『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』感想

ウマ娘からのUMA娘ですよ。『ゴジラS.P<シンギュラポイント>』(以下『ゴジラS.P』)がめちゃんこ面白かったので感想をば。『ゴジラS.P』はゴジラ作品として初のTVアニメシリーズであり、脚本にSF作家の円城塔を迎えたことでゴリゴリのSFになっているのが特徴です。ゴリゴリのSFなのでやや難解な部分もあるのですが、そこをアニメーションを活用して見事に説明しつつ、膨大な情報量を洪水のように浴びせかけてくる展開がひたすら続きます。最高です。あ、ちなみにボクはゴジラ作品について特に詳しかったりはしません。以下、そういう人の感想です。

完全新作TVアニメシリーズ「ゴジラ シンギュラポイント Godzilla Singular Point」公式サイト

現代と地続きな対怪獣バトル

舞台となるのは現代と地続きな近未来。かつてゴジラが襲来したことはあったようだけども人々はそれを知らずに生活している設定になっています。何気ない日常に怪獣が現れ始め、少しずつ世界の危機へと変貌していくわけですが、人々の危機感の移り変わりの描写がすごくいいんですよね。最初のうちは怪獣が出現したからといっていきなり悲鳴を上げて逃げたりしないんですよ。怖がりながらも遠巻きに眺めている感じ。いよいよ状況がヤバくなって赤い霧が出ていてもマスクして出勤してるとかね。なんだかものすごくリアリティありますよね。現実と地続きな感じがします。すごく。

日常の中に現れる怪獣という意味で個人的にもっとも好きなのが中盤のアンギラス戦。世界中にラドンが大量発生するニュースが流れる中、猟友会を集めて山狩りの準備を進めるという落差。自衛隊も碌な戦力を出せない状況で民間人が持てるものでなんとかしている感じ(軽トラに捕鯨砲!)、すごくいいんですよ。なんというかこう、日常と非日常の境界線って感じで。

ワッと浴びせかけられる情報の洪水

冒頭で述べたとおり、本作はとにかく情報量が多いんですよね。と同時に「情報量が多い感じ」の演出もうまいんだと思います。たとえば、TVのニュースやワイドショーの映像が流れるシーンなどでは、キャスターやコメンテーターがセリフを最後まで言い切る前に次の番組へと切り替えて次々に流れていくような見せ方をしているのですよね。視聴者側は1つの情報を受け切る前に次の情報を投げられているので情報を洪水のように浴びせられている感覚になるわけです。といっても一連のシーン毎に話題は絞られているので処理しきれないわけではありません。そんな感じで、大量の情報をさばいている感覚になれて気持ちよかったりします。

情報量の多さの演出としては主人公2人のチャットもそうですね。画面上に流れていくテキストをそのまま読み上げているわけではないため、文字を追いつつ音声を聞くという並列処理をさせられることになります。なんとも忙しい。待ってくれたまえと言いたくもなります。けれど、意味はどちらも同じなので内容は頭にスッと入ってくるようになっているんですよね。場面によってはテキストと音声が一致していたり、読ませる気のない速度でバーッと流したりと緩急のつけ方も面白い。ニュースにせよチャットにせよ、説明シーンを退屈なものとせず、むしろ刺激的なシーンにしているのが本作のいいところですね。

みんな説明するの上手すぎません?

もちろん説明の中身も面白いんですよ。どうすれば怪獣に対抗できるのか、そもそもあいつら一体何なのか、というところへ迫っていくわけですが、このあたりの理由づけはまさにSF。怪獣たちがいかに反則な存在なのかという点については、要するに物理法則を破る物質で構成されているからってことになるんですけれども、その説明と見せ方が非常に見事なんですよね。おかげで説得力があります。

なにかしらややこしそうな説明をした後には大抵わかりやすい例え話を付け加えてくれるのもそうですが、アニメーションとして見せてくれるのもいいんですよ。光を閉じ込めて増幅させたり高次元を影の形でたとえたり、いかに反則な物質なのかをわかりやすく見せてくれるわけです。情報量もさることながら、なんかわかった気にさせてくれるという意味でも気持ちよくなれますね。

タマゴが先かニワトリが先か

大量の情報を浴びせかけられても流さずに見入ってしまうのはミステリー要素を内包しているからです。怪獣って何なのか、どうすれば対抗できるのか、そしてその核心に近い人物の行方は?といった謎を追いかけていく展開なのですが、それら答えが実は最初から存在しているかのような描写が序盤からあるんですよね。そうなると答えを探そうとしてくまなく見てしまう、というわけです。

示されていても解けないかのような表現も繰り返されるので、どれかに答えがあったとしても結局わかりようがないのでは?という気がしなくもないのですが、それでも探しちゃうんですよねぇ。困ったものです。実際、最後まで見れば「そんなんわかるか!」ってなるわけですが、間違いなく示されてはいたわけで。うーん、ズルいというべきか巧妙というべきか。なんにせよ、いろいろ踏まえての2周目もめっちゃ楽しめます。ボクは勢いあまって3周しました。

立ち向かう用意をしよう

そんなわけで『ゴジラS.P』、めっちゃ面白かったです。この感想で面白さを伝えられているかどうかわからないのですが、SF好きにはブッ刺さると思います。逆に「説明ばっかりじゃん…」ってなる人もいるんじゃないかなとも思います。でもそこが本体だから!っていうか退屈させないようにめっちゃ工夫されてて面白いじゃん!って思うわけですけれども、やっぱり好みは分かれそうな感じかなーと。ともあれ、1話だけでもいいからどうですか。”引き”が強いのでどんどん進めちゃうと思います。ぜひ。

ところで、最後の最後に出てきたアレって要するにそういうことなんでしょうか。あんなのを作って何とやり合うんだ?ってことになるわけですが、やっぱりアイツしかいないでしょうし。これはもう、立ち向かう用意をしよう、ってことですかね。期待していいんです?

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