【機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅱ 哀しみのアルテイシア】観てきたので感想とか

『オリジン』第2話は、シャアの過去を描いたシャア・セイラ編の後編です。原作の漫画版では10巻の部分で、政争に巻き込まれてザビ家への憎しみを募らせていくキャスバル青年と哀しみの底にあるアルテイシアがメイン。前回と同じく、安彦絵がそのまま動いていて雰囲気の再現度がスゴイ。

せっかくなので劇場で観てきました。バンダイチャンネルで1,000円、劇場なら1,300円、だったらスクリーンで観よう、ってことで行ってきました。初日ではなく2日目でしたが、席はかなり埋まっており、客層も老若男女さまざまな印象。さすが「ガンダム」。

とはいえ、今回のエピソードはハッキリ言って地味です。『オリジン』の映像化では、シャアにスポットを当てて1年戦争以前の時代を描く過去編がメインとなっているのですが、「ガンダム」の出番がないどころかモビルスーツ自体が開発中の時代なので、派手なドンパチもありません。さらにいうと、前回はガンダンクでの戦闘がクライマックスにあわせられていたのですが、今回は途中に試作機によるテストシーンがあるくらいなので、どうしても地味な印象は拭えません。(でも、試作機バトルは重たいパンチの迫力とモニタ視点の演出がカッコイイので見応えアリ)

シャアにスポットが当たっているとはいっても、シャア自身が何か言ったりやったりするのではなく、彼を取り巻く人々の群像劇となっているのは前回と同じ。まだ子供であるシャアは独断で行動を起こすこともできないため、ひたすら大人たちの争うに巻き込まれるポジションです。偉大な父親のもとに生まれたというだけで理不尽を強いられ続けた結果、憎しみを募らせて本編のシャアへと変貌していく過程として、地味ではあっても必要不可欠なパートといえるでしょう。

http://www.gundam-the-origin.net/index.html

今回も見所は原作の再現度の高さ。あの漫画がそのまま動いているような雰囲気の再現度はめちゃ高いです。漫画とあわせてみると笑っちゃうくらいそのまんま。

雰囲気の再現度がめちゃ高い

たとえば、ハモンが歌っているシーン。歌に合わせて夜景の空撮から入るのですが、漫画でもまったく同じなんですよね。漫画を読み返していて思わず変な声が出ました。場面転換の何気ない風景のコマですが、それも含めて完璧な映像化がされているわけです。

ガンダム オリジン 2話 ハモンの歌うシーン

この後のラルの乱闘シーンもアクションと映像がピッタリ一致しているので舌を巻きます。鼻の穴に指突っ込んでブン回すのも、原作どおりなんですよね。漫画ではセリフのない小さなコマなので、テンポよくサラッと流してしまいそうなシーンですが、流れるようなアクションとしてキッチリ映像化されているのです。

このあたりの再現度の高さについては、第1話公開後のインタビューで安彦氏自身も語っていました。漫画を描いた本人が絵コンテを担当しているのだから、漫画と同じなのは当たり前、というわけではなく、映像は映像として描こうとした結果、同じになっている、と。

やはりアニメーターの性分というのが抜けていなくて、漫画を描きながらも映像を引きずっているというか、映像から漫画を切り離していないということを再認識してしまうんです。それは、漫画を描いていながら変な尻尾がついているなという感じですよね。でも、この尻尾も捨てたもんじゃない。例えば、コマであるポーズを描いて、そのコマを一旦忘れて「これは映像だから」とシナリオから絵コンテを起こしてみると、それが漫画の絵とほとんど同一になっていることがあるんです。漫画でのやり方は間違ってなかったのだなと。それは、やはり両股をかけてやった人間以外には味わえない、妙で密かな喜びでしたね。

引用元:SPECIAL|機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式サイト

ただし、すべてが原作どおりというわけではありません。映像化に合わせて変更されていたりカットされていたりするシーンもあります。個人的に残念だったのが、上記の乱闘シーン後のラルとドズルのやり取りがカットされていたところ。ドズル相手にまったく物怖じしないラルと、そんなラルを相手に怒ることもないドズルの性格が描かれていて、非常に印象に残っていたシーンなのですが…。この後の車中の会話もかなり削られています。ラルとドズルの関係はコロニーへの毒ガス作戦で袂を分かつのですが(13巻)、そもそも映像化されるのは9~12巻の部分なので、ドズルに割く尺はないのかも。いいキャラしてて好きなんだけどなぁ、過去編のドズル。

あと、原作と違う部分で印象的なのはアルテイシアのビンタ。心優しい彼女が母親の死を受けて、優しいだけではなくなっていく過程を描いたシーンですが、カットされています。後のセイラの勇ましい部分が芽生える描写であり、後に暴徒から身を守るために自ら銃を手にとる場面に繋がっていくのですが、これも13巻なので今回の映像化には含まれなさそうなため、省かれているのかもしれません。後に繋がらないシーンになってしまいますからね。

そもそも本作は「哀しみのアルテイシア」であって「怒りのアルテイシア」ではありませんし、世の理不尽にフラストレーションを貯め込む姿ではなく、ひたすら哀しみに打ちひしがれる姿をメインで描こうとするならば、カットされるのもやむなしかも。

池田秀一ボイスになったキャスバル青年

もう1つ、今回の見所として青年時代のシャアの声です。前回の少年時代のシャアは田中真弓ボイスになっていましたが、青年となる今回はその後の彼と同じく池田秀一ボイスになっています。といっても、ボクたちの知っているいつものシャアではなく、エドワウ・マス青年なので、かなり印象が違っています。ただ若作りをしているだけではなく、特に前半は優しさの残る演技になっています。正直、ちょっと無理してる感もなくはないのですが、とはいえ、ここから数年で”あの”シャアになるわけだから、納得でもあります。

公式サイトのインタビューをみると、実は今回のシャア役についてはオーディションを受けられたそうです。「本人が来たぞ!」って感じだったのかもしれません。もしくは、オファーを出したらオーディションをやるように返されたのかもしれませんが。

実は、今回のシャアを演じるにあたっては、オーディションを受けたんです。自分で再びシャアができるのかどうか不安だったので。

引用元:SPECIAL|機動戦士ガンダム THE ORIGIN 公式サイト

一方、”本物の”シャア・アズナブルの方は関俊彦ボイスになっていました。見た目は同じだけど中身は正反対の2人にどんなキャスティングをするのかは気になるところだったのですが、これも納得の配役かな、と。関係ありませんが、後々ガンダムに乗ったり仮面を被ったりすることになる方だと思うと、なんだかおもしろいですよね。といっても、次回早々に爆発しちゃうんですけれども。

あと、原作と同じく空港でニアミスするアムロ少年は古谷徹ボイスになっています。あどけない少年の演技ですが、もともと若い声質なので違和感なくピッタリ。

次回、第3話は2016年の春

今回の第2話では、原作の10巻の終盤までが映像化されました。10巻ラストのシャアとキャスバルの入れ替わりは次回に持ち越しです。予告を見た感じ、次回の第3話では、士官学校から武力蜂起して除隊になるあたりまで、つまり11巻のラストまででしょうか。いよいよシャアが行動を起こす展開になるので、彼を主役とした物語がはじまるでしょう。モビルスーツはますます出番がありませんが、バトルはいっぱい、ガルマもいっぱいです、たぶん。

それにしても今回登場したモビルワーカーのガンプラ。ガンプラというよりプラクションというか、おもしろかっこいい感じにみえる…。

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