カツカレーのバイラルループ 得をしたのは誰?

火のないところに煙はたたぬといいますが、マッチ1本の火でも煙でもくもくにすることもできるのだなと感じました。口コミの伝播が”見える“というのは興味深いですね。

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Flickr: jetalone’s Photostream

※画像は”庶民の”カレー。

2012年9月26日、TV番組で自民党の安陪氏がお高いカツカレーを食べたという情報が流れてから、カツカレーをめぐって物議をかもしています。いくら高価だといってもカレー1つでそんなに話題になるなんて、いったいどういうことなんだろう?と思い、流れを追いかけてみました。

ことの始まりに悪意はなかった?

この騒動のはじまりはMBS「ちちんぷいぷい」でのレポートです。実際の映像は以下。

2012.9.26 カツカレー – YouTube

映像を見ればわかるとおり、MBSでの放送は特に悪意を含んだものではなかったようです。また、政治家の昼食を伝えるレポートではなく、各陣営の投票前の様子を伝えるレポートでした。これから投票、という出陣式で、ゲン担ぎの意味を込めて「カツカレー」を食べたわけですね。 せっかくだからと奮発して良いものを選んだのでしょう。

放送の中では政治家の庶民感覚がどうとかいうコメントはでてきません。ただし、「庶民」という言葉はレポーターの口から出ています。まったく違った文脈で

「庶民」という言葉は、レポーターがスタジオに対していった言葉でした。映像の中にあるのは以下のようなやりとり。

レポーター「みなさん、このカレーはいくらだと思います?」
スタジオ「1500円?」「2000…」「2500?」
レポーター「みなさん庶民ですねー」→答えのコメントに繋ぐ

やりとりの中で、安陪氏を非難するような箇所はありませんでした。ちなみに、「3500円のカツカレー」として物議をかもしていますが、3500円はカレーだけの値段で、オプションのカツをのせるともっと高い、と答えていますね。

参考: MBS「ちちんぷいぷい」は3500円のカツカレーをもって安倍氏を「庶民感覚がない」と批判したのか? – Togetter

ネットで話題の中心はマスコミに?

TV放送の内容を受けて、Twitterや2ちゃんねっるなどで話題が飛び交います。

最初は「カレーの値段なんてどうだっていいだろ」「カレー食ったからって何だっていうの?」というところから、「安陪さんを叩きたいんじゃないの?」「まーたはじまった」というような、マスコミに対する懐疑的な意見へ流れていったようです

そして、2ちゃんねるにたったスレッドのタイトルが『MBS「安倍の今日のお昼は3500円のカツカレー!庶民感覚がない!」 なお鳩山の連日豪華ディナーはスルー』というものでした。ここでは矛先はマスコミへ向かっていますね。

上の動画を見ていただければわかるとおり、TV放送では「庶民感覚がない!」というコメントは一切ないし、そういう文脈でもありませんでした。該当スレッドの1レス目からみるに、庶民感覚という言葉をつかった非難はTwitterから出ていたようです。だから、「庶民感覚がない!」は、MBSではなく、Twitterから拾い上げた誰かの一意見だった、ということですね。

参考: mbs「安倍の今日のお昼は3500円のカツカレー!庶民感覚がない!」 なお鳩山の連日豪華ディナーはスルー – Google 検索

今度はマスコミがネットの話題を取り上げ始める

ネットで話題になっていることを受けて、今度はマスコミが高級カツカレーを取り上げ始めます。内容は「安陪氏が高級カツカレーのことで非難を受けている」というもの。

安倍新総裁、高級カツカレーにネット非難 – 政治ニュース : nikkansports.com

放送直後から、ツイッターやフェイスブック上などで「安倍さんは全く庶民感覚がない」「高級カレーをテレビ前で食べるなんて一般人を無視している」などとの非難が出た。ただ、一部には「3500円カレーを食べてみたい」という書き込みもあった。

ここで書かれていることは確かにネット上のどこかで誰かが発言したことだろうと思います。だから、事実ではあると思います。記事を読んでも、別に、これらの批判的な意見が「ネットの総意」であるような書き方はされていません。とはいえ、一部の意見だけをつまみあげて、それをあたかも多数派の意見のように見せることは、毎度おなじみマスコミのスキルなのでしょう。(TVのニュースの街頭インタビューで出てくる数人、とかね)

ともあれ、マスコミはネットの”声”を拾い上げて伝え始めたわけです。それが多数派の声だったのか、少数派の声だったのかはわかりません。しかし、マスコミの伝えたかった”声”とは「安陪氏を非難する声」だったのでしょう。

ところで、ここで「マスコミ」といっていますが、カツカレー関連でネット非難のニュースを伝えているのは、上記の日刊スポーツだけのようです。

“マスコミ”に対してネットの声は憤慨

「ネット民はカツカレーで庶民感覚の非難なんてしてねーよ!」とばかりに矛先は”マスコミ”へ向かいます。取り上げていたのは上述のように日刊スポーツだけなのですが、矛先は”マスコミ全体”のようでした。

その日刊スポーツの親会社である朝日新聞では、「カツカレーが脚光を浴びている」という記事が掲載されています。政治かも庶民感覚も関係なく、あくまでカツカレーの話題です。

参考: 朝日新聞デジタル:〈ニュースQ3〉カツカレー、自民総裁選で脚光 – 社会

ですが、この記事を受けて、2ちゃんねるの反応は以下のとおり。

マスゴミ「3500円のカツカレーが庶民感覚?www」 : 2chコピペ保存道場

「朝日新聞も毎日新聞も、本社ビルでもっと高いカレーを食ってるじゃねーか!」というものです。ネタの流れではあるのですが、朝日新聞も毎日新聞も、他の大手マスコミについても、3500円のカツカレーと庶民感覚についての記事は扱っていないのです。

「高級カツカレーにネット非難」記事に怒りの声 「これぞ偏向報道」「どこのネットだよ」 – ねとらぼ

筆者も当日のタイムラインを見ていたが、安倍氏をバッシングしている人は少数派で、むしろ「さっそく安倍さん叩きか」「カツカレーくらい食べたっていいじゃないか」など、マスコミ側の報道姿勢を批判する声が大半だった。

マスコミの伝えた「安陪氏を非難する声」に、ネットからはマスコミ非難の声があがります。もともといわれのない理由が発端とはいえ、MBS放送当時からマスコミへ矛先が向いている人々もいたわけですから、ここでさらにマスコミ非難の声が大きくなったカタチです。

このあたりにくると、上記ねとらぼの記事の最初の一文が印象的です。

いったい誰と戦っているんだ……。

参考: 「3500円カツカレー」批判の矛先はマスコミに(ゆかしメディア) – livedoor ニュース

乗るしかない、このビッグウェーブに

流れをみると、最初は悪意のない内容でしたが、懐疑心から作り上げたイメージに対する非難を生んでいます。そして、そのイメージに対する非難はさらに飛び火し、大勢を巻き込んでもくもくと煙を上げているわけです。いったい何がいけなかったのでしょう?

一見するとくだらないことのように思えますが、こんな流れでも上手く乗りこなしている人たちもいます

噂の3500円のカツカレーを食べにホテルニューオータニに行った – Togetter

安倍晋三 元総理大臣が自民党 総裁選の前に食べた3,500円のカツカレーを喰らう! | 和洋風KAI

もとになったTV番組の中でも出演者のどなたかが「食べてみたい」とボソっとつぶやいているのが聞こえました。同じように感じた彼らは、実際にホテルニューオータニへおもむき、おいしく召し上がられたようです。なんという勝ち組

もっと勝ち組がいらっしゃるようです。

【安倍特需】空前のカツカレーブームでCoCo壱番屋の株価が急上昇www – Togetter

カツカレーテロ。COCO壱の株価上がる!|我が国のかたち

風が吹けば桶屋が儲かるのではありません。総裁選をやればカレー屋が儲かるのです!

というわけで、同じ波になのに、乗り損ねたマスコミと、上手く乗った方々を比べてみるとちょっと愉快な気持ちになれます。同じアホなら踊らなにゃ損損、というフレーズが浮かんだのはシバ山だけでしょうか?

…それにしても、夜中にこんな記事書くんじゃなかった、お腹が空きすぎる…

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