全シナリオを終えて、実績もすべて埋まったところでレビューを書いていきたいと思います。
全シナリオ終了、メールもすべて埋め終わり、実績もコンプリート。台詞は全部を最後まで聞くことなく、ポチポチと飛ばしながら読み進めてましたが、17時間もかかっていたとは、思っていたよりボリュームあったのかも。
パッケージ裏には「全10話」のストーリーとなっていますが、オカリン編が前・後編の2話になっているので、実質11話かと。最後に隠しシナリオで綯編が用意されていますが、パッケージにでかでかといますし。
先の気になる吸引力は相変わらず
各話完結で、それぞれの話が直接繋がっているわけではありません。なので、さすがに本編ほどの吸引力はありませんでした。とはいえ、なんだかんだで最後まで気になってしまい、眠い目をこすりながら進めてしまう吸引力は相変わらず。
背筋をゾクリを冷やす演出や、先が気になる展開なども上手ですね。スラングやネタなど、ネット絡みのネタがぽんぽん入ってくるところも相変わらずで、シュタゲっぽい空気はそのままだと思います。
『フェノグラム』最大のウリは、他キャラ視点でのシュタゲ、なのですが、それぞれ別の時間、別の場所の話だったりするので、本編を横から眺める展開とは限りません。このへんは人によって好みが分かれそうですし、実際、ボクも「これはいいな」と思うシナリオもあれば、「うーん?」と思ってしまうシナリオもありました。
そもそも、プレイヤーは本編のトゥルーエンドを知っているわけですから、本編と限りなく近い舞台で、一体どこまで驚かせることができるのか、これが最大のハードルでしょう。結論から言ってしまうと、『フェノグラム』はこのハードルを超えられていません。
形骸化したフォーントリガーシステム
『シュタインズゲート』といえば、やはりシナリオが最大のウリだったのですが、Dメール、タイムリープマシンといった舞台装置と多世界解釈的な世界観、そしてフォーントリガーというゲームシステムがピタリとハマったからこその高評価だったと思います。
残念ながら、『フェノグラム』では、このへんが受け継がれていません。携帯電話を操作するところは受け継がれていますが、携帯電話を操作することで何が起きるわけでもなく、シナリオが分岐することもありません。
そもそも、『フェノグラム』ではシナリオが一切分岐しません。携帯電話でのやりとりもあまり意味を持ちません。となると、プレイヤーにできることは、ただひたすらページをめくることだけなのです。プレイヤーの意思が画面内にまったく反映されないので、そもそもゲームではないのかもしれません。
たしかに、シュタゲ本編も、プレイヤーの意思が大きく反映されるようなゲームではありませんでした。考えて解いていくタイプでもなく、ただひたすら読み進めていく時間が大半です。けれども、ツライ選択を迫られたときの、最後の意思決定はプレイヤーに委ねられていたはずです。
ごちゃごちゃいってますが、ようするに「一切分岐しないってどういうこっちゃ」ということです。ビッグワンガムでもガムの1枚は入っていますが、これはガムすら入っていないような、それってもうジャンルが違うんじゃないですかと、そういう感じです。
「別の世界線」という便利で危険な設定
すべての要素がピタリとかみ合った結果がシュタゲ本編であり、本編はすでに完成されたものでしょう。完成されたものに追加をするとなると、どうしても蛇足感が否めません。なので、『フェノグラム』では多世界解釈的な世界観を利用して、「別の世界線」での出来事を描いています。
この「別の世界線」というのが非常に危ない。本編のストーリーに矛盾を生む出すことはない、という意味では案牌なのかもしれません。しかし、プレイヤーが世界に深く踏み込んでくれなくなる、という意味では諸刃の剣だったのかも。
どうしてかというと、「そういう世界線もあった」ですべて説明できてしまうから。この一言ですべて終わりなので、もう一歩踏み込んで考察しようと思えなくなってしまうのです。どんなに深く考え込んでも、「そういう世界線だから」で打ち返されてしまうわけですから、そりゃ考察する意欲もなくなっちゃいます。
考察に向かわせるということは、プレイヤーが自ら世界にどっぷり浸りにいくということです。プレイヤーを能動的な姿勢にさせるかどうかって、とっても重要だと思います。
『比翼連理のだーりん』のように、最初からドタバタ喜劇的なコンセプトであることを全面に押し出されているなら、「そういう世界戦もあった」で許せてしまうのかもしれません。が、本編に近いノリでシリアスな『フェノグラム』だと、そうもいかないのです。
とはいえ、すでに完成されてしまった『シュタインズゲート』に何かを付け足すのは、カレーにパイナップルを入れるようなものかもしれません。パイナップルを入れたら失敗することは目に見えているから、入れなかったらただのカレーになってしまったといいますか。
このカレーにこれ以上の具をつっこむのはやめて、そろそろ新しいカレーを作らないかなーと思う次第です。平たくいうと、想定科学アドベンチャーの第4弾まだかなと。
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