【FF12 ザ ゾディアック エイジ】レビュー 高速で快適になったHDリマスター版でもガンビットの鮮度は失われず

『FF12 ザ ゾディアック エイジ』(FF12TZA)をクリアしたのでレビューなど。いわゆるHDリマスター版となる本作、グラフィックの品質が向上しているだけでなく、いくつかの改善点のおかげで非常に快適に遊べるようになっています。また、無印版から11年を時を経ても本作最大の特徴であるガンビットシステムは色褪せていないことを再認識。個人的に好きなゲームだった『FF12』を久々に満喫できたのでホクホクであります。

『FF12』は大体こんなゲーム

FF12TZA シームレスでリアルタイム

まずはじめに、『FF12』というゲームがどういうゲームだったのかを書いておきましょう。2006年にPS2で発売された『FF12』は、MMORPGをシングルプレイ用にしたようなコンセプトのRPGでした。フィールドには敵モンスターが闊歩しており、移動とバトルがシームレスですべてがリアルタイム。これってオープンワールドの定着した現代の視点からすれば当たり前のような話にみえるかもしれませんが、当時としては画期的な試みでした。

最大の特徴は「ガンビット」と呼ばれるシステム。詳しくは後述しますが、要するに味方キャラクターのAIをプレイヤーが組み立ててしまおうというモノ。こちらは現代の視点からしてもめずらしいシステムなので、未プレイの人なら新鮮さを感じられるポイントとなるでしょう。

物語は『FFタクティクス』とも繋がりのあるイヴァリースを舞台とした歴史物風の語り口になっていて、2つの大国の間で潰されてしまった小国の王女が国の復興を目指すというもの。政治劇がメインでやや薄味のため、人によって好みが分かれるところかも。よく言われるのが主人公ヴァンの印象の薄さですが、これは確かにそのとおりで、過去に囚われている登場人物たちのなかでいち早く過去から脱却してしまい、以降は最後まで亡国の王女アーシェが物語の中心となっているからです。個人的にもヴァンがアーシェの心境を揺るがす描写がもうちょいあったらなと思わなくもないところ。

束縛からの解放と自由への戦いがストーリーのテーマではありますが、ゲームでは豊富な寄り道要素があり、あまり束縛されることもなく自由に旅することができます。町を歩けばサブクエストにあたり、外を歩けばストーリー本筋とは無関係のダンジョンが見つかる。目標のモンスターを倒す「モブハント」はその最たるもので、やればやるほどどんどん強力な敵が出てくる。でもやっていれば育成は捗るし、途中で別の寄り道が見つかったりもする。こうなると泥沼。クリアした後にもまだまだやり込み要素が詰め込まれているし、やり込んで蓄えた力をぶつけるための圧倒的な隠しボスもお待ちかねです。そうこうしているうちにモリモリ時間が吸われていくのが『FF12』というゲームなのであります。

より快適になったHDリマスター版

では『FF12TZA』でどこが変わったのか。HDリマスターなのだからグラフィックが大幅に向上しているのは当然のことながら、音楽も新録版になっています。さすがに現代の最新グラフィックには及びませんが、それでもあんまり古臭さはなく、今でも全然イケます。

ゲームの内容はというと、無印版『FF12』ではなく『FF12インターナショナル版』をベースに変更がなされたものになっています。『インターナショナル版』とは海外版を元にいくつかの追加や変更を入れたバージョンアップ版です。(ちなみに海外では未発売だったりする) 最大の変更点であったジョブシステムは『TZA』でも受け継がれていますが、今回は1人につき2つのジョブが選択可能となっているなど、さらに改善されたバージョンになっています。

読み込みの高速化も当たり前のように思われるかもしれませんが、フィールドの切り替えが多く発生する本作においては大幅な改善になっています。また、ボタン1つで早送りにできる倍速モードは4倍速の他に2倍速の設定が追加されています。4倍は速すぎるので2倍速はちょうどいいくらい。もう2倍速がデフォルトでいいのではないかというくらい、ずっと2倍速でプレイしていましたが快適そのもの。他にもバトルにおける魔法の順番待ちがなくなったことも高速化の一因で、とにかく快適さは大幅にアップしています。

ジョブシステムは無印版の自由なライセンスボードに比べて制限がかけられたわけですが、それによって全キャラクターが万能ではなく、個別の能力に特化した性能になるため、戦況に応じた編成が必要になり、戦術を練る楽しさは上がっているように感じます。とはいえ、個人的には自由なライセンスボードも選択式などで残してほしかったところ。全員が満遍なく強くなってしまうとおもしろくないのではと思われるかもしれませんが、全員を最強にしていく過程は最高に楽しいものなんですよ。

改善されていなかった点としてもっとも気になったのはカメラアングル。画面手前の壁にぶつかると真上からの視点になってしまい、何が何やらわからなくなり方向感覚も乱されてしまう。これは昔やってもキツイと感じだけど今やってもやっぱりキツイ。壁と接触しないように走ればいいんだけれども、これだけは直してほしかったなぁ。

ともあれ、全体的に高速化されたことと寄り道要素がたくさんあることとが噛み合って、時間泥棒に拍車がかかっているのは事実。常に2倍速ならプレイ時間も半分になりそうなものですけど、それでも十分すぎるほどの時間が吹っ飛んでいきます。しかもガンビットがあるおかげで半分自動で動いてくれるわけですから、長時間プレイしてもあんまり疲れないんですよね、このゲーム。で、ダラダラやっちゃう。

ガンビット「このゲームの主人公さ」

『FF12』の最大の特徴は何といってもガンビットシステム。一言でいうなら、味方キャラクターのAIをプレイヤーが組み上げるシステムです。たとえばHPが50%を切ったらケアルを使う、とか、戦闘不能になったらレイズで蘇生する、とか、命令をあらかじめセットしておいて、いざ戦闘がはじまって想定した状況になれば自動で動く、というものです。各コマンドは優先順位をつけられるので、回復よりも蘇生を優先しておけば、まずレイズをかけた後にケアルを使ってくれるようできます。要するに条件文ですね。これを組み合わせて攻撃も回復も自動化していくのがガンビットなのです。

「え、自分で動かさずに自動で動かして何が楽しいの?」と思われるかもしれませんが、これが楽しいんですよ、本当に。独特の快感なので言葉ではうまく伝えられないのが歯痒いのですが、ガンビットの組み立てが綺麗にハマったときの快感は他では得難いものです。相手がどんなに強烈なボスだったとしても、画面を眺めているだけで勝利できてしまう圧倒的な征服感。キャラクターがやられても勝手に蘇生し、毒にかかろうが石化しようが勝手に回復し、前衛は勝手に攻撃を続け、後衛は魔法で勝手に弱点を突く。想定外の攻撃が飛んでくればマニュアルでコマンド選択を余儀なくされますが、そんな事故もなくボスを撃破できた暁には満面の笑顔。こんなベクトルの楽しさはなかなかありません。

時代を経ても名作は名作

そんなわけで長々と書いてきましたが、『FF12TZA』は快適に改善された理想的なHDリマスター版であり、無印版をプレイしたことのある人がもう1度『FF12』を遊びたくなった場合に選ぶべき決定版といえるでしょう。読み込みも高速で2倍速モードもあり、サクサク遊べます。もうPS2版に戻れる気がしません。未プレイの人にとっては、現代の基準からすればすべてを画期的だと感じることは無理だと思いますが、ガンビットという独特の楽しさは今なお色褪せていないのでぜひこの機会に体験してほしいところであります。

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