戦闘中にピコーン!と電球がついて強力な技を閃く瞬間は『ロマサガ』シリーズでテンションが上がる瞬間でありましょう。新作RPG『レジェンドオブレガシー』でも同じように”覚醒”というシステムがあり、やはりキター感の高い瞬間になっています。アレってどうしてクセになるほど気持ちよいのでしょうか?
『ロマサガ』から受け継ぐといっても技を閃くのは『ロマンシングサガ2』からなのですけれども、あの電球は『ロマサガ』の代名詞といっても過言ではないほど印象の強いゲームシステムでした。最近ボクがプレイしている『レジェンドオブレガシー』も似たようなシステムを採用しており、やはり同じような快感を与えてくれるものになっています。
この”閃きシステム”はどうして心をとらえて離さないのか、その楽しさの理由を考えていきたいと思います。
“閃き”はコマンド選択式バトルに仕込まれたクジ引き
『ドラゴンクエスト』以降、広く一般化したRPGのコマンド選択式バトルですが、そのコマンド選択の1回1回にアタリを付けたのが閃きシステムです。ものすごく雑な言い方をしましたが、大体そんな感じだと思います。
クジ引き的な要素は多くのゲームにあります。レアアイテムのドロップとかレベルアップ時のパラメータ上昇とか。”閃き”も”覚醒”もそのうちの1つといえるでしょう。閃きシステムはバトル中にコマンドを選ぶたびにクジ引きの抽選が行われるため、とにかくクジを引ける回数が多くなります。特にバトルに特化した『レジェンドオブレガシー』においては常にクジ引きをやっているようなものかもしれません。
クジ引きの魅力は「当たるかもしれない」と思われるところにあります。ギャンブルと同じで「当たること」それ自体ではなく「当たるかもしれない」という”期待”こそがコアなのです。
人間の脳は「報酬系」という仕組みがあり、欲求が満たされたときや欲求が満たされそうなときに活性化して快感を覚えさせるものですが、満たされたときよりも満たされそうだと期待するときの方が強く活性化します。このあたりの話はギャンブル依存症の研究などでも登場する話ですね。前に読んだ『期待の科学』に詳しい解説がありますので参考にどうぞ。
要するに、クジ引きの回数を多くすることで脳の報酬系を常に刺激し続けることになっているわけです。脳汁が出るというヤツです。バトル中に1回行動するたびに抽選が発生するんだからドバドバです。
『ドラクエ』や『FF』でもかいしんのいちげきとかクリティカルヒットとかあるじゃん?と思われるかもしれません。たしかにあれもクジ引きのアタリのようなものですが、あちらは数値ばかりのバトルにゆらぎを持たせる意図の方が強いんじゃないかなと思います。何より、一発限りの威力上昇と技の習得とでは価値が大きく違います。
クジ引きのアタリの価値を高めるために
クジ引きの魅力を高めるには、アタリの商品の価値が高ければOK。屋台のクジ引きにおけるファミコンソフトみたいな、でかいアタリがあればいいわけです。”閃きシステム”においてのアタリ商品は技になっているわけですが、その価値は非常に高いといっていいでしょう。
なぜ技の価値が高いのかといえば、敵が強いからです。ご存じのとおり、『ロマサガ』や『サガフロ』の敵はめっちゃ強いですし、『レジェンドオブレガシー』でもめっちゃ強いです。ちょっと油断すると即全滅してもおかしくないくらい強いです。いや、油断してなくても十分死ねます。なので、生命線となる技の価値は飛躍的に高められているわけです。
さらにいえば、”閃き”も”覚醒”も相手が強ければ強いほど発生しやすくなっています。なので、強い敵にも価値があるわけなのですよね。閃く技は全部が強いわけではなくハズレもあるため、よりアタリの確率が高いクジ=強敵の存在価値が
高められています。アスラ道場みたいなアレですね。
普通は強敵ってプレイヤーにとっては嫌なものなんですが、喜んで強敵に挑める仕組みになっているのです。これについては強敵のドロップにレアアイテムを設定するような手法もあると思いますが、前述のとおりバトル中におけるクジ引き回数が圧倒的に多いので、脳汁の出る回数も段違いってわけです。
また、強敵との戦いの最中、全滅にピンチに破れかぶれで攻撃したら乱れ雪月花を閃いて大逆転、なんてドラマを生み出す可能性があるのも魅力ですね。脚本不在のドラマを数値と確率とで描けるのはゲームの妙でしょう。
ちなみに、『サガフロンティア』シリーズにおける「連携」は閃きシステムの延長線上にあるシステムでしょうね。あれもコマンドを選択するたびに抽選が行われており、アタリが出れば非常に強力、という意味では同じですし。
確率だから毎回同じにならない
クジ引きのアタリは要するに確率なので、同じようにプレイしてもまったく同じように技を閃いてくれるわけではありません。序盤から最上位の技を都合よく閃いてくれることはまずないでしょうけど、ある程度のゆらぎが生まれるのは間違いないでしょう。
誰がやっても同じにはならないので「お前いまどんな感じ?」「いやービアンカちゃん最高にひらめ覚醒するわー」「ウチのカエルが盾技覚えないんだけど…」みたいなことになります。今風にいえばナラティブだとかローグライクだとかになるでしょうか。(ローグライクというかローグライク・ライク?)
技の習得は確率なので、結局ある程度は運次第になってしまっています。「運ゲー」といわれると印象が悪そうですが、運に左右される部分をプレイヤーの腕でカバーするのが攻略というものです。運悪くしょぼい技ばかり閃いてしまったとしても、配られたカードで勝負してなんとかする…そこが楽しめるかどうかはプレイヤーの好みが分かれるところかもしれません。
ともあれ、毎回同じにならない、ということはリプレイ性を高めることにもつながります。プレイヤーの腕を問われる部分もあるので、プレイ毎に上達を実感できるという充実感もあるでしょう。RPGで上達感があるって意外と少ないと思うのですよね。
そもそも『ロマサガ』はフリーシナリオシステムを売りにしていたり、主人公が選択できたりと周回プレイを推奨する作りになっています。『レジェンドオブレガシー』ではシナリオらしいシナリオはないものの、主人公は選択制で技やフォーメーションなど、戦い方の部分で攻略を詰めていけそうな部分が大きくなっています。というか、説明不足の部分を手探りで理解していくことになるので、上達感というより理解度の上昇が正しいのかも。
クジ引きの楽しさを周りからも固める作り
“閃き”に”覚醒”システムがどうして楽しいのか。まとめるとこんな感じ。
・要するにクジ引きである
・バトル中のコマンド選択だからクジの抽選会数が多い
・しかもクジ引きにはアタリを期待させる中毒性がある
・なのにアタリである技の価値が高い
・アタリ=技の価値を高めているのは敵の強さである
・強敵の方がアタリを引きやすいので強敵と戦いが楽しい!
・アタリは確率なのでプレイ毎に差がでる
・何度遊んでも楽しい!
ゲームでクジ引き的な要素といえば、真っ先にソーシャルゲームのガチャを思い浮かべる人も多いでしょう。実際、文字通りのクジ引きをやっているわけですからね。アタリにどうやって価値をつけるかが焦点になるのですが、わかりやすく価値をつけたものがパチンコやスロット、つまち現金を報酬としたギャンブルになります。いかにこの手法が強力か、わかると思います。
“閃き”や”覚醒”システムは詰まるところクジ引きなのですが、それを固める周囲のシステムのおかげでものすごく印象深くて楽しいものに仕上がっていると思うわけです。
なんといいますか、こうして書いてみるとすごく当たり前のことを当たり前だといっているだけの気がしないでもないですね。閃きの楽しさなんて、電球がピコーン!して乱れ雪月花!!ジャキジャキーン!イヤッホォォォオオォォウ!!でいいと思います。