【Shovel Knight: Plague of Shadows】レビュー かつてのボスキャラクターが主人公の錬金術師アクション

『Plague of Shadows』は、ファミコン風のアクションゲーム『Shovel Knight』の拡張コンテンツ。本編のボスキャラクターだったPlague Knightを主役に据えたスピンオフとなっています。ステージは同じですが、ショベルを怪しい化学ボムに持ち替えたことでまったく違ったゲームに変化しているため、クリア済みの人もぜひプレイしておきましょう。しかも、このボリュームがなんと無料。

『Shovel Knight』は2014年6月にリリースされたインディーゲーム。Kickstarterで30万ドル以上の資金を集め、その期待に見事に応えたタイトルです。

ファミコン風のレトロスタイルなインディーゲームは数あれど、『Shovel Knight』ほどのハイクオリティなタイトルはそう多くありません。「ロックマン」や「悪魔城ドラキュラ」など、往年の名作への深い敬意が込められており、あの時代への愛情が詰め込まれているだけでなく、現代のゲームとして丁寧に調整されたアクション、描き込まれたドット絵ビジュアル、Jake ‘Virt’ Kaufmanによるチップチューンミュージックと、どこをとっても抜群の出来のよさ。すべてにおいて完成度の高いアクションゲームとなっています。

過去に書いたレビューはこちら。

そんな『Shovel Knight』に拡張アップデートがやってきました。本編のボスキャラクター・Plague Knightを主人公にしたスピンオフ『Plague of Shadows』です。なんと無料のアップデートとなっていますが、ボスキャラのプレイアブル化はもともとKickstarterでのストレッチゴールに設定されていたので、公約どおりといったところ。とはいえ、正直このクオリティーとボリュームを無料で提供するのは太っ腹すぎるので「お金とってもいいのよ?」と、心配になるほど。

ショベルの裏で暗躍していたPlague Knightの物語

『Plague of Shadows』は、Plague Knightをプレイヤーキャラクターとして本編の全ステージを遊べる、というもの。単にキャラクターを入れ替えただけでなく、専用のストーリーも用意されています。その内容は、本編のShovel Knightの活躍の裏で進行する物語となっており、本編をプレイ済みの人にとってはニヤリとさせられる場面も。

たとえば、最初の町では門番に追い返されてしまうので、仕方なく地下道を歩いていたら、地上ではShovel Knightが歩いていたり。数々の場面で本編と交錯するのは、いかにもスピンオフといったところ。他にも、ボスキャラクターであるPlague Knightと正義のShovel Knightとの扱いの違いは細かい演出で描写されています。

shovel knight plague of shadows 暗躍するPlague Knight

本編はShovel Knightが相棒のShield Knightを助けにいく展開でしたが、こちらはPlague KnightがヒロインのMonaちゃんと力を合わせて究極のポーションを作るため、全ステージのボスたちを叩きのめしにいく、という展開。…おや? ということは、Plague Knightのステージはどうなっているの?と思われるかもしれませんが、「そうきたか!」という展開になっているので、ぜひとも自分の目で確かめていただきたい。

ストーリーが用意されているとはいえ「同じステージをもう1回遊ぶだけなんでしょ」と思われたかもしれません。しかし、キャラクターが変わることでアクションが変わり、ゲームの内容はガラリと変わっているのです。

ショベルからボムへ…すべてが異なる錬金術アクション

Plague Knightもジャンプ&アタックのアクションに変わりはありません。が、ジャンプもアタックもShovel Knightとはまったく異なる性能になっています。素直な性能のShovel Knightに比べて、Plague Knightは全体的にピーキーな調整ですが、使いこなせば強力。

まず、ジャンプについては、ショベルでのホッピングがないかわりに、2段ジャンプが可能になりました。ただし、距離は出せても高度は稼げないため、高台に上るためにはもう1つ、チャージからの3段ジャンプが必要になってきます。ボタンを押しっぱなして身体が光ってから放すと、爆発を起こしてさらにもう1段ジャンプします。すさまじい跳躍力を発揮する反面、吹っ飛んでいくので制御がムズかしい。とはいえ、このアクションを使いこなせるかどうかが攻略のカギになります。

次に、アタックについては、薬品の入ったフラスコのようなボムを投げるアクションになっています。ボムは3種類の素材、すなわち、ケース、パウダー、ヒューズの組み合わせで性能が変化します。ケースは投げた軌道、パウダーは着弾時の効果、ヒューズは起爆の仕方がそれぞれ変わります。状況に合わせて3種類を調合し、多彩な攻撃で突破していくのがPlague Knight流なのです。

たとえば、高い位置にいる敵に対しては、山なりに飛ぶケースと起爆までの時間が長いヒューズを組み合わせて攻撃したり、低い位置にいる敵に対しては、ナパームのように炎を出すパウダーとリモート起爆のヒューズでボムを設置して待ち構えたり。実に多種多様な組み合わせが可能となっています。臨機応変にボムを調合して突破していく様は、まさに錬金術師。

ボムの素材となるアイテムはショップで購入できますが、商品のラインナップを増やすには、ステージ中に配置された緑のコインを規定数まで集める必要があります。場所によっては殺意の溢れた配置になっているのでパワーアップは命懸け。でも、それだけの価値は十分にあるでしょう。素材が増えれば攻略につながるだけでなく、遊びの幅も拡がって楽しさも倍増しますし。

他にも、体力の低さを補うために、一時的に上限を高めるポーションでドーピングするなど、いかにも錬金術師らしいシステムになっています。Shovel Knightはマジックパワーを消費して不得意な遠距離戦用の飛び道具が使えたのですが、反対にPlague Knightは苦手な接近戦用の攻撃になっています。中にはボスとして登場したときに使っていた技もあるので嬉しい。

一新されたプレイ感と変わらぬ完成度と

これだけ性能の違うキャラクターを主役に据えて、同じステージを進めることになるというのに、ゲームとして破綻していないのは、丁寧な調整があるからこそ。以前と同じステージなのに、同じゲームをやっているとは思えないほどプレイ感が異なるのですが、遊びやすさとムズかしさの絶妙さは変わっていません。これは本当に見事。

制御がムズかしいとはいえ、慣れてしまえばチャージジャンプの跳躍力でトゲ地帯を一気に飛び越えられたり、かつてショベルの短いリーチで戦っていたボスにボムを投げつけられたりと、難易度の下がっている場面もいくつかありますが、ピーキーでやや扱いづらい性能や低めの体力を考慮すると、総合的な難易度は同じくらい。死んでチェックポイントまで戻り、落とした所持金を拾おうとしてまた死ぬのも変わっていません。

繰り返しになりますが、『Plague of Shadows』は無料のアップデートなので、本編の所持者はぜひともプレイしてみましょう。新たなセーブデータではじめれば、キャラクターセレクト画面でPlague Knightが待っているはずです。(※本編クリアが解放条件ではあるけれど、裏ワザで即出現もあるらしい…?)

『Shovel Knight』を未プレイの人にとっては、お値段据え置きでボリュームが実質2倍になったわけですから、たいへんお買い得になったといえます。現代の技術で作り込まれたレトロスタイルアクションの金字塔をプレイしない手はありません。ぜひ、やりましょう。

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