢ですよね。

迷う必要のない選択肢もあります

クエストの内容は、特定のアイテムを取ってこいとか憎いアイツをやっつけてとか、これまたオーソドックスなもの。この手のクエストはどうしても”お使い感”が拭えないのですが、本作に搭載されている「探索モード」のおかげでいくらか軽減されている印象です。探索モードを設定しておくとクエストの目的地が示されず、どこどこの北西あたり、くらいのヒントに留まるため、自力で探すことになります。こうすることで指定の位置まで行くだけ、ということがなくなり、文字通り探索をすることになるからです。

といっても、何かの施設がある場所はマップ上で「?」マークが表示されるし、目的地が近づけば鷲のイカロスで特定できるので迷うことはありません。それでも面倒というなら「ガイド付きモード」に設定することで目的地が最初から表示された状態で進めることができます。とはいえ、せっかくなので探索モードで進めるのがオススメですね。間違った場所へ来てしまっても何かしらのイベントはありますし、何もなさそうな場所にも観光スポットがあったりしますからね。

広さも密度も十二分

どこでも登れるしどこからでも飛び降りOK

何をするにもオープンワールドですから移動が肝心です。となると、フィールドに存在する建物や崖などはだいたいどこでも登れるようになっているのが嬉しいところ。また、前述のように落下ダメージでは死なないので(後半になれば落下でダメージさえ受けなくなるので)、上ったり下りたりはとても自由。おかげでどんなルートでも突き進むことができます。

握力ゲージ的なものもないので無料で登り放題!

急ぎたいときは口笛を吹くだけで馬のフォボスが即座に駆けつけてくれます。平地だけでなく急斜面でも走ってくれるので、かなりの機動力。なので、移動にストレスはありません。加えて言うと、施設やイベントの密度も高いため、退屈することもないですね。

自由に移動できるので最初からどこへでも行こうと思えば行けるのですが、実際には厳しいです。というのも、エリアごとに出現する敵のレベルが決まっているため、あまりにレベル差がある地域ではまともに行動できないからです。レベルは1つ違うくらいならまだなんとかなりますが、2つ違えばかなり厳しくなり、3つ違えば地獄の様相。終盤になれば装備やアビリティをフル活用してレベル差を跳ね返すこともできなくはないのですが…、そんな無理をしなくても適性レベルの地域でやることはいくらでもありますからね。

今回は船もあります。移動だけでなく、『ブラックフラッグ』のように海上での戦いもあるので船を強化していくシステムもあり。とはいえ、大砲のない時代ですから飛び道具は弓とジャベリン。あとは船で直接体当たりです。敵の船の耐久値を削ったら、そのまま攻撃を加えて沈めてもよし、乗り込んで大立ち回りしてもよし。全体的に『ブラックフラッグ』での海賊時代に近い印象ですが、船のサイズが小さいためか、小回りが利いてスピーディになった印象もありますね。

海賊行為もできますが海賊ではありません、念のため

歴史上の人物と一緒に憎いアイツをやっつけろ

メインクエストの目的は、バラバラになってしまった家族を捜索しつつ、その原因であるコスモスの門徒の始末、それから秘宝の探索ですね。これは現代編の主人公レイラの目的でもあります。

コスモスの門徒は序盤の終わりあたりに追加されるシステムで、ギリシアの各地に潜む悪の組織の幹部たちを探して処分していくことになります。一覧に書かれた仮面の人物たちの素性を暴露して消していく…、この流れはまさに暗殺活動といったところ。今回の主人公はアサシンではなく傭兵なのですけれども、これ以上なく暗殺者っぽい立ち回りをしている印象ですね。

ここから1人ずつ消していくのが実に暗殺っぽい

シリーズの特色でもある歴史モノとしても側面もあり、歴史上の人物と行動を共にする展開もあります。かつて世界史で見たことあるけど名前が覚えにくくて大変だった人たちがわんさか登場しますからね。ヘロドトスと歴史の舞台を訪ねたり、ソクラテスと一緒にアテナイで演説したり、嬉しいイベントがいっぱいです。でもソクラテスと友達になるのはちょっと無理かな…って思わなくもない。だってアイツいちいち面倒くさいんだもん…。決して悪いヤツじゃないのはわかりますけれども。

ソクラテスさん、哲学と日常会話は分けてみませんか?

この3つの物語は密接に繋がりながらも3つの結末を迎えることになります。なかなかに大きなサプライズもあるため、長い長い旅路ではありますが、できれば最後まで見届けていただきたい次第。とはいえ、この長い旅路は本当に長い。メインクエストだけを追うとレベル的に厳しくなるため、経験値目的でサブクエストを挟まざるをえません。おかげでどんどん長くなっていきます。あまりにもボリュームがあるため、一気に駆け抜けようとするよりも腰を据えてじっくりプレイするのがいいかもしれません。

暗殺だけじゃない スパルタ人ですから

This is SPARTA!!

今回の主人公はアサシンではなく傭兵なんですよね。なので、暗殺以外のスキルにも長けています。別にコソコソ隠れたりせず正面切って戦うことだってできるんです。だってスパルタ人だもの。もちろんステルスからの暗殺だっていつもどおり可能です。しかも最初から秘宝を所持しているわけですからね。鬼に金棒ならぬスパルタ人に秘宝。そりゃ強い。

レベルアップで習得できるアビリティはツリー型になっており、ステルスや暗殺を得意とするアサシン、直接戦闘に秀でたウォリアー、弓矢による遠距離攻撃が主体のハンターの3つに分かれています。どのアビリティを取得するかはプレイヤーの自由なので、特化するもよし、バランスよく振り分けるもよし。リセットして習得し直すのもわずかな所持金を消費するだけなので気軽にできます。なので、いろいろ試せるのがいいですね。強い弓が手に入ったのでちょっとハンターのアビリティを試してみるかとか、たまには動物を手懐けて遊んでみるかとか。

アサシン、ウォリアー、ハンターの3本柱からなるアビリティ

主な戦いはフィールド中に点在する野営地や砦などに侵入したときに起こります。まずはお供の鷲・イカロスを使って上空から砦の構造や敵の配置を確認します。これで物資や敵をマーキングできるので非常に便利。古代ギリシアにUAVより便利な偵察機を持ち込んだようなものですから反則みたいなものです。ともあれ、これで侵入経路を考えて外周にいる敵から排除しつつ、物資に火をつけたり獣を放ったりとやりたい放題。たとえ見つかってしまったとしても正面からの戦いもできますからステルスの緊張感はあんまりないですね。気楽に攻め込めます。砦を守ってる方としちゃたまったものではないでしょうけれども。

砦を上空から見下ろして作戦を考えているときが1番楽しい

よろしい、ならば戦争だ

砦や野営地を襲うのはクエストの進行だけでなく、その地域の国力を低下させる目的もあります。この時代のギリシアは都市国家(ポリス)で成り立っているので、地域ごとに指導者がいて、アテナイとスパルタに二分して戦争をしている最中ですから、どの地域もどちらかの勢力に属しているのです。プレイヤーはこの勢力図を塗り替えることができるようになっています。そう、戦争を起こせるのです。

古代ギリシアに来たら1度はやっておきたい征服戦争

砦や野営地にいる兵隊を倒したり物資を燃やしたりすることで国力はどんどん減っていき、一定値まで下がると征服戦争が可能となります。征服戦争は侵攻側と防衛側のどちらにつくこともできますが、侵攻側の方がムズかしい分、報酬もよいものになっています。戦争がはじまればアテナイとスパルタの2陣営に分かれて大規模な戦闘となります。めちゃくちゃ大勢でワーワーしている状況に放り込まれるのですが、プレイヤーが相手にするのは2,3人ずつなので意外と普通。勝利するためにはザコばかりでなく、指揮官クラスを見つけて叩きましょう。

戦場でもシャッターチャンスを逃すな!

さて、戦争に勝利すれば勢力が変わり、アテナイ側だった地域がスパルタの支配下になったりします。が、だから何が変わるということは特にない模様。勝っても報酬が貰えるだけなので、やや肩透かしを食らったような気持ちになるかもしれません。あくまで報酬のために戦う、というのは傭兵としちゃ真っ当なのでしょうけれども。

とはいえ、いたずらに国力を削っては戦争を起こし、新たな支配者をまたしても貶めて戦争を起こす…、というマッチポンプもできてしまうため、ある意味ではコスモスの門徒よりも外道な気がしないでもない。しかも戦闘力だけは秘宝の力もあって異様に高いわけですからタチが悪い。いやもちろん、戦争屋になるかどうかはプレイヤー次第なのですけれどもね。実際、各地の砦を落として国力を削る手間を鑑みるとあんまり戦争しようとは思わなかったりします。時代設定に合致したシステムなのでもうちょっと何かあれば…。

すっげえ長いよ!

すっごい広いよ!

そんなわけで『アサシンクリード オデッセイ』は広大なフィールドで自由な移動、多くのクエストで自由な選択肢、幾多の戦場で自由な戦い方のできる、自由度の高いオープンワールドRPGとなっています。『アサシンクリード』のアクションで遊べるオープンワールドRPGで舞台が古代ギリシア、というだけでティンときた人は間違いなく楽しめるんじゃないかと思います。ただ1つ、注意したいのがボリュームの凄まじさ。あまりにもやることが多く、時間も吸われてしまうのでプレイ時間をガッツリ確保した上で飛び込んでいただれけば幸い。あと読み込み時間が長めなので、できればSSD環境でのプレイがよいでしょう。それでは、よい旅を。

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