【オクトパス トラベラー】レビュー 懐かしいようで新しいRPGで8人の旅人たちと最高の旅を

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『オクトパス トラベラー』をクリアできたのでレビューなど。クリア、というのは真のラスボスを撃破するところまでプレイ済みということです。8つの物語が交わり世界の真相にたどり着くまで80時間弱、最後の最後まで楽しむことができました。というわけで以下、ベタ褒めです。

新時代のドット絵表現で演出される旅

『オクトパス トラベラー』を語る上でまず外せないのが"HD-2D"を謳う独特なグラフィックですね。ドット絵のキャラクターをポリゴンの背景にのせたもの、といえば身もフタもないのですが、背景がドット絵に馴染むように作られているおかげで、どこか懐かしさを感じてしまうようなビジュアルになっています。思えば、このビジュアルに一目惚れしたのが本作購入のキッカケでした。

本作のビジュアルを特徴づけているのは、背景の手前と奥をぼかしている効果です。いわゆる被写界深度というやつですね。ピントの合う距離を画面中央付近のみにして、近くと遠くはピンボケするようなっています。昨今のスマートフォンでもこの効果を出せるカメラを積んでいることがありますから、こういった画像を目にする機会も少なくありません。とはいえ、ゲームで、しかもドット絵をメインとするゲームで見かけることは珍しいのではないでしょうか。しかも単に珍しいだけではなく、非常にうまく機能しているんですよね。

遠くに見える水平線や砂漠の丘陵が揺らめいたり、近くに見える砂浜や雪原がキラキラと輝いたり、すごくキレイに見えます。それもただなんとなくキレイなだけではありません。たとえば、山の上からぼやけて見えていた海岸へ下っていくとか、吹雪の先に見えた町の灯りを目指して走っていくとか、見えない場所がだんだん見えてくるようになっていて、旅がうまいこと演出されているのです。こうした演出のおかげで"旅をしている感"が強まり、いつの間にか世界にどっぷり浸り込んでしまうというわけ。そういえば言い忘れていましたが『オクトパス トラベラー』で描かれる物語のテーマは"旅"なんですよね。だからこそ、旅する世界の作り込みに余念がありません。

音楽も旅する世界の一部

旅を盛り上げてくれているのはビジュアルだけではありません。音楽もまた、旅を演出してくれています。『オクトパス トラベラー』におけるフィールドのBGMは地域によって異なります。つまり、地域に音楽がつけられているのです。もちろん、フィールドだけでなく町や村もそうです。なので、旅した各地のイメージと強く結び付けられて印象に残るようになっているのです。晴れた川沿いでは穏やかな曲、鬱蒼とした森では静かな曲、山岳地帯では荘厳な曲。ビジュアルと音楽の相乗効果は抜群です。ちなみにボクは砂漠の曲が好きです。

もちろんフィールドだけでなく、物語を盛り上げるドラマチックな音楽も素晴らしい。中でも特筆すべきはボス戦開始時の演出でしょう。バトルに入る前のイベントシーンの曲からイントロへ繋ぎ、そのままボス戦の曲へとシームレスに展開するようになっています。実はこのときに流れるイントロ、キャラクターごとにすべて別の曲(!)になっています。キャラクターのテーマ曲とはまた別に専用のイントロがあるんですよ。もうね、凝りすぎ。すごい。あとボス戦の曲も何種類かあるのですが、どれもカッコイイんですよねこれが。そんなわけで、旅路だけでなくその先で待ち構えているイベントも最高に盛り上げてくれてます。やっぱRPGは燃えるボス戦ですよ。

8人の旅人による8つの物語

さて、ここまでゲームの"外観"の話をしてきましたが、そろそろ中身の話をしましょう。まずはここまでに書いてきたビジュアルと音楽によって演出された物語について。『オクトパス トラベラー』はそのタイトルのとおり、"OCTOPATH"の名を持つ8人の旅人の物語となっています。8人のうちから1人を選んで開始しますが、誰を選んだかによって物語が変わることはありません。道中で他の7人を仲間にするかどうかによって変化することもありません。独立した8つの物語からなっているのが『オクトパス トラベラー』の物語なのです。

各キャラクターの物語は4章構成で、1つの章にかかる時間は1~2時間くらい。(詰まることなく進められれば) なので、8つすべての物語を終えるまでかかる時間は50~60時間くらいでしょう。ちなみにボクは50時間ちょいでした。1つ1つの物語はコンパクトに感じられるかもしれませんが、それ故に無駄なくスッキリとまとまっている印象です。

8人の旅人たちは職業も年齢もバラバラですから、彼らの繰り広げる物語はテーマも筋書もバラバラです。一人前の商人を目指して世界を巡る少女がいると思えば、父親の仇を探す踊り子の復讐劇だったり、旅というテーマ以外はまったく違った話になっています。当該キャラクター以外は話に絡んでこないため、その場に誰を連れていこうといくまいとストーリーは変化しません。一応、パーティチャットという形式でイベントシーンの合間にキャラクター同士の会話が交わされたりもしますが、展開に対するコメント程度で物語への影響は皆無です。一方で、進める順番は自由なので、誰かの1章を終えたら別の誰かの1章を進めるか、それともそのキャラクターの2章へ行くかは好きにできます。

なので、町の商人から商品を奪った賊を許せずに殴り込みをかけた商人のトレサが、これからお宝を盗みに屋敷に忍び込もうとする盗賊テリオンに手を貸すことになったりします。かと思えば、過去に復讐を成し遂げたけど深く後悔しているかつての英雄が出てきても、現在進行形で復讐をなそうとしているプリムロゼが思いとどまったりもしません。他にも、さすがに4人いるんだからそんな捕まり方はしないよね?という場面でも平気で捕まったりします。助けてテレーズ君。

このあたりはいろいろとツッコミたくならなくもないのですが、考えてみればわりと現代的なのかも、と思わなくもありません。というのも、ストーリーのイベントシーンはメインキャラクターによって進行するけど、いざバトルになるとその場とは関係ない人たちで戦う、これってスマートフォンのゲームでよくあるやつですよね。だから、こういった描き方に慣れている人であれば何の違和感もなく進められるのかもしれません。ボクも途中までは心の中でツッコミを入れていましたが、途中からはそういうものとして流せるようになりました。慣れって怖い。いやすごい。

8つの物語の裏に潜むモノ

ところで、8つの物語はそれぞれ"独立している"と書きましたが、実は完全に独立しているわけではありません。各キャラクターのエンディングで少しずつパズルのピースが明らかになっていき、やがてたった1つの真相へと収束していく…、そんな大きな柱が存在しているのです。それぞれの物語で登場する人物や世界の歴史、そして神話や伝承に至るまで、すべては無関係ではないことがわかってくるように作られています。各物語で描かれる"点"ががいったいどんな"線"で繋がっているのか? それは最後の最後まで明かされることはありません。すべての真相が判明する最後の最後でようやくすべてが繋がり、8つの物語は決してバラバラではなかったことがわかるようになっているのです。

正直、ここまで進めるのはなかなか大変です。しかし、最後の地で真実を目の当たりにし、すべての点が繋がっていく瞬間のゾクゾク感をぜひとも味わっていただきたい。当然ながら超絶ネタバレなので詳細を語れないことがなんとも歯痒い。ここまで進めた人と進めなかった人では本作に対する印象が大きく異なることになるだろうとだけ言っておきましょう。

旅先で出会った人々にやることと言えば…

メイン以外のサブストーリーも豊富に用意されています。サブストーリーは旅先で出会った人々の困りごとや悩みごとを解決してあげるような展開で、それ自体は珍しいものではありませんね。しかし『オクトパス トラベラー』で特徴的なのは「フィールドコマンド」の存在です。プレイヤーは町や村のNPCに対して単に話しかけるだけでなく、もう少し違ったアプローチができるようになっています。なので、その能力を活用して解決に導けというわけです。

実行できるコマンドはキャラクターごとに異なり、たとえば、商人のトレサであれば「買取る」でNPCの持っているアイテムを買えたり、盗賊のテリオンであれば「盗む」でそれらのアイテムを盗んでしまえたりします。盗めるなら盗めばいいじゃん、と思われるかもしれませんが、盗むには成功率があり、失敗を繰り返すとその町でのフィールドコマンドが一切使用できなくなります。そうなった場合はお金を払えば再びフィールドコマンドを使えるようになるものの、手痛い出費になることは間違いありません。

他にも、「聞き出す」でお得な情報を聞いたり、「誘惑」で村人を連れ出してバトルに加勢してもらったり、「試合」と称して殴りかかったり、なかなか自由に振る舞えます。これらを組み合わせることで、家の前に立っている住人を「試合」で斬り倒して中にいる住人から貴重品を「盗む」なんてことも。強盗ですやん。でも子供からキャンディを盗むのはためらってしまったり。こうしたコマンドの存在が自由に感じることに繋がっているのでしょう。

サブストーリーはこうしたフィールドコマンドを活用して進めることになります。なんだか楽しげに思えるかもしれませんが、ほぼノーヒントであることが多く、複数の町や村を跨がないと解決できないことも多いため、けっこう大変だったりします。1つのサブストーリーに対して複数の解法が用意されていることもありますが、それでも答えにたどり着くのは容易ではありません。結局、しらみつぶしにすべてのNPCにフィールドコマンドを試してまわることになりがち。なのですが、そうしていると見えてくることがあるんですよね。

それはNPC同士の繋がりです。たとえば、家を飛び出した息子とその母親とか、生き別れの兄妹とか、あちこちで繋がっているのだとわかってきます。こうした繋がりがサブストーリーの解決の糸口になっていると同時に、世界に生きる人々の存在感が増す要素にもなっています。だからこそ、しらみつぶしに聞き出していくのが楽しくて仕方なくなってくるのですよね。膨大なテキスト量なのですが、知れば知るほど楽しくなってくるのでどんどん読んでしまうという。こうしてまた次の町へ行くのが楽しみになるわけで、これも旅の楽しみを増やしてくれる要素になっているといえるでしょう。

心の赴くままに旅をしよう

新たなフィールドを抜けて次の町へと足をのばせば、その町の人々と触れ合えるだけでなく、強力な装備が手に入るチャンスにもなります。メインもサブもストーリーを進める順番は自由ですから、ただひたすら世界を旅して歩くのも自由なわけです。とはいえ、エリアによって敵の強さが変わるため、序盤のうちから後半の舞台になる町まで行くのは当然のことながらリスキーです。本作では親切なことに、新たなフィールドに入るたびにそこでの推奨レベルが表示されるようになっています。なので、突然の強敵に理不尽な死を告げられることはないのですが、あえて強敵ばかりのフィールドに挑む自由もあるのです。何かしらの制限を見せることでより自由を感じさせる、というのはゲームにおける自由度の見せ方のお手本ですね。

自由に旅することができる、といっても、残念ながらストーリーに関わる場所には入ることができないようになっています。見えない壁ではなく、見える立て看板に行く手を阻まれてしまいます。代わりといってはなんですが、ストーリーとは関係のないダンジョンは多く配置されています。これらのダンジョンは各フィールド内に点在しているのですが、大抵は脇道にあるのでやや見つけにくくなっています。とはいえ、ノーヒントというわけではありません。マップをよく見ると洞窟や遺跡のようなものが描かれているのですが、その場所には本当にダンジョンが存在しているからです。こうした寄り道要素が本当にたくさん用意されているので、ついつい道をそれてウロウロしてしまうのも仕方ないというもの。とにもかくにも旅を楽しむための要素が詰め込まれた世界になっているわけです。

どこかで見たことがあるようでどことも違う新機軸バトル

楽しい旅ですが、悪党や魔物との戦いも避けては通れません。といってもRPGですから、戦いも楽しいものになっています。『オクトパス トラベラー』のバトルはサイドビューのターン制で、一見すると懐かしく見えるかもしれません。しかし、どこかで見たことがあるようでどことも似ていないバトルシステムになっており、プレイ感は新鮮そのものになっています。

まず特徴的なのが「ブレイク」。敵にはそれぞれシールドが設定されており、シールドがあるうちはダメージが通りにくいのですが、弱点を突くたびにシールドが削れていきます。すべて削りきるとブレイクが発生し、1ターン行動不能になると同時にすべての攻撃に対して無防備になり、大ダメージのチャンスが訪れます。本作における弱点は直接ダメージを与えるためというよりも、シールドを削ってダメージチャンスを作るための要素になっています。ところで、ブレイクの瞬間にスローになってパリーン!と割れるエフェクトが最高に気持ちいいですよね。癖になります。

次に特徴的なのが「コマンドブースト」。ターン経過とともに溜まっていくBPを消費することでブーストがかかり、通常攻撃の回数を増やしたり、アビリティの威力を高めたりできます。溜めて放出するコンセプトは「ブレイブリーデフォルト」に近い印象ですが、自動で溜まっていくことや"前借り"ができないことで、かなり違ったものになっています。溜まったBPを使って一気にシールドを削りきるもよし、ブレイクさせた後に瞬間火力を高めるもよし。ブーストするタイミングが『オクトパス トラベラー』のバトルのキモといっても過言ではないでしょう。

ブレイクとコマンドブースト、この2つを活用するバトルにおいて、現行ターンと次のターンの行動順が表示されているのは実にいいですよね。「HPがピンチなので早く回復したい…でも次のターンの初手でブレイクできるからバフを優先か、でも攻撃を外したらマズいよな…」といった感じで、悩ましい選択を何度も迫られることになります。おかげでバトル中に少し止まって考える時間が何度もあるわけですが、これが非常に楽しい。

ゲームの序盤ではとにかくブレイクを目指せばいいのですが、だんだんとゲームに慣れてくる中盤以降では少し様変わりしてきます。というのも火力の高い奥義を習得するからで、ブレイク時の瞬間火力が大幅に高まると、今度は強化や弱体のタイミングを合わせることの重要性が増していきます。さらに終盤になると、敵も厄介な状態異常や強化消去などを交えてくるので足並みを揃えるのがムズかしくなり、どこまでも頭を悩ませてくれます。だからこそ、悩み抜いた挙句ブレイクから最大火力を叩き込めたときの快感はたまらないものがあります。なんにせよ、ゲームの進行とともに戦術が変わっていくので最初から最後までずっと楽しく戦えました。

ジョブとアビリティの組み合わせを考えるのも楽しい

頭を悩ませてくれるのはバトル中の選択だけではありません。バトル前の編成や育成においても大いに悩ませてくれます。その1つがジョブシステム。各キャラクターは固定のベースジョブの他にサブでもう1つジョブに就けることができます。ベースとサブの組み合わせを考えたり、習得できるサブアビリティとのシナジーを考えたり、悩みが尽きることはないでしょう。ジョブが出揃う終盤では「えっ、これ反則じゃね?」と感じるような組み合わせがいろいろあるのが最高に楽しいですね。実際には、反則かと思える組み合わせにも対抗策を持った敵が用意されているので意外とセーフだったりするのですが。よくできてます。

サブのジョブはいつでも変更可能ですが、パーティで共有しているので同時に全員を同じジョブにすることはできません。これもまた悩ましいところで、どのジョブを誰に割り当てるのが最適なのか、誰と誰を編成するのが強いのか、試行錯誤を繰り返すことになります。ありがたいのが各ジョブのアビリティを習得するためのポイントは共通なので、育成そのものは非常にラクなところ。といっても、ポイントも経験値もバトルに参加させなければ得られないので、レベルに差がついてしまった控えメンバーを鍛えるとなるとなかなか大変ですけれども。えっ?お気に入りのメンバーだけ鍛えればいい? そりゃそうなんですけれども、そうもいかないんですよね。『オクトパストラベラー』は8人の物語なのですから。

長く楽しい旅を

そんなわけで『オクトパス トラベラー』は懐かしさを感じるビジュアルや雰囲気を持ちつつも、過去のどのゲームとも違ったRPGとなっております。だからといって完全に未知の新しさというわけでもなく、どこかで触れたことのあるような手触りを感じさせてくれるRPGでもあります。1人1人の物語はコンパクトにまとまっていますが、8人全員の旅を終えようとするならかなりのボリュームになりますし、サブストーリーを含めて最後の最後まで進めようものなら本当に長い旅路になることでしょう。

それでも、できるだけ多くの旅人たちに執着点まで見届けていただきたい。旅は自由なものですからどこで終えようとも自由ではあるのでしょうけど、最後の場所でパズルのピースが嵌る瞬間のあの快感を、ぜひとも体験していただきたいと願ってやみません。それでは皆様の旅が素晴らしいものになりますように。

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