【Battlefield Hardline】シングルモードのレビュー 正義が不在の物語と完成度という正義

『Battlefield Hardline』のシングルキャンペーンのクリア後のレビューです。”あの”「BF」シリーズのシングルモードが好評だと聞いてプレイしてみたわけですが、なるほどたしかにおもしろい。斬新な要素があるわけではないのですが、題材の落とし込み方、素材の料理の仕方が上手なのではないかと。

Battlefield Hardline シングルモードのレビュー

マルチの「Battlefield」、シングルの「Call of Duty」といわれた時代も今は昔。大作FPSたるもの、マルチもシングルも一手に担わなければいけない過酷な時代となってからも月日は流れ続けております。ライバル「CoD」シリーズに対抗すべくシングルにも力を入れていた「BF」シリーズでしたが、今回『Hardline』は『Dead Space』を手掛けたVisceral Gamesを招き入れたことで、1つの転機を迎えたように感じます。

ポイントになるのは、警察と犯罪者の戦いという題材の落とし込み方と安定感で勝負した完成度でしょうか。「BF」シリーズのシングルとしては、この完成度は目新しいことなのかもしれませんが、やっていること自体はどこかで見たような要素の組み合わせ。でも、結果的にプレイ体験を上質なものに押し上げているのですよね。よくある素材だけど正しく料理した好例といえるのではないでしょうか。

ハードライン – Battlefield – EA公式サイト

求心力の高い海外TVドラマ仕立てのストーリー

『Battlefield Hardline』のシングルキャンペーンは、警官と犯罪者の戦いを題材に、海外の俳優を起用したTVドラマ仕立てのストーリーとなっています。映画やドラマで見たことのある海外の俳優さんたちがリアルタイムCGで動いて演技をするカットシーンを見ていると「ああ、新世代機すげぇ」ってなりますね。

10のエピソードから構成されているところもTVドラマ風。プレイを中断して戻ると「前回のハードライン」としてあらすじが流れる上に、中断の際には「次回のハードライン」として予告映像が流れる徹底ぶり。

ストーリーは、マイアミを舞台に警官の主人公・ニックが麻薬犯罪と戦うところから始まり、やがて大きな事件に巻き込まれていく…といった感じ。強烈な個性バリバリの登場人物たちの中で、誰が悪人で誰が信用できるのか。先の読めないストーリーというか、やっているとどいつもこいつもワルに見えてくるのですが、とにかく先の気になるストーリーがグイグイと引き込んでくれます。

「CoD」シリーズのシングルキャンペーンなどは、主観視点でFPS部分とカットシーン部分をシームレスに繋いである感じですが、『Hardline』はFPS部分とカットシーン部分が交互に展開する感じ。FPS部分でもストーリーは進行するとはいえ、ゲームパートとドラマパートが分割されている印象は拭えません。とはいえ、豪華に起用した俳優の演技を楽しむのなら、この作りで正解なのかもしれません。

見慣れた要素を組み合わせた完成度の高さ

FPSとしては、フィールド内で自由に行動できるタイプになっています。決まったルートを進むのではなく、自分で進むルートを考えて攻略していける感じですね。「バッドカンパニー」シリーズでは、「BF」のお家芸である乗り物にスポットが当てられていたため、だだっ広いフィールドでしたが、今回はほとんど徒歩なので狭く絞ってあります。

プレイヤーは、ステルスか強行突破か、自由に選ぶことができます。裏口を探すか正面から入るか、というだけでなく、ロープを投げて屋上から入るなんてことも。基本はステルスで見つかったら銃撃戦でもいいですし、犯罪者にくれてやるのは鉛玉だとばかりに最初から引き金を引いてしまってもOK。ただ、ステルス侵攻の方がいろいろとご褒美が多いので、どうしてもステルス優先になりがちですね。

警官と犯罪者が題材なので、警官っぽいアクションとしてホールドアップが用意されています。敵の背後からこっそり近づいて「動くな!」と警察バッヂをかざせば、武力解除させつつ逮捕して無力化できるのです。ちゃんと銃を突き付けてあげないと反撃されるのですが、複数の敵を相手にバッ!バッ!と構えて武器を捨てさせるのは、なんだか映画やドラマのよう。といっても、「動くな」といわれて本当に動かないマフィアのみなさんはなんだか憎めませんけども。

もう1つ、警官っぽい要素は捜査。フィールドに落ちている収集品を集める、というFPSにはよくある要素なのですが、事件を追う警官とマッチしています。収集品の位置はスキャナーで距離と方向が掴めるので、集めるのはそこまで大変ではないでしょう。収集品1つ1つに登場人物のちょっとした音声コメントまでついているので、実績とか関係なく集めたくなりますね。

個人的に、FPSにおける収集品は苦手です。戦いの最中、関係のない方向に走り回ってアイテムを探し回るというのは雰囲気ブチ壊しですし、何よりあまり楽しいと思えないからです。しかし、『Hardline』は警官だから捜査のために調べてまわるのは当然ですし、スキャナーもあるので目安もある。さらに武器がもらえるご褒美もある。なので、収集品のストレスはかなり抑えられていますね。

『Hardline』は、プレイヤーに進行ルートを任せるフィールド、ステルスにホールドアップ、収集品。どれもFPSにとって目新しい要素ではありません。しかし、そのぶん完成度で勝負してきているように感じます。特にステルスは、ミニマップのレーダーに敵の視界が表示される、ちょっと古いタイプなのですが、『Hardline』はステルスゲームではないので安定のシステムを選んだのではないかと思うのですよね。

敵の視界範囲に入らなければこちらから見えていても見つからない、というのはステルスゲームの抱える問題でした。最近のモノでは、敵の視界範囲は表示せず、敵の向きを基準に隠れるシステムが多くなっている印象ですね。しかし、『Hardline』ではあえて視界範囲を表示することで、わかりやすさが重視されている感じ。敵の真横でもしゃがんでいれば見つからない、というのはちょっとマヌケですが、そういうおバカっぽいところも「BF」シリーズのお家芸なのでマッチしているといえばそうなのかも。

スキップ不可のカットシーンがリプレイ性に落とす影

高い完成度の『Hardline』のシングルキャンペーンですが、おしい点があります。「カットシーンがスキップ不可」な点です。この点がすばらしいキャンペーンのリプレイ性に大きな影を落としてしまっているのです。ゲーム起動時のメーカーロゴはスキップできるのですが、カットシーンはダメなんですよね。大人の事情かもしれませんが、この問題はデカイ。

先に述べたとおり、海外の俳優を豪華に起用したドラマ仕立てですから、カットシーンの見応えは十二分です。演技も物語も非常にすばらしいものだと思います。初回プレイ時は諸手を挙げて賞賛できる内容なのですが、2回目以降は違います。高難易度や収集品、実績解除などを目的とした2周目以降においては、プレイを阻害する要因に変わってしまうのです。

自由な進行ルートで遊べる本作は、プレイ毎にいろいろなスタイルで遊べるようになっています。ステルスか強硬か、接近戦か狙撃か。いろんな遊び方が許容されているので、いろいろとやってみたくなるのですが、そこにはスキップ不可の膨大なカットシーンが立ちはだかります。こんなにもリプレイ性が高い作りなのに、惜しい、本当に惜しい。

シングルがオマケではなくなった「Battlefield」

そんなわけで『Battlefield Hardline』、「BF」シリーズのシングルキャンペーンがここまでやってきたということで一見の価値アリかと。目新しさは足りないかもしれませんが、完成度で勝負している分、完成度は本当に高いものになっていると思います。カッチリとまとまったFPSのシングルキャンペーンを欲したときには、本作がよい選択肢になるでしょう。

それにしても、マルチ専用だった「BF」シリーズがこんなシングルキャンペーンを出してくる時代になっただなんて、なんだか感慨深いですね。ボクもずいぶん歳をとってしまったように感じますが、まだまだマルチプレイで遊んでいきますからね。

マルチプレイモードのレビューはこちらからどうぞ。

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