『君の名は。』感想 過去より紐を結んでこなかった者の末路(※ネタバレほぼなし)

ちょっと遅ればせながら『君の名は。』、観てきました。公開から数日経っているというのに満席で、客層は10代~20代くらいの若い人が多く、うち7割くらいは女性だったので、ソロのおじさんとしては微妙な居心地の悪さを感じながらも、いざ映画が始まってしまえば何の問題もなく楽しむことができました。ちなみに、こういった客層だったのはその日がレディースデーかつ夏休み期間だったこともあるのでしょうけれども、席を埋められる求心力はすごい。ボクが観た次の回も満席のようでしたし。

実際に観終えてみると、若めの客層だったのも納得の内容。本作の内容を一言でいうなら「超時空・運命の赤い糸物語」で、突如として中身が入れ替わってしまう高校生の男女を描いた”すこしふしぎな”ストーリーです。予告映像からは「SF要素もあるのかな?」と期待していたのですが、サイエンスには踏み込まず、オカルトの範疇にとどまっていたので”すこしふしぎ”な程度。男女の中身が入れ替わるところからあれやこれやの展開になっていくのは予告から想像できるとおりなのですが、手垢のつきまくったネタをめちゃキレイな絵と気持ち悪いほどぬるぬる動く作画で丁寧に描かれており、妙な変化球もなく素直に楽しめるエンタメ作品になっておりました。意外な展開はクライマックスに向けて発覚するただ1点のみで、あとはとにかく真っ直ぐな直球ストレートが小気味よく投げ込まれてくる感じ。だからこそ、マニアだけではなさそうな客層によって席が埋め尽くされていたのでしょう。

作中にツッコミどころがないわけではなかったのですが、有無を言わせぬ勢いでボーカル曲を何曲も流しながらガンガン突っ走っていくので、観ている間はそんなに気になりません。とはいえただ1点、彗星の軌道だけは「んん??」と引っかかってしまいました。同じように感じた人もいたようで、詳しくは下記のリンク先がわかりやすい。物語の展開上、必要なウソなら問題ないのですけれども、どう考えても必要ないので単なる間違いなのでしょう。いくら”すこしふしぎ”だからといってもさすがにどうかというミスなので、制作陣も「やっちまった」と頭を抱えているんじゃないかと。

考証はさておき、個人的にもっとも楽しく観れたのは前半の方で、入れ替わってしまった高校生男女の健全な反応をしているあたり。そりゃ揉むよね、はともかく、ああ触っちゃうんだ、健全な男子高校生の寝起きなのに、とニッコニコ。入れ替わりネタの描写で特筆すべきは”中の人”の演技で、中身が入れ替わっても”中の人”、つまり声の担当は変わらないわけで、でもそこを違和感なく表現できているのは素晴らしいなと。自然だからまるで気にならないんだけど、それってすごいことですよね。後半はシリアスな展開になっていくので笑えるシーンが減っていくのですが、前半のコミカルでテンポよく、細かな伏線を散りばめながら笑いを誘う感じですごい好きです。男女が入れ替わるなんて今更感しかないネタなのに、思いのほか楽しませていただきました。

で、「いい映画だったなー」と気分よく帰途につき、帰ってからはあちこちの感想を読み漁っていたのですが、正直、愕然としました。何がって、自分のあまりの教養のなさに。実は新海誠監督の作品を観るのはこれが初めてだったんですよ。監督の名前を知ったのは『彼女と彼女の猫』(※最初のヤツ)だったから、厳密には初めてではないのですけれども。『ほしのこえ』や『雲のむこう、約束の場所』などの名前は知っていたし、『秒速5センチメートル』で多く男たちが心にダメージを負っているのも知っていたのですが、なぜか1本も観てないんですよね。なぜ?と言われても特に理由らしき理由もないです。でも、新海監督の作品を追いかけてきた人にとって『君の名は。』は大きなターニングポイントになっているようで、ボクとはまったく違う視点で何十倍も楽しまれておられるわけです。

たとえばこれ。(※リンク先はネタバレあるので注意)

本作におけるさまざまな要素は過去の新海誠作品に関連しているそうで、まさに集大成とのこと。『君の名は。』は”紐”によって結び繋がれていくことがキーポイントの物語だったわけですが、同じように過去の新海作品もすべてここで結ばれている、ということなのでしょう。あのシーンってアレじゃないか?あのアイテムってコレじゃないか?と、過去より結ばれた点と点とが繋がっていく…、それは頭の中で火花が散るような感覚で最高にエキサイティングだったに違いありません。残念ながら過去作をスルーしてしまっていたボクにはこの感覚を味わう術がない。観ていれば1200%くらい楽しめただろうに。自分の教養のなさを呪うばかりである。

ところで、上の『彼女と彼女の猫』のリンクを張る際に動画を見返してみたのですが、2台のクレーンの映るカットで『君の名は。』にも2台のクレーンのカットがあったことを思い出しました。もしかして、これも集大成の一部だったり? …さすがに気のせいですか。

それはさておき、さらにもう1つ。(※リンク先はネタバレあるので注意)

クライマックスを終えた後のシーンでは「エピローグにずいぶん尺とってるなー丁寧だなー」くらいにしか感じておらず、あとは消化試合のような気分で観ていたのですが、やはりここも新海監督の作品を追ってきた人にとっては全然違ったようで、最後の最後、本当に1番最後の瞬間までハラハラして観ていられたようです。だって新海監督だし…という理由だけで。あのラストはこれまでの過去作品で積もり積もったモノがあるからこそ引き立つシーンだったのだと。ああ、特に驚きもなく観ていた自分が恥ずかしい。やっぱり自身の教養のなさを呪うしかない。

もちろん、過去作品を知らなくとも『君の名は。』が単体で十分に楽しめる映画だとは思います。実際、かなり多くの層が楽しめる内容になっているでしょうし。とはいえ、過去作を観ていたかどうかでこれほど楽しさが変わってくるのであれば、教養を蓄積してこなかった自身を呪わずにはいられません。嗚呼、願わくば、瀧くんがボクと入れ替わってなんとかしてくれないものか。と思ったけど、おっさん相手じゃあんなに必死になってくれないよなぁ。”すこしふしぎ”な体験を夢見ててもいい若者じゃないので現実を見据えて教養積みます…。

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