サブキャラに手を出しつつ難易度インフェルノをクリアできたところでレビュー。完成度の高いベルトアクションはまさに現代版D&Dでした。
クリアを目指すよりも好き勝手にやりたい放題遊んでいたために、インフェルノクリアまでちょっと時間がかかってしまいましたが、無事にクリアできたのでここで一区切り。レビューを書いていこうと思います。
といっても、大体のことはファーストインプレッションとオンラインモードレビューで書いてしまった感があります。第一印象で感じたことがそのまんま、最後までイメージどおりだったようにも思います。
【ドラゴンズクラウン】ファーストインプレッション 伝統と高いリプレイ性が融合した美しいベルトフロアアクション
【ドラゴンズクラウン】オンラインモードレビュー 手軽で気楽なオンラインは底なしの沼
ファーストインプレッションで書いたのは、ヴァニラウェア製のすばらしいグラフィック、お約束を詰め込んだベルトアクション、育成とトレジャーハント要素に最大化されたリプレイ性、マルチプレイ開始まで数時間というハードル、といったところでした。マルチプレイ開始までのプレイ時間についてはややマイナスの印象をもちつつも、以下のように思っていました。
この圧倒的な作り込みとリプレイ性の前には、最初の数時間など一瞬の通過点になると思います。
これは本当にその通りになりました。早くオンラインで協力プレイがしたいがために、長く感じられてしまった最初の数時間ですが、いま考えてみれば最初の一歩に過ぎなかったのです。
リプレイ性は高品質なベルトアクションにこそ宿る
第一印象では、RPG的な育成要素やトレジャーハント要素がリプレイ性に繋がっているのだと思っていました。「ディアブロ」や「PSO」のような感覚で繰り返すのだと思っていたのです。事実、そういった側面もあるっちゃあるのですが、レベル上げやレアアイテム目的に潜るという感じではありませんでした。
育成やトレハンが繰り返しプレイする理由ではない、とすれば、一体なぜ何度も何度もダンジョンに潜り続けるのか。理由は簡単。『ドラゴンズクラウン』はベルトアクションだからです。
元々ベルトアクションというジャンルはアーケードゲームでした。かつて「ファイナルファイト」や「D&D」をやり込んだ人ならわかると思うのですが、ゲームをクリアしようがしまいが、また翌日ゲーセンにやってきてコインを投入してしまうものなのです。
敵と軸をあわせたりはずしたりしながらボコスカ叩き叩かれ、どこまでいってもこの繰り返し。でも、1つ1つのアクションに壮快感や気持ちよさが込められているのです。だから、ずっと同じことを繰り返していても楽しいわけです。ボコスカ叩く感触が忘れられず、翌日もゲーセンに通ってしまうのです。しかも、うまくなればなるほどワンコインで長時間遊べるようになるわけだから、上達を目指して何度も遊ぶようにデザインされていたのです。
一方、『ドラゴンズクラウン』は家庭用のタイトルです。家庭用のタイトルでリプレイ性を生み出し、長いプレイ時間を作り出すために、『ドラゴンズクラウン』はRPG的な要素を取り入れています。すなわち、レベルによるキャラクターの育成と装備品によるカスタマイズ、および装備品を入手するためのトレジャーハントですね。
本作をプレイし始めた当初は、このRPG的な要素こそがリプレイ性を支える柱になるのだと思っていました。しかし、そうではありませんでした。実際にリプレイ性を支えていたのは、ベルトアクションとしての質の高さだったのです。
ゲームのゴールをクリアしたときとするのか、キャラクターの育成を完了したときとするのかは、プレイヤーによって考えの異なるところかもしれません。しかし、RPG的な要素で考えた場合、いずれにしてもゴールが存在してしまうのです。どこかで終わりがやってくるのです。
しかし、ベルトアクションに明確な終わりはありません。たとえラスボスを倒してゲームをクリアしたとしても、またボコスカ叩く快感を求めてゲームを再開してしまうでしょう。または、キャラクターを変更して別のおもしろさを探ろうとするのかもしれません。そうでなくても、パーティメンバーが違えば、同じステージでも違った冒険になるでしょう。
もちろん、高いリプレイ性を支えるのはこれだけではありません。1ステージ10分から15分程度に抑えられた程よい長さや、オンラインでの無言の連帯感、キャンプでの料理…と、挙げていけばキリがないほどに、多くの要素がリプレイ性に繋がっていきます。
とはいえ、やはりその中心にあるのは、みんなでボコスカ敵を叩く壮快感、というベルトアクションの根本です。すべてはこの根本がしっかりしていてこそだと思うのです。『ドラゴンズクラウン』は、節々に「D&D」っぽさが受け継がれていて、懐かしさを感じさせてくれるのですが、見た目やネタの部分だけでなく、ベルトアクションとしての精神がキッチリと受け継がれているのです。まさに現代版の「D&D」と呼べる一作なのだと思います。
そんな感じでベルトアクションの部分は大満足しております。毎日のようにオンラインでランダム参加してしまうくらい遊びまくっております。
で、ここからちょっとマイナスに感じてしまった部分、主にRPG的な部分について。書いてみたら長くなってしまったのですが、そんなにマイナス要素が大きいというわけではなく、むしろここまでに書いたベルトアクションのおもしろさに比べたら、ほんの些細なことです。
RPG要素を無理なく差し込む難しさ
『ドラゴンズクラウン』には、育成やトレジャーハントといったRPG的な要素があることは前述のとおりです。リプレイ性に強く結びついているわけでもない、というのも前述のとおり。ではなぜ、それほどリプレイ性に繋がっていないのでしょうか。
まず、キャラクターの育成について。育成は経験値によるレベル方式ですが、特に意識せずとも自然と上がっていきます。難易度ごとにレベルキャップはあるものの、普通にクリアを目指して遊んでいるだけではそこまで上がりません。とはいえ、クリアするのにそこまでのレベルも必要ありません。
まっすぐラスボスまで進めてしまうとレベルがやや低くて厳しくなり、ガッツリとレベルキャップまで鍛えると楽勝になるくらいになります。なので、この育成システムはアクションが苦手な人のための救済措置のように感じました。
そもそも自然に成長していくので、あんまり繰り返しプレイするための理由にはなりません。ボス戦などで「あ、これは厳しいな」と感じた場合、レベル上げを目的に潜ることはありますが、そんなに何度も繰り返さなくてもレベルは上がります。
レベルに関しては、どれだけレベルが高くても難易度ごとのレベルキャップにあわせて一時的に弱体化するシステムがむしろリプレイ性に繋がっていると思っています。レベルに差がある友人とは遊べない、なんてことはないので、遠慮なくレベルをガンガン上げていけます。
もう1つの育成システムとして、ポイントを振ってスキルを取得していくシステムがあります。ポイントはレベルアップの他に「依頼」の達成によっても得られるため、必然的に依頼をこなしていくことになります。
スキルポイント欲しさに「依頼」を受けてステージをまわす、というのは一見リプレイ性を高めてそうにみえますが、実際は「やんなきゃポイントもらえないからやる」といった感覚で、消化しているように感じてしまいがちです。
確かに目の前に釣られたエサに向かって走ってしまうのも、仕組みとしてはアリなんでしょうけど、自発的に「やりたい!」と内からの衝動で走るわけではなくなってしまうため、どうも印象がイマイチなのですよね。受動的に遊ばせるのではなく、プレイヤー自身をいかに能動的な姿勢で引き込むか、ってところが大事なんじゃないかと。
といっても、「依頼」はゲームのいろいろな遊び方を提示してくれているとも思えますけどね。ソロでボスを撃破しようとすれば、攻撃パターンをしっかり見る機会になりますし、背景と思っていたキノコがアイテムを落とすなんて、「依頼」がなければ気付かないでしょうし。
さて、もう1つのRPG的な要素として、装備品でのカスタマイズとトレジャーハントがあります。最初のうちはかなり楽しく感じられていたのですが、ゲームを進めれば進めるほど、だんだんと面倒になっていってしまった感があります。
というのも、トレジャーハントで入手できる装備品は、その時点のキャラクターレベルに依存した強さの装備しか手に入らないのが原因ではないかと。キャラクターのレベルに依存するので、冒険から帰還するたびに、毎回その時点で所持している最高レベルの武器が入手できるわけです。
その時点で最高レベルの装備が手に入るのですから、装備品を付け替えることになります。最初のうちは徐々に強化されていくマイキャラにニヤニヤできたものだったのですが、だんだんとこの作業が面倒になってしまいました。
装備品は「カバン」によって9つのカスタム枠を作ることができます。装備品に付加された属性やボーナスなどをあわせて特化カスタムを作り、ボスやステージによって使い分けていくのが攻略のポイントになっています。
実際は9つも持つ必要はないとはいえ、複数のカバンを用意して使い分けていくのは大変です。とはいえ、特化したカスタムがあるかないかでは、強さの差は歴然なので、使わないわけにもいきません。なので、冒険から帰るたびに毎回カバンの中身を入れ替えるわけですが、この作業が大変。
そもそも、トレジャーハント的な要素の楽しさってアタリを引いたときの喜びを目指すようなところにあると思うのですが、本作にはわかりやすい大当たりが用意されていません。自キャラのレベルに応じた装備が出るわけですから、アタリハズレを決めるのはS~Eのランクと付加された属性の違いくらいです。なので、どうも喜びが小さいわけです。
そしてその小さなアタリを引いた場合、待っているのはカバンの入れ替え作業です。サブキャラを使い始めるとアイテムボックス内が煩雑になってくるため、作業はさらに面倒くさくなってきます。そうなってくると、アタリを引く喜びよりカバンを整理しなきゃいけない面倒が上回ってしまいかねません。
とはいえ、多くのRPGやネットゲームがそうだったように、大当たりを求めて周回するプレイスタイルに陥ると、能動的にプレイしているのか受動的にプレイさせられているのかわからなくなってきます。一概に大当たりがあればいい、とは思えませんが、『ドラゴンズクラウン』のトレジャーハントが楽しいのかと問われたら、それはそれでやや微妙な表情にならざるをえません。
どのRPG的要素もメインのベルトアクションを崩さないように、無理なく差し込まれていると思います。であるからこそ、リプレイ性の向上には貢献しきれていないように感じてしまったのですが、ベルトアクションの部分だけでなくRPG部分でも、なんて考えるのは、あまりにも贅沢すぎる悩みなのかもしれません。
今後10年遊べるベルトアクションになれる…かも
4gamerのインタビュー記事にて、ヴァニラウェア社長の神谷氏はこう語っています。
神谷氏:
ゲーム部分もかなり頑張る気でいましたが,グラフィックスにおいては特にそんな感じで。こういった2Dでは10年は追い越せないものを目指そうと,話していました。
4Gamer:
面白い考え方ですね。それを本当に実践してるのも凄いですけど。
神谷氏:
実際に10年モノの2Dになったかはともかく,そんな目標で作ったものですから,ドラゴンズクラウンは良くも悪くもヴァニラウェアの集大成というか,予想外の総力をかけた作品になりましたね。
「ドラゴンズクラウン」は自分が一番作りたかったゲーム――ヴァニラウェアの神谷盛治氏に,完成までの道のりを聞く – 4Gamer.net
このやりとりはあくまで『ドラゴンズクラウン』のグラフィックスの部分の話です。しかし、元ネタというべき「D&D」は10年を超えて遊べるタイトルでした。ボクは『ドラゴンズクラウン』も10年を超えて遊べるタイトルになりうるかもしれないと思っています。
というのも、ボタンを押して画面の中を動かし、それが気持ちよかったりおもしろかったりするのがゲームです。良質なベルトアクションは、敵をひたすらボコスカ叩くことを繰り返すゲームであるがゆえに、このゲームとしての根本部分がしっかりしているのです。もちろん、この『ドラゴンズクラウン』もそうです。
このゲームは10年後に遊んでもいまと変わらず遊べてしまうのではないか。懐古や思い出の力ではなく、色あせないグラフィックスと変わらぬ壮快感の力で。毎日のようにオンラインで見知らぬ人たちと冒険を繰り返していると、なんだかそんな風に感じてしまうのです。