【Dead Space】クリア後レビュー 計算され尽くした恐怖の感情コントロール

暑いので納涼ホラーゲームタイム。宇宙版バイオハザードにはホラーゲームにおける美しいロジックが組み込まれていました。

Dead Space | DS1 – EA

今年の夏はあまりにも暑いので、せめて涼しげなゲームでもしようとホラーゲームをやってみました。結果として特に涼しくなることはありませんでしたが、ステキなホラー体験ができました。

今回遊んだのは初代『Dead Space』。一言でいうと「宇宙でバイオハザード」なゲームなのですが、ホラーの部分が非常に丁寧に組み立てられており、プレイ中は舌を巻きっぱなしでした。

恐怖を刺激する正しき文法

ホラーゲームはプレイヤーを怖がらせようとあの手この手で趣向を凝らして襲い掛かってきます。しかし、薄暗く不気味な場所や気持ち悪いバケモノを並べただけでは、恐怖という感情を刺激するには不足です。

『Dead Space』において、プレイヤーを怖がらせようとする仕組みは非常にわかりやすくなっています。まず、薄暗く不気味な場所でプレイヤーを盛り立て、それからおどろおどろしいBGMを加えて緊張感を走らせ、最後に張り詰めたところでクリーチャーが登場、という一連の流れ。この流れが何度も何度も繰り返されることになります。

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敵であるクリーチャー・ネクロモーフたちは突然出てくるわけではありません。(出てくる場面もあるけど) 突然の登場で「ワーッ!」と驚かすのではなく、シチュエーションやBGMで空気を作ってから舞台に登場するのです。

こんなお約束を踏まえて出てきてくれるのなら、そんなに怖くないんじゃないの?と思われるかもしれません。しかし、そうではありません。少しずつ緊迫していく中で、どこから敵がくるのか考え、プラズマカッターを構えて警戒しているときに感じているのは、明らかに恐怖なのです。

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何もないところで突然敵が出てくるわけではないので、常に緊張している必要はありません。しかし、BGMが鳴り始めて空気が張り詰めると、そのすぐ後に確実にヤツらは来るのです。わかっているけど怖いというか、わかっているからこそ怖いというべきか。『Dead Space』における恐怖の表現は、不意打ちではなく、正面からやってくる恐怖なのです。

恐怖に飲まれず冷静さを保つのが攻略のポイントに

極限まで高まった緊張感と恐怖感の中で登場する敵たちは、どいつも一筋縄ではいきません。人間の死体をのっとって動いているネクロモーフたちは、一般的なFPS/TPSの常識が通じません。人っぽい形をしているけれど人ではないので、頭を撃っても意味がないのです。

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ネクロモーフはそれぞれ弱点が設定されており、腕や足などを狙って撃つことで切断しなくてはなりません。しかし、射撃の判定はなかなかシビアなのでキッチリと狙って撃たなければ弾を無駄にするばかりです。

敵は怖い怖い雰囲気とBGMの中で登場するので、どうしても焦ってしまいやすいのですが、焦らず冷静で正確な射撃が求められるバトルになっているのです。恐怖に打ち勝ち、クリーチャーを目の前にしても冷静でいられることが攻略のポイントになっているわけです。

とはいえ、プラズマカッターの感触はかなり気持ちいいので、どうしても撃ちまくりたくなってしまうのですが…。

フットスタンプに込められた感情のコントロール

主人公のアイザックさんは力強いフットスタンプができます。倒した敵をガスガス踏み付け、バラバラにしてしまえるほどに強力なフットスタンプです。

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といっても、さすがにフットスタンプで敵と戦うことはできません。倒した敵にトドメを刺すのが主な使用法です。敵にトドメを刺して念入りに殺すことでやっと安心できるのです。

「こいつめっ!脅かしやがってッ!」と踏んづけていると、安堵とともに自分がいかに恐怖していたのかを実感させられます。こうした恐怖の反芻が、また次なる恐怖へと繋がっていくというわけです。

薄暗い部屋で不安を煽り、おどろおどろしいBGMで緊張感を高め、襲ってきたネクロモーフの恐怖に打ち勝った後は、フットスタンプで心行くまでトドメを刺す安堵の時間。このサイクルをひたすら繰り返すのが『Dead Space』なのです。

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どの感情をどの順番に刺激していけばもっとも強く恐怖を植えつけられるのかを計算しつくした上で、プレイヤーの感情を掌握して飲み込む組み立ては実に見事。恐怖の表現とともに、恐怖と対峙することに主眼のおかれた『Dead Space』は、末永くホラーゲームの金字塔であり続けるのではないでしょうか。

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