映画『メッセージ』感想 ※ネタバレあり

映画『メッセージ』、公開初日に観てきました。原作小説は未読だったのですが、帰りに本屋へ寄って即座に購入して読みながら帰る、といういつものパターンに。映画と小説、いろいろ違うところもありますけれども、どちらも実によいSFでございました。

最初にネタバレのない範囲でどういう映画なのかを書いておくと、原作未読の人に言うならば、大衆向けのエンタメ作品ではなく、万人受けしなさそうなコアなSF作品であるということ。原作読者の人に言うならば、いろいろと切り落としてわかりやすいクライマックスを付け加えた内容になっていったところでしょうか。

※以下、ネタバレ含むため、未見・未読の方は注意。

本作はエイリアンとのファーストコンタクトもので、主人公の言語学者が未知なる者たちとのコミュニケーションを試みていくお話になっています。宇宙論や物理学ではなく、言語学という切り口が特徴的。人類とはまったく異なる体系を持つエイリアンの言語を習得することで主人公の思考法に革新が起きる展開は、言語が思考に影響するというサピア=ウォーフの仮説からフィクションとして飛躍させたのだろうかとワクワクしながら見ていました。言語が思考に影響するといえばジョージ・オーウェルの『1984年』が思い浮かびますが、言語そのものが持つ力という意味では『メタルギアソリッド5』なんかも記憶に新しいところ。

しかし、この思考法から導き出されたのが決定論的な未来像だったので「いまどきラプラスの時計仕掛けの宇宙みたいなのはちょっと…」なんて思ってしまったのですが、どうやら映画版で大幅にカットされてしまった部分のようですね。ここは小説だとフェルマーの最小作用の原理(有名な最終定理ではなく変分原理の方)から説明がなされていてナルホド感あります。作者のテッド・チャン曰く、そもそもこの物語が変分原理から生まれた話だそう。それをバッサリ切っちゃうなんて…、と思わなくもないのですが、だからといって映画の中で光の屈折の図を出して解説をはじめられてもそれはそれでどうかと思うので、こうならざるを得なかったのかも。なんにせよ、決定論設定を活かしてタイムパラドックスを堂々と使っちゃう特異なシナリオができているわけですし、これはこれで。

映画と小説との差異として、もう1つ大きな部分はエイリアンとのファーストコンタクトにフォーカスされているところ。映画では謎の”ばかうけ”宇宙船の出現による世界の混乱が描かれ、終始重苦しい空気が流れているのですが、小説ではそうでもなくてビックリ。やたら緊迫ムードが続くのは監督の趣味なのでしょうか。いずれにしても、世界の混乱と救済は映画独自の要素であり、これらがわかりやすいクライマックスにも繋げられている印象。小説では物語の中核ではない部分とはいえ、映像で見せるならこれでいいのではないかと。別に物語の本質がズレちゃうわけでもないですしね。

反対に、映画と小説で共通なのは主人公の娘のくだりが何度も挿入される構成でしょう。冒頭のシーンは映画と小説で全然違うのですが、ここはうまいこと映像化したなーと思います。後半になって「あっ、娘のシーンってそういうことなの!? ああ、Story of your life(※原題)ってそういう…」となるサプライズはどちらも変わらず。ここは本作最大の魅力であり、ここが損なわれていない以上どっちも最高だぜ、という結論なのであります。

そんなわけで映画『メッセージ』、コアなSFで決して万人向けではないと思いますが、映画を楽しめたのであれば原作も楽しめると思うし、原作が好きな人なら映画も楽しめるのではないかと思います。…あっ、ノンゼロサムゲームってそういうこと?

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