【EVO 2015】観戦したのでハイライトの振り返りと感想など

アメリカのラスベガスで開催された世界最大規模の格闘ゲーム大会「EVO」が閉幕しました。日本と16時間の時差があるのでTwitchでの観戦も大変ですが、今年は海の日もあって幾分、日本人にやさしかったかも。参加者も舞台も観客も最大規模の大会だからこそ、今年も多くのドラマと伝説を生み出してくれました。毎年のことだけど本当に楽しい。

年を重ねるごとに規模が大きくなっていく「EVO」ですが、Twitchの配信での視聴者数も大きく増えていた印象です。2013年と2014年の最大瞬間視聴者数はどちらも『UMvC3』の14万人でしたが、今年2015年は『ウル4』を観ているときに20万人を軽く超えていたのが確認できました。日本語実況での配信は別チャンネルだったので、両方合わせるともっと多かったのでしょう。ここ2年は停滞していた視聴者数が一気に伸びた理由はわかりませんが、お祭りが盛り上がるのは何よりですよね。

※2015/7/21追記
ピークの同時視聴者数は公式チャンネルが22万人、日本のTopangaTVによる配信が2万4000人とのことで、合計25万人ほどだった模様。去年と比べると10万人ほどの大幅な増加なので、格ゲーシーンの躍進はもちろんのこと、他にも何か理由がありそうな気がしますね。

参考:今年も大きな盛り上がりを見せた「EVO 2015」Twitch配信の同時視聴者数が約25万人を記録 « doope! 国内外のゲーム情報総合サイト

開催期間の3日間、暇さえあればPCやスマートフォンで配信を観ていたのですが、特に印象に残った場面を挙げつつ、感想など書いていきます。今年は格ゲーの歴史的なシーンに立ち会えたような気がして、充実感が高いですね。

『P4U2』のTop8がすべて日本勢

『P4U2』で印象的だったのは、以下の試合の6:40あたりからの場面。

コイチ選手と奥さん肉屋です選手の対戦で、コイチ選手がコンボミスを繰り返した挙句、投げで誤魔化してラウンドをとった場面で「あっ、ごめーん」「絶対やってないでしょ、今の」みたいな表情をしてるのがお茶目でよかったですね。壇上とはいえ、日本人ばかりが残っていたからこそ、こういう空気で試合ができていたのではないでしょうか。

メインタイトルにアークシステムワークス製のゲームが選ばれるたびに「日本勢が独占だろう」なんて言われますが、ここまで完全に独占するのは珍しいような。去年の『BBCP』でも1人はアメリカのプレイヤーが残っていましたし、2年前の初代『P4U』では日米比が4:4で、2位から4位まではアメリカ勢でした。

日本勢が有利と考えられているのは、アークゲーがアーケード先行でリリースされていくことが理由の1つですが、初代『P4U』のときはアーケード稼動から家庭用発売までの期間が短かったため、そこまで差が開かなかったこともあると思います。今回の『P4U2』では家庭用発売までの期間があったものの、その後アップデートされたアーケード版とはバージョンが異なるため、差は開きにくいのかな?と思っていました。

が、フタを開けてみればTop8がすべて日本人という快進撃。直近の海外大会の「CEO」では、強豪のソウジ選手がBananaKen選手に敗れていたこともあり、海外勢への対策がかなり慎重に練られていたのかもしれません。なんにせよ、格ゲーにおいて日本が強いのは確かですが、海外プレイヤーの人口やレベルも上がっているでしょうから、勝利が当たり前になることなどないでしょう。そんな中、Top8独占という快挙を成し遂げたのは本当に素晴らしいと思います。何気に、ボクの使用キャラクターである天田コロマルが優勝したのもうれしいですね。

『UMvC3』のTop8に初の日本人進出

アークゲーとは対照的に、これまでアメリカがぶっちぎりで強かったのが「Marvel」シリーズ。日本のプレイヤーも果敢に挑んでいたものの、Top8まで駒を進めることはできませんでした。しかし苦節4年(『マブカプ2』を含めるともっと)、ようやく実を結びました。RF選手とCross選手の2名がTop8に名を連ねるという快挙を成し遂げています。

「EVO」に参加する日本人の数は毎年増えており、各競技で勝ち上がるチャンスも伸びているはずなのですが、「Marvel」シリーズにおけるアメリカの伝統の壁は本当に分厚く、強豪プレイヤーの敗退報告が流れていく状況でした。しかし、今年は違いました。もちろん、大人数のトーナメントですから、当然クジ運も大事でしょうけど、RF選手とCross選手の両名ともにアメリカの強豪ChrisG選手を倒して突破しているため、日本勢の実力も本物だったといえるでしょう。特に、今回は引率の先生がフリーザ様だったので、快進撃も頷けるというもの。

今回、これまでの大きな大会では必ず名を連ねていた強豪プレイヤーが軒並み敗退しており、Top8の顔ぶれがガラリと変わっているのも印象的です。ここ2年間でドラマチックな試合を連発していたJustin Wong選手や、先ほどのChrisG選手、それにFilipino Champ選手などがいないという波乱。リリースからの時間が経てば経つほど、上位陣との差が縮まってくるものなのかもしれませんが、優勝したKaneBlueRiver選手もハルク・ハガー・センチネルという独特のチーム構成ですし、一体このゲームの伸びしろはどこまであるのか。あらためて『UMvC3』の底知れなさを感じられたように思います。

『ウル4』は複数キャラクターの応酬へ

今年の『ウル4』で1番印象に残ったシーンといえば、やはりコレですよね。以下の動画の8:30あたりから。

そういうお祭りじゃねーからこれ!

さて、「EVO」はルール上、キャラクターの変更が認められているので、相性を考慮して複数のキャラクターを用意するプレイヤーも増えている印象です。特に、キャラクターの数が多い『ウル4』においてはめずらしくなくなってきました。当然、複数のキャラクターを使いこなすのは大変でしょうけど、初代『スト4』の稼働から7年も経過していますから、プレイヤーの経験値の蓄積もかなりのものになっており、サブキャラクターであっても高い完成度の動きをみせるプレイヤーが登場しています。

特に印象的なのは、ルーザーズファイナルにおけるINFILTRATION選手とGamerBee選手の戦いですね。最初は春麗vsエレナで幕を開けましたが、1ラウンドにヒーリングを何度も使うエレナは厳しいと判断し、INFILTRATION選手はジュリにチェンジ。対するGamerBee選手はその後メインキャラクターのアドンを投入して勝利。ここで長考するINFILTRATION選手へ審判から制限時間を言い渡されるのですが、お互いちょっと笑顔がこぼれるシーンが印象的。キャラクターを変更するタイミングを含めて、画面外での駆け引きも醍醐味になってきたように思います。一切キャラクター変更をしないプレイヤーも、それはそれで1つのプレイスタイルとして、より魅力的になるでしょうし。

グランドファイナルでも、ももち選手がケンから殺意リュウへ変更しましたが、それよりもコントローラーのトラブルの方がどうしても印象に残ってしまいましたね。機器のトラブルは起こるものですから仕方ないのですが、何もあの場面で起こらなくても…。画面上ではコントローラーが切断された表示が出ていましたが、ケーブルを挿しなおす様子も見られなかったので、接触不良なのか、内部の故障なのか。ルールに則ってペナルティを与えたのちに試合は継続されたとはいえ、激戦に水を差されてしまった形なので、この2人はカプコンカップでの再戦があるといいなと思いますね。

新たなヒーローが歴史に名を刻んだ『GGXrd』

これこそ2015年のハイライト。以下の動画の8:20あたりからが、今回の「EVO」全体を通しても最高に印象深いシーンになりました。申し訳ないのですが、配信を観ながら腹を抱えて笑ってしまいました。どうしてギルティ勢はラウンド数を疎かにしてしまうのか。

Oh, My God. 実況の悲痛な叫びが耳から離れません。

Top8のウィナーズセミファイナル2戦目、小川選手とヲシゲ選手の3試合目に起こった奇跡。まず小川選手が1ラウンドを先取した後に迎えた2ラウンド目。ヲシゲ選手はエメラルドレインからウィンガーという、バースト対策を含んだ”もう優勝でいいというコンボ”で劇的な勝利を収め、喜びのあまり3ラウンド目をロマンキャンセルして席を立ちガッツポーズ。そんなことをしている間に、小川選手は2HSから無慈悲な最大コンボを叩き込んで試合終了、という一瞬の出来事。まさに”閃光”。

よくよくみるとカウンターヒットしているので、ギリギリのタイミングでボタンに手が届いたようですが、それがかえって傷口を広げることになっているあたり、深い哀愁と奥ゆかしさを感じずにはいられません。ヲシゲ選手の試合前日のツイートをみると余計に…。

しかし、ここで観客を味方につけたヲシゲ選手が怒涛の快進撃。勝利しても席を立たない慎重さを身に着けた彼は、観客席から巻き起こる「WOSHIGE」コールと、どうみても贔屓しまくりな実況の後押しを受けて、ルーザーズファイナルまでたどり着きます。そこで待ち受けていたのは”おもてなしの精神”をもたないナゲ選手。彼は観客の声などどこ吹く風とばかりにヲシゲ選手の激しい攻めを凌ぎ切って勝利をおさめます。やはりナゲ選手にその精神はありませんでした。

こうして格ゲー界の歴史にその名を刻み、一躍人気者になってしまったヲシゲ選手ですが、なんとアメリカのTwitterでトレンド入りする快挙も果たしています。もう今大会のMVPといってもいいのではないでしょうか。

ちなみに、後夜祭的に行われたホテルでの対戦において、小川選手とヲシゲ選手の1ラウンドマッチが行われ、小川選手が見事に勝利していました。その後も『GGXrd』で対戦をする海外勢のプレイヤーたちが、1ラウンドとっただけなのに席を立ちたがる様子も配信されており、しばらくは「Woshige」ブームが続きそうです。

※2015/7/22追記
アメリカのスポーツニュースのTV番組でも取り上げられたようです。キャスター2人の表情がたまりませんね。

EVO 2015 on SC from ESPN Interactive Games on Vimeo.

そんなわけで、2015年の「EVO」も大変楽しませていただきました。来年2016年の話をするのは少々気が早いかもしれませんが、次回はいよいよ『スト5』が投入されるわけですが、家庭用からリリースされるタイトルであるため、これまでとは違った様相になりそうです。また来年も新たな伝説が生まれることを期待しております。

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