【アスタブリード】レビュー 絶妙な難易度曲線を描くハイスピードなマルチスクロールシューティング

『アスタブリード』は派手なビジュアルで縦、横、そして画面奥へと多方向にスクロールしてもストレスなく操作が可能で、非常にスピード感と壮快感にあふれたタイトルです。一見すると敵や弾で埋め尽くされた画面にビビってしまいがちですが、絶妙な難易度曲線のため、むしろシューティング入門に相応しいのではないでしょうか。

『アスタブリード』は同人ゲームサークル「えーでるわいす」が制作したシューティングゲームです。同人ゲームのシューティングは数あれど、頭100個くらい突き抜けたクオリティのグラフィックでビカビカと目立っているゲームですね。

本作のリリースは2013年で、ボクの所持しているSteam版も2014年の5月に配信されています。買ってプレイしてクリアしていたにも関わらず、ボクがただサボっていただけの理由で今更なレビューになります…。シューティングは得意ではないジャンルのため、なんとなく気後れしてしまうのですが、むしろ初心者にもやさしい作りの本作を紹介せずにいてもいいものか、ということで書こうと思い立ったまで。PS4版の話が目に入ってきたからとかそういうことではなくはないのですけど。

ともかく。『アスタブリード』は「同人なのにすげえ!」みたいな評価を受けがちな印象です。たしかにその通りなのかもしれませんが、ボクは「同人とか関係なくすげえ!!!」と思います。特にSteamのようなプラットフォームでは、「Call of Duty」の最新作や「Skyrim」みたいな往年の名作と同じ棚に並ぶわけです。その中でちゃんと存在感をアピールできているってのはすげえわけですよ。

では、どのへんがすげえのか書いていきましょう。

マルチスクロールのスピード感と多彩な攻撃による壮快感

カッコイイ人型メカがギュンギュン動いてバーッと弾撃ってドッカンドッカンズバババで大変気持ちがよろしいゲームなんですよ。ああ、1文で説明終わっちゃったよ。要するにスピード感と壮快感ですよ。

アスタブリード マルチスクロールのスピード感

3Dなグラフィックで作られた本作は自機も敵も背景もグリグリまわります。スクロール方向は縦や横だけでなく、時には画面の奥へも進みます。ステージによって固定されているわけではなく、シームレスにスクロール方向が変わるので非常にダイナミック。でもそれがストレスにならず、むしろスピード感を生んでいるのが本作のすばらしいところでしょう。

本作の自機は人型メカです。人型メカの最大の武器は汎用性ですから、前にしか進めない飛行機とはワケが違います。縦や横に向かって飛び続けていればいいわけではないのです。移動の操作はスティック1本ですから実際には8方向くらいにしか動いていないわけですが(アナログだから360度自由だけども)、多方向にスクロールすることでギュンギュン動いてる感を出せているのですよね。

アスタブリード 多彩な攻撃手段

さらに、汎用性の高い人型メカなわけですから攻撃手段も多彩なわけです。ショットはワイドとストレートの2種類、ロックオン攻撃も2種類の範囲、そしてブレードによる近接攻撃も突進攻撃があり、ロボらしく複雑な操作が要求されます。といってもボタンが3種類あるだけなんですが。

攻撃手段が多いので操作にはちょっと慣れが必要になります。とはいえ、すべて使いこなさなければクリアできない、というわけではありません。いろいろな攻撃手段を思いつくままに試していればなんとなく進めたりします、中盤くらいまでは。

ハイスコアを目指すならガチガチに武器の使い分けをパターン化して攻略するのかもしれませんが、クリアするだけなら「敵がいっぱいきたからロックオン」「でかくて硬そうなのがきたからブレード」「よくわかんないからとりあえずショット」くらいで問題ないでしょう。適当に撃ってりゃドッカンドッカンズガガガガと気持ちよく敵を倒せるはず。

編隊を組んで流れてくるザコ敵をショットでバリバリ撃ち落としたりロックオンで一掃したり硬そうな大型敵をブレードで一瞬で斬り裂いたり、どのボタンを押しても大体気持ちいいのがすばらしいところ。敵を倒して気持ちいい、というのは基本にして当然なのかもしれませんが、前述のスピード感も相まってそんちょそこらの気持ちよさとは段違いの気持ちよさが実現されているといっても過言ではないでしょう。

アスタブリード 武器の使い分けが攻略ポイントの1つ

というわけで『アスタブリード』は、カッコイイ人型メカがギュンギュン動いてバーッと弾撃ってドッカンドッカンズバババで大変気持ちがよろしいゲームなんですよ。大事なことですからね。

初心者にもやさしい絶妙な難易度曲線

『アスタブリード』の自機はカッコイイ人型メカなので一撃で即死したりはしません。体力制なのでちょっとやそっとの攻撃ではビクともしないのです。敵の攻撃はちょっとやそっとじゃないくらい激しくなっていきますが、即死ではない、ということがヘタクソなボクにとってこれ以上ない安心感をもたらしてくれます。

しかもこの体力、なんと自動で回復してくれます。被弾した後、しばらく回避を続けていれば回復をはじめるのです。なので、そんなに神経質に回避を意識しなくても進めるようになっています。ショットやブレードで相殺できる弾もあって、初心者にもやさしい作りといえるでしょう。

アスタブリード 体力制で自動回復アリ

では本作はカンタンなゲームなのでしょうか、と問われたら、答えはノーです。自機の攻撃は多彩だし、体力も自動回復だし、カッコイイし、どう考えても強いのですが無敵の無双ができるわけではありません。たしかに序盤は無双状態ですが、だんだんとステージが進むにつれてムズかしくなっていきます。

まだ操作に慣れない序盤ステージはどれか1種類の攻撃だけでも突破できるでしょう。ステージが進むと2種類、3種類と攻撃方法を使い分けないと押されはじめ、中盤以降はしっかり回避を要求されるようになり、終盤はボスのパターンを覚えて対策していくことが必要になってきます。なんといいますか、ものすごく素直でキレイな難易度曲線になっているような気がしてなりません。ボクの腕がちょうどよかっただけなのかもしれませんけども。

アスタブリード 復活はチェックポイント制

また、本作はチェックポイント制になっています。死んでしまった場合、コンティニューしてもその場から復活ではなく、チェックポイントからの再スタートになります。パワーアップなどはないため、復活パターンを構築する必要はありませんが、ゴリ押しのクリアは許さないと、いう意味で難易度を上げる要因になっていますね。

特に、終盤のボス戦などでは第1形態からのやり直しになるため、「ちゃんと攻略してくださいね」という開発者の意図が伝わってくるようです。「ここまでやってこれたのだから大丈夫」というプレイヤーへの信頼もあるのかもしれません。ボクは終盤のボスにかなり苦戦させられてしまったのですが、段階的にムズかしくなっているのが肌で実感できていたので、理不尽に突然ムズかしくなったようには感じなかったのですよね。

ゲームの進行にあわせて難易度が段階的に上昇していくことで、プレイヤーがちゃんと学習してレベルアップしていける作りというのは、当たり前のようでムズかしい調整のはずです。冒頭で書いた「同人とか関係なくすげえ!!!」と感じたのは主にこの難易度曲線があったからです。作り手が作りたいように作ったのではなく、受け手であるプレイヤーのことを深く考慮されており、それをカタチにできているからすげえわけです。

間口は広く、懐は深く

アスタブリード 間口は広く、懐は深く

そんなわけで『アスタブリード』、壮快で気持ちよく遊べるシューティングです。人型メカという題材にマッチしたシャープなグラフィックに多彩なスクロールによるスピード感、豊富な武装による圧倒的なパワーと壮快感。ちょっと触ってみるだけでも気持ちよく遊べるでしょうし、高難易度やハイスコアなどじっくりやり込むプレイスタイルでも受け入れてくれることでしょう。

「なんかカッコイイけどシューティングとか苦手だし…」というアナタ。むしろアナタのような人が本作のメインターゲットであるようにさえ思えます。ガチなシューターの方々も楽しめる作りになっているとは思うのですが、できるだけ多くの人に遊んでもらいたい、楽しんでもらいたいという開発者の思いがあふれているような気がしてなりません。

今回ボクがプレイしたのはSteamのPC版ですが、2015年3月19日にはパワーアップしたPS4版がリリースされるそうなので、これから本作を遊ぶのであれば、PS4版を待ってみるのもいいかもしれませんね。

公式サイト:Astebreed
Playism:アスタブリード
Steam:Steam:Astebreed