特撮のスーパー戦隊シリーズを題材にした『Chroma Squad』がSteamで満を持してリリースされたのですが、1週間しないうちに日本を含むアジア圏から購入ができなくなってしまいました。いわゆる”おま国”状態なわけですが、どうしてそんなことになってしまったのか、ちょっと調べてみました。ついでに、今から購入する方法もあったので書いておきます。
『Chroma Squad』は特撮の戦隊モノのTV番組を作っていくタクティカルなSRPGです。戦隊として敵の怪人たちと戦うだけでなく、TV番組として視聴率を高めてファンを獲得していくマネジメントを含む、という一風変わったゲームでもあります。
いかにも日本的な題材ですが、制作したのはブラジルのBehold Studiosなのです。スーパー戦隊シリーズは海を越えて地球の反対側でも少年たちのハートに火をつけていたわけですね。
『Chroma Squad』は2013年にKickstarterにて出資を募り、もともとリリース予定だった2014年夏から大幅に遅延したものの、2015年4月30日、無事リリースされました。しかし、5月5日には”おま国”状態(※お前の国には売ってやらん)になってしまいました。日本からはストアページにアクセスできず、購入できなくなってしまったのです。
いったい何があったのでしょうか。ちょっと調べてみました。
「法的な問題」によりアジア圏での販売が停止中
Steamの掲示板に開発者より以下の投稿がありました。引用します。
Chroma Squad is not available in some Regions :: Chroma Squad 総合掲示板
Because of legal issues regarding our game and it’s content, we can’t sell through STEAM on those regions below.
Afghanistan, Brunei, Burma, Cambodia, Cuba, Hong Kong, Indonesia, Iran, Iraq, Israel, Japan, North and South Korea, Laos, Macao, Malaysia, Philippines, Singapore, Sudan, Taiwan, Thailand and Vietnam.
We’re really sorry about that, considering that we created a game inspired by mostly Japanese super heroes, and this hurts our hearts.
ps.: The Steam store is hidden in your countries. But any Steam Key would work fine.
販売停止の理由は「法的な問題」であることと、日本だけでなくアジア圏が対象であること、そして、日本の戦隊モノにインスパイアされた本作が他ならぬ日本に届けられないことに深く傷つき、申し訳なく思っていることが書かれています。
ここでは「法的な問題」とだけ書かれていますが、開発者の1人がTwitterで以下の発言をしています。
@Nechigawara actually, saban/toei.
— gui (@guixxx) 2015, 5月 5
「法的な問題」はSabanと東映の絡む問題であるようです。Sabanはサバン・エンターテイメントのことで、「パワーレンジャー」シリーズの制作元ですね。東映は言わずもがな、スーパー戦隊シリーズの制作元です。
題材が題材だけに、権利問題になるのはわかるのですが、そもそもサバンとの問題は解消していたはずです。もともと、『Chroma Squad』のリリースが延期した理由の1つがサバンとの権利問題でした。それが円満解決したことで今回の正式リリースに踏み切られたはず。
Behold Studiosがサバンとの権利問題について明かしたKickstarterの記事は出資者専用で閲覧できませんが、それをソースにした記事はGame*Sparkで取り上げられていました。
参考:戦隊モノ制作ゲーム『Chroma Squad』が権利問題に直面、「パワーレンジャーズ」の制作元と協議中 | Game*Spark – 国内・海外ゲーム情報サイト
2015年3月、『Chroma Squad』正式リリースのアナウンスの際には、サバンからの理解が得られたことが伝えられていました。
Chroma Squad – manager game with japanese-style super heroes by Saulo Camarotti — Kickstarter
Saban, the producers of Power Rangers™, approached Behold Studios and realized that Chroma Squad is a homage to their super hero franchise. Quoting one of the Saban’s producers: “Chroma Squad is a flattering compliment to MMPR”. Yay! \o/
参考:戦隊ヒーロー番組制作ゲーム『Chroma Squad』リリース日決定―「パワーレンジャー」との権利問題もクリア | Game*Spark – 国内・海外ゲーム情報サイト
※2015/5/12追記
ちなみに、タイトル画面のロゴの下に「Inspired by Saban’s Power Rangers™」の一文がみられます。ちょっと見えづらいかもしれませんけど。この一文はゲーム内だけでなく動画でもみられます。もともとは書かれていなかったのですが、サバンとの権利問題が解消した後に公開された動画では、ロゴとセットで表記されています。円満解決の証ともいえるでしょう。
しかし、「法的な問題」のため、アジア圏からの購入ができない状態になってしまいました。残念ながら、公式や開発者から得られる情報はここまでです。ここからは憶測なのですが、アジア圏における販売については上記で解決したこととは別の問題があったのかもしれません。
今から『Chroma Squad』を購入する方法
Steamのストアページは日本からはアクセスできなくなっているため、Steamから買うことはできませんが、他の方法で購入することはできます。方法はDRMフリー版の購入か、Steamキーの購入ですね。上記で開発者が掲示板で書いているとおり、Steamキーは有効なようです。
要するに、Humble StoreやGOG.comからは現在も購入可能ということです。(※2015/5/12追記 あと、公式サイトの下の方にDRMフリー版とSteamキーの購入用のフォームがあります。もしかしたらこっちからも買えるかもしれません。※未確認。)
Download Chroma Squad on the Humble Store.
Chroma Squad ● GOG.com
現在『Chroma Squad』は英語とブラジルポルトガル語に対応しているのみで、日本語には対応していません。念のため。
ちなみに、サウンドトラックは”おま国”にはなっていないので現在も購入可能です。Bamdcampでは試聴もできますね。主題歌はなんと日本語です。
Steam:Chroma Squad – Soundtrack
Chroma Squad | Behold Studios
ボクは”おま国”化の直前に運よく買えていたのですが、今回のケースは日本人にとって悲しい事態であり、先行きの見えない不安な状況でもあります。プレイしていると日本に対する愛情をヒシヒシと感じるので尚のこと。
といっても、ボクは東映・サバン憎し!と言いたいわけではありません。権利問題のたびに、権利を主張する側が悪役として扱われるケースをよく見かけますが、それ自体は当然の権利ですし、外野から内情の詳細は把握できないので正誤の判断なんてできませんし。
とはいえ、インディーな開発者にとっては厳しい問題ですよね。小規模な開発専門の会社でカッチリとした法務担当をおくことはムズかしいでしょうし。日本の同人文化においても、許可をとることが藪の蛇をつつく行為になったりすることもあるけれど、じゃあどこかで線引きをすればいいかといわれたら、それもムズかしいですよね。
いずれにせよ、開発者にとってもプレイヤーにとってもよろしくない状態なのは間違いないので、なんとかならないものでしょうか。…ならないか。ならないよなぁ。