『Marvel’s SPIDER-MAN』をクリアしたのでレビューなど。本作はスパイダーマンを主人公としたオープンワールドのアクションゲームで、精巧に作られたニューヨークを飛び回りながらヴィラン達と戦う内容です。最大の特徴は「主人公がスパイダーマンである」ということ。ウェブスイングを使ったダイナミックな移動やスパイダーセンスやガジェットを駆使したバトルなど、すべてがスパイディならではのアクションになっています。
それだけにとどまらず、このジャンルのゲームにおける当たり前やお約束でさえも「スパイダーマンであること」と結びついているため、やればやるほどスパイダーマンの気分になっていけるのが素晴らしいところ。だからこそストーリーにも感情移入しやすく、ピーター・パーカーと苦楽を共にしているうちにボタンを押す指に力が入ってしまったりします。まさにスーパーヒーローを体験できるゲームとして最高級の出来であり、スパイダーマンのファンの人はもちろん、そうでない人にもオススメできるゲームとなっております。
Marvel’s Spider-Man Remastered | ゲームタイトル | PlayStation
機動力が高すぎる男!スパイダーマン!
ゲームを始めてすぐに感じられるのが移動の快適さ。ウェブスイングを活用した移動が本当に爽快で気持ちいい。ワイヤーを引っかけて振り子のように移動するイメージですが、ワイヤーを引っかける場所を狙う必要はないため、適当にボタンを押しているだけでビュンビュン移動できます。壁にぶつかってもウォールランに切り替わるので止まることがありませんし、たとえ止まってしまったり地面に落ちてしまったりしても、すぐにリカバリーできるようにもなっているのも快適さを高めています。スパイダーマンの機動性は想像以上に凄まじく、広いはずのニューヨークが狭く感じられるほど。
この快適なアクションで好き勝手に飛び回っていても構いませんが、街中に点在するミッション開始地点へ向かうという目的を忘れてはいけません。ミッション開始地点まで移動したらミッション開始となるわけですが、その内容もウェブスイングを活用したものが多くなっています。移動の基本アクションですから当然といえば当然。たとえば、ギャングの車を追いかけるとかハトを捕まえるとか、スパイダーマンの機動力が試されます。
特に印象的なのがカーチェイス系のミッション。この手のミッションといえば、一般車が邪魔でストレスになることもあるのですが、本作においては一般車などいてもいなくても同じ。なんといっても空中から追えますからね。こんな快適なカーチェイスができるなんて、やっぱスーパーヒーローは違います。
ノンストップで快適な移動ですが、スーパーヒーローだからこそ足を止めなければならない事態もあります。そこらじゅうで事件が起こるんですよね。それも頻繁に。スーパーヒーローとして事件を見過ごすなどありえません。ベンおじさんに誓ってありえないでしょう。にしても、ちょっとニューヨークの治安悪すぎません?アベンジャーズ本部もあるというのに。(もぬけの殻だけど)
次なるミッションへ向かっている最中に警察無線から強盗やら誘拐やらの知らせが聞こえてくるのですが、このままミッションへ向かうか目の前の事件へ向かうか、迷った挙句「ああもうッ!仕方ないな!」と事件へ向かったりするわけです。この気持ちってまさにピーターの心境なんでしょうね。そういう意味でもスパイダーマンの体験ができる、と考えられなくもない。キミもピーターなら、まさか目の前の事件を無視したりしませんよね?…ね?
戦えば戦うほどスパイダーマンになっていく
ミッションにしても道中で出くわした事件にしても、そこで待ち受けているのはギャングやヴィランの手下たちで、奴らとの戦いが待ち受けています。こちとらスーパーヒーローなんだからちょいちょいっとブッ飛ばしてやるぜ!と言いたいところですが、そうはいきません。どいつもこいつもスパイダーマンのいる街で悪事を働こうとするような筋金入りですからね。ボタンを連打するだけで倒せるようなヤツなんているはずがないのです。
そんな筋金入りの悪党どもが四方八方から鉛弾とロケットランチャーをブッ放してくるのだから、いくらスーパーヒーローといえどひとたまりもありません。しかしそこはスパイダーマン。ご自慢の「スパイダーセンス」で切り抜てやりましょう。
敵が攻撃しようとするとスパイダーマンの危機を察知する能力「スパイダーセンス」が発動し、スパイダーマンの頭に白いエフェクトが表示されます。このエフェクトが見えたら回避ボタンを押す。それだけで大抵どうにかなります。(ならなかったりする) 敵が光るのではなく自分が光る。だから見やすくてわかりやすいんですよね。なので、敵がどこからどんな攻撃を仕掛けてこようともホイホイ回避できます。(できなかったりする) こうしてスパイディっぽい動きができるようになっているわけです。
回避をしたら次はいよいよ反撃です。攻撃のアクションも豊富で、パンチとキックによる格闘からウェブショットやウェブスローを織り交ぜた幅広い戦い方ができます。最初のうちはアッパーで打ち上げて空中コンボに終始しがちかもしれませんが、慣れればスイングキックからさらに追撃したり、空中からウェブショットで動きを止めてウェブスローでブン投げたりと、どんどんそれっぽい動きになっていきます。
というか、ゲームが進むと強力な敵が投入されてくるようになり、それまで通用していた動きが通じなくなってくるため、自然と多くのアクションを駆使するようになっていくのですよね。すべての技を使わなければいけないわけではないですけれど、不要な技は1つもなく、やればやるほどスタイリッシュになっていきます。絶妙な調整ではないでしょうか。慣れてくると「なんか今かなりスパイディっぽくなかった?」と調子に乗ってしまいそうになるあたりも、ある意味ピーターっぽいと言えるのかも。
スパイダーマンが悪党に見つかるわけないでしょう?
バトルに入る前に、敵に見つからないようにこっそりと倒していくステルス要素もあります。こっそり、といっても「見つかったらどうしよう…」というドキドキ感はありません。見つかったとしても戦えちゃいますからね、スパイダーマンですし。隠れてコソコソするというより高所から1人1人仕留めていくといった内容で、難易度はかなり低め。だってあのギャングども「どこかにスパイダーマンがいるぞ!警戒しろ!」というくせに、高いところをまったく見ていないんですもの。しかも、攻撃を仕掛けたら見つかってしまうかどうかが明確にわかるようになっている親切設計。筋金入りの悪党どもといえど、さすがにスパイダーマンから不意打ちを食らうとひとたまりもないようです。
しかしスパイダーマンではない一般人にとっては別です。ちょくちょくサブキャラクターを操作するパートがあり、そこでのステルスは見つかったら一発アウトのドキドキかくれんぼとなっています。こちらは障害物の影に隠れながら敵の背を向けている間に通り抜けるような、スタンダードなステルスゲームですね。見つかれば即リトライなので難易度はスパイダーマンパートよりも高め。(そこまでムズかしいわけでもないけど) スーパーヒーローと一般人との圧倒的な差を思い知ることになります。これらのパートはどちらかといえばサブキャラクターへの印象付けのために挿入されているような感じですね。ゲームとして目を見張る点はありませんが、スパイスとしてはちょうどいいくらいかも。
軽口を叩かずにはやっていられないシリアスさ
MJにオットー博士にノーマン・オズボーンなど、おなじみのメンツが登場するわけですが、今回のストーリーはどの映画ともコミックとも違ったゲーム独自のものとなっています。
特に独特なのはピーター・パーカーはティーンエイジャーでも高校生でもなく、大学を卒業済みの社会人になっていることですね。すでにスパイダーマンとして何年も活動している設定になっているため、最初からウェブスイングをバリバリ使いながら悪党と戦える、というのはまさにゲーム向きの設定かも。というのも、スパイダーマンとして目覚めるところから始めてしまうと、ウェブスイングで街中を自由に飛び回れるまで何時間もかかりそうですし。いずれにせよ、これだけでもかなり違ったスパイダーマンになっていそうなところですが、内容はやっぱりスパイダーマンです。さまざまなスパイダーマン要素を盛り込みつつ、まったく新しいスパイダーマンを生み出しています。
ヴィランも数多く登場し、彼らとのバトルシーンはまるで映画のよう。特にゲーム後半、オールスター状態でヴィランが集結するあたりとか、最終決戦の見せ方とかはマジで映画の主人公体験。最終決戦のラストはボタンを押す指に思わず力が入ってしまいました。派手な演出にテンション上がりまくり!…と言いたいところですが。いやもちろん上がるのですけれども。もう高校生じゃなく大卒の社会人なんだから多少つらい目にあわせても平気よね?ということかもしれませんが、加減して!無理だからそんなの!
スーパーヒーローたるもの、大きな困難と対峙してこそであり、今回のスパイダーマンも数々の困難に見舞われることになります。たとえば、恋の悩みとか就職の悩みとか家賃の滞納とか。いやそういうんじゃなくて、そういうのもあるけど。ネタバレになるので詳細は書きませんが、大いに苦悩するピーター・パーカーが物語の焦点であり、かなりシリアスな話になっています。さまざまな点でスパイダーマンの気分になりきれるからこそ、つらい展開がダイレクトにのしかかってくるんですよね。とてもつらい。大いなる力には大いなる責任が伴うのです、やっぱり。
キミもヒーローならいつだって写真写りに気を配りたまえ
もう1つ、スパイダーマン気分になれる要素としてフォトモードの存在があげられます。フォトモードとは、ゲームを一旦停止してその場面を好きな角度から撮影できる機能のことです。昨今のゲームではちょくちょく搭載されているのでめずらしいものではありませんが、そういえばピーターってカメラマンでしたよね。(今回は”元”カメラマンですけど) なので親和性が抜群なんですよ。自撮りモードまであるし。
フォトモードがあることで、移動しているときでもバトルの最中でもカメラ写りを気にしてしまうようになるんですよね。もしかしてピーターもこんな気持ちだったのかなと思わなくもない。いや、ピーターはもっと真面目な気がしなくもない。なんにせよ、立体的な機動力を持つスパイダーマンと美しく作り込まれたニューヨークという舞台のおかげで写真撮影が断然楽しいことに変わりはありません。
does whatever a spider can
他にもスパイダーマン気分になれる要素は数多くあって、たとえば事あるごとに罵ってくるJJJのラジオが流れてくるとか、メニューを開けばSNSで話題になっている様子が表示されるとか、とにかく細かい演出が積み重ねられています。なので、やればやるほどスパイダーマンの気分になっていけるのですよね。ヒーローを主人公としたゲームでヒーローの気分が味わえる…、このコンセプトをガッチリ実現できているのは本当に素晴らしい。ミッションもバトルもストーリーも、すべてが「主人公がスパイダーマンである」ことに集約された最高のキャラゲーであると思います。
どっぷりとスパイダーマンの気分に浸れるからこそ、楽しいところは楽しいし、つらいところは本当につらい。だからこそあのシナリオがものすごく響くんですよ。それでも、あのラストの後でもまだ続けたいと思うくらいには楽しいのが本作のすごいところ。ストーリーが終わった瞬間こそやや放心状態になってしまったものの、エンディングを見終えたら即座に残ったミッションを終えるべくウェブスイングで走り出したスパイダーマンがそこにはいました。
爽快なアクションを備えたオープンワールドアクションとしても完成度が高く、スーパーヒーロー体験ができるキャラゲーとしても至高の出来なので、スパイダーマンのファンの人もそうでない人も、JJJみたいな人にさえもオススメしたい1本となっています。さぁ大いなる力を手に入れて大いなる責任の重さを感じてみませんか。みましょうよ、ね?
売り上げランキング: 1