【インターステラー】感想(※ネタバレあり) 置き去りにした宇宙少年の冒険心を呼び起こして運動の第三法則に従おう

SF映画『インターステラー』を観ました。地球が滅亡のカウントダウンに直面した世界で、人類の新天地を求めて外宇宙へ冒険に出るという内容。3時間ほどにおよぶ長編で、視聴者の心を宇宙の彼方に連れていってくれるナイスな宇宙SFでした。やっぱ宇宙は最高だぜ!

インターステラーの感想

『インターステラー』は上映時間が3時間弱もあったので映画館では観られなかったのですが(トイレ的な問題で)、デジタルレンタル配信がはじまったのでようやく観ることができました。お家で観るなら一時停止してトイレに行き放題なので安心して観られますね。

今回はGoogle Playを利用しました。AmazonのインスタントビデオやPlayStation StoreはどちらもSD画質ですが、Google PlayにはHD画質があったので。ただし値段は他よりちょっとお高めの500円。

インターステラー (吹替版) – Google Play の映画

※以下の感想はネタバレを含みます。まだ観ていない人は観てからにしましょう。

冒険心を呼び覚ませ 心を宇宙に飛ばせ

『インターステラー』の世界観は特殊なようで意外とリアル。地球環境の変化によって食糧難に陥っている、というのは、ありえなくはない世界といえるでしょう。少子化が問題な日本ではイマイチ実感がわかないかもしれませんが、70億人を超えて激増する人類に立ちはだかる次なる問題は、食糧と水なのです。劇中では、すでに食糧を求めて争いが起きた後で、もう戦う元気もなく疲弊していく人類が描かれています。

元パイロットでエンジニアだった主人公・クーパーも農家としてトウモロコシを育てる日々。生きることに精いっぱいで夢も冒険もない日常。そんな折、自宅の怪奇現象を追っていたら謎の地下施設にたどり着いて、NASAが人類の存亡を賭けた宇宙開発を続けていた…。なんてワクワクする展開でしょうか。

宇宙へ出たクーパーたちは土星付近のワームホールを超えて、未知なる銀河の未知なる惑星へ。土星付近では豆粒のように小さい宇宙船エンデュランスや水の惑星で山のような並の上で木の葉みたいに流されるシャトル・レインジャーなど、人類の小ささと宇宙のデカさを対比して壮大なスケールを描いています。ボクが宇宙の話を好きなのは、べらぼうなスケールのデカさがあってこそ、自分の小ささを思い知らされてこそ。なので、こういう対比はたまらないですね。

人類の新天地を探す旅は、宇宙の未踏の地を行く冒険の旅。冒険だからハラハラドキドキの連続です。「主人公なんだから大丈夫でしょ」なんて言ってられません。ピンチのシーンでは地球に残った娘・マーフのピンチまでカットバックで重ねてくるものだから緊迫感も倍増。クーパーがピンチになるたびに手に汗を握り「しゅしゅしゅ主人公なんだから、だだだだ大丈夫でしょ?でしょ?…でしょ…?」ってなっていましたね…。

枯れた大地から宇宙を目指すという構図は、ありがちなようにみえるかもしれませんが、冒険心を呼び起こそうとする意図はありがちではないと思います。ボクらの世界はアポロ計画が捏造として葬り去られているわけではないものの、月への到達を転機として宇宙への関心は失われていきました。人々の関心は外側ではなく内側へ。これは、技術が失われてNASAが地下組織になってしまっている『インターステラー』の世界と、あまり違わない状況なのかもしれません。

町山智浩氏がインタビューをした際、「どうして60年代の宇宙SF映画みたいなものにこれほど入れ込むのか」という質問に対し、クリストファ-・ノーラン監督は「人類が宇宙を夢見ていた時代が大好き」であると答えた上で、次のように言ったそうです。

『いま、科学技術は本当に進んだけれども、スマホとかネットとかコンピュータとか、そっちの方ばっかりじゃないか。進んでいる科学技術は。それ、内向きだろう。あまりにも。本当にみんな下を見て、スマホをずっとやってるじゃないか。黙って。どうしたんだよ!?これで人類、どうなるんだよ!?』

町山智浩 クリストファー・ノーラン『インターステラー』を語る

そんなノーラン監督の想いは、劇中のクーパーのセリフにもあらわれています。

かつて人々は、星空を見上げて思った。
「あの向こうに何があるのか?」
だが今は下を見て、積もった砂埃の心配ばかりしてる。

アポロ11号が最初に人類を月へ到達させてから、12号以降はだんだんと注目を浴びなくなっていく様子は、以前読んだ書籍『Marketing the Moon』が詳しいですね。アポロ計画は人類の好奇心と冒険心とを当時の情勢が押し上げる形で実現したもので、『インターステラー』のように人類の存亡がかかっているわけではありません。いまからもう一度あれほど大規模な計画を推進させるとなると、それこそ地球の危機が必要なのかもしれません。だとすれば、ちょっと悲しいですね。

【書籍】『Marketing the Moon 月をマーケティングする アポロ計画と史上最大の広報作戦』
人類を月へ送り込むアポロ計画を科学や技術の面ではなく、マーケティングの面から追いかけた本。月へ到達するまでのサクセスストーリーだけでなく、その後、人々が宇宙開発から関心を失ってしまうまでの過程が書かれており、当時の広告や写真などがカラーで多数掲載されていて資料価値も高め。タイトルに込められたもう1つの意味を考慮するなら、やっぱりサクセスストーリーなのかも。

ボクはアポロの月着陸をリアルタイムで観た世代ではありません。『2001年宇宙の旅』の世代でもありません。でも、子供の頃は、宇宙に関する本とか学研の漫画とかを読み漁る、宇宙少年の1人でした。何万光年という宇宙のスケールに心躍らせ、最高に格好いいスペースシャトルに惚れこむ、ごく普通の少年。『インターステラー』はあの頃の気持ちを思い出させてくれて、キラキラした目で食い入るように観ていたような、そんな気がします。

科学の在り方に踏み込むサイエンスなフィクション

『インターステラー』は本物の物理学者の協力を得た科学考証も見所の1つ。ワームホールにブラックホール、事象の地平線まで、人類がまだ観たことのない宇宙を正面から作り上げています。もちろん、フィクションなのですが、題材を理解した上で料理されているわけですからね。ガチな宇宙論を元にしているだけあって見応えもあり、わかりやすいたとえ話を使った説明も挟んでくれるので見やすさもあります。

たとえば、ワームホールの説明をするシーン。メモ用紙の上に書いたA地点とB地点とを折り曲げて繋げることで、三次元におけるワームホールが球体であることを説明していて非常にわかりやすい。個人的には、「ドラえもん」の『宇宙開拓史』でロップル君からワープの説明を受けるシーンが思い出されてしかたなかったのですが、あれって元ネタがあるのでしょうか。ともあれ、ワームホールの内部の左右で星の流れるスピードが違っている描写など、ワクワクが止まりません。

ワームホールやブラックホールもいいのですが、個人的にお気に入りなのは宇宙が無音で表現されていること。空気がないから無音なのは当然とはいえ、多くの映像作品ではあえて音を入れているのですが、『インターステラー』では本当に無音なのですよね。最初のドッキングシーンでは、船外は完全に無音で、噴射したスラスターも無音。宇宙へ出て最初のシーンですから、なおさら印象に残るシーンになりました。他にも、後半のドッキング後、ヘルメット内の息遣いだけになるシーンで、船内のドアを開けた瞬間に鳴り響く警報がすごく印象的。音響で表現される宇宙がすごくよい。

こうしたSFとしての科学考証もいいのですが、注目したいのが、作品全体のテーマとして「科学の在り方」そのものにスポットが当てられていること。劇中では、クーパーが幼い娘・マーフに科学的な考え方を教えるところからはじまり、生きるために科学を捨てた人類が科学によって救われるところに帰結します。科学が必要とされない世界で、科学の道を進み続けたマーフの手によって救われるのです。

ボクたちは今、科学によって作られた技術に囲まれて生活しているわけですが、別に科学の知識や考え方は必要とされません。そんなものがなくても生きていけるからです。ある意味『インターステラー』の世界観とも一致するのですよね。しかし実際には、科学が不要ではありません。マーフのように科学者になるわけではないとしても、科学的な手法や考え方は必要なのです。

クーパーはマーフに、以下のような端的な言葉で科学を説明しています。

事実を記録して分析する。現象には理由がある。で、結論を出す。

科学というのは別に宇宙や物理の分野に限りません。自然科学だけではなく、社会科学だって同じ。身の回りで起きる些細なことにだって、その理由を求めて考えるのであれば、科学的な手法は必要になります。これだけ情報のあふれている時代ですから、情報の取捨選択の際にその情報が科学的な手法に基づいたものかどうかを判断できることも必要でしょう。

ともあれ、SFというものは科学の入り口でもあります。これを機に科学というものに少しでも興味を持ってもらえたら、というノーラン監督の想いがここにも込められているのかもしれません。

科学と愛が紡ぐ物語

宇宙SFを舞台とした物語は、家族愛が1つのテーマになっています。自分の家族とすべての家族を救いたいクーパーと、宇宙へ出て何十年も便りがなくなっても父を信じ続けたマーフとの家族愛が物語の軸ですね。この家族愛との対比として、さまざまな愛が描かれています。

たとえば、マン博士は自己愛。地球から遠く離れた惑星でたった1人、しかも人類の移住先としてはふさわしくないハズレの星で死を待つのみ…そんな極限状態が、もとは人類の存続のために自らを犠牲にする覚悟で大義を掲げていた立派な人物だったマン博士を変えてしまいます。ウソの信号を発信し、助けにきてくれたクーパーたちを殺してでも、自らが生きるために宇宙船を奪って帰ろうとしました。クーパーとマン博士との戦いは家族愛と自己愛の戦いとも考えられますね。

一方、アメリアは恋人への愛。彼女は人類を救うためにエンデュランスに乗り込みますが、かつて恋人だったエドマンズ博士のもとへ行きたくて仕方ありません。行先としてエドマンズ博士の向かった星を提案した際には、愛について熱弁を奮いますが、およそ科学とは程遠い内容でした。しかし、最終的にエドマンズ博士の星へたどり着いた彼女はプランBを実行することになります。愛する人が死んでも愛は失われないと語る彼女ですから、おそらくマン博士のようにはならないのでしょうね。

ラザロ計画で宇宙へ出た人たちは家族や恋人などをもたない独り身の人ばかり。片道切符の可能性が高いわけだから当然かもしれません。しかし、最後まで生き残り、人類を救ったのは家族を持つクーパーと恋人を想うアメリアの2人でした。愛は勝つ!というわけではありませんが、他者を想う気持ちがなければ他者を救うことはできないのかもしれません。

クーパーとマーフの家族愛が人類を救うわけですが、だからといって家族愛がかならずしも人を救うものではないことも描かれていたりします。クーパーの長男・トムは、妻や息子が病気であるにもかかわらず、医者に引き渡そうとはしません。医療技術の退化した世界ですから、地下施設で死を待つくらいなら一緒に家で暮らしたいと想うが故、これも家族愛に違いありません。家族愛は一歩間違えば人を殺しかねない力でもあるわけです。

ここでのトムは、科学に対する不信や無知の象徴として描かれているようにも思えます。『インターステラー』は科学が失われつつある世界なので、ボクらの目から見ると彼の行動は愚行にも思えますが、現実でも医者を信用せず、症状を悪化させてしまうケースはよくあるそうなので、リアリティのある描写となっています。科学への無知が死を招く。いくら家族愛があっても、無知なままでは救えないのです。

では、科学が万能なのか、といえば、そうでもありません。ブランド教授の研究は希望に満ちあふれたプランAを実現させるためのものでしたが、本当は最初から実現の可能性がないとわかっている絶望的な研究でもありました。同じ数式に違う答えを求めて何度も解き続けるという行為は、アインシュタインのいう狂気に他なりません。狂気は自分の娘をも巻き込んで殺そうとしたのです。

科学も愛も、物語のテーマとして肯定的に描きつつも、別の側面を描いて全肯定とはしないあたり、ノーラン監督らしいという感じなのでしょうか。

運動の第三法則に従うべし

科学や愛をテーマに紡がれる物語に込められたメッセージはTARSのセリフに集約されるでしょう。

運動の第三法則ってヤツだ。
前に進むには、何かを置いていかなければならない。

ブラックホール付近からアメリアをエドマンズの星へ飛ばすため、自らを犠牲とするTARSとクーパー。単に自分たちの犠牲をあらわしているだけでなく、これまでのクーパーの行動をすべて内包する言葉にもなっていますよね。家族を置いて泣きながら家を出て、故郷である地球にすべてを置き去りにして冒険に出る。そして時間の流れが、置いてきたものをさらに大きくさせる。それでもクーパーは最後まで前に進み続けたのです。

冒険の果てに、クーパーは事象の地平線から重力の謎を解き明かすカギを手に入れ、それによりマーフはプランAを実行可能として人類を救うことになります。ブラックホールの向こう側は不可能と考えられた未踏の地。未踏の地だからこそ冒険で、未知のものを認めることこそ科学。かつてこれほどステキな文脈で語られる運動の第三法則があったでしょうか。このセリフを相棒役のTARSにいわせるのだからたまりません。

いまボクらは多くの人やモノに囲まれて暮らしています。しかし、ノーラン監督は、そんなボクらに喝を入れているのです。外に目を向けろ、空を見上げてみろ、冒険心を思い出せ、と。人類存亡の危機というわけでもなければ惑星間を飛ぶほどの大冒険は生まれないでしょうが、宇宙や科学に想いを馳せ、未来の自分を重ねられるのであれば、そこに少しの冒険が生まれるのかもしれません。そんな思いにさせてくれる『インターステラー』は、SF映画のあるべき姿を体現できているといえるのではないでしょうか。

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