【スプラッターハウス】レトロゲームレビュー スコーン!と怪物をカッ飛ばす、グロテクスだけど実は壮快なホラーゲーム

子どもの頃に遊べなかったあの名作を今、ということで、遊んでみました。今回プレイしたのはWiiのバーチャルコンソールで配信されているアーケード版。さすがに20年以上も前のゲームなので今ではキツイと感じる部分もありましたが、それでも全然遊べるし、傑作といわせるのに納得の完成度でした。

「ハイスコアガール」を読んだ影響からレトロゲームをやりたくて仕方ない心境になっている昨今。レトロゲームは所持しているゲームで間に合わせてもよかったのですが、いまは開放的な夏休みです。あの頃にやれなかったり買えなかったりしたゲームたちを大人買いするチャンス。財布の紐も開放的になるのも仕方のないことなのです。

数あるレトロゲームの中から、まずは『スプラッターハウス』からいってみました。名作として語り継がれている本作ですが、実はまともに遊ぶのはこれが初めて。少年時代、友人が「これおもしれーぞ」って絶賛していたのは覚えているのですが、30円の駄菓子屋ゲーセンになく、ショッピングセンターのゲームコーナーで100円だったために手が出せず、PCエンジンもないので遊べなかったのですよね。というか、そもそも子供の頃は怖がりだったのが理由なんですけども。

参考:『ハイスコアガール』のこのタイミングで読んだので感想とか

『スプラッターハウス』とは

1988年に登場した本作はナムコ製のアクションゲーム。このゲームがナムコ製と聞くとなんだか意外な感じがしますが、間違いなくナムコ製です。「13日の金曜日」のようなホッケーマスクを被った主人公はジェイソンとは縁もゆかりもないリックという青年。グロテクスな怪物たちが巣くう怪しげな洋館で捕えられた彼女・ジェニファーを救うために残虐ファイトで突き進む、アンチヒーロー的な主人公なのです。

ゲームの内容はオーソドックスな横スクロールのアクション。レバーで移動、攻撃ボタンとジャンプボタンの2ボタン、というシンプルなシステムです。「マリオ」のように飛んだり跳ねたりするわけではなく、「スパルタンX」のように1ラインでリックに向かってくる敵をパンチで蹴散らしていきます。

スプラッターハウス オーソドックスな横スクロールアクション

このゲームの特徴付けているのは、ホラーを題材としているところ。当時の時代背景にホラーブームもあったのですが、『スプラッターハウス』はホラーを色濃く取り入れたゲームの走りとなりました。これ以前にもホラーを題材としたゲームはあったかもしれませんが、グラフィックでグロテクスなバイオレンスを表現できているのは本作からではないかと。

本作のホラー要素は見た目や雰囲気だけではありません。ボスを倒したと思ったら追加で敵が出てきて驚かされるなど、ゲームの内容もホラーになっています。おどろおどろしい雰囲気でプレイヤーの緊張感を高め、大きな敵を倒してホッとしたところで突然襲ってくる敵にビクッとさせられる、という由緒正しきお化け屋敷方式。こういう演出はいまどきのホラーゲームでも使われている手法ですが、1988年当時ですでに作られていたのですね。

さて、そんな『スプラッターハウス』をいまプレイするとどうなのか。実際に遊んでみました。今回遊んだのはWiiのバーチャルコンソールで配信されているアーケード版です。

上達を実感できる作りと壮快なバイオレンス

『スプラッターハウス』をプレイしはじめて、まず感じたのが壮快感。グロテクスなホラーなのに壮快感?って思われるかもしれませんが、壮快なんだから仕方ない。

主人公リックの基本攻撃は男らしいパンチとキック。なのですが、道中に落ちている武器を拾うことで武器攻撃ができるようになります。ステージ1の開始地点からさっそく鉈が落ちており、ブンブン振り回して怪物どもをスコーン!と真っ二つにしていけます。パンチが地味な分、武器を手にしたときの壮快感が高められているのかもしれませんが、鉈や角材で全力スイングして怪物どもをスコーン!とホームランする様は本当に気持ちいい。正直、クセになる気持ちよさなので、これだけでも本作が名作として語り継がれている理由がわかる気がします。

そういえば『ハイスコアガール』でも主人公ハルオは「スト2」で負けた憂さ晴らしにスコーン!とやっていましたね。

スプラッターハウス スコーンと決める壮快感

昔のアーケードゲームといえば、理不尽な難易度をイメージする人もいるかもしれません。が、そんなことはないです。特にこの『スプラッターハウス』は典型的な覚えゲーで、敵の出現パターンが決まっているのでパターンを作っていけば確実に進めるようになっていきます。このあたり、1面1面攻略していく達成感や上達感がありますね。プレイを繰り返していけば、1コインクリアも現実的に手の届くところにあるので、さらに上手くなりたい、先に進めるようになりたい、と思わせてくれる絶妙な難易度になっているといえるかも。

先に進みたい、という気持ちは、先が見たいと思わせてくれるストーリーの存在も大きいかもしれません。『スプラッターハウス』にはテキストも台詞もありませんが、ちゃんとストーリーが描かれているです。ジェニファーが捕まってしまい、呪いのホッケーマスクを装備して洋館に挑むリック、そしてジェニファーの元に辿り着くも彼女を救えず、怒りのままに怪物たちを破壊していく…、という救いのない物語は本当に印象的。この救いようのないストーリーが、このゲームを異色のタイトルとしてゲーム史に名を刻む一因になっているのは間違いないでしょう。

スプラッターハウス 救いのない物語も魅力の1つ

『スプラッターハウス』は、ホラーゲームであること、アクションが壮快で気持ちいいこと、絶妙な難易度、魅せてくれるストーリー、などなど、これだけの要素がガッチリと組み合わさっているわけです。これは名作と言われているのも納得。実際、いま遊んでもかなり楽しめました。とはいえ、さすがに20年以上前のゲーム。やはりちょっとキツい部分もあるわけで。

今だからキツイと感じる部分もある、けれども

レトロゲームはレトロゲームとして楽しめばいいのですが、現代において初めて触ったのであれば、かなしいかな、現代の視点で見てしまうわけです。当時としてはすごいことでも、いまとなってはキツイと思ってしまうところもあるのですよね。『スプラッターハウス』においても、そういうキツイと感じてしまう部分がいくつかあります。

まず、死ぬたびにシーンの最初に戻される点。さらにいえば、ゲームオーバーになるとコンティニューしてもステージの最初に戻されてしまう点。連コインでゴリ押しができないため、懐かしい気分に浸りたいだけのゆるいプレイスタイルには合わないかもしれません。何度も何度もスタート地点に戻されるので、いやでもパターンを覚えて上達していく、と考えればいいところなのですが、懐かしさに触れたいだけの場合は非常にキツイと感じてしまうでしょう。

あとレスポンスの悪さ。『スプラッターハウス』は大きめのキャラクターがどっしりと動く感じで、プレイヤーの操作に対してキビキビと動く感じではありません。なので、「えー。いまジャンプボタン押したって!」「いやパンチ出したって!」みたいな状況になりがち。ゲームスピードが速くない分、敵も罠もよく見えているので、自分の反応についてこないリックの動きにイライラすることも。

スプラッターハウス レスポンスの悪さもホラーゲームだからこそ?

しかしこれ、もしかしたら意図的なものなのかもしれません。アクションゲームでレスポンスが悪いというと、なんだか非常にダメな感じがしますが、ホラーゲームにおいてはそうとは限りません。というのも、プレイヤーの自由を奪うことで、恐怖感や焦りを誘発できるからです。かつて「バイオハザード」のラジコン的な操作もそうした意図があったわけで、近年の「Dead Space」などでもアイザックの動きは意図的にややモッサリとしたものになっています。1988年においてそこまで意図されていたのであれば、すさまじい作り込みだったといえるのですが、実際のところどうだったのでしょう。

とはいえ、残念なことに現代の視点だと『スプラッターハウス』のドット絵はそれほど恐怖を感じないのですよね。これはボク自身が大人になってしまったことで、ホラーに対する恐怖感が薄くなってしまったことが大きいとは思いますけど。ただのアクションゲームと受け取ってしまうとレスポンスの悪さはただのストレスにしかならないという悲しい事態に。このへんは当時やりこんだ人なら「そうそうこれこれ」ってなるところかもしれませんが、いまから初めて触る人間にとってはキツイ点ではなるんじゃないかなと。

怪物たちをスコーン!と飛ばしましょう

スプラッターハウス 壮快感が最大のウリかもしれない

そんなわけで『スプラッターハウス』、なんだかんだで楽しく遊べました。前半に書いたスコーン!とカッ飛ばせる壮快感は他には変えがたく、この感触のためにまた遊びたくさせるゲームです。個人的にはスコーン!の部分がこのゲームの最大のポイントだと感じました。だって本当に気持ちいいですから。未体験の人は騙されたと思って1回スコーン!とスイングしてみるべき。

現代のゲームにおいても、ボタンを押して画面の中が動き、その感触が気持ちいいとかおもしろいとかいうのが基本ですが、その点『スプラッターハウス』はバッチリ気持ちいいので、いつまでも名作足り得るのではないでしょうか。いまから遊ぶレトロゲームは、ちょっと触って懐かしさを感じたら満足、ってなりがちなのですが、『スプラッターハウス』は、また今度遊びたいと思える内容だったので、機会があればぜひプレイしてみましょう。アーケード版はWiiのバーチャルコンソールで、PCエンジン版はバーチャルコンソールの他にPSNのアーカイブスで配信されています。

参考:『ハイスコアガール』に登場したレトロゲームたちを今から遊ぶ方法