コミック調のビジュアルがステキな『Void Bastards』をクリアしたのでレビュー。本作は宇宙の囚人としてサルガッソネビュラから脱出するために、漂流船に乗り込んではアイテムを頂戴して脱出を繰り返すゲームです。宇宙はランダムに支配されており、宇宙船の内部もまたランダム。生き残るために弾薬を消費しながら食料と燃料とかき集め、食料と燃料を消費して次なる漂流船を目指していく。そんなリソース管理がキモのゲームとなっております。死んでも代わりはいくらでもいるのですけれども。
宇宙はタダじゃ進めない
まず、スゴロク風のマップ画面でサルガッソネビュラを進めていきます。各マスには漂流船だけでなく、お得な物資が浮かんでいることもあれば危険な海賊船や宇宙クジラが徘徊していたり、さまざまなイベントが配置されています。止まったマスの漂流船に乗り込むかどうかは自由。キツそうな船は素通りしてもOKです。とはいえ、1マス進むたびに燃料と食料を消費していくため、あまり選り好みもしていられません。燃料と食料がなくなっても即死というわけではありませんが、徐々にHPが削られていくので待っているのは緩やかな死です。死にたくなければ覚悟を決めて乗り込みましょう。
武器の持ち込みは3つまででお願いします
漂流船に出現する敵の種類や内部の特徴、拾えるアイテムなどはマップ上で把握できます。なので、状況に合わせた武器を持っていきましょう。持ち込める武器は3種類。3つのカテゴリから各1つずつとなっています。武器はピストルやショットガンのようなオーソドックスなものから設置型の爆薬、スタンガンのようなガジェットまで多岐に渡ります。宇宙を舞台にするくらいですから、敵を混乱させる猫型ロボットとか敵を吸い込んで別の位置に転送しちゃう武器なんかまであります。おかげで戦い方の幅はかなりありますね。
侵攻は計画的に
準備ができたらいざ乗船。まずは船内マップからレイアウトを確認しましょう。どちらから侵攻するか、目当てのアイテムのありそうな場所はどこか、ついでに燃料や食料は確保できそうか、脱出ルートはどうするのか。操舵室にいってマップをダウンロードできればアイテムの配置を把握できるので最初に狙いたいところですが、遠い場合は別の場所から攻めた方がよかったりもします。侵攻ルートに強力な敵や厄介なトラップがあった場合は臨機応変の対応も求められます。といってもマップを開いている間は時間も止まっているので、じっくり考えながら進められます。というか、考えなしに走り回っていても弾薬と体力を無駄に消耗するだけです。計画を練りましょう。
死にたくなければ消費せよ
FPSパートの基本はステルスです。敵や監視カメラに見つからないに越したことはありません。ワケのわからないことをつぶやきながら歩き回っている敵の目を逃れつつ、コソコソと引き出しや棚を漁っている感覚は『BioShock』に近いですね。開発者が影響を受けたというだけあります。しかし完全なステルスは厳しめ。というのも酸素量によって時間が制限されているからです。また、船内にリフトと呼ばれる敵の出現ポイントがあり、予想外の方向から敵がやってくることも多々あります。
戦いになれば弾薬はもちろんHPの消費も免れませんが、死ぬよりはマシです。降りかかる火の粉には全力で抗いましょう。とはいえ、あまり弾薬を消費してしまうと待っているのはやはり死です。ただやみくもに撃つのではなく、痺れさせてから確実にヘッドショットで仕留めるとかタレットをハックして撃たせるとか角部屋に誘導して閉じ込めるなど、知恵と工夫が求められます。弾薬をケチるあまりHPを削られてしまっては元も子もありませんが、撃ちまくっていると次の船に持ち込む弾薬がなくなるので、とにかくリソースの管理が重要なのです。
生き延びたければ生産せよ
無事に脱出できたら持ち帰ったアイテムから新たなアイテムを組み立てましょう。クラフトはスキルツリーのようになっており、どれから作っていくかはプレイヤー次第。といっても、いきなり強力な最終兵器を組み立てることはできません。上から順番に作っていくことになります。武器や装備だけでなく、HPを増やしたりダメージを軽減するようなパッシブなアイテムも組み立て可能です。武器や装備もいいですが、サルガッソネビュラから脱出するためのアイテム、つまりゲームクリアに必要なキーアイテムもここで作ることになります。なので、素材の使い道はよーく考えましょう。
クラフトの素材は2段階制になっています。すなわち、一次素材から二次素材を作り、二次素材から装備やキーアイテムを組み立てる、というシステムです。一次素材は宇宙のどこでも手に入りますが、それだけですべてのアイテムを作り出すには要求数が多すぎるため、二次素材の一発ゲットを狙うことになります。幸い、マップ上から漂流船内で拾えるアイテムは把握できるので、狙いを定めて宇宙を進めます。当然、よりよい素材は難易度の高いエリアに落ちているので相応のリスクがあるわけですが、難易度の低いエリアに留まって弾薬を蓄えてから挑む、といったことも可能です。リソース管理には計画性が必要なわけですね。
死んでも残機は無限大…だけれども
仮に死んでしまった場合もクラフトしたアイテムと持ち帰った素材はそのまま次の囚人に引き継がれます。とはいえ、弾薬や食料などのリソースはごっそり失うことになるので死の代償はそれなり。囚人はそれぞれ異なる特性をもっており、たとえば走るのが速いとか酸素の消費が早いとか、背が高いとかアイテムを拾うたびに奇声をあげるとか。一見どうでもよさそうなものからめちゃんこ強そうなものまでバリエーションは豊富。これがプレイ毎の変化をもたらしてくれています。
ろくでもない特徴をもった囚人を引いたときは「さっさと死んで次でいいかな」と思ったりもするのですけど、そういうときに限って生き延びてしまい、愛着がわいてきたりするのだからおもしろいものです。ちなみに、囚人になった理由も設定されているのですが、割とめちゃくちゃなので一見の価値アリ。
リソースを制する者が宇宙を制する
こんな感じの流れが『Void Bastards』のサイクルになっています。食料と燃料を消費しながら進んでは食料と燃料をかっぱらい、奪取した素材から組み立てた武器から拾った弾薬を消費して戦う。とにもかくにもリソースの管理がキモになっているゲームであります。ここが本作のおもしろさでもあり、好みが分かれるところでもありましょう。何をするにも何かがすり減っていくのですから。しかし、戦い方のバリエーションや船内レイアウトから考える戦略性など、限られたリソースを臨機応変に活用して切り抜けていく感覚も間違いなく存在します。決して万人向けではないと思いますが、刺さる人には深く突き刺さるのではないでしょうか。