『レジェンドオブレガシー』をクリアしたのでレビューを書きます。現在は2周目進行中なのですがここで一区切り。第一印象から変わらず、バトルに特化した「サガ」でありました。バトルだけでなく、攻略の手探り感や運要素ももたらすドラマなど、どっちを向いても「サガ」だったようにも感じました。
『レジェンドオブレガシー』は過去に「サガ」シリーズに関わった人たちが作ったゲームということで、実際ものすごく「サガ」っぽくなっています。具体的にどのへんが「サガ」っぽいのかといえば、ベースレベルのない育成システムやバトル中に技を閃いたり(覚醒)、HP低めなので一瞬で全滅するなど、パーツの1つ1つがそうなのですが、すべてをひっくるめて一言でいうなれば”手探り感”になるのではないでしょうか。
このゲームが大体どんな感じのゲームであるのか、という概要については1stインプレッションで書いたのでそちらを参照していただければ幸い。
記事のタイトルどおり、バトルに重点をおいた「サガ」という印象で、それはクリア後のいまでも変わりません。本作独自のバトルを特徴づけている「フォーメーション」と「場の属性」は後半になればなるほど重要性を増していきましたね。
パッと触っただけでもあふれる「サガ」っぽさは伝わってくるのですが、最後まで遊んでみると「サガ」の精神とでもいうべき遺伝子に触れられたような気がします。それは「手探りで遊ばせる場の提供」なのではないかと。
バトル重視の「サガ」っぽいRPG
本題に入る前に、まずは『レジェンドオブレガシー』がどういうゲームなのかをざっと紹介しておきましょう。一言でいうなら「バトル重視の「サガ」」です。
7人の主人公から1人を選び、あと2人をメンバーにして3人で行動します。舞台はアヴァロン島という未踏の地で、ここを冒険するストーリーになっています。ストーリーといっても導入でそれぞれのキャラクターがどういう目的でアヴァロンにやってきたかが語られるくらい。キャラクター同士でドラマを繰り広げるような展開はほぼありません。
ゲームのメインはバトルの部分。未踏の地を探索しつつ敵と戦っていくことになります。ベースレベルはなく、バトル中に技を閃き(覚醒)、死ぬときはあっさり全滅、というシステムは”大体「サガ」”といっていいでしょう。
バトルの難易度が高めなところも「サガ」っぽいですね。そこらへんのザコ敵でもうっかり全滅しかねないくらいで、ボス敵などは対策なしではまず勝てません。なんとなく戦っていては勝てないけどちゃんと対策すれば勝てる…いやそれでも負けるときは負けるかも。
本作のバトルにおける独自要素は「フォーメーション」と「場の属性」。この2つのシステムがかなり重要な位置づけになっており、『レジェンドオブレガシー』を特徴づける要素になっています。
「フォーメーション」はアタック、ガード、サポートのポジションを3人に割り当てておき、ターンの開始時に毎回選ぶというもので、戦況に応じた使い分けが必要になっています。「サガ」シリーズにも陣形やロールなどがありましたが、ターンごとに毎回選ぶところがちょっと違う感じ。
「場の属性」はバトルの”場”に火、水、風、邪の4属性がせめぎ合っており、そのとき1番強い属性によりさまざまな効果を生み出します。たとえば風属性は物理攻撃の威力が半減するなど、かなり大きな効果があります。属性のコントロールはプレイヤー側だけでなく、敵もやってくるので、有利な属性の奪い合いがバトルの2面性を作り出しています。本作の最重要システムですね。
『レジェンドオブレガシー』はひたすらバトルをしながら進めるRPGであり、「サガ」っぽい特徴的なバトル部分がコアになっているゲームになっています。
どこまでも”手探り”の攻略
ではあらためて本題に入りましょう。本作は「バトル重視の「サガ」」なわけですが、説明不足でわからないことだらけなことも「サガ」っぽくなっています。しかし、それ故の”手探り感”こそが「サガ」の本懐ではないかと思うのです。
本作はとにかく説明不足です。ゲーム中、システムの説明は最低限しかされません。なので、プレイヤーはあれやこれやとトライアル&エラーを繰り返して学習をしていくことになります。これが本当に手探り。
たしかに不親切といえばそうかもしれません。しかし言葉でべらべらと説明されていないだけで、プレイヤーを気付かせる仕組みとか誘導する流れはとか、あるところにはあります。たとえば、あっちこっちのフィールドに同じ敵が出てくるのは、おそらく場の属性の効果をわからせるためでしょう。同じ敵なのに全然ダメージが違うわけだからプレイヤーは当然原因を疑うわけです。
説明を受けていないから自分で気付くしかないのですが、気付けた瞬間に「そうか!これか!」という喜びがあるのも事実。キャラクターではなくプレイヤーの頭の上に電球が灯る瞬間があるわけです。五里霧中の試行錯誤はなかなかつらいものがあるかもしれませんが、それでもこの瞬間があるのだからやめられない。
「場の属性」のようなコアとなる重要システムはともかく、細かいところはもっと手探りです。たとえばキャラクターによる能力の差とか、装備品の性能とか、見えないパラメータや要素などがありそうな予感がするところが多数あります。「このキャラは盾技を覚えやすい?」や「武器の説明に扱いづらいとあるから覚醒しづらい?」や「敵もフォーメーションがある?」などなど。
こういった細かいところはどこまでやっても「そうか!」にはなりません。パラメータの有無や確率などが表面に出てこない以上、「こうかなーどうかなー」と手探りを続けるしかありません。わずかな確率の違いなんて、実際の数値を見ないとわかりようがないですからね。それでも、正解にたどり着こうとあれやこれやと繰り返すわけです。
正解が見つかってしまうと後はその正解を繰り返すだけになってしまいます。しかしカンタンには正解にたどり着けません。個人的な正解は見つけられるかもしれませんが、内部データでもみない限り、本当の正解かどうかは確認のしようがありません。なので、どこまでも手探りなのです。
この”手探りの攻略”が楽しめるかどうかが本作の評価を大きく分けるポイントになるでしょう。あれこれと試行錯誤をしてプレイヤー自身の経験値を高めていくところに喜びが感じられるかどうか。攻略って本来そういうものだし、誰しもわかっているつもりではあるのでしょうけど、「時間さえかければクリアできて当然」がスタンダードになったRPGの世界でその考え方に切り替えられるかどうかがカギではないかと。
ボクのようなおっさんは「ああこれ「サガ」だな」って思うだけで切り替え完了なのですが、「サガ」を知らない人にとってどうなのかはわかりませんし、興味深いところです。おそらく、開発者にとっても同じなんじゃないかなと推測してます。「そんなもん気付かねえよ!」的なところがあっても「「サガ」だし」で流せるかどうかは結構な差ではないかと。
「サガ」シリーズはクリア後に攻略情報を漁ると知らないことがいっぱいあったことに気付かされます。おそらく『レジェンドオブレガシー』でも同じように、さまざまなマスクデータが込められてるんじゃないかと思いますが、その答え合わせはまだ先になりそうです。つまり、それまではまだまだ楽しく手探りできるというわけです。
運要素が生み出すプレイヤーの物語
『レジェンドオブレガシー』にシナリオがほぼ存在しないことは先にも述べました。しかしこれはキャラクターの物語が直接描かれていないというだけで、プレイヤーには何度もドラマチックな展開が待ち受けています。
本作は7人の主人公がそれぞれ別のエンディングをもっています。誰を選んでも道中の展開はほぼ変わらないので、一見すると周回プレイには不向きにみえるかもしれません。でもそうではありません。プレイヤーに起こる展開は毎回同じにはならないのです。
本作は運に左右される2つの大きな要素があります。(実際には確率なのでしょうけど、アタリを引けるかどうかは運ですから、運要素として話を進めます。)1つはバトル中に技を習得する覚醒システム、もう1つはアイテムの交易システムです。
覚醒システムは「ロマサガ2」以降における閃きシステムと同じようなものです。バトル中に技を習得するやつですね。新たな技を習得するだけでなく、習得済みの技が強化される場合も同じように覚醒します。キャラクターや武器の種類によって覚醒のしやすさにバラつきがあるようですが、結局は確率なのでアタリを引けるかどうかは運次第。
ちなみに覚醒システムについては以下の記事で集中的に語ってみました。参考にどうぞ。
もう1つの交易システムは、リアルの時間経過によりアイテムを入手できるシステムです。ゲーム内で費用を支払って待つだけで、ランダムに装備品や換金アイテムなどが入手できます。強い武器がポンと手に入ることもあり、それでバトルの難易度が劇的に変わることもあるので、ゲームのプレイ内容に大きく影響する要素といっていいでしょう。
覚醒も交易も結局は確率なので、たっぷりと時間をかけてやればいずれアタリを引けるかもしれません。しかし、実際のプレイではそうもいきません。そのときそのときの手持ちの技と装備でなんとかするしかありません。配られたカードで勝負するしかないのです。
実はこのことがドラマを生み出してくれます。バトルの最中に1人が倒れてからどう立て直すのか、とか、次に全体攻撃がくるとマズイけど守るのか勝負をかけるのか、とか、突然の強敵に大ピンチになったけど覚醒した技が強くて大逆転、とか。せっかくいい技を覚醒したのに敗北してしまう経験も、データには残らないけど確実にプレイヤーの心を動かすものです。記録には残らないけど記憶には残るのです。
こういったドラマチックな展開が積み重なり、プレイヤー自身の物語が紡がれていくわけです。ある程度の運要素があるからこそ、同じプレイヤーが同じようにプレイしても違った展開になったりするのは、最近ではローグライク要素として認識されていますが、本作でもそんな感じかもしれません。要するにリプレイ性が高いわけです。
ちなみに、2周目以降はゲームに対する理解が高まっているため、驚くほどサクサク進行できます。1周目はクリアまで40時間以上かかったボクですが、2周目では開始数時間で海の遺跡にいます。運要素がありつつもプレイヤーが上達を実感できるところは、まさにローグライク要素といえるかもしれませんね。
そうそう、配られたカードで勝負、といっても完全ランダムというわけではないでしょうから、クリアに必要なカードすら配られないことはまずないと思います、念のため。たぶん。
遊び方はプレイヤー次第
そんなわけで『レジェンドオブレガシー』は実に「サガ」っぽいゲームでした。レトロな空気ともいえるかもしれませんが、もともと「サガ」シリーズは発売当時でもかなり異色のタイトルでしたから、レトロというよりも「サガ」独特の雰囲気だと思っています。
多くの点で説明不足であることはそのとおりですが、アヴァロン島という遊び場を用意したのであとは好きに遊んでください、という作りなのだと思います。突き放しているようですが、プレイヤーを信頼しての態度でもあるんじゃないか、と考えるのはさすがに好意的すぎでしょうか。
手探りな攻略と運要素の生み出すドラマという2つのポイントはどちらもプレイヤー次第でいくらでも揺れてしまう要素です。人によってはこれといってドラマチックな展開のないまま冒険を終えてしまうかもしれません。なので、人によって評価も大きく変わってくるのも当然なんじゃないかなと思いますし、それも含めてやっぱり「サガ」っぽいなと思うわけです。
ボクの冒険はといえば、カエル主人公だったので因縁のあるグリーンドラゴンだけは何が何でも倒してからクリアしようとしたところ、毒ガスブレス4連発から立て直してのギリギリ勝利とか、ラスボスに連敗してヤケクソの火精霊の連続呼び込みで攻略法をバッチリ掴めたりとか、ドラマチックバトルの連続だったために大満足でございます。
冒険を終えたボクの気持ちを代弁してくれるNPCまで用意されているなんて、アヴァロン島は本当によくできた遊び場ですね。