【ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!】1stインプレッション この道は険しき道也

戦車でスポーツ的に戦う「戦車道」に挑む女の子たちを描いたアニメ『ガールズ&パンツァー』、通称「ガルパン」がスマートフォン用ゲームアプリになりました。よくあるスマホゲーのように、キャラクターをちびちび育成していくタイプですが、題材の「戦車道」にあわせたシステムが特徴です。ただしこの「戦車道」、かなり険しい道の予感。

スマホゲーム『ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!』が11月10日より配信されています。アプリのダウンロードは以下でどうぞ。

iOS版:ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!
Android版版:ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!

劇場版の公開も間近に控えた『ガルパン』が再び旋風を巻き起こすキッカケとなるのか。現在のモバイルゲームは、どんな有名な題材でもあっけなく沈みかねない激戦区ですから、いかに『ガルパン』といえども、ゲームとしての内容が問われるところです。(といっても、モノが売れたり流行ったりするのは細かい要因の積み重ねなので、実際には内容だけでは決まらないのですけれども。そのへんはダンカン・ワッツ著『偶然の科学』を読むといいかも。)

ともあれ、さっそくゲームをガンガン進めてみました。具体的には、プラウダ高校との演習まで進めてLv23になったところです。そのあたりでの第一印象を書いていきましょう。はじめた直後は「あれ?これはイマイチかも…」と、あまりよい印象がもてなかったのですが、ある程度まで進めると、やっと本作の楽しさや”らしさ”を感じられるようになってきたので、そのあたりを伝えられたらと思います。が、同時に本作の厳しさもわかってきたので、そちらも書いていければと。

こいつはどえらい戦車道

本作は、よくある基本無料のスマホゲームと同じく、チビチビ育成を楽しむタイプのキャラクターゲームです。『ガルパン』という協力な題材があるのだから、当然の帰結でしょう。ただし、カードゲームやRPGのようなタイプではなく、戦略シミュレーション(洋ゲーっぽくいうとストラテジー)な雰囲気になっています。なんといっても「戦車道」ですからね。このバトルパートが本作最大の特徴といえるでしょう。

ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦! 戦略シム的バトル

六角形のセルで区切られたマップはターン制のストラテジーを彷彿とさせますが、『ガルパン』ではターン制とリアルタイム制を足して割ったようなシステムになっています。各ユニットに指示をあたえて「準備万端」ボタンを押すと、敵も味方も同時に行動をはじめ、5カウントが経過すると一旦停止し、再度ユニットに指示をあたえるフェーズになります。プレイヤーの操作はターン制ですが、敵味方が同時に動くところはリアルタイムっぽい。

ユニットへの指示はオートでもマニュアルでも可能です。指示できる4つの作戦のうち「ガンガン」「こそこそ」「おまかせ」の3つがオート、「めいれい」がマニュアルになっています。マニュアルで操作できるのは、移動地点と車体の向きのみで、攻撃については射程内に敵がいれば自動で行います。

バトルのルールは「殲滅戦」と「フラッグ戦」の2種類。「殲滅戦」は敵の全滅させるだけですが、「フラッグ戦」は原作アニメと同じで、フラッグ車を倒せば勝利となります。もちろん、こちらのフラッグ車がやられてしまうと敗北なのも同じ。敵の動きも自軍のフラッグ車を前に出さないようにしながら、こちらのフラッグ車を狙ってくるように変化します。なので、フラッグ戦をオートだけでゴリ押すのは大変デンジャー。

どちらのルールも序盤こそオートで問題ありませんが、難易度が上がってくると徐々にマニュアル操作が必要になってきます。具体的には大洗高校との演習10ミッションは、全オートでも楽勝ですが、次の聖グロリアーナとの演習からはオートだけだと被害が大きくなっていき、フラッグ戦では下手をすると敗北もありえるくらいです。すべてをマニュアル操作しなければならないほどではありませんが、多少の操作が必要となってくるあたりからが本番といえるでしょう。

「戦略シムっぽいのは見た目だけで、オートで眺めてるだけじゃん」が許されるのは最初のうちだけ。といっても、この”最初のうち”
が長いのが問題。楽しいところまでたどり着く前に辞めちゃう人が出てしまいそうで心配なところであります。聖グロリアーナのフラッグ戦あたりから徐々にわかってきて、続くサンダース戦で数に押されて苦戦しているあたりでかなり楽しめていたのですが、そこまでいかないと楽しさが出てこないのはなかなかに厳しい。とはいえ、戦略シムで最初からいきなり楽しませるってのもムズかしい気がしますけど。

ちょっとだけ、現状の個人的な攻略を書いておくと、このゲームはⅢ突です。Ⅲ突の射程がステキなことになっているので、Ⅲ突を並べて砲撃する桶狭間スタイルが非常に強力。戦車道とは砲撃道と見つけたり。「そんなの楽しいの?」と思われるかもしれませんが、長射程で一方的にボコボコニするの超楽しい!と言わざるえません。とはいえ、運営もこの強さを知ってか、Ⅲ突用パーツのドロップが時限イベントのみになっている限られているので、イベント発生時間を把握しておきましょう。

※2015/11/16追記
Ⅲ突用パーツは時限イベントのみではないため訂正。プラウダとの演習10種の後に追加される合同演習にてドロップするのを確認しました。

キャラクターを集めてキミだけの最強部隊を編成しよう!

最大の特徴は戦略シムっぽいバトルパートですが、ユニットの編成にも『ガルパン』らしさが漂っています。前述のとおり、基本無料のスマホゲームとして、チビチビ育成の楽しさがあるのは他のゲームと変わりませんが、戦車+乗組員で最大5両からなる部隊を編成できるところが特徴的です。

戦車は「武装」「装甲」「駆動」の3パーツから構成されています。パーツにはランクがあり、同じ戦車でもパーツのランクが違えば性能が異なります。数値だけでなく、攻撃範囲なども変化するので、性能の差が決定的な差になりかねません。今のところ、バトル中にドロップするパーツは最低のランクEのものばかりなので、高ランクパーツが欲しければ有料ガチャまわせ、って感じです。

戦車の乗員数は戦車によって異なります。たとえば、Ⅲ突は4人乗りですが、M3リーは6人乗りです。乗組員は「車長」「通信手」「砲手」「装填手」「操縦手」、戦車によっては「副砲手」まであります。このうち「車長」「砲手」「操縦手」の3人が必須で、あとは空席でも編成可能です。(もちろん、性能は落ちますけど) キャラクターはこの役割ごとのパラメータがあり、向き不向きは原作どおりになっています。

編成は本作のもっとも楽しいところの1つです。あんこうチームを再現してもいいし、各校のエースを固めたドリームチームを作ってもいい。本編では目立たなかったお気に入りのあの娘も自分のチームじゃ主人公、なんてこともできます。メニューでもバトルでもボイスでしゃべりまくりなのもいい感じです。(一部、音声が割れているので設定で下げるとGood) ここは正しく『ガルパン』のキャラゲーしてるといえるでしょう。

しかし、なかなかそうはいかないのが「戦車道」の厳しいところ。というのも、基本無料のガチャ形式のゲームで好きなキャラがホイホイ手に入るわけはないからですが、それに加えて、本作には厳しい道のりが用意されているのです。

戦車道とは険しき道也

本作の厳しい仕様は、なんといっても育成関連です。そりゃあ育成がメインなのだからカンタンにゴールに辿り着けてはいかんと思いますが、それにしても険しい道のりなのではないかと。

・(空席が埋まらないから)来たれ!乙女達!

まず、最初の壁となるのが「戦車5両のフル編成を完成させること」です。1両に最低3人は必要なので、5両で編成するには15人のキャラクターが必要になります。大した人数ではなさそうですが、実はこれがかなり厄介。というのも、「同じキャラクターでは編成できない」からです。

そりゃそうだと思われるかもしれません。しかし、この問題は必ずぶち当たります。なぜなら、本作のキャラクターは「コスチュームの違うバージョン違いだらけ」だからです。パンツァージャケットに私服、制服Aに制服Bなどなど、とにかくバージョン違いばかり。さらには、同じ絵柄でも☆1と☆2など、性能が違うバージョン違いまであります。

なぜこんなことになっているのかといえば、ゲームオリジナルのキャラクターは名も無きモブ子のみで、他はすべて原作にいたキャラクターだからです。『ガルパン』は大所帯なアニメでしたが、ガチャ形式のゲームにするには少ない。だからバージョン違いで種類を増やしているのでしょうけど、同キャラで編成できないのだから空席がなかなか埋まらないわけです。空席が埋まるくらい人員が確保できると、強さも実感できて楽しくなってくるのですが…。(ちなみにボクはLv23現在、貯まった戦車魂(いわゆる石)で10連を1回引きましたが、まだモブ子が席に座っている状況です)

さらにいうと、名のあるキャラクターが敵として登場するバトルでは、同じキャラクターを味方に編成できない出撃制限まで加わります。事前登録でもらえるダージリンは序盤では頼りになるエースなのですが、聖グロリアーナとのフラッグ戦ではベンチに下げなきゃならないという悲しみ。あんまりじゃないですか、これ。

・バージョン違いも不要にさせない「練度」システム

同じキャラクターを編成できないのにバージョン違いで溢れているのであれば、レアリティの低い同キャラは不要になりそうですが、そうはさせないためのシステムとして「練度」システムがあります。「練度」とは、バージョン違いの同キャラを複数鍛えることによって上昇するパラメータのボーナス補正のことです。要するに、制服A、制服B、パンツァージャケット、私服など、多くの西住殿と鍛えていけば、性能が底上げされてどんどん強い西住殿になっていくのです。なので、レアリティの低い同キャラを鍛えずに捨てるわけにもいかなくなります。

ちなみに、完全に同じキャラクター同士を合成してレベル上限を解放する「覚醒」システムもあります。絵柄が同じでも☆が違えば合成できない制限もあり、こっちはこっちで厳しいです。

・無能力者(レベル0)なレアキャラクターたち

本作の厳しさをもっとも実感したのは「スキル」です。レアリティの高いキャラクターが所持している固有スキルは2種類あり、隊長としてゲージ消費で任意に発動できる「作戦」と、ターン開始時にランダムに発動する「スキル」があります。問題は後者。スキルにはレベルがあり、高くなるほど効果が増すようですが、初期レベルはなんと0。レベル0なので発動しません。発動させたければ、スキルレベルを上げて1にしなければならないのです。もうこの時点で、道のりが長いというよりスタートラインが後ろに下げられている感がありますが、もうちょっと続きます。

スキルレベルを上げるためには、素材との合成が必要になります。素材となるのはキャラクターか、ボコ(西住殿お気に入りのクマ)です。しかし、前述の「練度」があるため、あまり気軽にキャラクターを素材にはできません。なので、主に合成専用の素材であるボコを使うことになります。ボコはバトルのドロップで入手できるので、プレイしていればちょくちょく拾えるのですが、スキルレベルを0から1にするために最低でも5個必要(数はレアリティに比例)なので、なかなかスキルを使えるようになりません。10連を引いてレアキャラをいっぱい手に入れても、その能力を発揮できるのはずいぶん先。この手のスキルレベルってやり込み用のシステムだと思っていたのですが、必須になるあたりが戦車道の厳しさであります。

・離脱タイミングがダブル

最後に、戦車関連の厳しい仕様について。バトルでダメージを受けると、回復するには修理倉庫に入れて待つ必要があります。待ち時間はダメージとパーツランクに比例して長くなり、ランクEなら数分で回復しますが、高ランクパーツの戦車は数十分から1時間もかかります。戦車という題材にあわせた自然な仕様ではありますが、プレイの止まるタイミングが増えているのだからしんどいところでもあります。ゲームを早くまわすためには有料で修理倉庫を増やすか、有料で高速修理するか、予備の戦車を用意しておくなどが必要でしょう。そもそも、バトルで被害を抑えることが重要になるのですが、さすがにノーダメージというわけにもいきませんし。

多くの基本無料のスマホゲームでは、自然回復するポイントを消費してプレイする、いわゆるスタミナ制が導入されています。このスタミナが複数あるゲームも多くなっており、たとえば『グランブルーファンタジー』では、クエストを遊ぶ「AP」とマルチバトルを遊ぶ「BP」の2種類になっています。この手の多重スタミナ制は、自然回復のタイミングが複数回あることで、ゲーム起動のタイミングを増やそう、と意図されたものでしょう。

本作でも「弾薬」というスタミナに該当するものがあるので、「弾薬」と「修理」は一見すると多重スタミナ制のようにみえます。が、遊ぶためには両方必要なため、それらとは反対に、離脱のタイミングを増やすシステムになってしまっています。上手くダメージを抑えて連戦しようにも「弾薬」が尽きたら遊べませんし、「弾薬」があっても戦車が修理中では遊べません。片方がないだけでゲームをやめるタイミングを生んでしまうのです。もちろん、どちらもリアルマネーで解決できますが、支払うポイントが2段階ってことですからね。待ち時間を嫌って数分で修理できる低ランクの戦車で編成するのも手ですが、1戦ごとに数分のインターバルができてしまうので、間延びした印象は拭えません。

以上が本作における厳しさの面。プレイを継続してもらうためにゴールを遠目に設定するのはわかるのですが、それにしたって厳しい印象です。これが全国レベルの戦車道…というか、西住流なのでしょうか。

スマホゲーでは、あらゆることが金で解決されるのよ

そんな格言は知りたくありません(小)

そんなわけで『ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!』についてまとめると、ゲームの楽しさや”らしさ”に触れられるまでが長いけど、5両編成で席が埋まって敵も強くなってくるとバトルも程よい難易度で楽しくなってくる、といったところでしょうか。なので、少し触ってみたけどイマイチだと感じた人も、もう少し続けてから判断するといいかもしれません。とはいえ、育成や修理など、厳しい要素もあるため、腰を据えてやるなら細かいシステムを含めて見極めなければならないでしょう。

個人的には、バトルパートはしんどすぎず楽すぎず、操作量もモバイルゲームとしてちょうどいいくらいなので、ストラテジーをキャラゲーとしてスマホにうまく落とし込めていると感じています。が、一方で、類似ミッションが多かったり同キャラのバージョン違いだらけだったりする水増し感も否めないため、今後のアップデートや運営方針には期待と不安が半々といったところ。キャラクターもプラウダ戦まで(アンツィオ除く)なので、こちらも追加も期待。早くドゥーチェ!ドゥーチェ!したい。

今後、リアルタイムでの対戦が実装予定とのことで、本作の育成システムを考えると戦車道を超えた戦争になりかねない予感もしますが、果たして。まだのぼりはじめたばかりだからな、このはてしなく遠い戦車道をよ…

http://garupan-app.com/

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