【Child of Light】レビュー おとぎ話とRPGの美しい絵本

おとぎ話の絵本のようなRPG『Child of Light』をクリアしたのでレビューなど。美しいビジュアルや音楽だけが絵本風ではなく、ストーリーや世界観などすべてが絵本風のおとぎ話。バトルや育成などRPGの部分はそつのない仕上がりで、JRPGスパイスな絵本の世界が堪能できます。

『チャイルド オブ ライト』公式サイト、RPG、Xbox One、PS4、PC

『Child of Light』はUbisoftのモントリオールスタジオ製のRPGです。水彩画のような絵本風のグラフィックと美しい音楽が印象的。2Dサイドスクロールアクションのような移動ですが、バトルや育成などは日本製のRPGの影響が色濃くうかがえます。

本作は多機種向けに展開されていますが、今回ボクが遊んだのはPC版です。Steamで購入したのですが、Steam版というよりUplay版ですね。

Steam:Child of Light

クリアまでの時間は10時間前後のようで、ボクは9時間ほどでした。探索や収集など、リプレイ性もなくはないのですが、ボリュームは値段相応といったところでしょう。RPGと聞くだけで何十時間ものプレイ時間を要求されるのではと敬遠しがちな人でも気軽に手にとれるのではないでしょうか。

今回のレビューではストーリーに関するネタバレは避ける方向で。

Launch Trailer – Child of Light [JP] – YouTube

水彩画風の美しい絵本の世界

『Child of Light』といえば、やはりこの絵画調のグラフィックがまず目を惹くことでしょう。実際、すごくキレイなので見ているだけでも楽しめます。これだけでも値段分の価値はあったといっていいでしょう。や、もちろん見た目だけのゲームではありませんけども。

Child of light 美しいグラフィックと音楽

このグラフィックに物悲しい音楽が重なって本当に美しい世界観を作り上げています。光の失われた世界というお話の都合上、全体的にやや暗くて重い空気ですが、物憂げな美しさが何とも言えずキレイ。

参考:【Child of Light】サウンドトラックがゲーム本編の配信に先駆けてWebで公開中

どこを切り取ってもそのまま絵本の1ページになりそうなアートスタイルは本当に目を見張るものがあります。見た目が気になったのなら迷わずゴー。だって、これが動かせるんですよ?

おとぎ話のようなストーリー

ビジュアルだけでなく、登場するキャラクターやストーリーもおとぎ話の絵本風です。どいつもこいつも変わり者ばかりで、独特で詩的な言い回しがいかにもおとぎ話という印象を与えてくれます。

ただ、RPGのストーリーとして強力な吸引力を感じるかといえば、そうでもありません。絵本風のおとぎ話としてはうまくできていると思うのですが、プレイヤーをぐいぐいと引っ張るような展開はないです。雰囲気ゲーによくある薄口な味付けですね。雰囲気ゲーだから薄味なのか、薄味だから雰囲気ゲーなのか。

全体としてのストーリーは非常によくできていると思うのですが、場面場面でプレイヤーを動かす理由としてのストーリーはやや弱いかなという印象でした。ゲームのストーリーというよりも、絵本のストーリーとして割り切っているのかもしれません。

アクティブタイムなバトルシステム

日本のRPGに影響を受けたという本作のもっともRPGっぽい部分がこのバトルでしょう。ターン制ではなく、アクティブタイム制です。

画面中央下に表示されたタイムラインに敵と味方の両方が流れています。単に順番を示しているだけでなく、行動を決定して実行されるまでのキャストタイムも表示されています。このキャスト中に攻撃を受けると行動がキャンセルされてしまうというのが本作の特徴。

行動がキャンセルされてしまうのは敵も味方も同じなので、このタイムラインをうまくコントロールするのがバトルのカギになっています。ただひたすら集中攻撃するのではなく、行動間近の敵から叩いたり、キャストタイムが長いけど強力な攻撃で勝負をかけたり、といった感じ。

もう1つの特徴が、ホタルのようなイグニキュラスの存在。フィールドでも謎解きに活躍する彼ですが、バトルでも敵の目の前で光って行動速度を落としたり、味方の体力を回復させたりと大活躍します。これもバトル中のタイムラインのコントロールのために必要な要素なわけです。

バトルの調整は、ザコ戦でもなかなか大変なちょっと重めの調整。といっても毎回命の危険を感じるほどではありませんし、シンボルエンカウントなので戦闘自体を回避することもカンタンで、ストレスにはなりませんね。1回のバトルごとに誰かしらのレベルが上がるくらいなので、むしろどんどんバトルさせろ、って感じです。

ボス戦でもザコ戦でもタイムラインのコントロールを意識しながら戦うのが楽しいのですが、1点気になってしまったのがカウンター系の攻撃。敵の攻撃をキャンセルさせてもカウンター系の行動は発動するので、結局攻撃を食らってしまうんですよね。しかも、カウンター系のスキルはほとんどのボスがもっている感じ。

敵の行動を妨害しまくって完封できるシステムなのですが、そうはさせてやらん、というカウンタースキルの存在は「そういうゲームじゃねえからこれ!」って気分にさせてくれます。開発者的にはボスが一方的にやられてしまうのはたまらないのかもしれませんが、プレイヤー的にはそういう快感があってもいいんじゃなかったのかなと思います。

シンプルにまとまった育成システム

バトル以外で強くRPGを感じるのが育成システム。経験値によるレベルアップとスキルツリーによる育成システムになっています。

レベルアップで入手できるスキルポイントを任意に振り分けていくシステムです。「FF12」とか「FF13」とかが近いでしょうか。自由度が高そうに見えますが、このスキルツリーには実質3本の道があるだけです。どのキャラクターも3方向の道になっているのは同じ。

たとえば、攻撃系、防御系、魔法系、のような感じで3択です。このうちの1つに特化するか、2つに分けるか、3つともバランスよく振るのかはプレイヤー次第といった感じ。ツリーの先に何があるのかを見ながら判断できるので、親切な作りですね。

もう1つの育成システム、というかカスタマイズ要素が装備品のオキュライと呼ばれる宝石。本作の装備品はこの宝石だけです。宝石には攻撃力や防御力アップ、属性の付与や回避率の上昇など、さまざまな効果があります。同じ宝石であっても、武器、防具、アクセサリーと装着箇所が違えば効果も変わってきます。

宝石は合成して強化することもできます。宝石の種類はそれほど多くなく、合成のパターンもシンプルなものになっています。

スキルツリーにしても宝石にしてもシンプルにまとまっている印象です。いたずらに自由度を高めてしまっても調整しきれませんから、ある程度のところで絞っている印象です。プレイヤーへの選択肢を絞った分、敵の強さなどの調整は非常に丁寧にされているように思えました。

バトルにしても育成にしても、RPGの部分はオーソドックスなスタイルにちょっぴり手を加えたものなのですが、いずれも丁寧に調整されているのでおいしくいただける感じですね。

絵本をRPGで楽しむゲーム

そんなわけで『Child of Light』は、絵本風な雰囲気ゲームでありつつ、しっかりとした作り込みを感じるRPGでもあります。全体的に薄口な味付けにも感じますが、味付けを濃くしてしまうと絵本風の雰囲気が台無しなので、これで正解なのでしょう。

クリア後も強くてニューゲームがありますが、探索や育成などのやり込み要素はそれほど多くはありません。どちらかというと、この世界にもう少し浸っていたい人のために用意されているのかもしれません。それほどに、この世界は儚げで物憂げで美しいのです。

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