ネタバレ全開で感想とか書いていきます。まずはオカリン編、ダル編、助手編から。
※ネタバレありです。ネタバレを見たくない人は見ないようにお願いします。
『線形拘束のフェノグラム』は、シュタゲの各キャラクター視点で描かれるストーリーです。まずはプロローグとなるオカリン編・前編から、最初に選択できるダル編、助手編の感想とかいろいろ書いていこうと思います。ネタバレ全開で言いたいこと言います。
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軽いノリから一気に叩き落されるオカリン編・前編
ゲームスタート時はシナリオを選択できず、固定でオカリン編になります。オカリン編は後半にもう1度出てくるので、こちらは実質前編の扱いでしょう。
タイムリープマシンを利用して、正義のヒーロー・アルパカマンとして活躍するオカリン。一見すると『比翼連理のだーりん』的なノリかと思わせておいたところで、実は本編に順ずる重たい話なのだと突き落とすところが、このプロローグの目的なのでしょうか。実際、『比翼連理』とは異なり、シリアスな展開が多くなっているので、最初にそれをわからせにきているのかも。
ここはまゆしぃの残機が尽きてしまった後の世界線。そもそもタイムリープマシンが存在している時点でトゥルーエンド後の世界であるはずもないことは、プレイヤーも気付くべきだったのかもしれませんが、そこはアルパカマンの存在感がうまく意識をそらしてくれています。右手に注目させている間に左手でカードを入れ替える手品師のような感じでしょうか。
なぜそこにまゆしぃが?というシーンを続けて、じわじわと違和感を蓄積し、最後に助手のストレートで爆発させる展開はお見事。目の前の人物が実は存在しない、ってのは『ファイトクラブ』か『シックスセンス』か『ブラックオプス』か、いろいろと連想させるところもありますね。
シュタゲは「タイムマシン」の存在なくしては成り立たないので、トゥルーエンドに到達できなかった世界線の話になってしまうのは仕方ないのですが、トゥルーエンドを知ってるプレイヤーにしてみれば「まだそこなのか」とか「またかよ」的な肩透かし感も否めないわけです。この物語の終着点を知っているのだから、当然といえば当然です。これが『線形拘束のフェノグラム』に課せられた高い高いハードルです。
すでに完結した物語をさらに引き伸ばす…ジャンプ漫画的な新展開で「もうちっとだけ続くんじゃ」ではなく、1年戦争の隙間隙間に新しい戦いを挟み込んでいくようなイメージかも。シュタゲ本編はキレイに完結しているのだから、その間に何を挟むのか、蛇足にならないためにどう料理するのか、というのが、本作最大の見所かもしれません。
1年戦争とは違い、こちらはタイムリープマシン完成前後の数日間しかないため、その間にあれこれと挟みこむのは無理がでてきそうですが、「そういう世界線もあった」といえばだいたいオッケーなのが大きな違いでしょうか。とはいえ、「そういう世界線もあった」がただの言い訳になってしまうようでは興醒めなので、本編とも関連付けつつ、本編の邪魔にならないバランス感覚というのは、非常に難しそうでもあります。
オカリン編・前編でもっとも期待させてくれるのが「アルパカ司令」の台詞。背筋をゾクリとさせる展開こそがシュタゲ最大の魅力だと思うのだけれど、それを担当してくれているのがアルパカ司令です。「シーマン」的なAIキャラクターが心を見透かすような意味深な台詞を投げかけられて、どう回収されていくのかを想像し、ワクワクしながら「線形拘束のフェノグラム」が開幕するのがこのオカリン編・前編でしょう。
そして、残念なことに、オカリン編・後編でも特に回収されることなく終わってしまうのがすべてといってもいいのかも。アルパカ司令のいう「トゥルーエンド」は、本編で達成されるものなので、「線形拘束のフェノグラム」としては特に何もないという…。本編におけるトゥルーエンドに何か付け加えても、やはり蛇足にしかならないため、他の世界線における肉付けをメインにしたのでしょうか。
ヒーロー・ダルとちょっとマヌケなラウンダーたちのダル編
将来の嫁と会う、という『比翼連理のだーりん』で1度やったシナリオの別世界線バージョン。世界線変動率も3%を超えているので、そういう世界なのでしょう。コミマでぶつかっただけではなく、その後にもっとドラマチックなストーリーがあったという話ですね。ピンチに命がけで駆けつけてくれるダルとか、そりゃ惚れる、結婚する。タイトルのファムファタールは運命の女性の意なので、完全にダルのラブストーリーになってます。
まゆしぃを救うために1年の時を越えて旅立つオカリンを見た直後、まゆしぃが普通に生存している『比翼連理』の世界線になるので、「なんでやねん」感は拭えません。が、各話完結スタイルなので、『線形拘束のフェノグラム』はこういうものなのでしょう。
ダルの言動は相変わらずで、どんなときでもオタネタを忘れない姿勢はステキすぎます。シュタゲの味付けに大きく貢献しているネットスラング的なネタも、ダル視点だとめっちゃ多くなるので、このへんを理解できるかどうか、受け入れられるかどうかで評価が分かれそう。
「なのは完売」ネタにはちょっと不意をつかれました。メールでもファンネルたちが戦っているようすが描かれていて細かいですね。
といっても、もともと本編からそんな感じなので、本編クリア済みであることが前提の本作では問題にならないでしょう。相変わらず2ちゃんねるの再現度の高さには笑ってしまいます。
カッコイイダルとは対照的に、ラウンダーの仕事が雑なのと、やってることが意味不明すぎるのが残念なところ。手渡しでメモを渡して連絡、そして相手を間違えた上に、一般人にメモの意味も把握されてしまうなんて、何時代なんですか。萌郁さんは普通に携帯のメールで連絡してるのに、なんで手渡しのメモ?
メモに書かれていた謎の文字列も、マンホールのフタの番号だなんて、下水なんて繋がってるんだから、別にそこは指定しなくてもいいのでは。 人目につかないマンホールから降りて地下を歩いた方がいいんじゃ…。しかも、ラウンダーの目的が爆弾を使ったテロ、って、地下の万世橋を爆破して何があるというのか。アジトを破棄するにしても、別に爆破の必要はないですし。ダルのピンチの演出としても、ちょっと理由がなさすぎるので、何がしか説明がほしかったところ。
萌郁さんが顔を晒して現れて、ダルに発砲したけど死んでないので手錠かけて去るとか、よくわからないことをしていますけど、これは萌郁さんなのでいいです。
あとで思い返してみて、「あれっておかしくね?」と思うようなツッコミどころならいいのですが、プレイ中に「それはねーよ」と思ってしまうツッコミどころはNGかなーと。上手にプレイヤーを騙していただきたいかなーと思いました。
本編の裏を助手視点でみる紅莉栖編
本編でUPX前で落ち込むオカリンを励ます助手、というシーンに繋がる話が助手編。本編の裏ではこんなことがあったのです、という、本作最大のウリである他キャラ視点が最大限活かせるネタですね。
助手視点だと助手がオカリンを好きすぎる描写も期待通り。というか、予想以上にベタ惚れです。
このシナリオで活躍するのはフェイリスパパと助手の父親で、若き天才として大人の中で戦ってきた助手が、大人の手を借りて一歩成長するところが描かれています。タイトルの「黄昏色のソーテール」ですが、ソーテールは救い主、救い手のことで、UPX前のシーンにおける助手のことを指していると同時に、その助手にも救い手がいたのだという、2重の意味が込められていそうですね。
そういや、フェイリスパパが生きているのかーと思いましたが、UPX前のシーンではまだDメールの効果がすべて生きている状態で、ここからDメールを消すためにオカリンの奔走が始まるんでしたっけ。
大人の手を借りる中に、父親との和解も含まれてますが、助手の父親といえば、本編じゃ諸悪の根源みたいなポジション。自力ではタイムマシンを完成させられず、娘に追い越された挙句、技術を盗んで世界を破滅に追いやるおっさんの言葉が、どこまでプレイヤーの心に響くのか。ここがポイントでしょう。
事態を打開できるのはオカリンだけだが、オカリンが絶望しちゃって動けないのでどうしよう、という問題に対し、「じゃあオカリンがまだ話せる状態の時間にタイムリープすりゃいいじゃん」という至極真っ当なアドバイスをくれる助手パパですが、「オカリンに何をアドバイスするのか」については娘に丸投げなあたり、まったく心に響きません…。助手自身がタイムリープすること自体は選択肢として考えていた節もあったので、助手パパのやったことは背中を後押ししたくらいなんですよね。
結局、まゆりを救うための具体的な解決策を自分で考えながらオカリンのもとへ向かう助手でした。助手パパの株が上がるどころか、さらに下がってしまったような…。実は助手があの時点でタイムリープしてましたっていうのはどうなん?って気もしましたが、まー助手だし、って気もします。
あの時点の助手がタイムリープしてきていた、っていうのは衝撃的展開ではありますが、もしかしたらタイムリープせずにUPX前に現れた世界線もあるかもしれませんし、「そういう世界線もあった」という話なのかも。「そういう世界線もあった」を使いすぎると、本編とのつながりを考察しようと、もう一歩踏み込もうとする気力がそがれてしまうのが難点かもしれません。
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