『Anthem』をひと通り遊んだのでレビュー。まだ見ぬマスターワークとレジェンダリーを求めてタイラント坑道を走っている最中ではありますが、大体の要素は体験できたんじゃないかなというくらいの段階です。今後もアップデートが続けられていろいろと拡張・改善をしていくと思われますが、ひとまずは発売直後の現状におけるレビューとなります。ちなみにボクがプレイしているのはPC版です。
「Anthem」ゲーム – EA公式サイト – Electronic Arts
現段階では、ジャベリン・エグゾスーツを纏って空を飛び回りながら共闘するアクション面は良いものの、リリース直後にありがちなコンテンツ不足や調整不足、それから不具合の山が足を引っ張って評価しづらいのが実情です。この手のゲームで毎度同じことを思ってる気がするのですけど、素材はいいんですよ、素材は。どうして同ジャンルの他社の過去作と同じ轍を踏んでしまうのですか。どうして…。
ジャベリンなら空も飛べるしカッコイイ!
『Anthem』はRPGとTPSを組み合わせたハクスラ系シューターです。このジャンルもすっかりお馴染みになってきましたね。そんななか、本作の最大の特徴となるのは「空を飛べること」です。ジャベリンと呼ばれるスーツを着ることで、まるでアイアンマンのように空を飛び回れるのです。ふわっとジャンプしてからスボァッ!とスラスターを吹かして加速するのが最高にカッコイイ&気持ちいい。ちゃんとスーツのスラスター部分が展開するギミックが盛り込まれているあたり、フェチを感じずにはいられません。素晴らしい。
選べるジャベリンは4種類。スタンダードなバランス型のレンジャー、重量級でパワー型のコロッサス、軽量級でスピード型のインターセプター、特殊型で魔法使いのようなストーム。性能だけでなくアクションも異なるため、4つの楽しみ方が内包されているといっていいでしょう。さらには、ギアと呼ばれるスキルとMODと呼ばれるアビリティを組み替えることでさまざまなビルドが可能となっています。同じジャベリンでもいろいろできるということですね。ちなみに、4種のジャベリンはゲームが進んでプレイヤーレベルが上がればすべて取得できるので、乗り換えも気軽にできます。
4人でコンボを叩き込むオンラインプレイ
ジャベリンによるバトルは4人共闘が基本となります。本作はオンラインマルチプレイが強く推奨されており、デフォルトでマッチングして共闘になるシステムが採用されています。プライベート設定にすればソロプレイも可能ではありますが、難易度や報酬を鑑みるに、あえてソロでプレイするうまみは全くなさそうです。ミッションへ出撃するたびにマッチングしてミッションが終了すれば解散!という流れなので、特にコミュニケーションは必要なく、実に気楽に遊べます。現状ではマッチングも良好で、どのミッションを選んでも即座に4人揃います。
4人での共闘における重要なシステムは「コンボ」です。本作におけるコンボとは、単に連続で攻撃を当てることではありません。「プライマー」と呼ばれる属性の攻撃を当てた後に「デトネーター」と呼ばれる属性の攻撃を当てることでダメージを上昇させるのが『Anthem』流のコンボです。たとえば、氷属性で凍結させてから電撃属性で叩き割る、といった感じ。プライマーとデトネーターの両属性を1人で担当することも可能ではありますが、4人でやれば回転率が段違い。低難易度ではあまり意識せずドッカンドッカンやっていれば問題ありませんが、高難易度になればなるほど重要になってきます。や、ドッカンドッカンするのは変わらないのですけれど。
ともあれ、ジャベリンを活かしたバトルや共闘についてはかなりの楽しさとなっております。4種のジャベリンで4人共闘ということで、バランスのいいパーティになることもあれば偏った編成になることもあり、同じミッションを繰り返してもプレイ感が違ってくるのもおもしろいところです。現状はストームがやや人気かな?というくらいでバラけているように思えますね。気楽に乗り換え可能なことが功を奏しているのかもしれません。
進行不能バグへ繋がる地獄のロード
しかし悲しいかな、こういった楽しい部分を阻害する要素が多々あるのが現状です。その筆頭が進行不能になるタイプの不具合。ミッションで指定の場所に到達しても何も起きなくなったり、敵が湧き続けて次の展開へ進まなくなったりとさまざまですが、ハッキリ言ってかなり多いです。特にひどいのがクイックマッチで入った部屋が進行不能になっているケースが多いこと。おそらく欠員の補充を優先する仕様になっているためと思われますが、マッチングの良さが仇になっているのは悲しすぎる。
ここに追い打ちをかけているのがロード時間の長さと頻度。ミッションを選んで出撃してからゲームが始まるまでのロードがとにかく長い。Day1パッチで多少の改善が図られましたがまだまだ長い。ボクはSSD環境でプレイしていますがそれでも長いです。で、長い長いロード時間を経て入った部屋が進行不能に陥っているとそのまま退出するしかないわけですが、リザルト画面までのロードがまた長い。そしてなんの成果もないリザルト画面を見たら拠点までまたロード。もちろん長い。これが連続しようものなら(それは別にレアケースでもない)、頭に呪いの賛歌が流れ始めます。
やることが…やることが少ない!
また、発売直後にありがちなコンテンツ不足も深刻です。まずエンドコンテンツの少なさ。メインとサブのストーリーミッションも多くはありませんが、今後アップデートで追加されていくことを考えるとこんなものかもしれません。しかしアップデートまでの期間を繋ぐためのエンドコンテンツが圧倒的に足りていません。
ストーリー終了後はより良い武器やギアを求めて周回が始まるわけですが、高難易度ミッションであるストロングホールドは3種類しかありません。しかもドロップ品の内容はどこへ行っても同じようなので、結局同じところを周ることになりがち。あとはデイリーで更新されるレジェンダリー依頼をやる程度です。難易度はイージー、ノーマル、ハードの上にグランドマスターが3段階も用意されていますが、現状ではGM2までがいいところです。GM3は辛さと美味しさが見合ってないので、後々「あの頃は辛かったね~」というための思い出作り用のコンテンツに過ぎないでしょう。
それからコンテンツ不足といえば個人的に残念だったのが外見カスタマイズパーツの少なさ。いろんなパーツを組み合わせてボクだけのカッコイイジャベリンを作り出せるのかと思いきや、パーツが少なすぎてみんな同じ格好の色違いばかりになっています。ショップの商品も数日替わりで同じものが並ぶだけ…。水増しのために色違いを別アイテムにしないだけマシっちゃマシなのかもしれませんが、さすがにバリエーションがなさすぎで悲しくなります。
この世界は4人には広すぎる
コンテンツだけでなく調整も不足しているように感じます。たとえばフリープレイモード。これはミッションとは別に自由にオープンワールドを探索できるゲームモードで、空を飛べる本作の特徴を最大限に活かしたものです。実際、美しく作り込まれた世界を飛び回るのは最高の気分です。
しかし、通常のミッションと同じく1部屋に4人までとなっているため、通りすがりと共闘するようなドラマティックな展開はほとんどありません。飛び回ることを前提とした広さの中にたった4人ですから、そりゃあ出会わないよねと。さらにいえば、イベントの発生場所もマップに表示されないのだから、ますますもって出会えるわけがありません。共闘前提のミッションとは異なり、ひとり気ままに空を飛べるモードと考えればアリっちゃアリかもしれませんが、それならプライベート設定でいいですしね。
広いようで広くないようなビルドの幅
他に調整不足を感じるのはビルドの幅でしょうか。前述のとおり、『Anthem』のバトルはコンボがキモになるため、プライマーとデトネーターの属性がついたギアが重要になっています。しかし、この2つの属性がついているギアは限られており、さらには2つのボタンにセットできるギアもそれぞれ限定されています。なので、自然とビルドの幅が狭められていくんですよね。コンボと無縁のギアにも強みはあるのでしょうけれども、ちょっと制限がキツすぎかなと思わなくもない。
あとはハクスラの楽しみである武器や装備に付与される追加効果も明らかに調整不足。さまざまな追加効果が完全に闇鍋状態で付与されるため、何の効果もないケースが多発してしまっています。たとえば、氷属性の攻撃に酸ダメージアップとか。とはいえ、これについてはすでに改善の予定が発表されたので期待してよさそうです。ですが、まったくの無意味ではないけどあんまり価値のない効果も多数含まれているため、厳しい闇鍋の時代はまだまだ続きそうです。といっても、現状ではこれしかやることがないんですよね。だからといってこれだけで次の大型アップデートまでもたせるのは厳しいと言わざるを得ません。
後は任せたぞ…未来のフリーランサーたち!
そんなわけで『Anthem』はジャベリンを活かしたアクションの楽しさや格好良さは素晴らしいものの、ハクスラとして長期間プレイを続けるにはいろいろと足りていないのが現状です。ここで書いたこと以外にも細かいところをあげればキリがないほどで、とにかく惜しいゲームという印象。半年後か1年後かに評価がガラリと変わるときがくるのかもしれませんが、少なくとも発売直後の段階では手放しでオススメはできない品質となってしまっています。どうしてこうなった。…納期のせいなんでしょうけどね、いわずもがな。
とはいえ、ユーザーの意見に耳を傾けたり、その改善を早期に投入してくる姿勢は見せているので、今後については期待できるかもしれません。こういったゲームにおいて変化を楽しむというのも1つの楽しみ方でありましょう。現状の暗黒時代を生き抜いた者だけが後々「あの頃は酷かったね」と笑い飛ばすことができるのです。歴戦のフリーランサーになりたくば今!この瞬間にグランドマスター3で地獄を味わっておきましょう。ボクは遠慮しておきます。
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