配信日に即プレイしたものの、当時はまだこのブログがなかったので。あちこちのサイトでGame of the Yearに選出されているのを見て思い出したように感想を書いておこうと思います。
IGNやGameSpotで2012年のGame of the Yearに選ばれた『風ノ旅ビト』。思えば、はじめてトレイラーを見たときからずっと気になっていたタイトルではあった。
本作は、「クリアまで3時間程度しかない」、「なのに1200円と割高」、「特に攻略する要素もない」と、かなり不安になる要素がてんこ盛りだった。
しかし、フタを開けてみれば、2012年でもっとも印象に残るゲームであった。どうしてそんなに印象に残ったのだろうか? ポイントは「ストーリー」と「マルチプレイ」の2点に集約されると思う。どちらも、当たり前のように必要だと思っていた要素をあえてバッサリ切り捨てることで、まったく新しい体験を生み出している。
参考:
Best Overall Game – Best of 2012 – IGN
GameSpot’s Best Games of 2012
テキストのない世界で描かれるストーリー
『風ノ旅ビト』は、最初の操作説明が終われば、ゲーム中にテキストが一切表示されない。台詞もない。
でもストーリーがないわけじゃない。むしろ、ストーリーがウリといってもいいほど重要なポイントになっている。
ゲーム側がテキストを使って語りかけてくることがないため、ユーザーは必然的に自分でストーリーを想像することになる。自分で想像し、イメージし、考えているからこそ、印象に残る。プレイヤーが想像できる「余白」を、テキストを排除することで作り出しているのだ。
テキストを使わずにストーリーを語るのは相当難易度が高いことだろう。しかし、それをやってのけた。
ゲームを楽しめるかどうかのポイントは、ゲームに対するプレイヤーの姿勢が、能動的か受動的かで大きく分かれる。『風ノ旅ビト』では、テキストを排除することで、プレイヤーを自然と能動的な姿勢にすることに成功しているのだ。
プレイ時間が短いのは必ずしも悪いことではない。凝縮されているからこそ、3時間で十分だったのかもしれない。
無言のコミュニケーションがドラマを生み出すマルチプレイ
本作は、ネットワークに接続していれば、他のプレイヤーと2人で一緒に旅をすることができる。
2人いるから何ができる、というわけではなく、ただ2人になるだけ。ボイスチャットもテキストチャットもない。そもそも名前すら表示されないから、どこの誰かもわからない。
しかし、だからこそ、相手のことを想像してしまう。ここでも、プレイヤーの想像力を刺激する作りができているのだ。
意思疎通の手段が用意されていないので、原始的なジェスチャーでコミュニケーションを図ることになる。少し先で待っていてくれたり、ぴょんぴょん跳ねてみたり、限られた手段の中でなんとかコミュニケーションをとるのはなんともいえず楽しい。
わずか3時間の旅ではあるが、終盤の雪山のシーンでは、一緒に旅してきた旅ビトを心配してしまうほどに思い入れができてしまった。
昨今では「ゆるいつながり」を実現するために、いろいろな工夫をしているゲームが多くみられるようになった。『デモンズソウル』や『ドラゴンズドグマ』などがその典型かもしれない。ゲームの中で、何かしら「つながる要素」を入れておくのが主流だったと思う。
しかし、『風ノ旅ビト』では、直接一緒に同じ土俵で同じ遊び方をしながら、「ゆるいつながり」を実現している。どこの誰とも知らない人と、共通した目的のために一緒に遊ぶ。マルチプレイの面白さのど真ん中に直球のストレートを投げ込んできてくれたのではないだろうか。
動画を見て気になったらぜひプレイを
グラフィックと音楽の素晴らしさは言葉で語るより動画を見てもらったほうが早い。空気感は実際にプレイしないとわからないかもだが。
動画を見て、なんだか気になってしまった人は、この機会にぜひプレイしてもらいたい。3時間程度で一息で遊べますから。