【十三機兵防衛圏】で描かれる1985年という時代を懐かしむ

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ヴァニラウェアの新作、『十三機兵防衛圏』は13人の少年少女が織りなすSF群像劇です。同社らしい美麗ビジュアルはもちろん、ぐいぐい引き込んでくるストーリーも素晴らしい。SF要素テンコ盛りでタイムトラベル要素もあり、さまざまな時代が交錯する物語になっているのですが、その中心になるのはどうやら1985年のようです。全体的にノスタルジックなビジュアルなので誰でもなんとなく懐かしい気持ちになれるとは思うのですけれども、実際にあの時代を生きた人とそうでない人で印象は違うかもしれません。ボクは生きていた方の人なので、今回は本作で描かれている1985年という時代について書いていきます。

『十三機兵防衛圏』における85年がどんな感じで描かれているかといえば、体験版の時点で「TVのUFO特番を録画したビデオテープを貸し借りする」場面があるくらいには80年代です。もうこの時点で若い子置いてけぼりな気がしますが、「3倍録画だから画質イマイチ」とか言い出すシーンまであるので、着いてこれる人だけ着いてこい!って感じですね。もちろん、ストーリーの大筋とは関係ないので知らなくても何の問題もなく流せます。というかVHSは90年代になってもまだまだ現役ですからこのへんは大丈夫そう。

3倍録画とは、容量そのままに3倍の時間を録画できる機能。大抵のVHSデッキには搭載されていた。

85年における最新式の家電品たち

85年当時の生活については網口君の部屋がわかりやすいかも。彼はお金持ちの家の子なので最新の家電品が揃っています。まずTV。現代の感覚では普通サイズですが当時としてはかなりデカい。チャンネルを"回す"やつではなくリモコン式っぽいところも新しさを感じます。VHSのビデオデッキの他にレーザーディスクまであるというのだから本当にお金持ちっぽい。大きなスピーカーは隣のコンポと繋がっている様子。音楽はアナログレコードからCDへと移り変わっていく時代なので両方あるんです。もちろんラジカセもあります。網口君は登校時にイヤホンをしているシーンもありますからウォークマンも所持しているようですね。羨ましい。

85年の最新機器が揃う網口家。テープが"巻き戻る"という表現もTVの砂嵐も時代を感じさせる。

最新のゲーム機が揃っているということは…

網口君の家には最新のゲーム機が揃っている、とのことでしたが85年だとファミコンかセガのSG-1000IIあたりでしょうか。(マーク3は85年10月なのでまだかも) ちなみにファミコンがブームになるのは85年9月の『スーパーマリオブラザーズ』以降なのですが、最新機種を揃えている彼なら四角ボタンのファミコンを所持しているのかもしれませんね。なんにせよ、単に「ゲーム」という言葉がTVゲームのことを指すようになるのはファミコンブーム以降なので、パンピーは「ゲーム&ウォッチ」だった時代です。ああ、羨ましい。

アーケードゲームに関する描写も。85年のセガの大型筐体といえば『ハングオン』か『スペースハリアー』?

鞍部家はおばあちゃんの家

網口君の家はさすがにお金持ちすぎて参考にならないかもしれないので、比較的一般的なご家庭である十郎君の家も見ておきましょう。TVのサイズはこのくらいが普通です。チャンネル切替はリモコンではなく本体側でしか操作できません。これはダイヤル式ではなくボタン式のようなのでチャンネルを"回せ"なさそうですけど。台所の湯沸かし器にも時代を感じさせます。

和室に縁側、台所と繋がった居間、というレイアウトからも昭和っぽさがあふれる鞍部家。

SF要素は映画とともに

さまざまなSF要素が入り乱れるストーリーなので、映画ネタにも事欠きません。映画好きの十郎君が大好きな「ダイモス」シリーズは「ゴジラ」シリーズのことでしょうね。54年に第一作、74年には「ダイモス対メカダイモス」が公開されたとあるので間違いありません。なによりポスターの構図がまんまです。それから77年に公開されたという「UFOウォー」は「スター・ウォーズ」でしょう。85年なら旧3部作も完結しているはず。作中に登場する映画ではなく本編ストーリーの展開も他にも映画要素があって、『E.T.』(82年)っぽいのとか『ターミネーター』(85年5月なのでギリギリ?)っぽいところもあります。映画ネタはまだまだあると思うので、好きな人にはたまらないはず。

この展開を大喜びで受け入れてしまうUFO大好き奈津乃さん。85年なのでブルマは正しい描写です。

だいたい宇宙人の仕業でした

映画の他にはTV番組のネタなんかも入っています。上の方に書いた「UFO特番」もそうですし「探検隊シリーズ」も出てきます。このUFO特番を録画して見るほどUFO好きの南奈津乃さんはMIBだのインプラントだの話が早くて助かるのですが、思えばあの時代のオカルトネタって宇宙人の仕業にされがちだったんですよね。だから彼女は決して変な思考をしているわけではないんです。あの時代では普通なんです。だいたい宇宙人のせいにされる展開は『X-ファイル』の放送されていた90年代まで根強かったと思うのですが、今ではすっかり見かけなくなってしまいました。もう地球は守られたのでしょうか。

宇宙人に連れ去られて身体を弄られて戻ってくるのはUFO特番でも定番の展開。

ツッパリたちの青春

TV番組といえば本編のストーリーに思いっきり絡んでいるのが『スケバン刑事』(TVシリーズは85年~)ですね。13人のメインキャラクターのうちの1人・鷹宮由貴はパッと見の印象からして"スケバン"なんですけれども、ストーリーの展開も笑っちゃうくらい『スケバン刑事』になっています。もう名前からして『スケバン刑事』ですもんね。(初代・麻宮サキを演じたのは斉藤由貴) 他にもリーゼントの"ツッパリ"である緒方稔二というキャラクターもいるんですが、『ビー・バップ・ハイスクール』の映画も85年なんですよね。この2人はものすごく時代を表しているキャラクターだと思います。

親に関する弱みを握られて従わされる鷹宮由貴編。あまりにも「スケバン刑事」だがヨーヨーは使わない模様。

ジュースにも時代あり

小物にも時代感があふれています。たとえばジュース。網口君がくれる懐かしいデザインのファンタっぽいジュースの缶は細くて長いタイプなんですよね。自販機も登場しますが消費税の導入前なので100円のはず。110円に値上がりしたとき、ジュース買うのに硬貨が2枚必要ってことに違和感バリバリだったのは今でも覚えています。

懐かしいデザインのファンタ。何より缶のサイズが懐かしい。

また、由貴が学校で飲んでいる紙パックの「HEY-C」は「HI-C」のことでしょうね。黒い背景にロゴと果物のプリントが懐かしい。当時オレンジジュースとかリンゴジュースといえばコレでした。何度か復刻されたそうですが残念ながら現在は販売されていない様子。あと食堂の自販機にある「ハイキング」はおそらく「ピクニック」のことでしょう。学校内の自販機にある紙パックジュースの定番ですね。こちらは今でも販売されているようですがパックの形が違います。缶ジュースに比べて安かったので学生の味方でした。

学生の懐事情にやさしい紙パックジュース。しかし自販機のデザインは新しめのような…。

80年代が過去の人も思い出の人も

他にもいっぱいあると思うのですが『十三機兵防衛圏』で描かれている85年はこんな感じです。このあたりを懐かしいと思えるかどうかで印象が変わるんじゃないかなーと思います。若い人にとってはスマホもネットもない時代、というだけでまったくの別世界なのかもしれませんが…。あらためて考えると老け込みそうなのでやめておきます。

ともあれ、『ストレンジャーシングス』や『Ready Player One』(特に原作)など、80年代を題材にした作品が目に付くようになってきた昨今、その時代に多感な青春時代を送った人たちがモノを作る側にまわっているのだなと感じます。本作もその1つであることは間違いないでしょう。ヴァニラウェアのフェチズムにあふれたビジュアルとともに、彼らの愛した80年代を堪能しようではありませんか。

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