【Dragon Age: Inquisition】ずっとこの世界でウロウロしていたい…”冒険してる感”の高さにオープンワールドRPGの真髄をみた

オープンワールドのRPGというやつはどうしてこうもダラダラと続けてしまうのか。とはいえ、ずっと冒険をしていたいと没頭させてくれる世界を作ることがこのジャンルの命題でしょうから、そういう意味では大正解なのですよね。おかげで審問官としての生活は終わりそうにありません。

そういえば海外サイトのIGNでようやくGame of the Year 2014が発表されたわけですが、IGNの選考もユーザー投票も本作『Dragon Age: Inquisition』をベストタイトルとして選んだそうです。おめでとうございます。

参考:Best Overall Game – Best of 2014: Games, By Platform – IGN

実際に遊んでいても「こいつはたしかにGame of the Yearだぜ」と思えるクオリティの本作。個人的にはあまり期待していなかったストーリーも中盤以降ガンガン盛り上がりをみせて海外サイトの高評価っぷりも納得であります。バトルもキャラ育成も、どこを切り取ってもキッチリ高品質という出来のよさは本当にすばらしい。まさに大作って感じですね。

そんな中でもっとも注目したいのが「冒険してる感」。オープンワールドのRPGにとって最重要ともいえるパーツであり、このジャンルにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、やはりここが決め手といっていいんじゃないでしょうか。「冒険してる感」の作り出す没入感を重視した丁寧な作りこそが本作のコアだと思うのです。

世界は広くとも密度は高い

オープンワールドといえば、だだっ広いマップを好き勝手に走り回れることが魅力の1つ。『Dragon Age: Inquisition』でもマップはめちゃくちゃ広いです。マップは1つではなく、緑豊かな平原や森林から薄暗い湿地、太陽のまぶしい砂漠から真っ白な雪原まで、実にさまざまなロケーションが用意されています。

Dragon Age Inquisition 広い広いマップ

驚くべきことに、このマップ1つ1つがどれも広い。実際に歩いたところから地図が埋まっていくシステムになっていて未踏の地は表示されないため、最初は全体の広さすら掴めないのですが「もうそろそろ大体周ったかな」と思う頃になっても、まだまだ地図の先にイベントアイコンが点灯していることが多々あります。というか、いまだにいっぱいあります。

ここで重要なのが、ただ広いだけではない、ということ。無闇に広いだけでは退屈なゲームですが、イベント盛りだくさんで密度も高くなっているのです。犬も歩けば棒に当たると申しますが、審問官が歩けば棒どころか盗賊にゾンビ、悪党の砦や謎の遺跡、巨大クマからドラゴンまでぶつかり放題。

Dragon Age Inquisition 森の巨大クマ

オープンワールドなゲームといえば「地図に示された目的地へいって依頼を受けてお使い」の繰り返しであることがほとんどです。たしかに本作もそういう面はあります。とはいえ、1つ1つ順番に消化するのではなく、近場にあるクエストから手当たり次第にやればいいので、お使い感は薄められている印象ですね。敵を倒す依頼とかモノを集める依頼とか、自然といろいろ同時に進んでいくことになるので、余計にそう感じるのかも。ここはかなり意図してデザインされているように思えます。

マップを広くしても退屈にならないようイベントの密度を高め、そしてイベントを増やしてもお使い感を出さないようにする…ということで、結果としてプレイヤーはかなり好き勝手にウロウロできるようになっており、さらにはいくらウロウロしていても退屈することがないわけです。これはもうダラダラと遊び続けてしまっても仕方ありません。…仕方ありませんよね?

世界の密度を高めているのはクエストだけではない

Dragon Age Inquisition 雪原のマップ

マップ上に存在するものはクエストに関わるイベントだけではありません。クエストのアイコンが光っている場所にたどり着くまでにもさまざまなイベントに遭遇することになります。ただ単に盗賊団や魔物やクマのような敵と遭遇することもそうですが、それ以外にもいろいろなことに出会います。

たとえば、誰かがキャンプした後に思わせぶりなメモが残っていたり、珍しい素材を発見したりといった具合に、地図上の空白っぽい部分にも何かしらイベントが用意されています。どこへ行っても何かしらあるので、何もない場所など存在しないくらいではないでしょうか。

他にも、各地に点在するランドマークからはその地の歴史や伝承を読み取ることもできます。もはやこれってただの観光では、という気がしないでもないのですが、ランドマークを周ることでちゃんとご褒美もありますからね。それはそれでなんだかスタンプラリーのようで、やっぱり観光じゃないか。

何にせよ、広いマップをどちらに向かって進めようとも何かしら用意されていて無駄足を踏むことがないのですよね。なので、どこへ行くにも「あっちには何があるんだろう」と期待に胸を膨らませて歩き出すことができるわけです。これこそ冒険というものでしょう。

何もないところにだって感動はある

RPGなのでクエストやらアイテムやらにばかり意義を求めてしまいがちですが、『Dragon Age: Inquisition』において個人的にもっとも「冒険してる感」を刺激されるのはグラフィックのすばらしさです。単純に風景がキレイなんですよね。ここは新世代機さまさまといったところでしょう。

どこへ行っても雰囲気バッチリの景色に遭遇できるのでとにかく歩き回りたくなるのです。観光名所になりそうなスポットだけではなく、何気ない道中ですらキレイだと感じるところが本当に多いんです。

たとえばこれとか。ただの森なんですけど緑が鮮やかで木漏れ日も美しく、薄くかかった霧も神秘的。このサイズの画像では伝わりづらいかもしれませんが、ここを実際に歩いているとマジそれだけで感動できるんですよ。

Dragon Age Inquisition 深緑の美しい森

こちらは雷雲が轟く平原。観光地で雨に降られたら残念な気分になりますが、こういう雨ならいくら降られてもいいと感じさせてくれるくらい。ちなみにこのマップはとあるイベントを終わらせると雨が止んで晴天になります。それはそれで美しい光景になるので一粒で二度おいしいマップ。

Dragon Age Inquisition 雷雲の花畑

砂漠の乾いた空気感もステキ。こんな鎧兜で走っていたらぶっ倒れてしまいそうですが、ファンタジーなのでセーフ。もちろん美しいオアシスも用意されています。

Dragon Age Inquisition 砂漠

あと遺跡や洞窟は大体キレイです。なので洞窟をみつけると喜んで飛び入りたくなります。遺跡っぽい回廊の先に青く光る鍾乳洞が見えるとか、もうワクワクが止まりません。

Dragon Age Inquisition 神秘的な遺跡

こんな感じで目に映る光景が大体キレイなのでスクリーンショットを撮りはじめると止まりません。カメラを持って出かけたらすぐに容量オーバーしてしまうでしょう。どこを見てもキレイな景色になるように作り込まれたマップには作り手のこだわりを感じずにはいられません。これだけキレイな景色があるとどこへ行くにもワクワクします。…やっぱり観光じゃないか。

他にも、本作は右スティックを押し込むことで周囲にあるアイテムが表示されるシステムが搭載されています。何もしないと背景に溶け込んでほとんど見えません。余計な手間が増えているような気がするかもしれませんが、そうすることで風景や雰囲気を壊さないようにしてるんですね。そのくらい本作が風景を美しく見せることを重視し、意義を見出していることが伝わってきます。

昔「ゲームにグラフィックなんて関係ない」的な意見をいう人がよくいたのですが、こういうのを体験してしまうとそうもいえなくなるんじゃないかなと。といっても、あの手の意見って「オレは見た目じゃなくてゲームの本質が見極められるんだぜ」というオレアピールなので、あんまり関係ないかもしれませんけど。あ、ちなみにボクは見た目はめっちゃ重要だと思ってます。もちろん高画質がすべてだというわけではなく、五感に訴えてこそという意味で。

冒険が楽しくて世界が救われない審問官生活

各地へ赴いて薬草や鉱物などをカリカリ集めているとふと思うんですよ。「こんなことしてていいのだろうか」と。だってプレイヤーであるボクは審問会のトップなわけで、素材集めなんて下っ端にやらせておくべき仕事じゃないですか。

そもそも組織のトップがふらふらと好き勝手にを走り回って冒険の旅をしている時点で問題なような気がしないでもない。もちろん各地の民衆を助けて支持を集めることもありますが、盗賊団の砦に先頭きって殴り込むとか、見つけたドラゴンにとりあえず殴りかかるとか、組織のトップがやっちゃいけないことだと思うのですよね。やるけど。

Dragon Age Inquisition ドラゴンとの戦い

観光しながら乗馬とハンティングを楽しむ組織のトップとか、どこの社長さんでしょうか。たまに帰ってきて玉座に座ってやることといえば、旅先で見つけた悪いヤツをしょっぴいて大岡裁きを下すだけ。あとは趣味の武器弄りのために工房から出てこない。出てきたと思ったらどっか行っちゃう。これでいいのか審問会。

とはいえ、世界を救えるのは主人公の左手に埋め込まれた力だけなので、誰も彼を咎めることなどできません。世界を救うのも放置するのもプレイヤー次第。そんなわけで、まだまだこの世界は救われそうもありません。もうちょっとだけ、あとちょっとだけ世界を巡ってきますのでね。それが終わったら世界を救いますので、ちょっとだけね?

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