【ブレイブリーセカンド】レビュー レトロなスタイルと現代風のアクセントを融合させた続編らしい続編RPG

SFC時代を彷彿とさせるレトロスタイルなRPGでありながら、シナリオやゲームシステムで現代的な味付けをした『ブレイブリーデフォルト』の続編『ブレイブリーセカンド』。シナリオライターの変更はあっても前作からの”ノリ”は継承されており、極限まで快適になったゲームシステムで最後まで楽しく遊べる1本に仕上がっています。

大作RPGたるものは寝食を忘れてプレイしてしまうものですが『ブレイブリーセカンド』もそんな1本。特に、先が気になるシナリオと快適なゲームシステムが合わさった本作は止め時がなく、クリアするまでの50時間超という長丁場を一気に進めてしまった感じ。ごちそうさまでした。

『ブレイブリーセカンド』は『ブレイブリーデフォルト』の続編であり、前作の2年後の物語になっています。キャラクターや世界観などは前作からガッツリ継承されているため、プレイするなら前作『デフォルト』からはじめることを強くオススメします。『フォー・ザ・シークウェル』という完全版というか調整版というか廉価版なバージョンがリリースされており、ゲーム中盤まで無料で遊べるため、未プレイの人はぜひ。

参考:ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル|SQUARE ENIX

前作から世界観を引き継いだ『セカンド』ですが、気になるのはシナリオライターの変更。林直孝氏がシナリオを手掛けた『デフォルト』では、ゲーム側の言うとおりに従っていればクリアできるRPGというジャンルにおいて、「従わない勇気」を投げかける巧妙なシナリオが最大の魅力でした。まさにゲームにおけるゲームのためのシナリオだったため、続編にかかるハードルはめちゃくちゃ高くなっていました。ここが期待と不安が入り混じるポイントであったことは1stインプレッションでも書いたとおりです。

しかし、『セカンド』はそのハードルを飛び越えていってくれました。前作と同じようにプレイヤーをあっと驚かせてくれるシナリオギミックだけでなく、快適になったゲームシステムや調整されたバトルバランスなど、すべてにおいて前作を上回っており、まさに続編、といったところ。前作と今作の間に『フォー・ザ・シークウェル』を挟んだことも功を奏しているのではないかと。

ゲームだからできるゲームだからこそのシナリオ

『ブレイブリーセカンド』は新キャラクターのユウを主人公としたメインシナリオと旧キャラクターのイデアを主人公としたサブシナリオの2本柱で構成されています。クリアするだけならメインシナリオだけでよさそうですが、取得できるジョブや経験値などの都合上、メインとサブを交互にやっていくことになるでしょう。

前作の2年後の世界ということで、キャラクターも舞台も前作から引き続きになっている部分が多くなっています。街やダンジョンなど、前作と同じ場所もあり、新たに登場する舞台もあり、新旧が入り混じった世界での冒険になります。音楽もRevo氏からsupercellのryo氏に変更されていますが、前作の舞台では前作の曲が使われているので、雰囲気も新旧が混ざり合っている印象ですね。

ブレイブリーセカンド 橋の下

世界観が前作から引き続きのため、マンネリも懸念されるところだったのですが、実際にプレイしてみるとそんなことはなかったです。というのも、2作に渡って同じ世界を描いたことにより、キャラクターや世界をより深く描写できているからだと思うのです。世界に歴史を与え、歴史の中でキャラクター同士が繋がっているため、物語の厚みが増しているのですよね。

イデアを中心としたサブシナリオは、前作のアスタリスク所持者のその後が描かれており、前作の経験者としてはポイントが高いですね。前作では物事を白か黒かハッキリさせようとしてばかりいたイデアを襲う試練は、2人のアスタリスク所持者から二者択一を迫るという過酷なモノ。時にはシリアス、時にはジョークという内容ですが、ちょっと現代的な社会問題をテーマに含まれるものもあり、なかなか考えさせられます。といっても、欲しいジョブを優先させても問題はないのでプレイヤーの性格が出るところでしょう。

一方、新キャラクターのユウを主人公とするメインシナリオでは、敵のアスタリスク所持者も新しいジョブの新しいキャラクターを中心としたものになっています。注目すべきは、RPGというジャンルのお約束を利用したシナリオギミックをメタな表現で描いているところですね。前作では、ゲームの指示通りに進めればクリアできるRPGに一石を投じる「従わない勇気」がテーマでしたが、今作ではまた違った”勇気”の物語になっています。前作と同じように、ちょっと変わったギミックをプレイヤーに気づかせる過程を経て、ゲームだからできる、ゲームのためのシナリオになっているのです。見事。

ところで、前作からの反省点、改善点が多くみられる今作ですが、体験版についても改善があったりします。前作の体験版は本編のシナリオとは無縁にゲームの内容に触れられるようなもので、本編の魅力をあまり伝えられていなかったのですが、今作の体験版は本編の前日譚として作られており、本編の序盤にある展開の衝撃が増す、という仕組みになっていたりします。これから遊ぶ人は体験版から触ってみるのもアリかもしれませんね。

バトルバランスの調整は良好

本作で特徴的なゲームシステムは、ブレイブとデフォルトを使ったバトルシステムです。ターン制のバトルにおいて、行動回数をチャージするデフォルトと、溜めたポイントを放出して一気に複数回の行動を可能にするブレイブ。これがリスクとリターンを跳ね上げる要素になっており、レトロスタイルなバトルにアクセントを加えています。

前作と今作の間に『フォー・ザ・シークウェル』という調整版を挟んだこともあり、かなりの改善がみられる今作。個人的には、バトルバランスの調整が注目される点でした。というのも、前作は便利なアビリティが便利すぎてもったいないことになっている印象があったからです。

具体的には、ヴァルキリーのクレセントムーンなどですね。強力な全体攻撃スキルが早い段階で習得できたことにより、それだけでどんどん進めてしまうという、ぶっ壊れた要素がぶっ壊していた部分がありました。今回もクレセントムーンは登場しますし、他にも強力な全体攻撃が追加されています。しかし、前作のようなぶっ壊れた印象はありませんでした。

といっても、前作で強力だったスキルが露骨に弱体化した、というわけではありません。性能を下げるのではなく、敵の強さの方向から調整されているような印象でした。敵が強くなっている、ということでもなく、敵の属性や種族をバラけさせたり硬い敵を混ぜたりすることで、全体攻撃スキルの価値が変化しているのですよね。こうすることで、プレイヤーは強さを実感できるし、強い敵とのガチなバトルを楽しめるというわけです。

もちろん、プレイヤーがゲームをぶっ壊せなくなったわけではありません。本作は驚くべきことに、序盤からエンカウント率の設定ができるようになります。プラス100%(=2倍)からマイナス100%(=ゼロ)の間でいつでも自由に設定できるため、面倒な敵が出てくるところはエンカウント率をゼロに、おいしい敵のいるところでエンカウント率を2倍にして稼ぐ、といったほぼチートなプレイスタイルが許容されているのです。

個人的に、このエンカウント率の設定はあまり使わないようにして進めていました。メインとサブのシナリオを交互に進めた感じだと、ダンジョンマップに表示された推奨レベルよりも数レベルを下回るくらいで進めることになりましたね。おそらく開発サイドは素直にまっすぐ進めた場合を中心に調整をしているでしょうし、ボクのスタイルはその想定通りだと思うのですが、その場合はかなりいい感じの難易度になっていた印象です。

足りないレベルをジョブとアビリティの構成で補うわけですが、この構成を考えるのが本当に楽しい。特に、ボス戦などは初見でまったく歯が立たなかったりすることも多いのだけど、そこで手持ちの装備とアビリティからパーティの構成を見直すことで作戦を立ててリベンジ!という展開が毎回かなりアツイのですよね。アビリティ構成という戦略性とブレイブとデフォルトという戦術性、この2つで強敵を突破するのは本作ならではのエキサイティングな瞬間であります。

ちなみに、今作から追加された新システム「ブレイブリーセカンド」はあまり使うことがありませんでした。ターン制のバトルにおいて時間を停止して一方的に攻撃できるという反則技なのですが、8時間に1ポイントで最大3ポイントまでしかチャージされないポイントを消費するため、もったいないお化けが邪魔して使うに使えませんでした。さすがに反則すぎるシステムなので、使わなくてもクリアできる(ある場面を除いて)ことは証明できたのかも。

ほぼチートな機能による快適なゲームプレイとリプレイ性

何度も書いていますが、前作と今作の間に『フォー・ザ・シークウェル』という調整版を挟んだこともあり、多くの改善点がみられる本作。マジで快適になっています。UIの使いやすさ、バトルスピードの設定、エンカウント率の操作などなど、ほぼチートな機能まで備わっている至れり尽くせりな仕様なのです。

たとえば、エンカウント率の設定は前述のとおりですが、これとあわせてオートバトル設定を活かせばレベル上げも文字通り片手でできるようになります。プレイヤーの要望に応えた結果なのかどうかはわかりませんが、開発サイドのエゴを押し通すのではなく、限りなく譲歩することでめちゃくちゃ快適になっているのは事実です。ボクもクリア後に全ジョブマスターまでレベル上げをしてみましたが、楽々ガンガン育つのでとても気持ちよくなれました。快適すぎる気がしないでもないですが、アリかナシかでいえばアリでしょう。楽しいですし。

快適だからこそ、リプレイ性も非常に高くなっています。いわゆる「強くてニューゲーム」ができる本作ですが、いつでもどこでもデータを引き継いで好きなチャプターからリスタートができるのです。なので、気が向いたときに好きなところから遊べるわけですね。イベントビューワーも搭載されているので、見るだけならいつでもイベントを見ることだってできます。なんと太っ腹。

とにかく極限まで快適にするため、チートまがいの機能まで備わっている『セカンド』ですが、前作『デフォルト』で「従わない勇気」を語ったわけですから、「ゲームのいうことに黙って従うのではなく、好きに遊んでくださいね」という開発サイドの想いがカタチになった結果なのかもしれません。

まさに続編な『セカンド』

そんなわけで『ブレイブリーセカンド』は、前作の流れを受け継ぎ、前作を超える続編らしい続編となっていました。シナリオライターが変わっても世界観と”ノリ”はそのまま継承されており、さらに歴史とつながりが厚みの増した物語はまさに続編だからこそ。すべてにおいて快適になったゲームシステムはいくらでも遊べる場の提供として申し分ないでしょう。

前作の「従わない勇気」から、新たな”勇気”の物語となっているのですが、前作がプレイヤーへのメッセージだったのに対して、今回は開発者の宣言のようにも感じられました。今作は「FF」シリーズをはじめとするRPGが歩んできた歴史を踏まえた上で、過去を内包しつつも一歩前に進めよう、という続編であり、ゲームの存在意義が変化しつつある現代において、過去を捨てて新しいモノを模索するのではなく過去を受け入れた上で先に進めよう、という宣言なのではないかという気がしてなりません。そもそも、王道ファンタジーRPGでありながら「FF」ではない、という宣言は前作のタイトルに込められているのですけども。

あまりいうとネタバレになるのでこれ以上は書きません。SFC時代のようなレトロスタイルなRPGに現代的なアクセントを加えた本作は、寝食を忘れてRPGに励んでいたあの頃の気持ちを思い出させてくれると同時に、ゲームによるゲームのためのシナリオであの頃にはなかった刺激を与えてくれるRPGになっています。いろいろ書きましたが、ビジュアルや音楽にピンときたら間違いないと思います。上の方にも書きましたが、未プレイの人は前作『デフォルト』からどうぞ。前作をプレイ済みで楽しめた人なら『セカンド』もイケるはず。ぜひに。

公式サイト:ブレイブリーセカンド|SQUARE ENIX

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