『オーディンスフィア レイヴスラシル』をクリアできたのでレビューなど。今回プレイしたのはPS4版。2007年に発売されたPS2版のリメイクとなる本作ですが、現代の画質に合わせたHD版、というだけでなく、ゲームシステムを大幅に改善しており、もはや別物といっても過言ではない内容に生まれ変わっています。8年前、「何か思ってたのと違う…」と嘆いていたアナタ、あのとき想像していた理想の『オーディンスフィア』はこちらでございます。
あのころ夢見た『オーディンスフィア』が実現
PS2版『オーディンスフィア』は、2Dサイドスクロールのアクションゲーム…のような見た目をしたRPGでした。ジャンプ&アタックで敵を倒して進むのではなく、進むためにアイテム集めや魔法作りなどの事前準備に比重が置かれた内容で「アクションの皮を被ったRPG」という印象が強く残っています。さらにいえば、アイテム周りのUIが煩雑で使いづらく、読み込みの多さや処理落ちなど、決して遊びやすいとはいえない内容だったことも印象深いところ。当時、ビジュアルやストーリーは素晴らしいだけに、非常に惜しいタイトルだと感じたのを覚えています。
しかし今回の『レイヴスラシル』では、そういった問題が一掃されています。それはもう驚くほど解消されています。まず、アクション面については、同ヴァニラウェア製の『朧村正』や『ドラゴンズクラウン』で蓄積されたアクションのノウハウがフィードバックされている印象です。キャラクターの軽快な動きや敵を打ち上げてからの空中コンボなどは『朧村正』のようであり、行動をキャンセルしてワンボタンで回避動作ができるのは『ドラゴンズクラウン』のようでもあり。見た目はアクションのようでもあくまでRPGだったPS2版とは違い、『レイヴスラシル』は見た目の印象どおりのアクションが可能となり、名実ともにアクションRPGとして生まれ変わったのです。
アクションメインでガンガン進めるようになったとはいえ、RPG要素も失われたわけではありません。アイテム周りの煩雑なUIやややこしいシステムも刷新され、こちらも大幅に遊びやすく改善されています。アイテムが食べ物や魔法などのカテゴリ別に並ぶようになっていたり、種や魔法素材がカバンの中で別枠になっていたりして、スッキリしました。魔法の合成もシンプルにわかりやすくなっています。何よりアクションメインで進めるのだから魔法に頼らなくてもよくなったのが大きいかも。
もちろん、処理落ちなどもなくなっているし、読み込みが多いと感じさせられることもありません。もうここまでくると完全に別物。リマスターではなく「リ・クリエイト」と謳われているように、イチから作り直しているようなものでしょう。もともとヴァニラウェア製のゲームってパッと見からでもわかるほどの異様な作り込みで、頭おかしいんじゃないか(賞賛)と思ってしまうほどでしたが、リメイクに際しても姿勢は変わらないようです。まさに『レイヴスラシル』(生命を受け継ぐ者)。
2Dアクションに生まれ変わった『レイヴスラシル』
もっとも大きな変化は前述のとおりアクション面で、『朧村正』と同じか、それ以上に壮快な仕上がりとなっています。操作キャラクターの5人がそれぞれ違ったアクションをもっていて、楽しさの方向性もそれぞれで異なるのですが、どのキャラクターでも大勢の敵や巨大なボス相手にガスガスとコンボを決めていくところは変わらず、アクションの気持ちよさは共通です。中には妖精のメルセデスのように突然のシューティングゲームとなる場面もありますが、それはそれで。
攻撃ボタンを連打するだけでコンボになり、方向キーとの組み合わせて打ち上げや叩きつけに派生。ゲームの進行とともに習得していくスキルも方向キーとボタンの組み合わせて登録できるので、カンタンな操作で多彩なアクションが可能となっています。…と、なんだか宣伝文句のような説明になってしまいましたが、実際には連打で通常攻撃を繋いでから上に打ち上げて空中コンボとか、Powゲージの許す限りスキルを連発してゴリ押しとか。マズそうな状況になってもワンボタンで回避アクションがあるので、ポポンと押すだけで距離をとれるのであとは回復なり魔法なり、軽快に立ち回ることができます。
アクション要素が増したからといって難易度は上がっておらず、むしろ下がった印象すらあります。キャラクターによっては序盤に習得できるスキルでゴリ押しも可能だったりしますし。とはいえ、ひたすらゴリゴリやるかといえばそうではなく、カッコよく空中コンボをキメようとあれやこれやとスキルを試してしまうので、意外とワンパターンにならなかったり。敵を画面外まで高々と打ち上げてなかなか落ちてこないくらい長~いコンボができれば気分も爽快。なので、ついつい無駄にコンボを繋げがち。大抵オーバーキルなんですけれども。
個人的なお気に入りはコルネリウス王子。もともとPS2版でも随一のアクション性能を誇った彼ですが、今回はさながら水を得た魚のように縦横無尽に動き回れます。というか、最初に覚えるスキルでひたすら人間ロケットしてるだけで進めるし、飽きたら大旋風でグルグル回ってもいいし、払い抜けでカッコよく決めてもいい。使いやすくてカッコよくて強い。しかも男前。最強ではないか。
ビジュアルと物語とゲームの融合が生む世界の終焉
キャラクターを動かすこと自体が楽しい本作ですが、やはりその楽しさはこのビジュアルがあってこそ。そもそもこの絵を動かしてゲームを作ろう!というだけで相当イカれてる(絶賛)と思うのですが、この絵をこれだけ動かせて大立ち回りできるようになったのだからたまりません。楽しさも倍増で、実際、もうずーっとここで空中コンボをザシュザシュやっていられるなら、世界が終焉してもいいくらいに楽しい。
そして、ストーリーもこのビジュアルに負けず劣らずの美しい物語。ストーリーはPS2版と同じですが、いま見ても素晴らしいですね。絵と話だけでなく、詩的で芝居がかったセリフも、実は屋根裏部屋で少女が読んでいる本、という設定とキレイにマッチしていると思います。といいますか、恥ずかしながら記憶がおぼろげで結末くらいしかハッキリと覚えていなかったのですが「そうそうこんな話だった」とあらためて噛みしめておりました。5人のキャラクターが主人公のオムニバス形式でありながら、かならずしも時系列順ではないギミックが味わい深さを増していて、最後にプレイヤーが選択するあたりはゲームならではの見せ方といえるでしょう。プレイヤーが物語に干渉できるわけですからね。
もともと絶品だったビジュアルとストーリーに快適で壮快なアクションが合わさって最強に見える『レイヴスラシル』。実際、最高の出来栄えだと思うので、PS2版をやった人もそうでない人もぜひやりましょう。本作をプレイする上で唯一、注意すべき点としては、ヴァニラウェアお得意の食べ物でしょうか。アクションが楽しく、ストーリーの先も気になるのでついつい夜更けまでやり込んでしまうのですが、そんなときに彼らは牙を剥いてきます。世界の終焉がいかに恐ろしいものであるか、思い知ることになるでしょう。ボクの胃袋も終焉でした。
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