【蒼き雷霆 ガンヴォルト爪】レビュー 無敵の雷撃能力者が切り開いた間口の広さを無敵の無能力者がさらに拡げた2Dアクション続編

あの『ガンヴォルト』の続編です。”爪”はソウって読むそうです。”蒼き雷霆”に”アームドブルー”とルビを振るくらいだから同じようなものかと思ったら、爪(ソウ)は正しく音読みであります。で、どこらへんが爪なのか?といえば、今作から追加されたプレイアブルな新キャラクターの必殺技が「ストライクソウ」なので、そこらへんなのでしょう。でもストライクは英語だしソウも英語だとすれば”saw”(のこぎり)だから爪ではないような……いや、ソウなんだからそうなんでしょう。

http://gunvolt.com/GV2/

前作『ガンヴォルト』は、雷撃系の能力者のガンヴォルト(以下、GV)を主人公としたハイスピードな2Dアクションでした。ジャンプ&ショットを基本としたアクションでありながら、ショットをダメージ源とするのではなく、撃ちこんだショットを避雷針に見立てて電撃を撃ちこんでいくアクションがメインとなっていました。ショットを当てることがロックオンの役割を果たしており、同時に複数の敵をロックオンして雷撃を撃ち込めば一気にスコアが稼げる仕組みもあるので、スコア稼ぎの熱いゲームでもあります。「スコアなんて別にどうでも…」と言うなかれ、ノーダメージのまま規定数まで「クードス」と呼ばれるコンボ的なものを繋いでいけば、BGMがボーカル曲に変化するご褒美が用意されております。

おかげでなんだか稼がずにはいられないゲームになっているのですが、稼ぎを意識すると一気にムズかしくなる調整が奥深さを生む一方、電撃ゲージがバリアとして機能する2重のライフ制が劇的に難易度を下げており、ぶっちゃけほぼ無敵なのでクリアするだけならカンタンな調整にもなっています。間口は広く奥も深く、という、言うだけならカンタンだけど実際にやるのはムズかしいことを実にうまく作り上げているのが『ガンヴォルト』でした。

ガンヴォルト爪 ダート撃って電撃が基本

では続編の『爪』ではどうなったのか、といえば、間口の広さと奥の深さを両立しながら、さらに両端を拡げたような印象になっています。つまり、クリアするだけならさらにカンタンになり、やり込もうとすればさらにムズかしくなった感じです。前作からの変更点や追加要素はいろいろあるのですが、特に大きいのは新キャラクターとクードス設定の追加の2点です。

スーパー無能力者アキュラ君

プレイアブルな新キャラクターとして追加されたのは、前作でボスキャラクターの1人だったアキュラ。能力者バトルの世界において能力者たちを恨む無能力者、という設定のキャラクターです。今回『爪』ではGV編とアキュラ編の2つのストーリーが用意されており、両方を進めることで真の結末へ到達できる仕組みになっています。GVに関しては前作とほぼ同じアクションですが、アキュラについてはGVとはまったく異なるアクションで、ステージも違ったものが用意されています。

ガンヴォルト爪 新キャラクターのアキュラ

アキュラもGVと同じくジャンプ&ショットを基本としたアクションでありながら、メインのダメージ源は別のところに設定されています。GVではダッシュになっているところがタックルになっており、敵にタックルを当てることでロックオンが成立し、ショットを撃てばホーミングレーザーのような攻撃が飛んでいく仕組みになっています。タックルは地上だけでなく空中でも可能で、斜め上は斜め下へ角度をつけることもできます。さらに、壁にぶつかれば反射して飛び続けることも可能なので、機動力はGVよりも高め。敵にタックルを当てるとホバリングし、下キーを2回押せば急降下など、やや癖はあるので慣れるまで大変だが、慣れてしまえばめちゃ強い。

ライフもGVと同じようにバリアとの2重制になっているのですが、雷撃の展開中はバリアが消えてしまうGVとは異なり、アキュラは攻撃中だろうが移動中だろうがバリアが常に有効なので、生存率もGVより高め。雷撃ゲージとは違ってバリアは3枚で、同じゲージをタックル使用時にも消費するが、こちらも下キーを2連打するだけで即チャージなので「危ないと感じたら下連打」は有効。なんにしても、攻撃中にもバリアが有効なので、GVより強引な戦い方が可能になっています。

ガンヴォルト爪 アキュラの基本はタックルからのホーミングショット

能力者ではないけれど倒したボスの能力者から能力を奪ってしまえるアキュラ君。要するに「ロックマン」なのですが、メインショットではなくサブウェポン的なポジションで敵能力が使用可能。ゲージ消費はあるもののゲージの回復は早めなのでガンガン使っていけます。なので、火力もGVより高め。…あれ?この無能力者、すべてにおいて能力者よりも強いのでは? ”第7波動”(セブンス)とはなんだったのか。

とはいえ、アキュラはスコア稼ぎを意識すると一気に辛くなる面もあります。稼ぐ場合、タックルからのロックオンショットで着地を挟まずに連続撃破する必要に迫られるのですが、これがなかなか大変。ロックオンは1体のみなので、タックル→ロックオン→ショットで撃破→そのまま次の敵へタックル、という流れを続けなくてはなりません。となると、敵の配置やステージの構造を把握する必要があるわけですが、そこで気づかされる配置のいやらしさ。まさに間口が広くて奥も深いキャラクターとなっているといえます。

誰でも歌に届きそうなクードス設定の追加

ガンヴォルト爪 クードスに3段階の難易度設定が追加

もう1つ、前作からさらに間口を広げている要因がクードスの設定です。クードスとは、ダメージを食らわないまま敵を倒し続ければ上昇していくコンボのような数値で、同時ロックオンによる複数撃破などを決めれば一気に稼げるシステムになっています。クードスを1000ポイント以上稼ぐことに成功すれば、BGMが”電子の謡精”(サイバーディーヴァ)の歌に変化。今回は音だけでなく、歌っているキャラクターがプレイヤーの後ろについてきてくれる演出も追加。ただし、せっかく稼いでもダメージを食らってしまうとその瞬間すべてがパーになるリスクが常につきまとうことになります。この綱渡りのようなギリギリ感こそ『ガンヴォルト』の真髄。

今回『爪』では、このクードスに3段階の設定が追加されました。前作同様、1発アウトの「レックレス」に加えて、3アウト制の「ティミット」、無制限の「アパシー」が追加。制限がゆるいほどスコアの換算率は下がるため、スコアを稼ぎたいなら厳しい設定にせざるを得ないものの、単に歌を聞きたいだけならありがたい設定となっています。実際、無制限のアパシーなら悠々と歌を聞けるでしょう。が、ダメージを食らっても歌が止まらないため「ギリギリって感じがたまんねぇ!」みたいな感覚はなく、やや物足りさを感じてしまうかも。「べ・に・い・ろ・か・げ・rッッ!」みたいな悲しみを生むこともありませんけれど。ともあれ、間口が広がったのは間違いありません。

細かいところで前作からの改善も

ガンヴォルト爪 メッセージウィンドウの透過設定が追加

実は、前作のレビューで指摘していたマイナスポイントが改善されていたりします。1つはメッセージウィンドウの設定。斜めにカッコよく挿入されるのはいいのですが、プレイを阻害するレベルで敵や床が見えなくなってしまうため、致命的なストレス要因となっていました。今回もデフォルト設定では同じ問題を抱えたままなのですが、メッセージウィンドウの濃さや顔グラフィックの消去などの設定が追加されたため、かなり改善されたといえます。とはいえ、シンプルな水平の字幕にすればいいのに…と思わなくもない。

もう1つがクエスト関連で、前作では3件しか受注できず、ステージクリア時に解除されてしまう、という不便極まりない仕様だったのが、受注の必要もなく件数の制限もない形式になりました。要するに、リザルト画面でクエスト達成の通知が来たらクエストリストから報酬を受け取るのみ、という仕様になりました。もうこれだったらリザルト画面で報酬を直接渡してくれたらいいのに、と思わなくもない。しかしこれが完璧な改善かと言われたらそうとも言い切れません。というのも、「Bランクでクリアせよ」とのクエストのためにSランクでクリアしたら、次に「Aランクでクリアせよ」とのクエストが未達成状態で追加されるからです。すでに達成したはずの目標のために繰り返しプレイするのでは、達成感より作業感が強まってしまうので問題かと。

コンセプトそのままにパワーアップした続編

ガンヴォルト爪 実際にはいろいろ通用するカゲロウ

そんなわけで『ガンヴォルト爪』は、プレイアブルな新キャラクターを追加しながらも間口の広さと奥深さを両立するコンセプトを維持した傑作となっております。むしろ、クリアするだけならさらにカンタンに、限界を目指すならさらに奥深くなっている印象で、続編として自身の良いところを磨き上げてきたようにも感じます。特に、アキュラの性能やクードス設定の追加で間口は大きく広がったのではないかと。クリアだけを目標とするなら物足りないと感じてしまう可能性も否めませんが、スコア稼ぎ以外にも装備アイテムの素材を集めたり隠しスキルを探したり、繰り返しプレイに誘う要素が盛り沢山なので杞憂かもしれません。さまざまな遊び方が許容されているところもやはりコンセプトどおりといえるでしょう。

最後に、ややネタバレになってしまうので書こうかどうか迷ったのですが、やっぱり書かずにはいられないので書いておきます。GV編の終盤で突然のカラオケバトルを要求されるのは、ファミコン時代を彷彿とさせるネタとしてはおもしろいのですけど、画面の外にいる自分自身を意識させられて突如現実を突きつけられたようで、正直キツかったです。電撃の能力者として戦っていたはずが、いきなり羞恥心との戦いに変貌するのだから堪らない。プレイヤーの精神へダイレクトアタックするのは本当に勘弁してください。

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