【ブレイブリーデフォルト】クリア後レビュー シナリオとシステムが両方そなわり最強にみえる

ブレイブリーデフォルトを最後までプレイできたので感想というかレビューというか。ネタバレはない方向で。

懐かしさに少しのスパイスを加えて大きく化けたのが本作「ブレイブリーデフォルト」だろう。少しのスパイスとは、「5pb.の林直孝氏を起用したシナリオ」、「バトルシステムのブレイブとデフォルト」の2つ。そして、そのスパイスを見事に料理したスタッフの心意気に最大の賛辞を贈りたい。

ちなみに全ジョブマスターしてから最後の戦いを終えましたが、プレイ時間は53時間ほどでした。

先の展開が気になるシナリオには巧妙な仕掛けがある

正直なところ、スクウェア製のRPGにおいて、ストーリーとかシナリオとかは弱点だったと思う。RPGにおいて、先の展開が見たくて夜更かししてでも進めようとしてしまう、とか、止め時を失ってしまうような、そんなシナリオには久しく当たっていなかったように思う。その弱点に対し、「STEINS;GATE」や「ROBOTICS;NOTES」の林直孝氏を起用し、ピンポイントに穴を埋めたのはまさにホームランだったのではないだろうか。

RPGにおいて、おもしろいシナリオとは、文章にしてみておもしろいかどうか、ということではないと思う。プレイヤーをどう引き込むか、ってことが大事なんだけど、本作では引き込み方が非常に巧妙だった。プレイヤーが画面の前で指をくわえて見ているだけになってしまうようなシナリオでは、プレイヤーは世界に入ってきてくれない。そこで、自分から能動的に世界に入り込んでもらうために「 Dの手帳という仕掛けを施したわけだ。

これから起こることが記されているという「Dの手帳」。その巧妙な仕掛けとは、文章としておいてあるだけ、ということだ。映像として流した方がプレイヤーにとっては楽だろうけど、それでは右から左へ流れていってしまう。そうならないように、自分から手帳を開きページをめくり読ませるようにしたのだ。こうして、自分から世界へ足を踏み入れてもらおうと仕掛けたわけ。料理をお客様のテーブルへ運ばず、自分で取りに来てくれるように置いて待っているというやり方は、なかなか勇気のいる作りだと思う。でも、これから起こることが記されているわけだし、キャラクターたちも手帳を何度も参考にするシーンが描かれているため、いやがおうにも読んでしまう。

「Dの手帳」に記された未来と、実際に目の前で起こる現実、という2つをつき合わせて、先の展開を読もうとしてしまう。だからこそ、先の展開が気になって仕方がなくなる。このへんのつくりは実に巧妙。

それから、もっとも大事な場面でプレイヤーに判断を任せてくれるシナリオというのも、なかなか勇気のある作りだと感心させられた。そもそも、タイトルになっている「BRAVELY DEFAULT」とは、「勇気を持って、果たすべき約束・責任を放棄する」ことを意味している。劇中でも、従わない勇気を持て、と何度もアドバイスをされる。そして、1番大事な場面で、プレイヤーに選択を委ねてくるのだ。画面の中で、ボタンを押せ!と表示されていても、キャラクターに指示をされても、従わないことが解決になるとは、なんとも最高の裏切り方をしてくれたものじゃないか。この「 見えない選択肢」に気付いたときのカタルシスは、RPGというジャンルではなかなか感じることのできないものではないだろうか。

RPGというジャンルは、しばしば「おつかいゲー」なんて言われたりする。ゲームの中から指示されるまま動いていれば、クリアまでたどり着けるものがほとんどだろう。でも、本作ではそういった「RPGの常識を真っ向から斬り捨てた。そのために、自分から世界に踏み入れるための仕掛けを巧妙に施し、自然と自分で考えるように促し、行動を選択させることに繋げている。これは見事という他はないだろう。

ところで、本作の体験版ではストーリー部分には一切触れられておらず、内容も完全に「おつかいゲー」になっている。製品版では、「収集品を何個もってこい」みたいなおつかいは全く発生しない。バトルシステムを体験するには丁度よいものなのだけれど、あの体験版で「おつかいゲー」だと判断されてしまっては悲しい。本編ではそれとは全く逆のテーマで作られているわけだから、ちょっと損をしているのかもしれない。

手帳には、話が進むに連れてメモ書きが増えていく。武器やアイテム図鑑の説明はちょくちょく”遊び“が見られるので、ちょくちょく確認してみるのが楽しかった。

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これはアクセサリ「洗濯ばさみ」のもの。道具の「目覚まし」もこんな感じなので、これを書いた人は睡魔と闘っていたのかも。

ギリギリの強さが単調なバトルを生み出す?

ジョブとアビリティというシステムはFF5を思わせるものだ。でも、「ブレイブ」と「デフォルト」を加えたバトルシステムは過去のFFシリーズとは大きく異なる。ターン制バトルにおいて、行動回数を貯めたり、前借りしたりできるシステムは、斬新であるがわかりやすくもある。敵もこのシステムを使ってくるため、特にボス戦では、相手のパターンをみて行動することがカギになり、醍醐味になる。

ザコ戦はブレイブで行動回数を前借りして一気にカタをつけることになる。そのため、強力な全体攻撃などを覚えてしまうと、それを繰り返すだけの単調なバトルになりがちだ。そんなの使わなきゃいいじゃん!とも思えるんだけど、ザコ敵がけっこう強く、やられる前にやれ的なバランスである以上、そうも言ってられない。どのくらい敵が強いのか?といえば、フェニックスの尾が店売り100円であることを考えれば想像しやすいだろうか。(エーテルは1000円)

新しいジョブはサブイベントをこなすことで入手できる。これはあくまでサブイベントなので、無視して進むこともできるっちゃできるのだが、それだとボス相手に厳しい戦いになってしまう。だからといって、サブイベントを全部こなしていると、ボス前に相当仕上がってしまう。序盤はそれでもギリギリバランスを保っていたのだが、 後半はかなり極端なバランスだったように思う。増えていくジョブとアビリティに対して、「このアビリティがないと無理!」という要素が出てこないように考えると、一撃を耐えるか死ぬかみたいなバランスが多くならざるを得なかったのだろうか。

ボスが強いからこそ、ギリギリの戦いというものが生まれやすいのも事実。 「1ターンで2人転がった!」「もうMPない…」といった絶望的な状況から、ギリギリで立て直して勝つ、という流れは実に熱い。 そのまんま全滅することももちろんあるんだけど。 終盤になればなるほど「それは理不尽じゃね?」って状況になることもあるけれど、なんとかなるようにできているところは好き。

戦闘の難易度については、通信要素である村の復興やフレンド召喚、アビリンクによっても変わるはず。ちなみにシバ山の場合は、フレンド召喚は使わず、村の復興もネトフレ招待のみで復興完了はクリア後になりました。なので、ちょっと厳しいめの条件だったのかも。

攻撃をシュバババするのは楽しい。でも16Hitは長い。2刀流だとさらに長い。でも楽しい。

ノスタルジックなゲームのライバルは過去の思い出

FF5のようなシステムだ、ってことになると、比較対象が過去のゲームになってしまう。正確にいえば、過去のゲームの思い出だ。昔のゲームはよかった、なんていったところで、子供の頃の感受性は戻ってきてはくれない

それでも、このブレイブリーデフォルトはあえてノスタルジックなつくりを選択している。どうすれば懐かしさを感じられるようにできるのか、どうすれば昔っぽさを出しつつ新しいものにできるのか。そんな問題を1つ1つ丁寧に考え、過去の思い出に真っ向勝負を挑んでいるのだと思う。このゲームには、開発者のそんな心意気が溢れている。過去に学び、今に昇華するという作り方を見事にやってのけているのだから。

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