ロズウェル事件の真相 円盤は飛んでいたけど宇宙人の乗り物ではなかった

ロズウェル事件といえば、UFO関連の出来事ではトップレベルに有名な事件だ。有名であるが故、真相を示す証拠も多い。これを読んでもまだ宇宙人の乗り物だと思うだろうか?

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この画像は1947年7月8日の『Roswell Daily Record』の紙面。見出しの「RAAF Captures Flying Saucer」とは、「RAAF(ロズウェル陸軍航空隊)が空飛ぶ円盤を捕獲」、という意味。Roswell Daily Record紙は権威ある地元紙なので、ここから大きく報じられるキッカケになったわけだ。

たしかに、ここでアメリカ政府は「フライング・ディスク」が墜落し、それを回収したプレリリースを発表している。しかし翌日には、このプレリリースを撤回し、「フライング・ディスク」ではなく、気象観測用気球だったと訂正している。ここから、さまざまな憶測が飛び交うことになる。気象観測用気球にしては大きすぎるし、見たことないカタチをしているし、政府はウソをついているんじゃないか、と疑われることになる。

でも、これはすべて事実。フライング・ディスクが墜落したことも、墜落した円盤を回収したことも、そして、アメリカ政府がウソをついたことも

第二次大戦中のパイロットを救ったの奇跡の球

ことのはじまりは第2次世界大戦中の技術にさかのぼる。

物理学者のモーリス・ユーイングは海上で墜落した飛行機のパイロットを救助するために作られた装置を発明した。SOFARと名付けられたこの装置、ただの空の球なんだけど、これが一定の水深まで沈んで破裂する、というものだ。この破裂音を海中に設置した複数のマイクで拾い、墜落した位置を特定した、というわけ。

実はこの技術が、のちのフライングディスクに繋がっていく。

音はまっすぐ進まない

ここでまず、音の性質について知っておく必要がある。 音は空気中よりも水中の方が速く進むことはよく知られている。これに加えて実は、温度によって音の速度は変わるのだ。冷たい水より、暖かい水の中の方が速くなる。 これは空気でも同じ。

もう1つ、実は音はまっすぐ進むわけじゃないということ。

わかりやすく説明するために、大勢で横に並び、手を繋いで歩くことを想像してみてほしい。端っこの人のペースが遅かった場合、そっちに引っ張られて曲がっていくことがイメージできるだろうか。音もこれと同じように曲がるのだ。 つまり、遅い方に引っ張られて遅い方へ曲がる。冷たい空気と暖かい空気の中を音が通る場合、冷たい方(遅い方)へ曲がることになるのだ。

音響チャンネルで収束する音

となると、最初に話した救命用の球はどうなるのか。

水深が深ければ水の温度は冷たくなるだろうから、破裂音は深いほうへ曲がってしまうのではないか。 そうすると音が遠距離まで届かないのではないか?と思うが、実はもう1つ、音の速さを決める要因がある。

それは密度だ。水の中の場合だと、水圧になる。 密度が高ければ音は速く伝わる。 たとえば、電車のレールとか。空気中の音を聞くより、レールに耳を当ててみたほうが、遠くを走る電車の音が聞こえるだろう。 空気よりもレール、つまり金属の方が密度が高いためだ。

一定の水深になると、水の冷たさと水圧のバランスが取れて音がどちらへも曲がらない場所ができる。 正確には曲がらないのではなく、ジグザグに進むから、一方向に曲がらない、ということだけど。 救命用の球は、このバランスのとれた水深で破裂することで、遠くまで破裂音を響かせる、というわけだ。

こういった音が曲がらない場所は水の中だけじゃなく、大気中にも存在する。 大気の温度は高いところへいけば下がっていく。山登りをすればわかるとおり。 でも、一定以上よりさらに高い場所へいけば、今度は逆に温度が上がる

その高度はオゾン層のあるあたりだ。 オゾン層より上の紫外線がカットできないところになると、気温は上がっている。 この気温の高いのと低いのと高いのに挟まれた場所では、音がジグザグに進むため、遠くまで音が届く。

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「フライングディスク」を作り上げたモーグル計画

この「音が遠くまで届く高度」を利用しようとした研究があった。この計画の名前はモーグル計画と呼ばれる。これもユーイングによるものだ。

冷戦時、ソ連の核兵器開発を恐れたアメリカでは、核爆発の「」を拾うことで、敵国の状況を知ろうとしたのだ。 水の中ではなく、大気中にマイクを浮かべておき、核爆発の音から、核実験のおこなわれた場所を探ろうとしたわけ。

この計画は、ディスク型のマイクを気球で浮かべておこう、というものだ。 ディスク型のマイクというのは、ディスクの中心にマイク本体をコードで吊ったものだ。

こういう感じのマイク。古い映像なんかにも出てくることがあるので、見たことある人も多いんじゃないだろうか。

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ディスク型のマイクを使ったのは、検地した音を振動として高感度マイクに正確に伝えるために必要だったため。 こうして、ディスク型のマイクを空に飛ばすため、「フライング・ディスク・マイクロフォン」と呼ばれていたわけだ。

そう、報道された「フライング・ディスク」とは、気球に搭載されたマイクのことだったのだ。

事の顛末

というわけで、フライング・ディスクが墜落したのは事実で、翌日、アメリカ政府がそのことを発表したのも事実。 ただし、この時点では、極秘扱いの計画であったため、翌日には撤回され、墜落したのは気象観測用気球だと訂正されている。 つまり、アメリカ政府がウソをついたことも事実だったというわけ。冷戦時の軍事技術だものね、発表できるわけがない。口を滑らせた結果が宇宙人騒ぎとは、なんとも間抜けな話じゃないか。

ちなみに、モーグル計画で作られたフライング・ディスクは、1949年8月29日、ソ連の最初の核実験を探知し、計画を成功させている

なお、アメリカ政府は1994年にロズウェル事件に関する機密を解除している。公開された内容は1997年には一般向けにニューヨークタイムスとポピュラーサイエンスに掲載されている。これだけの事実が揃っていても、フライングディスクを宇宙人の乗り物だと主張するのは、火星人をタコ足のアレといってるくらい想像力が欠けているのではないだろうか。

この記事はリチャード・ムラー著の『サイエンス入門Ⅰ』を参考にさせていただいた。より詳しい内容を知りたい方はぜひ読んでみてほしい。大学の講義内容をベースとして書かれた物理学の入門書で、具体的な例も多くておもしろい内容だ。内容はWeb上でも公開されている。(英語だけど)

物理学は難しいけれど、知っていれば日常がちょっと違ってみえてくるキッカケになるかもしれない。

参考:Secrets of UFOs

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