ボードゲームにおける運要素を極力抑えて、素材の味を100%そのままゲーム化したのがこの『レーザーミニ四駆 ジャパンカップ』なのです。
ファミコンをちょくちょく引っ張り出して遊びたくなるとき、毎度のように遊んでしまうタイトルの1つがこの『レーサーミニ四駆 ジャパンカップ』。ミニ四駆が好きだった人なら間違いなく遊べる1作です。
ポップな配色にコミカルなキャラクターにBGMと、個人的にすべての要素がお気に入りの本作。詰め込まれた要素の多さとすべてがかみあった完成度の高さは、いま遊んでもホンモノだったことがわかります。
運よりも腕で決まるボードゲーム
このゲームのジャンルはボードゲーム。ルーレットを回してすごろくのようにコマを進めていきます。止まったマスでさまざまなイベントと出会いながら、自分のミニ四駆マシンを強化していくことになります。1ターンが1日となっていて、期日がやってくるとレース大会が開催され、ここで勝利を収めることが目的になっています。
ボードゲームにおいて、ルーレットやサイコロによる進行はどうしても運要素が強くなりがちです。しかし、『ジャパンカップ』では目押しが比較的容易になっていて、腕次第で狙ったマスに止まり放題になります。
しかし、それはそれでボードゲームとしては台無しになってしまいそうですが、ここで本作最大の特徴である「バイオリズム」が顔を出します。
キャラクターにはそれぞれバイオリズムと呼ばれるパラメータが表示されており、毎ターン上下します。バイオリズムが高ければ高いほどルーレットはゆっくりになり、低ければ低いほどルーレットは高速になります。毎回ルーレットの速度が変わるので、同じタイミングでの目押しは許されていないのです。
バイオリズムはマスに止まったときのイベントでも上下するので、いかにバイオリズムの高い状態を維持できるかが1つの大きなポイントになっています。ちなみに、イベントの内容はどれもコミカルで、かわいいキャラ絵もあって好感度高いです。
本作では、この「目押しはできるけれどワンパターンは許さない」というコンセプトが絶妙なのです。運ゲーじゃないけど、腕だけでコントロールしきれるかどうか微妙なラインになっているわけです。
狙ったマスに止まれるからこそ、他のプレイヤーがいるマスを故意に狙って「草レース」による対戦を起こす、なんてこともできるわけです。ボードゲームとして、多人数で盛り上がるための仕掛けは申し分ないのです。
そして期日がやってくると大会が開催されます。レース当日にプレイヤーができることは、マシンのセッティングのみ。レースがはじまってしまえば、あとは見守るだけです。スイッチを入れたらまっすぐ走るだけのミニ四駆ですから、ゲームとしてもこれは非常に正しい気がします。
素材の味100%のミニ四駆たち
本作の題材となっているミニ四駆は、本当にそのまんまミニ四駆です。公式大会であるジャパンカップも本当にそのまんまで、レースに使われるコースの実際のものと同じレイアウトになっています。
念のために言っておくと、ミニ四駆といってもいろいろあるのですが、このゲームでいうミニ四駆は1番最初のレーサーミニ四駆からニューシャーシが出るくらいまでの時代。ミニ四ファイターに前ちゃんにダッシュ四駆郎あたりです。ホットショットJr.からエンペラー、アバンテJr.とかそのへんです。
で、このミニ四駆やパーツたちは、本当にそのまんま登場します。スポンジタイヤだのワンウェイホイールだのスタビライザーだの。こういった名前を聞いて「懐かしい!」と思ったアナタはこのゲームを最大限楽しめるでしょう。しかし、まったくわからない方は、さっぱり楽しめないでしょう。
マシンの車体は絵があるのですが、パーツには絵がなく、これといった説明もありません。知らない人がローハイトタイヤとかハードシャフトとか言われても、ちんぷんかんぷんでしょうし。ちなみに、ハイパーダッシュモーターも登場しますが、公式レースでは使用不可になっているところもキッチリ再現されております。
もちろん、パーツの効果は現実のミニ四駆と同じイメージになっています。ワンウェイホイールやアルミローラーをつければコーナリングに強くなるし、スポンジタイヤやシャーシの肉抜きで軽量化すれば速くなる反面、コースアウトもしやすくなります。
実際、このゲームでの1番の難敵はコースアウトだったりします。ジャパンカップのレーンチェンジには何度泣かされたことか。
マシンもパーツも、本当にすべてがリアルのミニ四駆そのままなので、良くも悪くも知っている人じゃないと楽しめないものになっています。しかしその分、知っている人にとってはたまらないものになっています。だって、あのころはお小遣いが足りず、できなかったチューニングがやり放題なんだもの。いや、ゲーム内でもお金が足りなかったりしますけど。
4つのレースで勝利ポイントを獲得したものだけが挑戦できるジャパンカップへの道のりは、非常に険しく厳しいものです。とはいえ、裏技でレースのみが楽しめるモードが用意されているあたり、とっても良心的です。実際、セーブもパスワードもないのでめちゃくちゃ時間がかかりますし。
子供の頃、ハマりにハマったミニ四駆ですが、いくらパーツを買って改造しようとも、実際にコースに出て走らせる機会なんてありませんでした。だからといって、道端で走らせようものなら、子供の足では追いつけない速さでかっ飛んでいったり…。そんな子供たちの夢であったジャパンカップのコースを、自分のマシンで走れるのです。こんなに楽しいことはありません。
『レーサーミニ四駆 ジャパンカップ』は、ボードゲームとしての基礎はキッチリ抑えられた上で、バイオリズムやミニ四駆レースといった独自要素を見事に昇華した1本です。問題なのは、あの時代を経験した同じ世代同士で集まらないと真に楽しむことはできない、ということでしょうか。ひとりで「おれつええ!」するのも十分楽しいですけどね。