『ドラゴンクエスト11』をクリアしたのでレビューなど。今回プレイしたのはPS4版で、いわゆる真ボス撃破まで達成したところ、プレイ時間は70時間ほど。ガッツリ遊べました。そのうえでのレビューとなりますが、極力ネタバレは避ける方向で書いていきます。とはいえ、未クリアの人はこんなところを見ていないで早くクリアまで進めましょう。クリア後にここへ戻ってきていただければ幸いです。
※以下、PS4版のレビューとなります。3DS版とはいろいろと仕様が違うようですが、ここで述べているのはすべてPS4版の話です。
ちなみにボクはファミコン世代の直撃世代。ゲームの発売で店に行列ができる様をTVが伝えるのをリアルタイムで見ていた世代です。「ドラクエ」は社会現象を起こしただけでなく、RPGの基礎を築いたといっても過言ではありません。そんなことを言っちゃうくらい、ボクにとって「ドラクエ」は大きな存在なのであります。
そして今回、PS4になっても「ドラクエ」っぽさはそのままで、いうなれば実家のような安心感がありました。しかしこの”実家”、懐かしさだけではありません。よくよくみるとWi-fiが設置されていたりルンバが走り回っていたりするほど快適に整備されており、さらには知らない猫が飛び出してくるようなサプライズまで用意されていたりする。懐かしい安心感と驚愕のサプライズという矛盾しそうな2つの要素が見事に同居しているゲーム、それが『ドラクエ11』なのです。
懐かしさと驚きが同居するストーリー
懐かしさとサプライズとの同居をもっとも強く感じられたのはなんといってもストーリー。”いつもの「ドラクエ」”だと安心していると、突然のちゃぶ台返しにあっと驚かされます。驚きの後はまた「ドラクエ」らしい展開に戻ったりもするのですが、要所で裏をかいてくるのでまったく退屈しません。
たとえば序盤の導入部分、片田舎で生まれ育った主人公が実は勇者だと告げられ、王様に会ってこいと言われるあたりは”いつもの「ドラクエ」”っぽいのですが、いざ王様に会いに行くと……おっと、これ以上はネタバレになってしまうので詳しく書くのはやめておきましょう。そのまま素直に進むようなストーリーではないとだけ申し上げておきます。いつもの「ドラクエ」であるような顔をして安心させておいてから、実はそうではないとひっくり返して驚かせてくる。これが何度も続くのだからたまらない。めちゃくちゃおもしろいわけです。
これは最序盤の展開なので「それくらい言葉を濁さずハッキリ書いていいだろ」と思われるかもしれませんが、それでも書かないのは極力ネタバレをしたくないと強く思えるからです。今回のストーリーは本当にネタバレをしたくない。あれだけ驚きが詰め込まれているのに、それを台無しにしたくない。そう思えるほど今回のストーリーはすばらしいのです。しかし、そのすばらしさをネタバレせずに伝えようとするとこんなぼんやりとした書き方しかできず、己の無力さに打ち震えるばかり。申し訳ないのですが「キミの目で確かめてくれ!」というしかありません。確かめてください、マジで。
ネタバレしたくないと思えるストーリーは、SNSで拡散されていく時代とはややマッチしないかなという気がしないでもありません。たとえばスクリーンショットをアップしようとした場合、ストーリーイベントとは関係のない部分でも「このキャラクターが写ってるだけでネタバレじゃん!」となってしまうからです。もう中盤くらいからこれ。バトル中のフリーカメラ機能などはまさに「カッコいいスクリーンショットを撮って共有してね」と言わんばかりですが、ネタバレを避けようとするとなかなかどうしてムズかしい。PS4の機能として撮影禁止になるのはいくつかのカットシーンだけなので、写しちゃダメってわけではないんでしょうけれども、ネタバレしたくないと思うのが人情。なので「売れてるわりにはTLにあんまスクショ流れてこなくね?」と思われたアナタ、アナタの周囲はネタバレに気を使ってくれる良い人ばかりのようですよ。
今回のストーリーのすばらしさを語るうえで外せないのは過去作のオマージュが満載という点。特にファミコンからスーパーファミコン時代の6作が目立つでしょうか。サブタイトルにもあるとおり、これこそが求めていた”過ぎ去りし時”。単にファンサービスというだけでなく、世界の設定や「ドラクエ」の歴史とガッツリ結びついているのでストライク世代にはたまらない。シリーズをプレイしてきた人であればあるほど驚きや感動は大きくなることでしょう。もちろん、オマージュの数々も実家のような安心感として利用されているので、その後のサプライズ展開は言わずもがな。「これはアレのオマージュだな」と思わされたら次の展開に「そうきたかァ~~~」と唸るばかりです。これ以上のファンサービスがあるでしょうか。
ただ1点、ちょっと残念だったのは音楽の使われ方。過去作のアレンジ曲が使われているのはよいのですが、問題は過去作の曲がそのまま使われている場面です。ややネタバレ気味で申し訳ないのですが、具体的にいうと「大空を飛ぶ」はたしかに名曲中の名曲ですがその使い方は『8』で1度やっていますし、「冒険の旅」も最高にカッコいいフィールド曲ですが、似たような使い方は『ビルダーズ』で通った道のはず。真ボス戦の曲に関しても、それは最高の曲かもしれないし、設定の繋がりをほのめかす意味でも間違ってはいないのでしょうけれども、これは『11』なのだから『11』としてのアレンジが欲しかったところです。
戦いたいときだけ戦えばいい探索の快適さ
ストーリーの話はこれくらいにして、他の部分にも触れていきましょう。まずフィールドはオープンワールドではなく区分けされたフィールドが連結された方式になっています。1つ1つのマップは非常に作りこみを感じさせられ、たとえば隅っこや行き止まりなどには必ず何かが配置されているので探索したい欲求を刺激してくれます。特に町は立体的に作られているので探索するのもひと苦労…いや、探索のし甲斐があるというものです。どのフィールドもなかなかの広さになっていますが、最序盤から馬をもらえるので移動そのものは快適。
シンボルエンカウント方式で敵が徘徊しており、接触するかボタンを押して剣で斬りかかればバトル開始。このとき攻撃が成功すれば少しダメージを与えた状態でバトルが始まります。が、先制や不意打ちは関係ないのでほんのちょっと有利になるだけ。なので、あまり神経質になる必要はありません。それどころか敵シンボルの回避はカンタンなので、戦いたいときだけ戦えばOK。馬に乗って走っていれば格下の敵など吹っ飛ばしてしまえるので爽快かつ快適。そんなことをしていると経験値が稼げずに後々しんどいのでは?と思われるかもしれませんが、意外となんとかなってしまう調整になっているので、気兼ねなくスルーしていけます。
敵シンボルにはちょくちょく”乗れる”やつがいます。キラキラしているヤツらがそれ。大抵の場合、騎乗可能なモンスターは立体的な構造のダンジョンに配置されており、彼らに乗ってジャンプしたり壁を登ったりすることで徒歩では入れない場所へ行けるようになっています。ちなみに、スライムナイトのスライムには乗れませんが、ドラゴンナイトのドラゴンには乗れます。ドラゴンなので飛べます。マップを無視して飛び回っていると「本当にいいの?これ」といった気持ちが湧き上がってこないでもない。ともあれ、ダンジョンやフィールド探索のアクセントとして機能している感じでしょうか。乗れるモンスターがいたならとりあえず乗っとけ、って感じでもあります。まず間違いなく何かありますから。
町はどこも多数のサブクエストが用意されていて、すさまじいボリュームになっています。クエストを依頼してくるNPCはマップ上に表示されるし、受けているクエストに関連する場所はマップから確認もできる親切設計になっており、このへんはまさに「ドラクエ」といったところ。また、ボリュームに関しては特にゲーム後半、圧倒されることになります。たとえば、カギを入手したらカギのかかった扉を求めてあちこちを再訪することになるのはいつもの「ドラクエ」なのですが、全国各地で新たなイベントが用意されているので、扉を開けるだけのつもりがずぶずぶと巻き込まれてプレイ時間が大変なことに。
いつものようでいつものじゃないバトル
今作のバトルはターン制が廃止され、早いもの順に行動するようになりました。とはいえ、いつものコマンド選択方式は健在で「ピピッ バンッ! ドゥルッ ズシャ !」みたいなプレイ感は変わりません。「さくせん」による味方のAIも優秀で、ザコ戦なら任せっきりでも問題なく、こちらも快適に進めることができます。
『11』のバトルの目玉となるのが「ゾーン」と呼ばれるシステムで、青いオーラをまとって強化状態になる、というもの。ゾーン状態になれるかどうかは行動ごとに確率で決まるようですが、単なる運要素というわけではなく、バトル終了後も継続するので戦略的な運用もできるようになっています。特に、複数キャラクターがゾーン状態になっているときに使える「れんけい」は強力なので、扱い方次第で冒険がぐっと楽になります。ゾーンに入ったキャラクターを控えに回してボス戦まで温存するか、強化状態で戦い続けて道中の被害を減らすか、さまざまな運用が可能です。
しかしこの強力なゾーン、敵も使ってきます。人類も魔物も平等です。なかでもボスがゾーンに入ると非常に危険。こちらがゾーンか、敵がゾーンかで明確に攻守が切り替わるため、メリハリのあるバトルが展開されることになります。ちなみに、ゾーンはいてつく波動などの強化効果を打ち消せるスキルが有効です。なので、ゾーン状態を即解除したりされたりすることもあるのですが、そんなところも含めて、バトルの大きな軸の1つになっているわけです。
ゾーンが戦況を大きく変えるバトルは一見すると極端なバランスになってしまいそうですが、そこはそれ。いつもの「ドラクエ」らしい良好なバランスに調整されています。先にもすこし述べましたが、敵をスルーして進めても詰むようなこともなく、入念にレベルを上げても楽勝というわけにもいかない調整になっています。
どうしてそうなっているかといえば、多くのボスが複数回行動になっていることと、バッドステータスをバラまいてくることが理由でしょう。力任せの勝負にはなっていないため、初見ではどうしても苦戦するようになっています。特にバッドステータスが多いのは従来の「ドラクエ」とは印象が異なるかもしれません。とはいえ、装備での対策が必須になっているわけではなく、最適なキャラクターで編成を組むことが攻略のカギとなっているため、戦いの最中に対応していけます。たとえ敗北してしまったとしても、いったん帰ってレベル上げなどしなくとも、編成を変えて即再戦でなんとかなってしまうことがほとんど。見事な調整だと思います。
バトルに関して難点をあげるなら、スピードが遅く感じられることでしょうか。ボタンを押しっぱなしにしていれば多少の高速化が可能とはいえ、十分ではありません。特に後半のボス戦などでは複数回行動するので敵の行動時間が長くなり、それに合わせてボコボコにされる味方を眺めている時間も長くなるためストレスになりがち。もうちょい高速化できるオプションが欲しかったところです。
現代のトレンドは素材集めなのか
「ドラクエ」といえばどうしてもレベル上げのイメージがありますが、今作は進めていれば自然と適性レベルになっているため、特にレベル上げの必要はありません。ボクの場合、敵シンボルをかなり避けながら進めていたのですが、サブクエストはそこそこ消化しながらだったので、結果的に適性レベルになっていたようで、真ボス撃破までこれといったレベル上げはしませんでした。また、全体的に経験値が高めのようなので上げようと思えばガンガン上げられるようにもなっています。特に終盤、とあるれんけい技を使ったレベル上げはめちゃくちゃ楽。やっぱカミュはイケメンだぜ。これも非常によい調整ですね。
今作ではレベルとは別に「スキルパネル」と呼ばれるシステムもあります。レベルアップ時に取得できるポイントを消化してパネルを解放することで特技や呪文などを習得していけるシステムです。要するにスキルツリーですね。キャラクターごとに異なるパネルをもち、さらに武器種別ごとに枝分かれしているため、プレイヤーによって差が生まれる部分となっています。中盤以降はスキルリセットも可能になるため、装備や状況に合わせていろいろ試しながら進めていけます。とっても親切。
今作における装備品は店で買うだけでなく、レシピと素材から「ふしぎな鍛冶」で制作することができます。鍛冶はミニゲームになっていて、うまくやれば性能にボーナス値が付加されます。たとえ失敗してもボーナス値がゼロになるだけで完成品は手に入るので安心。さらにいえば、後から完成品を打ち直してボーナス値を付けることもできるので非常に親切といえましょう。とはいえ、ミニゲーム自体はあんまりおもしろいものではないので残念ですが…。
鍛冶システムに引っ張られてか、道中の宝箱やクエストの報酬などがレシピや素材ばかりになっている印象は拭えません。特に後半に登場する強力な装備はほとんどが鍛冶で作るものばかり。なので、1発で強力な武器を手に入れたときの”キター感”は味わえないかも。個人的には宝箱から一発ゲットの快感はもうちょい欲しかったところです。そうはいっても、気が付けば素材集めに奔走していたりするので、これはこれで楽しんでいるわけですけれども。キャラクター育成のために素材アイテムのあれやこれやを集めまくるゲームに数多く触れている昨今、まさか「ドラクエ」でも同じことをするハメになるとは。
この親切設計こそ「ドラクエ」の真骨頂
『ドラクエ11』を語る上でこれだけは外せないと思ったのがユーザーインターフェース(UI)の話です。ボタンを押せばメニューが開き、そこから道具や呪文を選ぶ……、一見するといつもどおりのUIにみえますが、実はかなり細かく機能が盛り込まれていて、まさに痒いところに手が届く仕様になっています。
たとえば、メニューを開いてワンボタンで「ほぼまんたん」コマンドになっていて、バトル後の回復は一瞬。道具の整理もワンボタンで装備以外を袋に突っ込めます。しかもなんと、けんじゃの石やまふうじの杖のようなアイテムは袋に移動せず残るという行き届きぶり。呪文からルーラを選んで移動もできますが、マップからもルーラを使えたりします。他にもマップには現在地に関するクエストの情報まで見られるため、何かを探すクエストなどで無関係な場所を探索して時間を無駄にする悲しみからは解放されました。もうね、本当に親切。これぞ「ドラクエ」って感じです。
“過ぎ去りし時”のお求めは『ドラクエ11』で
そんなわけで『ドラクエ11』、期待も大きかったのですが期待以上に楽しめました。期待を大きく上回ったのは何といってもストーリー。ネタバレすると台無しなので語りたくても語れないのですが…、同じような心境の勇者諸氏も多いのではないでしょうか。”過ぎ去りし時”を渡り歩いてきた歴戦の勇者であればあるほどその想いは強いはず。あの結末からはいろいろと想像が膨らんでしまいますが、どうとでも解釈できそうな作りになっているのは”らしい”っちゃらしいですね。
ともあれ、これまで「ドラクエ」シリーズをプレイしてきた人にとっては間違いなくオススメできる一品。ゲームのみならず、マンガやアニメといったメディアミックス作品からもいろいろとネタを拾い上げているので、好きな人であればあるほどニヤリとできることでしょう。反面、まったく「ドラクエ」シリーズに触れてこなかった人にとってどうなのかは正直わかりかねるのですが、親切設計なRPGであることに変わりはないので、おそらく存分にエンジョイできるのではないかと思います。過去作が気になるような作りにもなっているので、むしろ入り口としてオススメできそうな気もします。
以上、長々と書いてきましたが、「これは「ドラクエ」です」といえば一言で終わりそうな話でした。やっぱ「ドラクエ」って偉大だわ。
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