【セブンスドラゴン3 code:VFD】レビュー 凡庸ならぬスタンダードRPGの集大成

『セブンスドラゴン3 code:VFD』をクリアしたのでレビューなど。本作は完結編としてシリーズの集大成となる内容であり、前作からの直系を感じる内容であるため、初代から前作を振り返りつつ、「セブンスドラゴン」シリーズの総括的な話を交えて紹介していきます。

「竜退治はもう飽きた!」から20数年。家庭用ゲームの花形だったRPGは、長い年月の中、多くの派生と淘汰を経て進化してきました。しかし現代においては、ゲームジャンルの拡がりやプレイ環境の変化により、すでにメインストリームではなくなっています。だからこそ、RPGは生き残りをかけて幾多の変貌を遂げてきたのですが、そのせいでオーソドックスなRPGが激減することにも繋がりました。大手メーカーが大作RPGを作りづらくなったこの時代は、ある種の”ドーナツ化現象”が起きているように感じます。

そんな空洞化したド真ん中の席に座ろうとしたのが『セブンスドラゴン』でした。剣と魔法のファンタジーな世界を冒険し、コマンド選択式のバトルでレベルアップしながら進んでいく……誰もがイメージするRPGらしいRPGとして登場したのです。第1作はレトロスタイルな見下ろし型のドット絵に剣と魔法の中世的な世界観が懐かしさと安心感を与えてくれる一方、3歩で戦闘になるエンカウント率やフィールドすべてがダメージゾーンであるなど、プレイヤーに与えるストレスも含めて良くも悪くもレトロな内容でした。

第2作『セブンスドラゴン2020』では、一転してプレイヤーへのストレスをすべて取り払った内容に変更されました。舞台を近未来の東京に移したことに合わせて、内容も現代的になったといえるかもしれません。とはいえ、オーソドックスなRPGというコンセプトはそのまま。レトロで不便なところに”らしさ”を求めるのではなく、かつて楽しいと感じていた部分を凝縮したRPGに生まれ変わったのです。続く第3作『セブンスドラゴン2020-Ⅱ』も同じ路線で、ストーリーを一新した拡張版のような内容になっており、ここで本シリーズの方向性が定まったように思えます。

※画像は『2020-Ⅱ』
セブンスドラゴン2020-Ⅱ

そして今回の『セブンスドラゴン3』は、『2020』からの直系を感じる続編となっています。スタンダードでオーソドックスなRPGでありながら、ビジュアルや音楽、世界観やストーリーでスパイスをつけた内容は変わっていません。システムの根幹も変わっていないのは、元の完成度の高さ故に。「竜(ドラゴン)を狩る物語(RPG)」として、再びRPGのド真ん中が帰ってきたのです。

それでは、まず『2020』から継承されている「セブンスドラゴン」を特徴づけている要素からみていきましょう。

3つの要素が生み出す凡庸ならぬスタンダード

『2020』以降、本シリーズの根幹をなす3つパーツは変わっていません。その3つとは、キャラクターメイキング、ストーリー、そして3人パーティによるバトル。もちろん、すべて『3』にも受け継がれています。

まず、キャラクターメイキング。本作はキャラクターを作成してパーティを編成するところからはじまります。あらかじめ存在する主人公キャラクターを操作するのではなく、プレイヤーの分身が主人公となるタイプですね。メイキングは外見と職業の他、ボイスも選択できます。外見と職業の組み合わせは自由なので、ソードキル女子高生だけでなく、殴るゴスロリから踊るおっさんまで作れます。

キモは多数の声優陣を起用したボイスで、「ハッ」とか「ウッ」とかみたいな声だけではなく、バトル中には攻撃やスキルにあわせてしゃべりまくる上に、ボイスタイプによってセリフがすべて違うため、キャラ付けに大きな印象を与えてくれます。このメイキングは本作の大きな特徴にして魅力の1つ。さらに今回『3』では、外見と声は後からでも自由に変えられるため、いろいろ組み合わせて遊べます。

こうして作ったキャラクターを主人公ストーリーが進行するのは前述のとおり。本シリーズのストーリーは、人類の危機を未然に防ぐのではなく、すでに滅亡寸前まで追い込まれたところから首の皮一枚でギリギリつなげる内容です。ここはオーソドックスな内容にスパイスをきかせた部分といえるかも。色鮮やかなカラーリングとデフォルメされたかわいらしいキャラクターからは想像しづらいかもしれませんが、滅亡の危機に瀕した絶望感ある世界観になっています。そんな世界で、本作のストーリーは主人公=プレイヤーを英雄として扱うのが非常に上手。自分で作って育てたキャラクターだからこそ、英雄として扱われ、英雄として活躍できるのは熱が入るというものです。

英雄として扱われるのに、戦いが楽勝では締まりがありません。なので、本作のバトルは激戦の連続です。単に敵が強いというだけではなく、ゲームの構造によって作られた苦戦、いわば演出された苦戦になっているのがキモです。この構造を簡単にいうと「3人パーティに対する敵の2回行動」です。ランダムエンカウントのザコ戦はサクサク進みますが、シンボルエンカウントのドラゴン戦、そしてストーリー進行上のボスはどれも強敵、というメリハリがつけられており、苦戦は必至。なぜかというと、ドラゴン以上の強敵はすべて、2回行動になっているからです。

3人パーティに対して2回攻撃だから、運が悪ければ1ターンでが犠牲者がでるし、そうでなくても危ない状況に陥ります。(念のため補足しておくと、別に”運ゲー”ではない) 蘇生や回復のために守勢に回ればジリ貧となり、苦しい戦いを強いられるのですが、ボスは必ずどこかで自己強化やチャージなどでターンを消費してくれるため、立て直すチャンスも用意されています。この構造だと苦戦はするものの、1ターンで全滅するような理不尽はそうそうありません。(チャージ後の必殺スキルを防御せずに食らえば死ねますが、それはプレイヤーの判断ミスであって理不尽ではないですよね)

全滅しまくるわけではないけど、決して楽勝にはならない……要するに「3人パーティに対する2回行動」というシンプルな構造により、”苦戦”が演出されているのです。ギリギリの戦いが偶然ではなく、シンプルな構造によって意図的に作り出されているのは、巧妙と言わざるを得ません。個人的に『2020』以降の本シリーズに惚れこんでいるのはここが最大の理由です。

オーソドックスなRPGでありながら、本シリーズが凡庸ではなかったのは、キャラクターメイキング、ストーリー、そして3人パーティによるバトルの3つの要素がうまく掛け合わさった結果でありましょう。さらに快適に遊べるための調整と細かい配慮が重ねられ、RPGの楽しい部分をギュッと凝縮した密度の高いゲームになっているのです。

では、ここからは『3』で追加された独自要素についてもみていきましょう。

遊びの幅を拡げる新要素

『3』での追加要素で最大の目玉は3人パーティを3つ編成した9人ユニット構成になったことです。といっても、基本は3人で、残りの6人は控えメンバーとなっています。移動中なら第2、第3のパーティと入れ替えも可能ですが、バトル中に交代することはできず、全滅時に馬車から飛び出てくることもありません。

では何をするのか?といえば、援護です。後衛メンバーはターン経過で蓄積するゲージを消費して攻撃したり支援したりできます。前衛の行動にあわせて1人で攻撃する「バディ」は、威力は控えめですがデバフ効果が設定されています。重要なのは敵の強化状態を解除できるブレイク効果で、ボス戦ではまず必須。他には、3人同時にゲージを消費すればバフや回復などの「サポート」となり、6人全員なら総攻撃の「ユニゾン」となります。

後衛のやれることはあくまで援護にとどまっているので、9人ユニットという割には地味な印象かもしれません。が、9人体制のメリットは別にあります。後衛でも経験値はメインパーティと同じだけ得られるため、さまざまな職業のキャラクターを育成しておけるのです。多くの職業を育てておけば、状況に応じてさまざまな編成ができるため、戦いの幅が拡がります。これこそが本システム最大の魅力でしょう。どんな編成でもクリアできるように調整されている本作だからこそ、遊びの幅が一気に拡がったわけです。

もう1つの目玉は世界観。シリーズの完結編に相応しい舞台として、現代、過去、未来を行き来する物語になっています。つまり、現代とは『2020』から80年後の東京。過去とは1万2,000年前のルシェの国アトランティス。そして未来とは、5,000年後の世界エデン、初代『セブンスドラゴン』の後の時代になっています。シリーズを追ってきたプレイヤーにとっては、このオープニングムービーを見るだけでキュンキュンきます。

この世界観から描かれるストーリーでは、そもそもドラゴンとは何なのか、という根源的な問いに答えるものになっています。登場する舞台も人物もシリーズのファンならニヤリの連続で、まさにシリーズの集大成。過去作をやっていなくても楽しめる内容だとは思いますが、やっていれば何倍も楽しめるのは間違いありません。

最後に、結びにかえてもう1つだけ。

物語(RPG)には終わり(クリア)がある

実は、『2020』から引き継がれている要素がもう1つあります。それはボリュームです。クリアだけなら30時間前後、クリア後の裏ボスまで含めても35時間くらいなので、RPGとしては腹八分なボリュームなのですが、飽きる前に終わる長さなのが非常に心地よい。サブクエストなどを含めて、すべての要素を堪能できたとわかる作りなので、クリアと同時にスッキリ終われるのです。楽しい気分のまま終われるプレイ後感は『3』にも継承されています。

クリアと同時にスッキリ終わるゲームって意外と貴重です。ゴージャスなオープンワールドゲームは終わりがみえないほど膨大なボリュームだし、基本無料のゲームはビジネスモデル故に終わりがないし、スコアや勝ち負けを他プレイヤーと競うゲームにももちろん終わりなどありません。実績やトロフィーのコンプリートをもって区切りをつけることもできますが、すべてのプレイヤーが達成できる条件ではないし、飽きる前にやり切れるかどうかはムズかしいところでしょう。実績コンプのために飽きた後もやり続けたとすれば、プレイ後感は「あー楽しかった」ではなく、「もう二度とやんねー!」になりかねません。

となると、プレイヤー自身がどこで区切りをつけて終わるのかを判断しなければなりません。「コンプはやる気ないけど、この実績を解除したら終わり!」とか「やり込み要素あるけど1周したら終わり」とか。そうでなければ、なんとなく飽きてフェードアウトするような終わり方になってしまいます。もしくは、新しいゲームと出会えたので、明確な終わりがないまま次に移行するとか。そう考えると「スッキリ終わるゲーム」って、実のところ貴重です。

(※念のために補足しておくと、基本無料ゲームや対戦ゲームを否定したいのではありません。やっている間に楽しいと感じられるならそれが正義ですし、時代や環境とともに進歩や変化があるのは当然だし、それを否定していては何も楽しめません。ここで言いたいのは、「セブンスドラゴン」の特徴は今時めずらしいけど大いにアリだよね、ってことです。)

「竜(ドラゴン)を狩る物語(RPG)」は「すべての竜を狩り尽せ」ば、そこで終わります。物語である以上、終わりがあるのです。そしてその終わりは、楽しい気分のままやってくる。だからこそ、気持ちよく終われるのです。そして今回の『3』はシリーズの完結編としても終わりを迎えました。とはいえ、非凡なスタンダードというコンセプトのRPGをここで終わらせるのはあまりにも勿体ない。なので、続編ではなくても、またいつかどこかで、”最後のドラゴン”が新たな”物語”を紡ぐことを心から願っております。

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