【Titanfall】レビュー 最高にカッコイイ巨大人型ロボットのパイロット体験

PCのβ版から製品版、Xbox360版までプレイしたところでのレビューです。対戦型のFPSとして云々ではなく、派手にロボットを動かせるゲームとして見ていきたいと思います。それは、一見すると表面的な話のようですが、実は本質なのではないかと。

Titanfall | Official Site

昨今のゲームでは、何かと”体験”という言葉が使われるようになりました。ゲームの内容それ自体ではなく、ゲームに触れたプレイヤーが何を思い、何を感じ、何を考えるのか、というプレイヤー観点の話ですね。

正直なところ「なーにが”体験”だ、おもしろけりゃなんでもいいよそんなの」程度にしか思っていませんでした。ちょっと見方を変えただけじゃないかと思っていたわけですよ。

しかし、『Titanfall』をプレイすると、この”体験”というフレーズを強く実感せずにはいられませんでした。”体験”という観点を重視して作り込むとこれほどのモノが生まれるのかと思い知らされました。

“体験”というのはカンタンにいうと、見るとやるとでは大違い、ということです。動画をみていれば「タイタンフォール? 壁走ったりピョンピョン飛んだりするFPSで、ロボットに乗ったりできるんでしょ」くらいのことはわかりますし、その認識はまったく間違っていません。完全に合ってます。でも違うんです。動画を見てわかるのは「このゲームかっけー」くらいですが、ゲームをやれば「うおおおやっべぇオレマジかっけー!!!」になります。

タイタンフォール:公式ゲームプレイ・ローンチ トレーラー – YouTube

実際にプレイしてみるとイメージどおりのゲームであることがわかりますが、イメージ以上であることもわかります。イメージを超えている部分は何か、といわれたら、それは”体験”に他なりません。

ゲームはやってみなければわからない、とはよく聞く言葉ですが、『Titanfall』はまさにそれ。自分で壁を走り、屋根から屋根に飛び回り、タイタンを投下してタイタンに搭乗し操縦し、敵のタイタンと撃ち合い殴り合い、緊急脱出してみましょう。立体機動で未来戦闘してる感、ロボットに乗ってる感、操縦してる感、そのどれもが”体験”なのです。漫画的、アニメ的なシーンが自然と形成され、アツイ場面を自分で操作し、”体験”できるわけです。

これこそが『Titanfall』最大のウリでしょう。こうしたアツイ場面を作り出すために、数々の細かい演出とか作り込みとかが積み上げられているわけで、実はそういうところが本作のコアなんじゃないかと思うわけです。

“パイロット”として生身での立体機動バトル

ゲームは開始されると、プレイヤーはタイタンの”パイロット”として戦場に入ります。ゲームの華は巨大人型ロボットの”タイタン”ですが、最初は生身での戦いになります。

生身とはいえ、超人的な能力をもったパイロットたちは、従来のFPSとは一線を画す機動ができます。壁を走るウォールランや2段ジャンプを駆使して立体的に動けるのです。スピードもかなり速く、よじ登る動作なども軽快なので、まさに縦横無尽に動き回ることが可能。あまりに軽快なのでパルクールのように走り回っているだけでも結構楽しかったりします。

titanfall_006_R
個人的にうれしいのがクロークの存在。いわゆる光学迷彩で、ほぼ透明になって姿を消すことができる能力です。立体機動と合わせて使えばまさに攻殻機動隊。屋上からクロークしながら飛び降りる”少佐ごっこ”だってできます。デザイナーの人が士郎正宗氏の大ファンなのだそうで、クロークのみならず、いろいろなところでその影響がうかがえます。

姿を消せるといってもまったく見えなくなるわけでもなく、かといって役に立たないほどでもない、というちょうどいい塩梅になっているところもポイント高いですね。強いんですけど、不快になるほど強すぎるわけではない感じ。


武器や装備は未来的なものばかりなのですが、中でもお気に入りなのがハッキング用のナイフ型デバイス。本作の格闘攻撃はキックと首コキャなので、戦闘ではナイフを一切使わないのですが、ハッキングするときはコンピュータにぶっさすんですよね。でもこれがカッコイイんですよ。

対戦人数は6on6とやや少な目、かつタイタン戦を想定したマップは広めなのですが、多数のBOTが配置されたマップの密度はなかなかのもの。BOTたちは大規模な戦場感を出すためのエキストラではありますが、ちゃんとスコアにもなるので無視できない存在でもあります。ハッキリいって弱いので「オレつええ」感を高めてくれたり、プレイヤーは”パイロット”という特別な存在であることをわからせてくれたりする、という演出的な存在意義も大きいかと。

BOTの一般兵のセリフをよく聞いてみると「パイロットが来てくれたぞ!」とか「味方のタイタンだ!」とか、プレイヤーを頼りにしている感じなんですよね。「エースコンバット」ほどではありませんが、こういう細かいところでもプレイヤーを盛り上げようとしてくれているな、と感じます。強力な兵士である”パイロット”をやっている感が体験できるわけです。

巨大人型ロボットに乗ってる感・操縦してる感

タイタンが投下されるまでは2分ですが、敵プレイヤーやBOTをキルしたり、拠点制圧などでポイントを稼ぐと投下までの時間が短縮されます。1試合は5~10分くらいなので、これといって活躍できなくても数回はタイタンに乗ることができるでしょう。


タイタンは巨大で重厚で力強く、実際に強力な存在です。が、無双できるわけではなく、上手に運用してこそ活躍できる調整になっています。やられるときは本当にあっけなく破壊されますし、小回りが利く生身のパイロットに翻弄される場面も珍しくはありません。強いけど強すぎないタイタンの調整はうまいことできてるな、って感じますね。

タイトルにもなっているとおり、この巨大人型ロボットのタイタンは本作の華です。決してただの乗り物などではありません。なので、タイタンに関する描写にはめちゃくちゃ力が入っています。そしてその力の入った描写はプレイヤーの体験を盛り立て、一気にアツイ場面にしてくれるのです。


たとえば、タイタンに搭乗するシーン。搭乗のアクションパターンは1つではありません。跪いたタイタンに自力で駆け上がったり、タイタンの手で受け止められてコクピットに押し込められたり、上部ハッチから滑り降りたり、股下をスライディングで抜けてから乗り込んだり。

コクピットに座るとハッチが閉められて一瞬暗闇になり、ディスプレイが順に点いて周囲が見えるようになりつつ機械音声で「コントロールをパイロットへ委譲」とくるわけです。なんですかこのカッコイイ起動シークエンスは。

ここで大事なのが、乗り込むシーンがちゃんと描写されている、ってこと。対戦中なのに、搭乗シーンに時間が割かれているんですよ。わずかな時間ですが、この搭乗シーンによる”暗転”が生身の兵士だったプレイヤーを真に”パイロット”へと変えてくれるのです。だからこそ、巨大ロボに”乗ってる感”が生まれ、”操縦してる感”に繋がっていくわけです。

ボタンを押すだけでパッとコクピットに移るのでは、この”乗ってる感”や”操縦してる感”は出せません。対戦の最中であってもは搭乗にわざわざ時間を割く、そして時間を割くからには徹底的に描写する、という強いこだわりが感じられるポイントです。


タイタンに乗ってもプレイヤーが握っているのは同じコントローラー(またはキーボードとマウス)なので、実際にはやっていることはそんなに変わっていないはずなのですよね。でも、プレイ中は”乗ってる感”、”操縦してる感”がものすごく感じられるわけです。搭乗シーンという手の込んだ演出があってこそですね。

搭乗シーン以外にタイタンの描写で強いこだわりが感じられるのが脱出シーン。タイタンの耐久値が尽きると、イジェクションシートを作動させて緊急脱出ができます。

敵タイタンからの攻撃に火花が散り、ディスプレイの表示が歪み、炎と煙幕の中で鳴り止まないロックオンアラートに警告メッセージ。「リアクターオーバーロード…脱出を推奨…脱出、脱出、脱出…」。アニメか漫画のワンシーンのような大ピンチに「うおおおイジェクト!イジェーーークト!!!」とか言いながら必死に脱出ボタンを連打するわけです。


脱出が成功すれば上空から眼下に自爆するタイタンの姿が。主観視点で脱出を体験できるゲームなんてなかなかないですよ。タイタンがやられてしまうのは対戦ゲームとしてストレスにもなりかねない場面ではあるのですが、アニメの映画の主人公のような脱出体験があることで、その高揚感がストレスを上書きしちゃう感まであります。

脱出の操作を連打した判断はすばらしいですね。画面内で起こっていることとプレイヤーの感情のシンクロ率がものすごく高いんですよ。実に見事に感情を体験に昇華してると思います。

搭乗シーンのように、脱出シーンの描写もしっかりしていて、ちゃんとコクピットのシート下のレバーを引いてイジェクションを起動してるんですよね。実は、ニュークリアイジェクトという自爆を強化するカスタムをしている場合には、コクピット左のボタンを押してからレバーを引くという細かさ。自爆ボタンをポチっとできるわけですよ。

こんな感じで、めちゃくちゃ作り込まれた描写が積み重なった上にできあがる体験は、まさにロボットのパイロットとしての体験なわけです。男子たるもの誰のが心の奥底に眠らせている巨大ロボットのパイロットへの願望を、体験として形にしてくれているのが『Titanfall』なのです。

シングルとマルチの融合した”体験”

『Titanfall』は対戦オンリーのマルチプレイFPSです。1人で遊べるのはチュートリアルのトレーニングだけです。なので、対戦が苦手な人にはとっつきにくいかもしれません。いくらカッコイイロボットのパイロットの体験ができるといっても、すぐにやられてしまうだけだろうから楽しめそうにない、と思うかもしれません。


たしかに、対戦ゲームなので腕の良し悪しが勝敗を左右します。過去に他のFPSで慣らした猛者もいるでしょうし、積み重ねられた経験には太刀打ちできません。それは仕方のないことです。というか、やり込んだ人が勝てるようになっていない対戦ゲームというのであれば、そっちの方が問題です。

とはいえ、『Titanfall』はかなりカジュアルな内容です。対戦ゲーム好きなコアゲーマーが好む競技性とかいうものとは正反対の、カジュアルなエンタメ性に全力疾走しているようなゲームです。ガチ勝負ばかりの殺伐空間というわけではありません。みんながみんな大会で優勝を目標にするわけでも、全一を目指すわけでもありませんから、すべてのゲームが競技性を追求する必要なんてありません。ボクもストイックなゲーマーではありませんから、本作のようなカジュアルな方向性はとってもウェルカムです。

活躍できなくてもタイタンには乗れますし、タイタンは自分専用なので他人に盗られたりもしません。射撃が苦手でもBOTを倒しているだけでもチームに貢献できます。バーンカードのような反則じみたシステムだってあります。カードは1回きりの使い捨てだし、相手も使えるんだから反則でもなんでもないですけども。上手くなくてもこのゲームの華であるタイタンには乗れますし、緊急脱出だって体験できるわけです。

しかし、いくらいろんな配慮があるとはいっても、負けてばっかりではつまらないのは事実です。でも、勝敗に腕の差が反映されないような作りでは対戦ゲームとしては失格です。そこで『Titanfall』は負けがただのストレスにならないために、1つの仕掛けを作ったのです。

それが撤退・掃討戦です。勝敗が決した後、リスポンのできなくなった状態で、負けた側は脱出船を目指し、勝った側は逃がさないように追いかけるという鬼ごっこをやるように仕向けたのです。「なにそれ?」と思うかもしれませんが、これが非常に楽しい。特に負けた側の方がが楽しいまであります。だって鬼ごっこは逃げる方が楽しいじゃないですか。


試合に負けてしまっても撤退戦で無事に逃げ切ればちょっと勝った気分になれます。いや、負けてるんですけどね。この撤退戦があることで、対戦ゲームでありつつも勝敗の重みをあまり感じさせなくなっています。もちろん、負けたら悔しいし勝ちたいのは当然ですが、負けたからといってゲームをやめたくなるようなストレスにはならないというか。

「Call of Duty」シリーズでは経験値による育成システムを導入し、負けた側にも経験値は入るようにすることで、勝っても負けても得られるものがあり無駄にはならない、って方向で負けた側のストレス軽減をしていましたが、『Titanfall』はさらに3歩くらい進んでカジュアルになっている感じです。

ストレスを上回る楽しさを、なんていうと当たり前のようにも思えますが、対戦ゲームでは非常に難しいことです。どうしても負ける側が出てきてしまいますから、勝ったときにキモチイイ分、負けたときは不快になってしまうのがある意味当然です。これは対戦ゲームのおもしろいところでもあり、ジレンマであるともいえます。


この問題に『Titanfall』の出した回答が、本作のコンセプトである”シングルとマルチの融合”だったのかもしれません。これはただ単にキャンペーンモードがオンラインになったということではありません。

“シングルとマルチの融合”とは、「Call of Duty」シリーズのキャンペーンモードにあるような映画の主人公体験を対戦に参加するすべてのプレイヤーに提供しよう、という試みです。それがBOTの存在であったり、タイタン搭乗や脱出の演出であったり、撤退戦であったり。すべてのプレイヤーが主人公にはなれない多人数対戦において、それでも誰しもが主人公になれる瞬間を作ってあげようとしたわけです。タイタンに乗り込む瞬間は誰しもがヒーローでいいじゃない、と。

ヒーローになれる瞬間はシングルモードさながらの高揚感を生み、対戦のストレスを吹き飛ばす、というのが開発者の考えた理想形だったのかもしれません。実際、長々とプレイを続けてしまうことも、プレイ後に毎回楽しかったと思えることも、その狙いが功を奏している証拠なのではないかと。


ちゃんと実力の差が勝敗に反映されるし、負けたら悔しいけれど、嫌な気分になるばかりではなく楽しい部分もバッチリ用意されている、という調整は絶妙に思えます。

そんなわけで『Titanfall』は巨大人型ロボットのパイロットになれるゲームです。ロボットを動かすゲームは数あれど、これほどまでにパイロットを”体験”できるゲームは類を見ません。最初にも述べたとおり、見るとやるとでは大違いです。ぜひやりましょう。

エレクトロニック・アーツ (2014-03-13)
売り上げランキング: 12
モバイルバージョンを終了