【蒼き雷霆 ガンヴォルト】レビュー 間口が広い無敵の雷撃系2Dアクション

2014年8月20日より3DSで配信が開始された『蒼き雷霆 ガンヴォルト』のレビューです。被弾しても雷撃ゲージがダメージを肩代わりしてくれる無敵の能力のおかげでアクションが苦手な人にもやさしく、得意な人ならスコアアタックにずぶずぶと飲まれていく…そんな間口の広さが魅力の2Dアクションゲームになっています。

Bitsummit2014で発表されたときから気になっていた『蒼き雷霆 ガンヴォルト』が配信開始されたので、さっそくDLしてクリアまで遊んでみました。1周クリアするだけなら4時間程度、真エンドまで遊んだら8時間弱くらい。こう書くとボリュームは値段相応のようですが、実のところ「あれ?8時間も経ってなかったの?」と思うほどの密度があります。

『蒼き雷霆 ガンヴォルト』は「ロックマンゼロ」を手掛けたインティクリエイツ製の新作2Dアクションゲーム。ドット絵な2Dアクションといえば安定感のある昔ながらのジャンルではありますが、『ガンヴォルト』は2014年の新作として、アクションもストーリーも新しさに溢れた意欲的なゲームになっています。

どのへんが現代的なのか。まずは『ガンヴォルト』の世界観、ストーリーを見てみましょう。

今風のルビ多い系ストーリー

蒼き雷霆 ガンヴォルト ラノベ風なストーリー

「第七波動」(セブンス)と呼ばれる能力に覚醒した者たちが出現し、彼らを統制する巨大企業「皇神」(スメラギ)により掌握された近未来世界。一見平和な社会の裏側で虐げられていた能力者たちのために、私設武装組織「フェザー」を名乗るレジスタンスが立ち上がる。

主人公は「フェザー」に属する能力者、コードネーム・ガンヴォルト。若干14歳にして蒼き雷霆(アームドブルー)の異名を持つ最強クラスの能力者である。彼のもとに下った指令は「皇神」(スメラギ)のバーチャルアイドル・電子の謡精(サイバーディーヴァ) モルフォの抹殺であったが… 蒼き雷霆(アームドブルー)と電子の謡精(サイバーディーヴァ)の交差するとき、物語は始まる!

ハイ、『ガンヴォルト』のストーリーはこんな感じ。黒歴史ノートぶちまけ系な能力バトルモノはいかにも現代風ですね。流行りのライトノベルっぽいのですが、実は物語はライトではなくややヘビー。このあたりも「ロックマン」からの伝統なのでしょうか。

日常パートはのどかなものですけど。…蒼き雷霆さん何言ってるの?

蒼き雷霆 ガンヴォルト のどかな日常パート

さて、ストーリーが現代的であることは十分ご理解いただけたでしょうから、次はゲームの部分、新しいアクションについて書いていきましょう。

新感覚 無敵の雷撃系アクション

『ガンヴォルト』はジャンプ&ショットのオーソドックスなアクション…ではありません。主人公は雷撃系の能力者ですから、能力を使った戦いになるのです。

メインのとなる攻撃方法は、ダートと呼ばれるショットを敵に当ててロックオンしてからの雷撃、というもの。ショットにもわずかながらダメージがあるものの、それだけではまともに戦えないので、ロックオンからの雷撃がメインになっています。

蒼き雷霆 ガンヴォルト ロックオンからの雷撃がメイン

雷撃を放つ際には、周囲に「雷撃鱗」(ライゲキリン)と呼ばれるバリアーのようなフィールドが展開されます。雷撃鱗は実弾系の攻撃を防ぐ役割も果たしてくれるという攻防一体の能力なのです。さらに、ジャンプ中に使えば滞空時間を伸ばしてふわふわできるという優れモノ。さすがは最強クラスの能力者、便利な能力を持っています。

雷撃鱗はEPゲージと呼ばれるゲージを消費しますが、ゲージは自然回復するので気兼ねなく使えます。しかも、十字キーの下を2回押してカッコいいポーズをとるだけで即座に全快するため、モリモリ使っていけます。なので、とにかく雷撃鱗ということになります。『ガンヴォルト』はジャンプ&ショットではなく、ジャンプ&ショット&雷撃鱗となっているのです。

『ガンヴォルト』の能力はこれだけではありません。電磁結界(カゲロウ)という自動回避能力もあるのです。これは、電撃能力を使っていない状態であれば、被弾してもEPゲージがダメージを肩代わりしてくれる、という能力です。ボタンから手を放して攻撃を止めれば、被弾してもダメージは食らわない、というワケです。

蒼き雷霆 ガンヴォルト ダメージを肩代わりしてくれる電磁結界(カゲロウ)

…んん?そうです。勘のいい方ならお気づきでしょう。前述のとおり、EPゲージは下2回押すだけで即座に全快します。ということは、下を連打していれば実質”無敵”なわけです。なんと。いくら最強クラスの能力者設定とはいえ、アクションゲームにおいてはこれはもう反則の域。

そんな反則能力の電磁結界(カゲロウ)のおかげで、1周クリアするだけなら割かし楽にイケます。ヤバイと思ったらボタンから手を離して攻撃を止めれば体力が減ることはないですし。ボス戦で回避方法がわからなくても、とりあえうず下を連打しておけば死ぬことはないわけです。これ、まさに究極の初心者救済システムといっていいでしょう。

蒼き雷霆 ガンヴォルト EPゲージがある限りは無敵

電磁結界(カゲロウ)の存在が、本作をアクションゲームのセオリーから少し外れたものにしています。たとえばボス戦とか。普通は、ボスの攻撃を避けてからその隙にこちらの攻撃を叩き込む、という流れですよね。でも、『ガンヴォルト』の場合、それだと電磁結界(カゲロウ)に頼れば楽勝になってしまうので、こちらの攻撃を叩き込めるタイミングはボスの攻撃中が主になっています。ゲーム全般的に主人公のアクションに合わせた調整なのですが、これがちょっと新しい感覚を生み出していますね。

そうはいっても無敵の能力はやはり反則レベル。じゃあヌルゲーなの?といわれたら、そうでもないのがこのゲームのおもしろいところ。クリア評価のランクのためにスコア稼ぎを考え始めるとガラリと様相が変わります。アクションが得意な人ほどズブズブと飲み込まれていくゲームになっているのです。

楽しいスコア稼ぎには稼ぎたくさせる仕組み同梱

『ガンヴォルト』のスコア稼ぎは、ロックオンからの雷撃で複数体の敵を同時に撃破するのがメイン。撃破する数が多ければ多いほど倍率が上がっていく、というヤツですね。ありきたりかもしれませんが、一気に撃破するのはやっぱり気持ちいい。

蒼き雷霆 ガンヴォルト スコアアタックが楽しい

スコアを無視して安全に進めたいなら、画面に入った敵から1体ずつ倒していけばOK。このゲームの敵は画面に入ってからすぐに攻撃はしてこないので、1体ずつ撃破するなら楽勝です。でもスコアを狙うならある程度まとめてから撃破することになります。そんなことをやっていれば敵が攻撃してくるのでリスクも跳ね上がります。なので、急いでロックオンしてさっさと撃破、という流れになり、自然とスピーディでスタイリッシュな動きになっていくわけです。

敵を倒せば画面右上に表示される「クードス」と呼ばれるポイントが加算されていき、チェックポイントを通過したときやスキル攻撃による必殺技を使ったときに清算されて、晴れてスコアゲットになります。クードスが貯まれば貯まるほど清算時のスコアが大きくなる一方、1発でも被弾するとクードスがゼロになってしまい、それまでの苦労が水の泡、というハイリスクハイリターンなスコアシステムになっているのです。ここでいう被弾とは、電磁結界(カゲロウ)でダメージを受けていない場合も含むので、一切の被弾が許されません。便利すぎる能力はスコア稼ぎにおいては反則のようです。

蒼き雷霆 ガンヴォルト スコアアタックでは頼れない電磁結界

チェックポイントに触れることでも清算されてしまうため、本気で稼ぐならチェックポイントさえ回避しながら進むことになります。クードスの上昇とともに跳ね上がる緊張感、その中を駆け抜ける壮快感のせめぎ合いこそが『ガンヴォルト』の真骨頂といえるでしょう。スコアを意識し始めるとスピード感や疾走感が生まれてくるので気持ちよさも跳ね上がっていきます。

「スコアなんて別にどうでも…」と思われる方もいるかもしれません。実際、クリアを目指すだけならスコアなんてどうでもいいですしね。でも『ガンヴォルト』でスコアを稼ぐことは、ランク評価とは別のご褒美が用意されているのです。そのせいで、どうしても稼ぎたくなってしまうのですよね。

そのご褒美とは「歌」。クードスが1000ポイントを越えると、BGMが電子の謡精(サイバーディーヴァ)モルフォちゃんによるボーカル付きの歌に変わります。パワーアップでBGMが変化する「ツインビー」や「スターソルジャー」のように、歌が流れることでテンションが上がってしまいます。『ガンヴォルト』がパワーアップするわけではありませんが、プレイヤーは気分的にパワーアップします。なので歌を聞きたくてスコア稼ぎに走ってしまう。音楽の力って偉大。

蒼き雷霆 ガンヴォルト 歌の力は偉大

とはいえ、1発でも被弾すればクードスとともに歌も消えてしまいます。実際のところ、緊張感のせいで歌どころではなかったり、歌が流れた瞬間に被弾してモルフォちゃんに申し訳なかったりするわけですが。「やっぱ1000なんて無理!」という人のために、死んだ場合に歌ってくれることもあります。このときスーパーサイヤ人状態で復活するので、最後の救済措置って感じですね。

ともあれ、歌の存在がスコアを稼ぎたくさせる仕組みとして機能いるのですよね。クードスの1000ポイントという値も絶妙な設定。最初のうちは全然手が届かないように思えるのですが、慣れてくると手が届きそうで届かない…ちょっと届く、くらいですし。なので、『ガンヴォルト』はスコアアタックが楽しいだけでなく、自然とスコアアタックに向かわせるゲームデザインとが合わさっているのが見事なゲームなのであります。

アクションが得意な人も苦手な人もイケる間口の広さ

前述のとおり、無敵の電磁結界(カゲロウ)があるので、クリアするだけならアクションが苦手な人でもなんとかなるでしょう。でもヌルゲー化しているわけではなく、上手な人はスコア稼ぎなどでいくらでも上を目指せる仕組みが用意されています。つまり、アクションが苦手な人でも得意な人でも楽しめる、という欲張りなゲームになっているわけです。

本作には、アクションの苦手な人のために難易度設定が用意されているわけでもありません。たとえ難易度ができたとしても、イージーモードでクリアしたところで引け目を感じて満足度が下がってしまう…というのが人情ですから、難易度が選べればよい、というものでもありませんよね。難易度設定がなくても、プレイヤーの遊び方次第でムズかしくもカンタンにもなるのが『ガンヴォルト』なのです。多くの人が楽しめるような間口の広げ方は、本当に逸材ではないかと。

蒼き雷霆 ガンヴォルト 上達を実感させる作りも見事

また、上達を実感させる作りもうまくできています。実は、普通にクリアした場合のエンディングは「えっ、そんな幕切れ?」と思うような展開になっています。あの結末で満足できる人はまずいないでしょう。もちろん、別のエンディングが用意されています。真の結末を迎えるためには、すべてのステージに隠された宝石を集めてから最終決戦に挑むと展開が変化する「ソニック」方式ですね。通常エンドに納得がいかなかった多くのプレイヤーは、自然と2周目へ誘われていくわけです。

さて、以前クリアしたステージを再プレイするとどうでしょう。苦労したはずの場所も楽々突破できるようになっている自分に気付くわけです。上達を実感できる瞬間ですね。「あれ?オレうまくね?」と思わされてしまいます。そのまま調子にのってスコアを稼ごうとしてしまったり、都合よく歌まで聴けてしまった日には手がつけられません。もうドハマりです。プレイヤーをこの状態にもっていくために、満足できない通常エンドにしておいて真エンドをエサに2周目へ誘う、という一本釣り。お見事。

実は、真のエンディングを迎えるためには無敵の電磁結界(カゲロウ)に頼れない戦いを強いられるので、なかなか大変です。でもここまで辿り着けたプレイヤーならなんとかなるでしょう。たぶん。「このボスの攻撃避けられない!」とか「クードス1000とか無理!」とか、何度も何度も無理だと思わせておいてからの突破を体験しているので、最後も諦めずに挑めるというものです。実際、ボクも最後はキツそうだなと思っていましたがやってみれば意外となんとかなるものです。

間口を広げただけでなく、上達を実感させることで、このゲームに入ってきてくれた人をすくい上げるところまで作り込まれているわけです。この掌の上、しゅごい…。

細かいところでちょっと惜しい点も

と、ここまではなんだかベタ褒めっぽくなっていますが、惜しい点がないわけではありません。そのあたりをチクチクいってみましょう。

まずメッセージ表示について。ナナメにカッコよく挿入されるメッセージウィンドウですが、ステージの進行中やボス戦の最中にも挿入されてきます。これ本当に邪魔。足場が見えなくなったり、ボスの体力が見えなくなったりと、本当に困りものです。ボタンを押すことで表示・非表示の切替ができるのですが、非表示にするなぜかとボイスも消えてしまう…。結構おもしろい会話をしていたりするので、余計に残念な仕様に思えます。

蒼き雷霆 ガンヴォルト ゲーム中のメッセージウィンドウが邪魔

次にクエストの仕様について。クリア評価のランクやタイムなど、条件を満たすことでアイテムやお金をゲットできるクエストがあるのですが、使い勝手が非常に悪い。同時に3つまでしか受注できない上に、クエストの未達成の場合もステージクリア時に受注が解除されてしまうので、毎回受けなおさなくてはならない、という面倒な仕様になっています。達成した場合もリストから受注したクエストを選んで報酬をゲット、というこれまた面倒な仕様。毎回受注しなおすのは面倒ですし、そもそも3つに限定する理由もわかりません。実績システムみたいにしてステージクリアのリザルト画面で報酬ゲット、というわけにはいかなかったのでしょうか…。

あとスコアアタックに関して。スコア稼ぎは『ガンヴォルト』の1番おもしろい部分なのですが、ちょっとヤバそうなアイテムが存在しています。エリア開始時に4%でクードス1000増加、という効果が得られる装備がそれ。おかげで理論値はめっちゃ高くなりそうですが、実際にその確率を引き続けられるかというと…。ボクはスコアの限界に挑めるような腕ではないのであまり関係ないといえばその通りなのですが、これだけ魅力的なスコアシステムと調整があるのに限界値が運次第になっちゃうのはもったいないなと。

そんな感じで、惜しい点は本当に惜しい。チクチクと小石を投げるしかない程度の惜しさなので、また次回があればぜひ改善をお願いしたいところであります。

完成度は十二分の良質アクション

蒼き雷霆 ガンヴォルト カッコイイスキルカットイン

そんなわけで『ガンヴォルト』は非常に良質なアクションゲームでした。電撃を使ったアクションが新しいというだけでなく、その新しいアクションに合わせてステージや敵がキッチリ調整されており、1作目にして驚きの完成度になっています。アクションの得意な人でも苦手な人でも楽しめる間口の広さや、上達を実感させるための作り、そして上達した後も楽しめるスコアシステムなど、どこをとっても見事なモノです。なんつーか、さすがです。

これで2000円以下なわけですからかなりお得感あります。いまならオマケの『マイティガンヴォルト』まで付いてくるのだから無茶苦茶です。どうなってるの?大丈夫なの?

ちなみに、オマケの『マイティガンヴォルト』はファミコンの「ロックマン」風なミニゲームです。コミカルになったガンヴォルトだけでなく、「Mighty No.9」から一足お先にBeckが使えたり、「ぎゃる☆がん」のえころが使えたりと、オマケにしては豪華なボリュームになっています。『ガンヴォルト』を買った人はこちらも忘れずに遊んでおきましょう。

公式サイト:蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト公式サイト