【Papers, Please】レビュー 退屈な労働の日々がプレイヤーの心に葛藤を呼び起こす入国審査ゲーム

国境検問所の入国審査官としてひたすら仕事に勤しむ『Papers, Please』。書類に目を通してビザにスタンプを押す、淡々とした進行はゲームというかもはや労働。規則に従う退屈な日々を過ごすのか、良心に従って規則を破るのか、選択はプレイヤー次第。

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Papers, Please

『Papers, Please』は入国審査を題材にしたちょっと変わったアドベンチャーゲーム。80年代の共産圏っぽい空気と寒々としたカラーリングが独自の雰囲気を作り上げています。

ずいぶんと尖った印象ですが、メタスコアも85と実は評価も高くなっています。最近になって日本語にも対応したので、遊びやすくなっています。

Papers, Please - Trailer - YouTube

書類の矛盾を探す労働の日々

ゲームの内容は、入国審査官として労働することです。入国に必要な書類をチェックしてビザにスタンプを押す、というお仕事です。

給料は出来高制で、さばいた人数により増減します。時間も限られているので、手早く処理していかないと家族を養えなくなってしまいます。とはいえ、ミスをすると罰金なので早さと正確さの両方が求められるのです。

序盤はチェックすべき項目も少なく、ポンポンとスタンプを押していけます。が、ゲームが進むにつれて書類が増え、チェック項目も増えるので大変になってきます。やたらとチェック項目が増えて仕事が進まないとか、リアルな労働感でゲンナリできますね。

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ユニークなのが、机の広さが決まっていることです。画面右下がプレイヤーの机で、ここで書類を開いていくのですが、すべての書類を広げておけるスペースはないので、どんどん煩雑に散らかってきます。書類の山に埋もれる感からくるストレスはまさに労働そのもの。

机の上が散らかれば散らかるほど意識もそらされやすくなり、ミスも多発します。しかし、ここは慣れの問題もあって、だんだんとテキパキと処理できるようになってきます。デキる労働者として上達する喜びみたいなものは確実にありますね。ゲームにおける上達する喜びというよりは、仕事がうまくこなせるようになってくる感じかも。

そんな書類の山から矛盾点をみつけて指摘する瞬間に快感があります。細かい間違いをみつけて入国拒否スタンプを押す瞬間はなかなかにドヤれます。

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こういうと「逆転裁判」っぽいですし、実際それに近いものがあるような気もします。とはいえ、「逆転裁判」はドラマチックでアツイ展開ですが、こちらは淡々とした労働です。

さて、これだと完全に労働で、どのへんがおもしろいのかさっぱりわからないかもしれません。このゲームの本質は、この退屈な労働の日々における人間としての葛藤にあります。

プレイヤーの心に葛藤を生むスタンプ

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国境検問所にやってくる人は、実にさまざまです。旅行中の人、働きにきた人、家族と引っ越してきた人、他国から帰国した人、外交官などなど。国境を超えることにちゃんと理由があるのです。

人畜無害な人ばかりではありません。書類の足りない人、パスポートを偽造している人、密輸をたくらむ人、指名手配犯や国家の転覆をたくらむ秘密結社の工作員まで、いろんな人がやってきます。

そんなものは即刻入国拒否でいい、と思うかもしれません。しかし、「書類が足りないのは国が発行してくれないからです。国に帰れば殺されてしまいます。お願いです、通してください」といわれたらどうでしょう?

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生かすも殺すもスタンプ1つ。国として粛々と処理するのか、人として見逃してあげるのか。

たしかに見逃してあげたくもなりますが、そうすると罰金で給料から天引きです。給料が下がると、家賃や食費、光熱費が払えず、家族が空腹や病気で最悪死んでしまいます。こちらも家族の命がかかっているのです。

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このゲームは、こうした心の葛藤を何度も仕掛けてきます。葛藤するのはゲーム内のキャラクターではありません、他ならぬプレイヤー自身なのです。

いやいやだからって国家転覆をたくらむ秘密結社の工作員相手になんの葛藤が?と思うかもしれませんが、上司がいけすかないヤツだったり、給料が安くてギリギリの生活だったり、国際情勢で自国に疑問を抱かせたりと、国家に対する不信感が積み上げられていくので、怪しい工作員の世直し発言にも心が動かされてしまうわけです。退屈な日々だからこそ、刺激的なものに飛びついてしまうってのもありますけど。

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さまざまな葛藤を通して、スタンプの重さが感じられるようになるくらい没頭させてくれます。何せ葛藤するのは自分自身ですからね。

良心に従うのか、国家の犬になるのかはプレイヤーの選択次第。

アルストツカに栄光あれ。

意外と高いリプレイ性

本作はアドベンチャーゲームなのですが、1度クリアしても終わりではありません。エンディングは20種類も用意されています。こういうと、クリア後に何度も作業をしなければならないように聞こえるかもしれません。しかし、前述の上達する喜びがあるため、意外と苦になりません。

また、ストーリークリア後はエンドレスモードも選べるようになります。こちらはひたすらに審査官の仕事をするモードで、本当に労働です。さすがに20種類の結末を迎えた後ではお腹いっぱいな気もしますが、まだまだスタンプを押したりない人や、後々気が向いたときにちょっと遊ぶ用のモードもあるということで。

個人的には、リプレイ性にもっとも貢献しているのは操作の心地よさかなと思ってます。特にスタンプを引き出し、ガチャリと押す感触は非常によくてクセになります。

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審査室を拡張し、Tabキーで引き出せるようになるとさらに感触がよくなってお気に入り。このあたりはかなり気を使って丁寧に作られている印象でした。

そんなわけで、『Papers, Please』は評価の高さに偽りなしだと感じました。労働に対するストレス、仕事がうまくいったときの快感、心に葛藤を生む選択など、プレイヤーの感情を非常にうまくコントロールしてきているのですよね。気になった人はぜひ、アルストツカの審査官として労働に勤しんでみましょう。

公式サイト:Papers, Please
Playism:Papers, Please
Steam:Papers, Please

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