【NieR:Automata】レビュー モノトーンなアンドロイドによるオープンワールドなスタイリッシュアクション

『NieR:Automata』をクリアしたのでレビューなど。クリアというのは1周クリアのことではなく、いわゆる真エンド的なところまで到達してます、念のため。プレイ時間は35時間くらい。なかなかのボリュームでありました。

ちなみに、ボクは前作『NieR Replicant/Gestalt』も「ドラッグオンドラグーン」シリーズも未プレイ。なのにどうして今作をプレイしたのかというと、主人公「2B(トゥービー)」に一目惚れしたことと、体験版をやってみたら「この軽快でスタイリッシュなプレイ感、初めての気がしない…?」と思っていたら、案の定プラチナゲームズ製だったことが理由です。このビジュアルであのアクションなら行くしかない。で、大正解でした。

オープンワールドで巡る廃墟ツアー

『NieR:Automata』はオープンワールドなアクションRPGです。指示された目的地へ行けばイベントが発生してストーリーが進んでいくタイプで、ゲームの進行はとってもノーマル。メインのストーリー以外にもNPCから受けられるサブクエストも多数あり、いかにもなオープンワールドゲームとなっております。バトルのアクションは豊富ですが、探索用のアクションはあまりないので、プレイヤーの選択肢は寄り道をするのかしないのかの2択程度。真っ直ぐ進めばプレイ時間は大幅に短くなりそうですが、クエストの開始地点はマップにマークされているため、悔しいっ!でも寄り道しちゃうッ!ってなります。

NieR Automata 廃墟系オープンワールド

フィールドの広さは広すぎず狭すぎずといったところ。アクションゲームなのでプレイヤーキャラクターの機動力はめちゃ高いのですが、それでも走りまわるには狭く感じないほどです。森や砂漠といったエリアに分かれているものの、各エリア間はシームレスに繋がっています。いわゆるファストトラベルの解禁時期はやや遅め、かつクエストで同じ場所を何度も行き来することになるため、地理はバッチリ把握できることでしょう。とはいえ、ストーリーの進行でマップが変化したり敵の配置が変わったりしていくので、意外と退屈しません。

フィールドにはネットワークを使って他のプレイヤーが死んだ場所にその人の死体が残るシステムがあります。死体を回収すればアイテムを入手、修復すればしばらく一緒に戦ってくれるNPCとして行動を共にできるもので、ゆるい繋がりを感じられる系のオンライン機能となっています。彼らは人の形をしたドロップアイテムという認識でもいいのですが、強敵のいる場所やボスの部屋などには死体がゴロゴロしているので「あっ、ここは危ないのか」と気づけるのがポイント。「なんでこんな何もないところで屍累々なの?」という場合もありますが、そういう場合は後々そこで何かしらのイベントがあって「あー、なるほど」ってなります。ちなみに、本作は両スティック押し込みでいつでも自爆可能となっているので自爆した可能性もあるのですけれども。

あとは、とにかく廃墟。人類が地球にいない世界設定なので、どっちを向いても廃墟です。草木が生い茂るビル街(廃墟)や錆びついた遊具しかない遊園地(廃墟)、砂漠に呑まれたマンモス団地(廃墟)に水没した都市(廃墟)などなど。「廃墟いいよね…」って人なら大満足できそう。

スタイリッシュアンドロイドアクション

ジャンル表記はアクションRPGとなっていますが、実質ほぼアクションです。『ベヨネッタ』や『メタルギアライジング』などをやったことがある人なら「プラチナゲームズ製のアクション」というだけでピンとくるでしょう。レスポンスのよい軽快な動きで立ち回り、上手くなればなるほどスタイリッシュになっていくヤツですね。何をやっても大体カッコよく決まるので動かしているだけで気持ちがいい。そうそうこれこれって感じです。

本作のアクションの特徴として、まず近接と射撃による同時攻撃が可能なところ。剣や槍による近接攻撃の最中にも射撃ができてしまうのです。というのも、プレイヤーキャラクター本体が近接攻撃を、支援ポッドが射撃をそれぞれ担当しているため、装備の持ち替えやモードチェンジなしに同時攻撃ができるわけです。おかげでボタンをいっぱい使う操作系になっています。

具体的には、L2でロックオンしてR1で射撃しながら□で近接弱攻撃、△で強攻撃を繰り出していく。さらにはL1でポッドのスキル(長押しでチャージ可)、R2でダッシュ&回避も行うことになるので、ボタンというボタンを全部押してる感じになります。言葉で書くと非常に複雑で忙しそうですが、実際にやってみると案外フツーにやれます。同時にやれるといっても、必ずしも射撃と近接を同時にやる必要はないですし、やるとしても押しっぱなしでいいですしね。

もう1つ特徴的なアクションが回避。R2で発動する回避アクションは制限なく連続使用できて便利なのですが、敵の攻撃をギリギリまで引きつけることでジャスト回避となり、一瞬スローになる効果まであります。さらにそこで攻撃ボタンを押せば専用の強力な攻撃が繰り出せるシステムもあり、非常に高性能となっています。『ベヨネッタ』のウィッチタイムの簡易版みたいな感じですね。あそこまで強烈な性能をしているわけではありませんが、そのぶん攻略に必須というワケでもないので、雑に使っていけます。(少なくとも難易度ノーマルでは) ジャスト回避を無理に狙わなくとも、戦闘中ワチャワチャしてよくわかんなくなったらとりあえず回避連打!でなんとかなるし、ジャスト回避が発動したらやったー!とばかりにボタンを押すだけ。一見すると複雑そうな操作系ですが、やるべきことは実のところ非常にシンプルだったりします。

これらのアクションを駆使しての戦いは3Dのフィールドだけに留まりません。場面によっては2Dのサイドスクロールになったり、マルチスクロールのシューティングになったりと、変化に富んでいます。しかし、どの場面になっても同じ操作で違和感なく動かせてしまうのが絶妙なところ。うまいことできてます。

ただ、操作に関しては説明不足なところがあるのは否めません。チュートリアルを兼ねた序盤でもジャスト回避については教えてくれませんし、特定状況において〇ボタンで発動する専用攻撃とか支援ポッドのスキルがチャージ可能であることとか、説明する場面がないのですよね。ジャスト回避はやってりゃ気づきますけれども、後者の2点についてはかなり後半になるまで気づきませんでした。ボクの勘が悪いだけかもしれませんけど、下手すりゃクリアするまで気づかない人もいるのでは…。

プラチナゲームズ製のアクションといえば、難易度高めの印象があるかもしれませんが、本作の難易度は低めです。(少なくとも難易度ノーマルでは) 上記のように雑な回避連打でなんとかなっちゃうこともありますが、回復アイテムを大量に拾えるし、RPGなのでレベルや装備の強化もあるし、アクションの腕だけを問う作りにはなっていないためです。武器の種類はいろいろありますが、状況によって使い分ける必要性も薄く、好きなものを使って好きに暴れてりゃオッケーってな感じなので、かなりの緩さを感じます。難易度ノーマルでこれですし、イージーだとさらにオートでいろいろできちゃうので「アクションは苦手だけどストーリーは気になる…」って人も大丈夫なんじゃないでしょうか。歯応えを求める方はベリーハードが一撃即死モードとなっておりますのでそちらをどうぞ。

アンドロイドはプラグインで強くなる

キャラクターの強化・育成要素は、経験値によるレベリングと素材を使った武器アップグレード、それから攻撃力や防御力を任意に強化していくプラグインチップというシステムがあります。プラグインチップはメニューのUIがややわかりづらく、特殊なシステムのように思えますが、容量分のスロットにアビリティをセットしていく感じで、存外ノーマルなシステムです。同じチップを合成して強化し、セットアップを繰り返していくわけですが、面倒ならおまかせ設定でも問題ありません。もちろん自分のスタイルに合わせて自力でセットした方がよいのは言うまでもありませんが。

プラグインチップは単にステータスを上昇させるだけでなく、近接攻撃に衝撃波を追加したり、ドロップアイテムを吸い寄せたりとさまざまな効果も追加できます。ジャスト回避後に数秒間スローにできるウィッチタイムそのものな機能もアリ。また、HPバーやミニマップ表示などのゲームにおける基本システムも実はプラグインチップによるもので、外せば本当に消えてしまったりします。プレイヤーキャラクターがアンドロイドなので、機能を拡張しているという設定に沿っているわけですね。ちなみに、外すと死ぬと書かれているOSチップを外すと本当に死ねます。また、プラグインチップは死亡時に失われてしまうけれども死亡地点に残った遺体を回収すればセーフ、というどこかで見たことあるような仕様となっているので、死亡時のペナルティは意外と高め。

レベルはゲームを進めていれば自然と上がっていくのであまり気にする必要はありません。武器のアップグレード用の素材もサブクエストをこなしつつ走り回っていれば大体入手できていきます。なので、あまり育成に気を使うことはありませんね。サブクエストでいきなり高レベルの敵が出てくることもありますけど、その場合は後回しにすればいいだけですし。クリアを目指すだけなら強化や育成面で意識することは特になく、クリア後のやり込みや高難易度の攻略をするなら必要かなといった塩梅でしょうか。結果として、あまりムズかしく考えずに気持ちよく暴れてりゃいいゲームになっているように感じました。テキトーでいいってすばらしい。

尻だけじゃないですから

ストーリー面については、かねてより関連作品の話は耳にしていたため、朗らかなシーンや「ふふっ」としてしまうシーンなどがあるたびに後々の展開を想像しては「この子たちたぶんこの後…」と身構えていたのですが、大体そんな感じでした。地球に侵略したエイリアンの作った機械生命体と月に逃げのびた人類が生み出したアンドロイドとの戦いという世界設定で、命にふさわしいだの命もないのに殺し合うだの謳っているわけですからね。そりゃ身構えるってもんです。身構えていて正解でした。が、身構えすぎる必要もなかったかな、いやどうだろう。

ともあれ、特筆すべきはサプライズが盛り沢山だったこと。ストーリーそのものというより、その見せ方や演出といった方がより正確でしょうか。ゲームであることを利用して、ゲームであるが故の当たり前を裏切ってプレイヤーを驚かせてくるような演出が何度もあり、非常に印象的な物語を描き出していると感じました。あまり具体的に言ってしまうと驚きを失わせるネタバレとなってしまって台無しなので詳しく書けないのですけれども。本作最大のウリはここだと思うのですが、それが言えないもどかしさ。ああ、どうしてくれよう。

そうだ。個人的に本作の購入理由となった主人公の2Bですよ。寡黙でクールを装っているようで実は不器用なモノトーンアンドロイドガール。もうね、最高じゃないですか。それがプラチナゲームズ製のアクションでスタイリッシュにギュンギュン動かせる。尻がチラチラしてるだけじゃないんですよ。2Bのために買ってよかったというのが素直な感想です。早くも今年度のGame of the Yearのベストキャラクター部門トップにノミネートされました。最高です。

そんなわけで『NieR:Automata』はテキトーに動かしていても気持ちよく大暴れできるアクションで、驚きに満ちたストーリーも楽しめる1本となっております。気になった人は体験版をプレイしてみるのもいいでしょう。ローアングルで楽しむだけだから体験版で十分? 尻だけじゃねーからこのゲーム!尻もデカいけど!いやサイズじゃなくて!!

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