いまさらですが『BioShock Infinite』をプレイ。クリアしたのでレビューを書きます。発売直後に各所で絶賛されていた理由が非常によくわかる内容でした。ただし、ネタバレを避けるため、ストーリーについては大きくは触れません。
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Steam:BioShock Infinite
発売されて1年経っていていまさら感もありますが、プレイしました。というのも、Steamでセール中だったためです。DLC「Burial at Sea: Episode 2」がリリースされるタイミングでのセールだったようですね。
といっても今回はDLCではなく『BioShock Infinite』本編のレビューです。発売から1年経過しているとはいえ、ネタバレはできるだけ避ける方向で書きます。なぜかというと、あの結末はぜひとも自分の目で確認してほしいと思うからです。ネタバレであれほどの衝撃を薄めてしまうなんてもったいない!と思うからです。
しかし、本作の世界観やストーリーは実に語りたくなるものだし、考察したくてたまらなくなる代物なので、ネタバレ全開の考察記事も別途書いてみたいところではあります。が、今回はネタバレなしの方向で。
【バイオショック インフィニット】『コロンビアの子羊』トレーラー – YouTube
できるだけネタバレを避ける方向で書くつもりですが、正直なところ、この記事すら読まずに空中都市コロンビアへ足を運んでいただきたいというのが本音です。Steamのセール期間は終わっちゃったので、即買えとも言いづらいのですけども。ちなみにSteam版も日本語の吹き替えになっています。
海から空に舞台を移した「Bioshock」
実は、ボクは初代「Bioshock」はプレイ済みなのですが、続編であり前作である「Bioshock 2」は未プレイです。なので、そういう人が書いていると思ってください。
「Bioshock」といえば海底都市ラプチャーにビッグダディだったわけですが、『Infinite』では大きく方向転換して空中に浮かぶ都市コロンビアが舞台になっています。海底の暗くてじめじめした閉鎖環境とはうってかわって、明るく開放的で、これまでとは真逆のイメージですね。
しかし、明るい陽の光の下だからといって、明るい世界であるわけではないのです。空中都市コロンビアは、預言者カムストックのもとでカルト教団となり、アメリカ本国から分離し、強烈な人種差別の横行する歪んだ都市になっています。パッと見の明るくキレイな印象と、その中に潜む狂気がコントラストとなり、ラプチャーとはまた違った不気味な世界を作り上げていますね。
世界観を作り上げている細かい描写の細かさは相変わらず。プレイヤーの目と耳に何気なく入ってくる光景が世界を印象付けるパーツとしてうまいこと配置されている感じですね。道行く人々の会話も、壁のポスターや看板も、ラジオから流れてくる音楽も、どれも雰囲気十分であり、プレイヤーをコロンビアに連れていってくれる没入感の高さは相当のもの。
あちこちを探索する要素があるので、こういった細かい作り込みはあるとないとでは大違い。ただ、今作は探索要素はそれほど多くなく、途中で脇道に逸れる程度の印象ですね。進んだ後に引き返して探索、という流れは個人的にあまり好きではないので、今回の方が好み。それが「Bioshock」的ではない、といえばそうかもしれませんけどね。
アメリカのアメリカンのためのストーリー
ストーリーについてはネタバレになるのであまり深くは触れません。が、ここが本作の最大の魅力の1つであることは間違いありません。各所で絶賛されている要因の1つはやはりストーリーなのです。
シングルプレイのFPSですから、ストーリーが重要であることは疑いありません。全体のプロットも、個別の演出も、どれもがプレイヤーの求めるところのものでしょう。『BioShock Infinite』は、興味深いプロットに派手な演出も加わり、高い評価を受けるのも当然といったところなのですが、もっとも注目すべきは題材にあります。
本作で扱われている題材は、アメリカの歴史、文化、宗教などに深く根ざしたものです。人種差別のようにタブー視されているテーマを正面に置き、真っ向から切り込んでいるのです。そして、このテーマについて『BioShock Infinite』の出した答えが”あの結末”なわけですから、そりゃあ絶賛もされるわけです。
残念なことに、アメリカに深く根差したテーマであるが故に、日本人のボクにはピンとこないというか、実感がわかないというか。ボクの教養が足りていないのもありますが、本作を真に理解することはできなかったなというのが正直なところです。
とはいえ、終盤の怒涛の展開から衝撃のラストまで「すげぇ…」の連続なので、ぜひとも体験していただきたいところ。
ストーリーの見せ方については、メインで進行する部分を、オーディオログで断片化された部分で補っていくカタチになっています。補足情報が断片化されているので、プレイヤーは自分の頭の中で再構築して理解を深めようとします。つまり、能動的にストーリーを追うわけです。
能動的に理解しようとするから、おぼろげに全体像が見えてきたときには誰かと語り合いたくなるし、自分なりの理解を並べて考察したくなるわけです。
個人的に、収集要素は面倒だから大嫌いなのですが、パズルのピースを自分で組み上げるタイプのストーリーテリングは嫌いになれないんですよね。2周目にもなると、オーディオログで語られている内容もわかるようになっていて「あーなるほどなーそういうことだったのかー」などといいつつ探索しているボクはまんまと開発者の手法に呑まれている感バリバリです。
銃と超能力の「Bioshock」的シューター
敵とのバトルは銃と超能力を使ったもので、いかにも「Bioshock」なものになっています。
超能力「ビガー」はどれも強力なので、ケチらず使えばどんどん楽になる感じ。銃は1度に2種類しか所持できず、もてる弾薬にも制限があるので、銃だけで戦うと弾切れも起こしやすくなっています。これはもう「ビガー使え」ってことなのでしょう。といっても、ビガーだけでも息切れしてしまうので、両方上手に使ってくださいね、という調整がうまいことできている印象。
体力はシールドと2段階になっており、シールドのみ自然回復。シールドが破られたときや回復したときは画面全体にエフェクトがでるようになっているため、隠れるべきピンチの状況が非常にわかりやすいんじゃないかと。
空が舞台なので、空を飛んでいることを実感できる要素として「スカイライン」があります。これはレールに引っかけてジェットコースターのように高速で移動できる手段。ぶらさがった状態から奇襲も可能であり、敵も利用してくるといった具合になっています。これはもう単純にスピード感があってキモチイイですね。
個人的に気になったのは視界の狭さ。ややズームした感じで左右に視界が狭くなっており、ミニマップもないので真横にいる敵に殴られたりします。
視界の狭さはバトル中だけでなく、探索しているときにも影響します。アイテムを求めてキョロキョロする機会が多くなりますから、3D酔いしやすい人は注意が必要でしょう。ボクは平気でしたが、プレイ後はなんだかやけに疲労を感じたため、三半規管にダメージがいってたんじゃないかなと思います。
さて、ここからが1番大事な部分です。
可憐でかわいいエリザベスの存在
このゲームの半分はエリザベスでできています。人によっては8割、いや10割かもしれません。
ゲームは彼女を連れ出す目的でスタートしますが、出会ってからは行動を共にするパートナーとなります。もちろん、ストーリー上も重要なキーパーソンのポジションにいます。
特殊で複雑で境遇のエリザベスですが、単純に1人の女性としてとっても可憐。こんな人とずっと一緒に行動して、傍で喜怒哀楽をみていれば、何も感じるなというのが無理な話です。
エリザベスについてもっともすばらしいと感じるのは、イベントシーンではなく、それ以外の探索パートや戦闘パートでの彼女の行動です。いやもちろん、イベントシーンで多彩に変化する表情もすばらしいのですけども。
まず、探索している最中、彼女は常にプレイヤーの前を歩きます。後ろについてくるわけではないんですね。常に目の前にいるわけだから、常に意識させられるわけです。
前を歩くことで、常にプレイヤーに存在感をアピールしてくるんですね。しかも、ただ歩いているだけではなく、立ち止まって何かを眺めてみたり、椅子に腰かけてみたり、他愛のない会話をしてみたりと、行動による性格付けをちゃんとやってるわけです。まさに命が吹き込まれている感じ。
戦闘中、彼女は戦ってはくれません。かといって、守るべき対象というわけでもありません。なので、敵の目の前でマヌケな行動をするわけでもないし、勝手にやられてゲームオーバーに追い込むようなこともしません。
エリザベスは戦闘がはじまると後方の遮蔽物に身を隠し、プレイヤーの視界からはいなくなります。プレイヤーの戦いの邪魔は一切しないわけです。それどころか、体力やソルトの回復アイテムや弾薬を投げてくれることで、プレイヤーのサポートをしてくれるのです。体力や弾薬が減ったタイミングで投げてくれるので、本当にありがたい存在になっています。
戦闘中のエリザベスは、プレイヤーにとって一切デメリットのないメリットだけの存在になっているわけです。彼女の存在は、従来のFPSによくある”邪魔な味方”とは一線を画しています。
探索でも戦闘でも、どちらの場合も彼女が決してプレイヤーの邪魔にはなっていないことがポイントです。前を歩かれるからといってウザくなることもなければ、戦闘中に余計なことをするわけでもありません。存在感をアピールするために常に何かしら行動しているわけですが、プレイヤーのストレスにはまったくならないのです。
存在感を出しつつ邪魔にはさせないという絶妙なバランスを、当たり前のような快適さで自然に作り上げていることこそが、もっとも驚嘆すべきポイントなんじゃないでしょうか。
開発者もエリザベスのAIの作り込みについて語っている記事もいくつかありますが、彼女の存在が本作において非常に重要なパーツであったことは、やはり疑いないですね。
参考:【GDC 2014】「Bioshock Infinite」エリザベスに命を吹き込むAI実装事例 – GAME Watch
こうして書いていると彼女の存在がゲームの10割でもいいような気がしてきましたね。いや、きっとそうに違いありません。実際エリザベスを眺めているだけでもお釣りがくるくらいに楽しめますし。エリザベス100%でしょう。
大丈夫です。
そんなわけで『BioShock Infinite』、未プレイの人はこの機会にぜひ。いつ遊んでも楽しめるタイトルなので、いますぐでなくても、何かのセールのときでもいいです。でもいつかは、エリザベスと一緒に物語の結末を体験してほしいと思います。
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