【Mother Russia Bleeds】レビュー 残虐さも難易度も”おそロシア”なドット絵系ベルトアクション

やったよ!ベルトスクロールアクションの新作だよ!しかもなんかドット絵すげぇ!これはもう買うしかない!!と、勢いに任せて買ってプレイしてクリアしました。一見すると普通のベルトアクションのようですが、意外と尖ったコンセプトでクセのある調整となっており、理不尽な難易度も相まってややオススメしづらい内容かも。

赤い大地はこうしてできている

『Mother Russia Bleeds』の舞台となるのは1986年のソ連。チェルノブイリ事故の直前くらいの時期で、連邦制が揺らいでいた時代であります。そんな激動の時代、主人公たちは謎の組織に連れ去られ、薬物を投与されて無慈悲なファイターになってしまう…、といったストーリー。ゲーム全般の雰囲気は絵に描いたようなセックス!ドラッグ!バイオレンス!がひたすら続く。正直、見せられないよ!って絵面のシーンもかなりある。まぁ、絵なんですけども。

Mother Russia Bleeds きめ細やかなドットで描かれるギリギリアウトの描写

本作はドット絵がすばらしく、特に背景の描き込みっぷりは見惚れてしまうほど。もちろんキャラクターの動きも細かい。特筆すべきはダメージ表現で、ベルトアクションにしてはめずらしく敵の体力表示がなく、代わりに血がついたり服が破れたりすることのみで表現されている。攻撃ヒット時にはアニメっぽいエフェクトもなく、出るのは血しぶきだけ。(画面シェイクはあるけど) 1人で多数の相手をぶっとばすフィクションバリバリなジャンルであるにもかかわらず、見せ方は妙にリアル志向な表現なわけですが、血みどろのゴア描写がウリなのでこういったバランス感覚になっているのでしょう。基本的にずっと血まみれです。赤い大地マジ赤い。

リアル志向といえば、本作にも落ちている武器を拾って活用するシステムがあるのですが、ナイフを使えばブスリと刺して1撃即死になるし、銃を使えば頭を吹っ飛ばして1撃即死になります。そりゃそんなものを使えば死ぬでしょうけど本当に死ぬとは。逆に刺されたり撃たれたりした場合は即死ではなく大ダメージで済みます。ヤクってますから。

君が死ぬまで殴るのを止めない

アクションはパンチ、キック、掴んで投げ、の3つが基本。移動に関してはジャンプとダッシュの他に回避のスウェーなどもあり、ボタンをいっぱい使う操作になっております。ベルトアクションらしく、敵をまとめてボコスカ殴ってぶっとばせ!って感じなのですが、パンチを連打しているだけではダウンしないため、マニュアルでのコンボ入力が必要。といっても、攻略に格闘ゲームのようなコンボは必要はなく、むしろ”どこでコンボを止めるのか”がポイントになります。

というのも、本作のコンボの基本は永久パターンだからです。ただのパンチ連打が一生繋がります。掴んだ敵を殴るのも永パなら、ダウンした敵にマウントして殴るのも永パです。キックや投げに派生させない限り、敵が死ぬまでコンボが続きます。「じゃあもうパンチだけでいいじゃん」と思われるかもしれませんが、残念ながらそうはいきません。敵の体力は高く、パンチ連打だけで倒すのは時間がかかりすぎてしまうため、ペチペチやってる間に後ろから殴られてしまうからです。なので、パンチ連打でダメージを奪いつつ、どこでコンボを切り上げて背後の敵から逃げるのかを判断するチキンレースが攻略の基本。君が死ぬまで殴るのを止めないけれど、ボクが死ぬのは嫌だからスタコラサッサ。これ。

また、本作はベルトアクションにしてはキャラクターのスピードが速いので、とっととダウンをとって移動しないとあっという間に囲まれてタコ殴りの刑です。後半になればなるほど硬い敵がモリモリなので、そもそもパンチ連打なんてやってる場合じゃない。溜めパンチをする時間があればまだいい方で、そのうちジャンプキックや投げ連打でひたすらダウンを奪い続けるしかなくなります。おかげで敵を殴ってぶっとばしてるより、逃げ回っていた印象ばかりなんですけど、ボクの攻略が間違ってたりします?

回復も強化もドラッグでペレストロイカ

ソ連ではドラム缶から原始肉が出てこないため、体力の回復はドラッグ頼りになります。手持ちの注射器から緑の液体をさすだけなので、いつでもカンタンに回復が可能。ソ連では常識。といってもドラッグは消耗品なので補充する必要があります。敵を倒すとたまにぴくぴく痙攣している死体があるので、そこから緑の液体を補充しましょう。補充している間は無防備なので戦闘中は厳しいのですが、一定時間で痙攣状態が終わってしまうので、タイミングが悪いとなかなか補充できず、いっそう厳しい戦いを強いられます。

ちなみに、ソ連におけるドラム缶の用途は撲殺です。

ドラッグの使い道は回復だけではありません。同じ緑の液体を使って一定時間のパワーアップも可能となっています。薬で強化するのはソ連のお家芸ですね。時間は短めですが、ただのパンチで敵がゴリゴリ死ぬくらいにFatalityに強まります。回復に使った場合のケチな回復量を鑑みれば、パワーアップに使うのが正解なのかもしれません。とはいえ、使いどころの見極めがムズかしいところではあります。

いくらソ連でもそれは常識じゃないよね?

本作はかなり高めの難易度となっており、理不尽なところも散見されます。まず、プレイヤーキャラクターの攻撃判定の薄さ。「えっ、今の当たってねーの?」なんて日常茶飯事。敵の塊に向かってパンチを連打していたはずなのに、当たっていない敵から逆にパンチをもらったりすることも。敵の方が判定厚いのかよ。終盤の敵にはパンチ連打を食らってる最中に前転回避で抜けてくるヤツまでいる始末。それゲームのコンセプト破綻してません?

さらに、ダウンさせなければひたすらコンボになる、というのはプレイヤーだけの専売特許ではありません。敵の攻撃だって永パ並に連続ヒットするのです。なので、多数に挟まれると体力が一瞬で溶ける。しかも、やっとダウンさせてもらえたと思ったら起き上がりに無敵がないのでまだダウンさせられるハメに。回避アクションのスウェーがあるんだから避けろ、ってことなのでしょうけど、だからといって1発食らうと大惨事すぎてリスクとリターンがイマイチ釣り合っていないような。あまりに無慈悲。

敵の数、硬さ、速さ、そして当たり判定と1発でも食らうことのリスクの高さ。そこへステージギミックが追い風となり、もう逃げ回るしかないプレイにならざるをえない始末。敵をまとめて薙ぎ倒す壮快感はどこへやら。ムズかしいゲームにしたい意図はわかるのですが、パンチの当たらない犬や攻撃しながら横に湧く幻影の敵、画面外からの狙撃など、あまりに理不尽なので体力が尽きる前にストレスゲージがMAXになります。このあたりが冒頭でも書いたオススメしづらい理由です。

共産圏の常識を受け入れられれば或いは

そんなわけで『Mother Russia Bleeds』、パッと見は普通のベルトスクロールアクションだけど、中身はちょっと変わった味付けの一品となっております。従来のベルトアクションの常識に囚われた人ほど攻略が大変になるかも。ボクもその一人で、咄嗟に縦スウェーが押せずにいます。それで避けろ、ってことはわかるのですが、手癖が邪魔をしてただの縦移動をしてしまう…。いずれにしても、単にムズかしいとか他とは違うとか、それだけならよかったのですが、理不尽なところが本当にストレスになるので、これからソ連へ赴く人は要注意。

書き忘れていましたが、ローカルのみですが4人COOPに対応しています。オフで遊べる友人がいない人でもCPUの味方を連れていくシステムもあります。とはいえ、CPUは勝手に突っ込んで勝手に死んじゃうお茶目なAIだし、こちらの数が増えれば敵の数も増えてしまうので、いない方がマシかも。CPUが生きていけるほどソ連は甘くないのである。ちなみにプレイヤーキャラクターは4種類いますが、攻撃力や体力、スピードなどに差はあっても基本性能に差はないのでプレイ感はさほど変わりません。個人的にはパワータイプのおっさんがオススメ。

ところで、上記の理不尽からくるストレスとは別に、なんか壮快感が足りないなと思っていたのですが、原因は敵の体力ゲージが見えないからではないかと気づきました。さまざまなジャンルのゲームに搭載されたゲージ状の体力バー、あれがモリッと減ること自体に快感を覚えているのではないかと。これって立派なゲーム脳なんじゃないか。とはいっても、体力ゲージのないゲームがすべて壮快ではないのかといえば、そんなこともないんですけれども。固定観念に邪魔をされているだけなのか、そうなのか。

ともあれ、このゲームの開発者はロシアのことをなんだと思っているのでしょうか。それだけが疑問でなりません。ちなみにボクはザンギエフだと思っています。

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