『ユニコーンオーバーロード』をクリアしたのでレビュー。最初はヴァニラウェア版「ファイアーエムブレム」かな?などと思っていたのですが、全然そんなことはなく。いや、確かに「ファイアーエムブレム」と類似するところも多々あるのですけれど、本作はそこからゴリッゴリに魔改造されたシミュレーションRPG、といった印象です。これはまたすごいゲームが出てきたぜ!
ちなみに今回プレイしたのはSwitch版。クリアまで50時間くらいでした。
公式サイト:https://unicorn-overlord.com/
ヴァニラウェア製のSRPG
『ユニコーンオーバーロード』はヴァニラウェア製のシミュレーションRPGです。舞台となるのはゼノイラ帝国によって支配されたフェブリス大陸。プレイヤーは亡国の王子アレインとして解放軍を組織し、ゼノイラの圧政に苦しむ各国を解放していくことになります。王道な感じですね。
特筆すべきはやはりビジュアルでしょう。さすがというか相変わらずというか、圧倒的ヴァニラウェアの画作り。単に美しいだけでなく、キャラクターたちの動きやしぐさの細かさもすんごい。見惚れてしまいます。
じっくり系ストラテジー
ゲームはリアルタイム進行のストラテジー(RTS)のような感じです。…ような感じ、というのはコマンド選択中は時間が止まるし、ユニット同士がぶつかって戦闘している最中も他のユニットは止まっているしで、そんなにリアルタイムでもないからです。じっくり考えながらやれるタイプですね。
相性バリバリのクラス性能
戦いにおいて重要になるのが各ユニットのクラス。ウォーリアやウィザードといったやつですね。クラスの種類は多岐に渡りますが、特筆すべきはやはり相性。空を飛んでいるやつは弓矢に弱いとか、カチカチの盾も魔法にはイチコロとか、極端な相性が結構あります。このあたりは「ファイアーエムブレム」の影響が色濃くうかがえます。
ちなみに「ファイアーエムブレム」の影響というと、最初からやけに強いキャラクターがいたり、戦闘時の会話で仲間になるやつがいたり、いろんな面でその影響の大きさを感じます。
部隊を組んで戦うのが解放軍
しかし本作は「ファイアーエムブレム」ではありません。大きく異なるのは「部隊」を組んで戦うことでしょう。1つの部隊に編成できる人数はゲームを進めることで増えていき、最大5人まで増やせます。そしてその部隊を複数編成して戦うのが『ユニコーンオーバーロード』なのです。
たとえば、弓矢を撃つキャラクターの前に盾役を配置し、さらに傷ついた盾役を回復するためにヒーラーを編成する…など、極端なクラス相性を編成によってカバーできるのです。いや、あえて弓矢ばかりで編成して飛んでるやつらを落としまくったり、飛んでるやつで固めて騎兵をボコボコにしたり、さらに極端にすることも可。いずれにせよ、戦い方の幅が拡がりまくりです。
また、ステージにおける各部隊の移動方法やスピードなどは部隊のリーダーによって決まります。たとえばリーダーが騎兵なら平地での移動が爆速になり、飛行タイプなら水辺や山も越えられるように。じゃあ騎兵や飛行タイプばかりでいいのか?といえばそうでもなく。騎兵は森に入ると歩兵よりも遅くなるし、飛行タイプもスピードそのものはそれほど速くないため、状況に応じた使い分けが必要ですね。他にも魔法や弓矢タイプがリーダーなら他の部隊の戦闘に支援攻撃ができるようになるなど、こちらもかなり重要です。
作戦の生み出すシナジー
もう1つ、部隊を編成するにあたって重要なのが「作戦」です。本作の戦闘は自動で進行するため、編成時に作戦を組み上げておく必要があります。この作戦というのは、スキルを使う場合の優先度や条件を設定しておくことです。端的にいうと「FF12のガンビット」です。そう、まさかのガンビットシステムですよ!
たとえば、魔法による攻撃は盾役に当てたいから前列を優先するとか、回復はHPが減ってから使って欲しいからHPが50%以下の条件を付けるとか。作戦次第で意外な組み合わせが大活躍したり、逆に強そうな編成がヘッポコになってしまったりするため、めちゃ重要です。そしてめちゃ面白い! 誰と誰を編成してどのスキルをどんな順番、条件で使わせるか。この試行錯誤こそ『ユニコーンオーバーロード』の真髄といえるでしょう。
学びは尽きない編成の妙
当然のことながら、敵も部隊を編成して立ちはだかってきます。なので、クラス間の相性というより部隊間の相性が出ます。それはもうかなり出ます。たとえば編成した部隊が獅子奮迅の活躍を見せ、「最強の部隊できたこれ!」と喜んでいたら特定の相手にはからきしダメだった…などは日常茶飯事。とはいえ、敵の編成からも学べることは多いので、どんどん吸収していけます。こうして試行錯誤していくのがマジで面白いゲームなんですよね。
ややこしそう?でも大丈夫
こう聞くと「なんかムズかしそう…」と思われるかもしれません。でも意外とそうでもないんですよね。部隊の人数が少ない序盤はクラスの相性さえ見ておけばなんとかなりますし、スキルが増えて作戦にまで手を回す必要が出てくるのは中盤以降ですし。そもそもこうした要素の数々もゲームを進めていれば自然と学べるようになっていますからね。また、繰り返しプレイできる稼ぎ用のクエストや闘技場などもあるので試行錯誤もやり放題。よくできてます。
“関係性”は最高のスパイス
ちなみに、本作には各キャラクター間に「親密度」が存在します。一緒に部隊で戦ったり宿屋で料理を囲んだりすることで上昇するわけですが、やっぱりね、関係性って大事じゃないですか。ストーリーであったり設定であったり。そういった関係性で部隊を組んじゃっても意外となんとかなる難易度だったりします。ありがたいですね。っていうか、なんらかの関係性のある方々、だいたいなにかしらシナジーがあるような…。いや、これはボクの願望かもしれない。
そうそう、手っ取り早く親密度を上げるには宿屋で料理を食べるわけですけども、食事要素といえばヴァニラウェアのお家芸。相変わらずのクオリティです。美味そうな食べ物を描かせたら右に出る者はいませんね。見ているだけでお腹が減ります。どれもこれも美味そうすぎる。
快適!!
全体的にクオリティの高い本作ですが、個人的に特筆したいのがその快適さ。シミュレーションRPGってなんかこう、重たい印象があるじゃないですか。時間的にも内容的にもしんどそう…と。確かに『ユニコーンオーバーロード』も中身がギチギチに詰め込まれているので、いかにも重たそうな印象なんですけども、意外とそうでもない。どうしてかというと快適だから。とにかくどこもかしこも快適にプレイできるように作られているんですよ。ここがマジですごい。
たとえば戦闘。このグラフィックのキャラクターたちがぬるぬる動くのでスキップするのは憚られるんですけれども、1人1人の行動回数が増えてくるゲーム後半では一戦が長くなりがちなので、申し訳ないけど全部は見ていられません。そこにきて本作、敵にぶつけるだけで戦闘結果が表示され、暗転すら挟まずにスキップできるようになっているんですよね。おかげでサクサクです。
また、1つ1つのステージが短めなのもありがたいところ。おかげでサクサク進められますし、だからこそどんどん進めたくもなります。もちろん、ストーリーの要所ではガッツリ長めのステージもありますから歯ごたえも十分。長いステージの前は「あっ、次は長そうだな」ってわかるようになっているのもいいですよね。ありがたいです。
こういった戦闘面以外でも、たとえばフィールドでのファストトラベルとかクエストのショートカットとか、マップから各町のショップで売られている商品が確認できるなど、便利な機能がモリモリです。とにかく行き届いてます。おかげでめちゃ快適。
ライブラリも作り込まれてます
行き届いているといえば、本作のライブラリ機能もすごいです。いわゆる図鑑なのですけど、その物量もさることながら、機能面でもしっかりしてます。なんとキーワードがリンクになっているんですよね。さながらWikipediaのよう。こういうところまで作り込んであるんだなぁと舌がぐるぐる巻きです。すごい便利。
クリア後のやり込み要素もバッチリ
無事にフェブリス大陸全土を解放した後もやり込み要素が用意されています。クリア後の世界をさらに冒険するもよし、ユニットを鍛えて再度ラスボスを倒すもよし、闘技場でオンラインの猛者とやり合うのもよし。高難度に挑むのもよし。クリア後も遊びやすくするための心遣いを随所に感じます。なんにせよ、部隊編成の試行錯誤が何よりも面白いゲームですからね。クリア後もまだまだ遊べそうです。
最高のSRPGをアナタに
そんなわけで『ユニコーンオーバーロード』、めちゃくちゃ遊びやすく、それでいて歯ごたえもしっかりのシミュレーションRPGでした。ヴァニラウェアらしい美しいビジュアルと細やかな作り込みが光る名作です。複雑なシステムを自然と呑み込めている作りになっているので、SRPG好きはもちろん、そうでない人にも触れてもらいたいところ。強い部隊を模索しつつ、やっぱりキャラクターの関係性で編成してみるなど、大いに楽しく頭を悩ませましょう。マジで面白いぜ!