『Gのレコンギスタ』全話視聴したのでストーリーを振り返ってみる あと感想とか

富野 由悠季監督の送るガンダムシリーズの新作『Gのレコンギスタ』の最終回まで視聴しました。怒涛の展開に圧倒されっぱなしだったのですが、本作がどういう物語であったのか、今一度振り返ってみたいと思います。物語の軸がわかれば、意外とスッキリ飲み込めるのではないかと。

初回の放映前、バレーボールの試合が長引いてなかなかはじまらずにヤキモキしていたのがついこの間のことのように思い出されますが、最終回も終わってしまいました。最終決戦からエピローグまで、息継ぎなしの怒涛の展開に圧倒されましたね。余りの展開の早さに頭が追い付かず「結局『Gレコ』ってどういう話なんだっけ」となってしまったので、ここで一度落ち着いて『Gレコ』のストーリーを振り返ってみます。

先に、富野監督が語ったラストシーンの意味についてのコメントを読んでおくと、いろいろとスッキリできるかも。

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ガンダムを使って脱ガンダムをするというテーマを自分の中に据え置きながらも、それができたのは“戦争の起源”を考えたからです。戦場で生き死にをしなければならなくなった兵士やパイロットたちは、お互いに憎悪はありません。戦争が起こり、そのような局面に直面せざるを得なかったから、戦ったにすぎないのです。

ですから、兵器という殺しの道具や戦場そのものがなくなってしまえば、一人のパイロットも普通の人になります。それは古今東西の戦場の真理です。

ですから、なぜ戦争が起こるのかといえば、その背景に政治や経済の問題があるからなのです。政治家たちの考え方次第ともいえるのです。そして今回の戦争は、大規模なテロであったのかも知れないのです。このような考え方を知って欲しい、と、次の世代の少年少女たちに申し伝えたいのです。

初代「ガンダム」は第1話の時点で戦争の真っ只中でしたが、今回の『Gレコ』はそうではありません。第1話の時点ではまだ戦争の準備段階にあり、少しずつ小競り合いを続ける戦時ではあったものの、本格的な戦争に突入していくのはもっとずっと後になってからです。戦争がはじまるまでの過程をメインに据えて描かれているように思えます。

終盤になって大きな戦争へ突入しそうになりますが、戦争の起源となったもの、火種のもとになったものが一掃されていくことで戦争は終結し、エピローグを迎えます。『Gレコ』は、戦争がはじまるまでの過程を描くことで、戦争の起源とは何かを伝えようとしたのではないでしょうか。

では、物語を時系列で追ってみましょう。

最初から最後までのあらすじ

物語の序盤は、地球圏での争いです。リギルド・センチュリーにおけるエネルギー源であるフォトンバッテリーがその争いの種でした。フォトンバッテリーの受け渡しは月からの使者よりキャピタルタワーでスコード教の法王によって行われていたのですが、これをエネルギーの独占として異議を唱えるアメリアが戦力を増強し、侵攻の準備をしていると察知したキャピタルもアーミィを設立して迎え撃つ準備を進める、という状況から物語ははじまります。

両陣営とも、軍備を増強する上で利用されたのがヘルメスのバラの設計図、という宇宙世紀時代の遺産です。かつて人類を危機に追いやった技術であるため、タブー扱いされていましたが、この技術を使った兵器を作り上げることで飛躍的に戦力を拡張し、ついには宇宙で戦える戦艦やMSを手にするまでになっていきました。

まずはアメリアがキャピタルタワーの占拠に乗り出しますが、その最上部であるザンクトポルトはスコード教の聖域であるため、本格的な戦闘は発生しません。ここで両陣営ともに、フォトンバッテリーを受け取る法王のみが知っていた月のトワサンガの民と出会うことになります。

アメリア、キャピタルとアーミィ、トワサンガの間で会談が行われるのですが、トワサンガはタブーを犯してここまできた地球人を牽制するとともに、ヘルメスのバラの設計図を地球にもたらした者を調査し、引き渡すことを要求。会談に代表として臨んだドレットは地球へ帰還する「レコンギスタ作戦」を目標に掲げてはいるので、地球側が自分たちと同等の技術を得てしまうと都合が悪いわけですね。

続いてメガファウナをはじめとする地球組は、フォトンバッテリーの出所である月の裏側にあるトワサンガを目指します。ここでベルリとアイーダの出自が明らかになり、レコンギスタに反対するレジスタンスと出会うことに。また、フォトンバッテリーを輸送するヘルメス財団のカシーバ・ミコシとクレッセントシップも登場。フォトンバッテリーの供給元であるヘルメス財団の機嫌を損ねてはエネルギー供給を断たれてしまいかねないため、ここでも本格的な戦闘は発生せず。

フォトンバッテリーの出所を追って、メガファウナはクレッセントシップに乗り込み、ビーナスグロゥブへ。ヘルメス財団の党首は温厚で紳士的な人物だったが、ムタチオンという突然変異により痩せ細った身体をボディスーツで補強していることを目の当たりに。こうした現象に絶望した者たちがジット団を組織し、地球への帰還を目指すために行動を起こしていたのです。

ここで重要なのは、フォトンバッテリー=エネルギーの供給元であったヘルメス財団は、たしかにエネルギーの製造を一手に担っており、独占しているようにもみえる状況ですが、エネルギーは無償で提供されており、これを受け取った地球の法王も独占することなく各国に分け与えていたのです。エネルギー供給の流れは1本しかありませんが、そのどこにも悪意は存在していなかったわけです。アメリアが戦争の理由にしていた「エネルギーの独占は悪」ということが事実ではなかったことが明らかになるのですね。

フォトンバッテリーの供給元であるヘルメス財団の真意を知ったメガファウナは地球圏へと戻ります。地球への帰還を目指すジット団も地球圏へ移動してくるわけですが、彼らの持ち込んだ強力なMSが各陣営に配備されることになります。メガファウナがビーナスグロゥブへ行っている間も、キャピタルタワーやカシーバ・ミコシを巡って緊迫した状況が続いていたようですが、ここは劇中でもセリフのみの描写になっていました。

地球と月における穏健派であるアメリアのグシオンとトワサンガのドレットの間で停戦協定が結ばれそうになるものの、バララの操るユグドラシルの介入によりどちらの艦隊も壊滅。両陣営の穏健派を失うことで、一気に戦時ムードが高まっていきます。というか、これを開戦の合図に、各陣営のタガがはずれ、嬉々として強力な兵器を振り回した戦争がはじまってしまうのです。

そう、ここまできてようやく本格的な戦争がはじまるのです。フォトンバッテリーの独占を理由に争うアメリアとキャピタルアーミィに地球への帰還を目指すジット団が混ざる乱戦になるわけですが、戦争を望んだ人たちが次々に倒れ、ジット団を降伏させることで戦いはあっという間に終結。戦争の元となった人々がことごとく死んだことで停戦となり、エピローグではアメリアの大統領も潰され、火種はすべて消化することになったのです。

戦争に起源を追う冒険の物語

こうして振り返ってみると『Gレコ』は戦争の起源を追う物語であるとわかります。最初はフォトンバッテリーというエネルギーの独占が理由でしたが、途中から月や金星の民が地球への帰還を理由としたものが加わります。戦争の起源は政治や経済の問題なのですが、だんだんと強力な兵器に踊らされて戦いを望む人々が出てきてしまうようでした。

戦いを起こす理由と戦うための兵器を与えられると、次々に人々は好戦的になっていきます。しかし、兵士やパイロットが戦争の起源というわけではありません。マスクやクリムはそれぞれのプライドやサクセスのために戦ってはいるものの、戦争だから戦っているだけであって、そのために戦争を起こそうとはしていなかったわけですしね。

最終局面では、アメリアもキャピタルも戦う理由はありません。ビーナスグロゥブでフォトンバッテリーの供給についての真実を知っている視聴者とメガファウナ組にとっては、本当に無益な戦いに映ります。ジット団の地球帰還を目的とする戦いについても、地球側との交渉なしにいきなり武力で解決しようとするのはテロ行為に他なりません。こちらは戦争の起源を見極めたベルリによって拘束されることになるわけです。

劇中で重要だったと思うシーンは、アイーダがクレッセントシップの艦長に自身の判断の誤りを気付かされるところ。「エネルギーの独占は悪」だと思い込んでいたのはアメリアでの教育によるものであって、自分で見て、自分で考えての判断ではないことに気付くシーンです。誰かに言われたから良いとか悪いとかではなく、自分で行動して自分で判断することが大事だということを教えてくれるシーンなのではないかと。

これがエピローグのベルリにも繋がっているように思えます。アメリアから月、そして金星まで行ってきたベルリは、異文化に触れて学ぶことに価値を見い出したのでしょう。彼はさらに見聞を広めるため、一人で旅立つことを選んだのです。立ってみて歩く、スタート切って走る、というわけです。最後に日本の光景をみたときの、自分の世界と地続きのような感覚が「大地に立つ」って余韻として心地よく残りましたね。

『Gレコ』は登場人物が多く、それぞれが思惑を持って行動し、国や勢力も一枚岩ではないため、なかなかややこしくみえてしまうのですが、戦争の起源を追う冒険の物語として考えると、意外なほどスッキリと消化できるのではないでしょうか。観ている最中に考える暇がない展開の早さもあって、1度観ただけではよくわからなかったところも、再度観れば理解が一気に深まったりするので、再放送があればぜひ観ておきましょう。

ガンダム Gのレコンギスタ(1)
KADOKAWA / 角川書店 (2014-12-26)