『都市伝説解体センター』をクリアしたのでレビュー。本作は「都市伝説」を題材としたアドベンチャーゲームです。怪異や幽霊などが絡んでいるかのような事件を追っていくストーリーなのですが、面白いのはそうした都市伝説を「解体」していくところ。都市伝説などという怪しげなものを題材としながらも、意外と公正な推理ミステリーになっています。
以下、できるだけネタバレはしない方向でレビューしていますが、何も知らない状態で飛び込むのがベストであることは言うまでもありません。なので、気になった人はこんなもん読んでないで早速売り場へGO! Swich版、PS5版、Steam版があります。なんとパッケージ版もあるぞ! あと体験版もあるので、まずはそっちに触れてみるのもアリ。
公式サイト:都市伝説解体センター
怪しさ引き立つドット絵ビジュアル
まず目を引くのが特徴的なビジュアル。解像度が低めのドット絵で描かれる世界はとても印象的ですね。色数もめちゃくちゃ抑えられており、「たったこれだけの色でこの画を…!?」みたいになります。しかもけっこう動くんですよね。おかげでキャラクターたちの表情豊かな会話シーンを楽しむことができます。

また、解像度や色数が抑えられているからこその不気味さ、異質さ、おどろおどろしさ、みたいなものもあるでしょう。なんといっても相手は都市伝説ですからね。恐怖や不安を煽っていただけませんとね! といっても別にホラーというわけではないが。なんにぜよ、想像力を刺激されるビジュアルになっていることは間違いありません。いいですよねぇ、このビジュアル。

意外としっかり推理ミステリー
ゲームはさまざまな事件を解決していくアドベンチャーゲームです。現場を調査し、関係者から聞き込みし、時にはSNSから情報を得たりしながら事件の真相に迫っていきます。あれ?やっていることはかなり正統派な推理ミステリー…?ってなります。「都市伝説」などという分厚いガワで覆われてはいるものの、プレイ感はしっかり推理ミステリー。やってることは密室トリックとかクローズドサークルとかですしね。
主人公は、メガネをかけると過去の光景を垣間見ることができる、というちょっと特殊な能力が備わっています。推理ミステリーにおいては反則級の能力ですね。主人公をサポートするセンター長も「千里眼」とやらで離れた場所からこちらの状況を見てアドバイスしてくるし、都市伝説を調べている側がむしろオカルトパワー全開という。面白い構図ですよね。

推理ミステリーとしてはとても易しめ。現場の調査も関係者からの聞き込みも、虱潰しに選択していくことになるため、嫌でも情報に触れることになります。そのうえで、合間合間に選択肢や穴埋め問題形式でそれまでに集めた情報の確認を迫られるので、どうしたって理解することになるんですよね。だから非常にわかりやすくなっています。もちろん、重要な情報が出る際に「ん?」と思わせるフックがしっかり付いてることが前提なんですけど、本作はそのへんとてもしっかりしているので安心。

ヒトの負の側面が際立つSNS描写
「都市伝説」を題材にしているので、調査は噂の飛び交う場所……つまりSNSにも及びます。「都市伝説」は「噂」から生まれたりするものですからね。そしてここが本作の特筆すべきところでもあるのですが、SNSの描写がスゴイ。なんといいますか、SNSのもつ負の側面の解像度が異様に高いんですよ。現代においては日常茶飯事と化したインターネットバトルとその会場たるドブ川が見事に再現されています。もちろん嫌な気持ちにもなれる!ヤダー!

「都市伝説」を「解体」する話、ということは「都市伝説の裏に潜むモノ」を突き止めることになんですけども、それってつまりはヒトですよね。怪異や幽霊よりもヒトの方が……なんていうとベッタベタのベタですが、それはヒトのどの部分をどう描くか次第だと思うんですよ。その意味において本作はSNSという舞台を選び、悪意や義憤、好奇心からの心無い言葉をこれでもかと並べて見せつけてくるんですよねぇ。いやぁここにはヒトの醜悪さが凝縮されてるぜー!ヒャッハー!

ちなみに、都市伝説や怪談などの情報はゲーム内のメモにまとめられていきます。その多くは我々の住む現実の現代に存在するものだったりするので、非常にためになります。厳密には都市伝説の定義には当てはまらないのでは?みたいなのもありますけど、そのへんは作り手もわかった上でやってるような気がします。

先が気になって止まらないストーリー
本作のボリュームは、全6話構成でクリアまで10時間くらい。ちょうどいいくらいのボリュームにも見えますが、最初から最後まで次の展開が気になりすぎて一気にプレイしかねないので、むしろ短く感じるかも。また、1つ1つのエピソードの終わりにある”引き”もめちゃくちゃ強いので、止め時がないんですよね。アニメやドラマの一気見をしているような、そんな感覚かもしれません。とにかくストーリーがかなり力強くグイグイと引っ張ってくれます。強い。

ようこそ 都市伝説解体センターへ
そんなわけで『都市伝説解体センター』、思った以上にしっかりした作りのアドベンチャーゲームでした。その中軸となるのはやはりストーリー。最初から最後まで先が気になる展開の続く力強さ、そして「都市伝説」という題材の使い方、SNSを用いたヒトの見せ方、どれも実に見事で巧妙です。ビジュアルもサウンドも濃いめの味付けではあるものの、意外なほど公正な推理ミステリーでもあるので、幅広くオススメできるタイトルになっているのではないかと。というわけで、やろうぜ!解体!

公式サイト:都市伝説解体センター